本記事は、YouTube動画『NTTが172.5円 年初来高値、踏み上げの入り口なのか』の内容を基に構成しています。
NTT株が172.5円まで上昇し、年初来高値を更新しました。
注目したいのは、単純に株価が上昇していることだけではありません。
NTTの信用倍率は、7月10日の44.60倍から8月21日には2.62倍まで急低下しています。しかもその間、信用買い残は大幅に減少する一方、信用売り残は約6.2倍に増えました。
通常、人気銘柄では株価が上昇すると信用買いが増え、それが将来の戻り売り圧力になることがあります。しかし今回のNTTでは、株価が上昇しているにもかかわらず信用買い残が減っています。
一方で、「もう高いのではないか」と考えて空売りする投資家は増加しています。
この状態でさらに株価が上昇すれば、売り方が買い戻しを迫られる「踏み上げ」が起きる可能性があります。
ただし、信用倍率が2.62倍まで改善したからといって、すぐに大規模な踏み上げ相場が始まると判断するのは早計です。
今回の記事では、NTT株が172.5円まで上昇した理由、信用需給の大きな変化、自社株買いの影響、そして今後175円、180円、さらには191円や194円を目指すために何が必要なのかを詳しく見ていきます。
NTT株が172.5円まで上昇した直接的な理由
まず今回の上昇には、直前の材料があります。
8月28日、大手証券会社がNTTに対する強気評価を維持したうえで、目標株価を179円から191円へ引き上げました。
8月31日は、この目標株価引き上げを通常取引で初めて織り込む営業日となりました。
NTT株は前週末の168.6円から170円で寄り付き、9時7分には172.5円まで上昇しています。
ここだけを見ると、「証券会社による目標株価引き上げを受けて買われた」と考えることができます。
しかし、今回の値動きにはそれ以上に注目すべき点があります。
それが市場全体との方向性の違いです。
同じ時間帯、日経平均は大きく下落していました。半導体株などを中心にリスクオフの動きが強まるなか、NTT株は逆に年初来高値を更新しました。
つまりNTTは、市場全体が売られる局面でも買われる「相対的に強い銘柄」になっていたのです。
NTTの評価改善は8月中旬から始まっていた
今回の上昇は、8月28日に突然始まったわけではありません。
8月20日にも国内大手証券がNTTの目標株価を186円から194円へ引き上げています。
さらに8月26日には、別の大手証券会社が中立評価を維持しながら、目標株価を155円から173円へ引き上げました。
つまり証券会社によるNTTへの評価改善は、8月中旬以降、段階的に積み上がっていたことになります。
株価にもその変化は表れています。
決算前となる8月5日の終値は151円でした。
その後、第1四半期決算を受けて8月6日には154.5円、翌7日には158.5円へ上昇しました。
さらに8月21日には、約3億73万株という大きな出来高を伴いながら166.1円まで上昇しています。
8月20日の出来高約2億184万株と比較すると、翌21日の出来高は約83%増加しています。
つまり今回の172.5円は、1日の材料だけで突然生まれた株価ではありません。
第1四半期決算によって企業評価の土台が変わり、証券会社の目標株価が引き上げられ、170円という節目を突破していく過程で需給環境も改善しました。
その最後に8月28日の191円への目標株価引き上げが加わったことで、市場全体が弱い日でも年初来高値を更新したと考えるのが自然です。
信用倍率が44.60倍から2.62倍へ急低下
今回のNTTで特に注目したいのが、信用取引の需給です。
7月10日時点では、信用買い残が1億8664万9000株、信用売り残が418万4800株でした。
信用倍率は44.60倍です。
信用倍率とは、簡単にいえば「信用買い残が信用売り残の何倍あるか」を表した数字です。
信用買い残が極端に多い場合、その投資家はいずれ株を売却して決済する必要があります。そのため、将来的な売り圧力として意識されることがあります。
ところが8月21日になると状況が大きく変化しました。
信用買い残は6819万8300株まで減少し、信用売り残は2605万8200株まで増加しました。
その結果、信用倍率は2.62倍まで低下しました。
約6週間で信用買い残は約1億1845万株減少しています。率にすると約63%の減少です。
一方、信用売り残は約6.2倍に増加しています。
この変化は非常に大きなものです。
株価が上がりながら信用買い残が減っている
