近年、金融市場で注目されるキャリートレードと、その影響について深掘りする書籍について解説する動画をご紹介します。
キャリートレードがいかにして市場を動かし、時には暴落を引き起こす原因となるかを具体例や歴史的背景を交えて紹介します。

キャリートレードとは何か?
キャリートレードとは、低金利の通貨で資金を借り、高金利の通貨や資産に投資して利ザヤを稼ぐ手法です。例えば、日本円を借りて米ドルで運用する「円キャリートレード」が代表的な例です。
しかし、この動画では、キャリートレードの定義がさらに広い意味で使われています。
キャリートレードには、通貨の金利差だけでなく、ボラティリティ(価格変動性)を売る取引や、複雑な金融商品を使った手法も含まれると説明されています。
具体例として挙げられたのが、以下のような取引です:
- 通貨キャリートレード:低金利の通貨(例:円)を借り、高金利の通貨(例:ドル)で運用。
- CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の売り:リーマンショック時に注目された金融商品。
- プットオプションの売り:株価指数や個別株の価格変動リスクを取る取引。
これらはすべて、「小さな利益を積み重ねながら、大きな損失リスクを抱える」という共通点を持っています。
ボラティリティの売りとは?
キャリートレードの本質は、「ボラティリティの売り」であると説明されています。これを理解するために、保険会社のビジネスモデルが例に挙げられました。
- 保険会社は、日々少額の保険料を受け取り、小さな利益を積み重ねます。
- しかし、大きな災害(地震など)が発生すると、一気に巨額の支払いが発生します。
これと同様に、ボラティリティの売りも、価格変動が少ない間は利益を積み重ねますが、突然の市場変動で大きな損失を被る可能性があります。
例えば、円キャリートレードの場合、以下の構図になります:
- 日本円(低金利)を借りて、米ドル(高金利)で運用。
- 日々の金利差で利益を得る。
- しかし、急激なドル安が発生すると、それまでの利益が一瞬で吹き飛ぶ可能性がある。
キャリートレードの歴史と市場への影響
キャリートレードの歴史を振り返ると、その影響の大きさが分かります。
- 1990年代:円キャリートレードが活発化。
- 2000年代初頭:再び円キャリートレードが注目を集める。
- リーマンショック(2008年):CDSの売りが広がり、不動産バブル崩壊が引き金となり世界的な金融危機を招く。
リーマンショックの例では、CDSを大量に売っていたリーマンブラザーズが大規模な損失を抱え、破綻しました。このように、キャリートレードは利益を生む一方で、金融危機の引き金にもなり得るのです。
S&P500とキャリートレードの関係
S&P500は、現在のキャリーレジーム(キャリートレードを中心とした金融体制)の中核を担っています。S&P500に関連するキャリートレードとして、プットオプションの売りが挙げられます。
- プットオプションの売り:
- プットオプションを売ることで、保険料のようなプレミアムを得られる。
- しかし、原資産(S&P500)の価格が権利行使価格を下回ると、大きな損失が発生する。
これらの取引は、「小銭を拾うためにリスクを取る」という性質を持ちます。
動画内での比喩では、「キャリートレードは蒸気ローラーの前で5セント硬貨を拾うようなもの」と表現されていました。小さな利益を得る一方で、ローラー(金融危機)が来ると潰される危険性があるのです。
キャリートレードのリスクと崩壊
キャリートレードは拡大すればするほど、崩壊のリスクを高めます。本書では「すべての資産バブルの発端はキャリーにあるが、同じバブルは二つとない」と述べられています。
例えば、リーマンショック前の不動産バブルや、2024年8月の株式市場の暴落も、キャリートレードの影響が指摘されています。キャリートレードが広がるほど、そのリスクは大きくなり、やがて崩壊を引き起こすのです。
また、中央銀行(特にFRB)の金融政策が、このキャリーレジームを助長している点も指摘されています。
FRBは1987年のブラックマンデー以来、金融危機時に市場を支援する行動を取り続けていますが、それが「FRBが市場を救う」という安心感を生み、モラルハザードを引き起こしているのです。

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