ここで最も重要なのは、信用買い残が減ったことだけではありません。
その間に株価が上昇していることです。
7月10日のNTT株の終値は147.6円でした。
そこから8月31日の高値172.5円まで、約17%上昇しています。
通常、信用買い残が1億株以上減少すれば、そのポジションを解消するための返済売りが発生します。
本来なら株価の重しになっても不思議ではありません。
ところがNTT株は、その売りを吸収しながら上昇しました。
ここが今回の需給を見るうえで非常に重要なポイントです。
「信用買い残が減った=人気がなくなった」と単純に考えることはできません。
株価が上昇しながら信用買い残が減っているのであれば、過去の信用ポジションが整理される一方で、それ以上の現物買いや別の買い需要が入っていた可能性があります。
ただし、信用残のデータだけで「機関投資家が買った」「自社株買いがすべて吸収した」と断定することはできません。
そこで重要になってくるのがNTT自身による自社株買いです。
NTTの自社株買いが需給を支えている可能性
NTTは7月だけで約2億3978万株、金額にして約360億円の自己株式を取得しています。
これは7月10日から8月21日にかけて減少した信用買い残約1.18億株を上回る株数です。
もちろん、両者は集計期間が完全に一致しているわけではないため、「信用買いの返済売りをNTTの自社株買いがそのまま吸収した」と考えることはできません。
それでも、信用買い残が減少するなかで企業自身による大規模な買い需要が存在していることは、需給を考えるうえで重要です。
つまり、信用買い残が減った株数と同じだけ売り圧力が市場に残るとは限らないということです。
信用売り残6.2倍は踏み上げの燃料になるのか
もう1つ大きな変化が、信用売り残の増加です。
8月21日の信用売り残は約2606万株でした。
7月10日の約418万株から、およそ6.2倍に増えています。
信用売りとは、株価が下落すると考える投資家が株を借りて売却する取引です。
ところが、その後に株価が上昇すると、空売りをしている投資家は含み損を抱えます。
最終的には株を買い戻して決済しなければなりません。
この買い戻しが新たな買い注文となり、さらに株価を押し上げる現象が「踏み上げ」や「ショートスクイーズ」と呼ばれます。
NTTでも、売り残の増加は今後の上昇燃料になる可能性があります。
しかし、現時点では大規模な踏み上げ相場が確定したとはいえません。
売り残2606万株は巨大すぎる水準ではない
踏み上げを考えるときには、売り残が何倍に増えたかだけではなく、絶対量も見る必要があります。
8月21日時点の信用売り残は約2606万株です。
一方、8月28日のNTTの出来高は約1億8375万株でした。
つまり信用売り残は、直近1日の出来高のおよそ14%に相当します。
決して小さな数字ではありません。
ただし、数日分の出来高を超えるほど巨大な売り残でもありません。
そのため、「売り残が6.2倍になった」というインパクトの大きな数字だけを見て、数日間の急騰を強制するほどの典型的なショートスクイーズが起きると判断するのは早いでしょう。
さらに信用倍率は2.62倍です。
44.60倍から大幅に改善したとはいえ、まだ信用買い残の方が信用売り残より2.62倍多い状態です。
完全な「売り長」になったわけではありません。
踏み上げを起こすには172.5円突破が重要
では、本格的な踏み上げが起きるためには何が必要なのでしょうか。
1つの重要な基準が172.5円です。
単純に一時172.5円をつけるだけでは不十分です。
172.5円を終値で上回り、出来高を伴いながら高値圏へ定着できるかが重要になります。
仮に出来高が2億株を超えるような形で172.5円を突破し、その後も信用売り残が2500万株以上残っていれば、空売りしている投資家の含み損は膨らみやすくなります。
その結果、買い戻し需要が発生し、株価上昇をさらに加速させる可能性があります。
反対に172.5円で上ヒゲを形成し、168.6円、さらに166.1円を出来高増加とともに割り込んだ場合は状況が変わります。
この場合、売り方は買い戻しを急ぐ必要がなくなります。
つまり、「売り残が多いから株価が上がる」のではありません。
売り残はあくまで火薬であり、それに火をつけるのが株価の上昇なのです。
次回の信用残で確認したいポイント
今後の需給を見るうえでは、次回発表される信用残が非常に重要になります。
動画では、信用買い残が7000万~7500万株以下にとどまり、信用売り残が2500万株以上を維持し、信用倍率が3倍以下であれば、現在の良好な需給環境が続いていると考えられるとしています。
反対に、新たな信用買いが増えれば状況は変わります。
例えば170円突破を見て信用買い残が1000万~2000万株単位で増加した場合、これまでの「株価は上昇しているのに信用買い残は減っている」という強い需給構造が崩れ始めます。
さらに売り残が減少し、信用倍率が4倍~5倍を超えてくれば、踏み上げの燃料が減る一方、新しい信用買いによる将来の戻り売り圧力が増えることになります。
172.5円は目標株価173円の目前
株価水準という点では、172.5円という価格にも意味があります。
8月26日、大手証券会社はNTTに対する中立評価を維持しながら、目標株価を155円から173円へ引き上げました。
172.5円は、その173円までわずか0.5円です。
この評価だけを見るなら、短期的には中立的な適正株価水準をほぼ織り込んだとも考えられます。
一方、より強気の証券会社はさらに高い株価を見ています。
8月28日には強気評価を維持した大手証券会社が、目標株価を179円から191円へ引き上げています。
さらに8月20日には国内大手証券が194円という目標株価を示しています。
そのため172.5円をもって、「市場が想定するNTTの価値をすべて織り込んだ」と考えるのも適切ではありません。
172.5円は中立評価の173円にはほぼ到達した一方、強気評価となる191円や194円までは、まだ10%を超える上昇余地があります。
では、この約20円の差は何によって決まるのでしょうか。
191円・194円へ向かうには業績の再評価が必要
重要になるのが業績です。
NTTの第1四半期決算は増収増益でした。
営業収益は3兆617億円、営業利益は4251億円、当期利益は2748億円でした。
前年同期比では、それぞれ約11%増、約5%増、約6%増となっています。
決算前の151円から株価水準が大きく切り上がった背景には、信用需給だけでなく、実際に利益が前年同期を上回ったというファンダメンタルズ面の改善があります。
ただし、第1四半期が増益だったからといって、すべての懸念がなくなったわけではありません。
会社側は通期の当期利益を9800億円と予想しています。
これは前年の1兆370億円から約6%の減益予想です。
営業利益はほぼ横ばい圏ですが、最終利益については減益が見込まれています。
ここが、NTT株を完全に強気一辺倒では見られない最大のファンダメンタルズ上のポイントです。
191円や194円という強気側の目標株価へ本格的に近づいていくためには、第2四半期以降でも利益の進捗が確認され、通期減益幅の縮小や業績上振れへの期待が高まる必要があります。
173円と194円では前提条件が違う
現在の株価を考えるとき、「目標株価はいくらか」だけを見るのでは不十分です。
重要なのは、なぜその目標株価になるのかという前提です。
173円という慎重な評価は、現在の利益水準や足元の評価改善をある程度織り込んだ価格と考えられます。
一方、191円や194円に近づいていくためには、
第2四半期以降も業績評価が改善すること、
自社株買いが進むこと、
信用需給が悪化しないこと、
といった複数の条件が必要になります。
目標株価は将来の株価を保証する数字ではありません。
「173円だから高い」「194円だからまだ安い」と単純に判断するのではなく、どのような業績や需給ならそれぞれの株価が正当化されるのかを見る必要があります。
NTTには最大2000億円の自社株買いがある
NTTは5月8日、最大14億株、最大2000億円の自己株式取得を決議しています。
取得期間は2027年3月31日までです。
7月末までに取得した金額は約360.5億円、株数は約2億3978万株でした。
金額ベースの進捗率は約18%です。
2000億円という上限から単純に差し引くと、約1640億円分の取得余地が残っている計算になります。
ただし、ここは注意が必要です。
2000億円はあくまで「上限」であり、NTTが必ず2000億円すべてを使い切るという意味ではありません。
それでも需給の規模感を考えるうえでは重要な材料になります。
仮に170円前後で残り約1640億円をすべて使うと単純計算すれば、約9.6億株に相当します。
現在の信用買い残約6819万株、信用売り残約2606万株と比較しても非常に大きな規模です。
もちろん実際の取得価格は変動しますし、株数にも上限があるため、この計算どおりに買われるわけではありません。
それでも、NTT自身が市場で株式を買い付ける可能性が残っていることは、今後の需給を考えるうえで無視できない要素です。
16期連続増配予定もNTT株の下支え要因
NTTは2026年度の年間配当を1株5.4円とし、16期連続の増配を予定しています。
中間配当の基準日は9月30日です。
市場全体がリスクオフになったとき、配当や自社株買いを持つ大型ディフェンシブ銘柄へ資金が逃避することがあります。
今回、日経平均が大きく下落するなかでNTTが年初来高値を更新した動きも、その1つとして考えることができます。
市場全体が弱いからNTTも同じように売られる、という単純な連動が崩れたわけです。
ただし、この状態が永遠に続くわけではありません。
市場全体のリスクオフが長期化すれば、ディフェンシブ株にも利益確定売りや換金売りが広がる可能性があります。
自社株買いについても、株価下落を必ず止めてくれる防波堤ではありません。
今後は「自社株買いの残額がいくらあるか」だけではなく、8月に実際に何株、いくら取得したのかを見ることが重要です。
今後のNTT株を3つのシナリオで考える
ここまでの数字から、NTT株の今後は大きく3つのシナリオに分けて考えることができます。
強気シナリオ
まず上昇継続シナリオです。
172.5円を終値で突破し、2億株を超えるような大きな出来高を伴うことが1つの条件になります。
さらに次回の信用残で、信用倍率が3倍以下、信用買い残が7000万~7500万株以下、信用売り残が2500万株以上を維持していれば、需給面では非常に良好です。
信用買いの整理によって上値の売り圧力が軽くなった状態を維持しながら、空売り勢の買い戻し需要も残るからです。
この場合、175円、180円を試す条件が整いやすくなります。
ただし191円、194円まで受給だけで上昇することを正当化するのは難しく、第2四半期以降の業績、自社株買い、通期業績への安心感が必要になります。
中立シナリオ
172.5円をすぐに突破できなくても、168.6円~170円付近を維持するケースです。
信用倍率が3倍~5倍程度にとどまり、信用買い残も急増しなければ、166円~173円程度のレンジで高値を固めながら、次の信用残や自社株買い、決算を待つ展開になりやすいと考えられます。
この場合、上昇トレンドが完全に崩れたわけではありませんが、次の材料待ちという位置づけになります。
弱気シナリオ
注意したいのは、172.5円で上ヒゲを形成し、その後168.6円、さらに166.1円を出来高増加とともに割り込むケースです。
同時に次回の信用残で信用買い残が1000万~2000万株以上増え、信用売り残が減少し、信用倍率が4倍~5倍を超えるようなら、これまでの強気材料が崩れ始めたと考える必要があります。
今回のNTTで最も強かったのは、「株価が上昇しているのに信用買い残が減っている」という構造です。
信用買い残が急増し、信用売り残が減れば、その構造は逆転します。
踏み上げ候補だった売り残は買い戻され、代わりに新たな信用買いが将来の売り圧力として残ることになります。
その場合は162円~163円、その次に160円付近が意識されやすくなる可能性があります。
同じ173円でも信用残によって意味はまったく違う
今回の分析で重要なのは、株価だけを見るのではなく「価格と需給をセットで見る」ことです。
例えば同じ173円でも、
信用買い残が増えておらず、信用売り残が多く残っている173円と、
信用買い残が急増し、信用売り残が減少した173円では、
その意味はまったく異なります。
前者なら、上値の売り圧力が少なく、さらに空売りの買い戻し余地が残っています。
一方、後者では新しい信用買いによる将来の売り圧力が増え、踏み上げの燃料だった信用売りも減少しています。
単に「173円を超えたかどうか」だけでは判断できないということです。
次回の信用残が今回の結論を変える
今回の動画で、今後最も重要なデータとして挙げられているのが次回の信用残です。
8月21日時点では、
信用倍率2.62倍、
信用買い残6819万8300株、
信用売り残2605万8200株、
という状態でした。
しかし、その後NTT株は166円台から170円台へ上昇しています。
この上昇を見て、新たな信用買いが大量に入ったのか。
それとも現物買いを中心に上昇し、信用売りだけがさらに増えているのか。
この違いは非常に重要です。
もし信用買い残が7000万株前後にとどまり、信用売り残が2500万株以上を維持していれば、170円突破後も需給改善が崩れていない可能性があります。
信用倍率3倍以下なら、さらに強い状態です。
反対に信用買い残が8000万株、9000万株へ急増し、信用売り残が2000万株前半まで減っていれば、見方を変える必要があります。
株価は高値を維持していても、内部では信用買いの過熱が始まり、踏み上げの燃料が減少している可能性があるからです。
そもそも現在注目されている信用倍率2.62倍は、8月21日時点の過去のデータです。
172.5円をつけた時点の需給を直接示しているわけではありません。
そのため現在の強気判断も、あくまで条件付きとなります。
172.5円から先は「需給」だけでは説明できなくなる
147円台から170円台までの上昇では、信用買い残の整理、自社株買い、信用売り残の増加といった需給要因が非常に大きな意味を持っていました。
しかし172.5円まで上昇すると、同じ材料だけでは株価上昇を説明しにくくなります。
170円台からさらに191円、194円まで買い上げる投資家にとっては、「需給が良い」という理由だけでは不十分だからです。
ここから必要になるのが、NTTの利益成長に対する再評価です。
第1四半期は増収増益でした。
しかし会社側の通期当期利益予想は9800億円で、前年から約6%の減益です。
この予想が変わらないまま株価だけが上昇すれば、次第に「利益が増えたから株価が上がった」のではなく、「投資家がより高い評価倍率を払うようになったから株価が上がった」という側面が強くなります。
反対に第2四半期でも利益進捗が強く、通期減益幅の縮小や業績上振れ期待が高まれば、191円や194円という強気評価へ近づく根拠が増えてきます。
つまり、
172.5円までは需給改善によって説明できる部分が大きかった。
172.5円から先は、業績そのものの再評価が伴うかどうかが重要になる。
これが今回の分析における大きなポイントです。
市場全体の資金ローテーションにも注意
今回NTT株が強かった理由の1つに、日経平均が下落するなかでも買われたという相対的な強さがあります。
ただし、市場全体がリスクオンへ戻った場合には状況が変化する可能性があります。
半導体株や成長株が急反発すれば、ディフェンシブ株に逃避していた資金が再び成長株へ移動する可能性があるためです。
そのためNTT単体のチャートや信用残だけではなく、市場全体の資金ローテーションも見る必要があります。
リスクオフ相場でNTTが強いことは重要ですが、リスクオンへ戻った後も170円台を維持できるのであれば、単なる資金逃避ではなく、NTT固有の企業評価が改善している可能性がさらに高まります。
今後注目したい4つのポイント
今後のNTT株を見るうえでは、特に次のデータが重要になります。
まず次回の信用残です。
信用買い残が7000万~7500万株以下なら、170円突破後も信用買いの過熱は限定的と考えやすくなります。
逆に8000万~9000万株へ急増していれば、需給改善が一部巻き戻した可能性があります。
次に信用売り残です。
2500万株以上を維持、あるいはさらに増加していれば、172.5円突破後に空売り勢が買い戻す余地が残っています。
大幅に減っている場合には、すでに一部の買い戻しが進み、踏み上げの燃料が減っている可能性があります。
3つ目が株価です。
172.5円を終値で突破できるのか。
突破できなくても168.6円~170円を維持できるのか。
それとも166.1円を割り込むのか。
この価格と信用残を組み合わせることで、過去の信用倍率2.62倍という数字を現在の相場に合わせて更新できます。
そして4つ目が、自社株買いと今後の業績です。
8月分の自己株式取得状況や9月30日の中間配当基準日、その後の第2四半期決算などを通過することで、NTT株を見る視点は短期的な需給から中長期的な業績評価へ移っていくことになります。
まとめ
NTT株が172.5円まで上昇した背景は、単独の大型IRだけで説明できるものではありません。
第1四半期決算を受けた企業評価の改善、証券会社による目標株価引き上げ、最大2000億円の自社株買い、そして信用取引の需給改善が複合的に作用していると考えられます。
特に重要なのが、信用買い残が約1.18億株減少する一方で、信用売り残が約6.2倍に増えていることです。
株価が上昇しているのに信用買い残が減っているという状態は、上値の戻り売り圧力が軽くなっている可能性を示しています。
一方、信用売り残の増加は、今後株価がさらに上昇した場合の買い戻し需要につながる可能性があります。
ただし、現時点で「踏み上げ相場が始まった」と断定するのは早いでしょう。
信用売り残約2606万株は直近1日の出来高の約14%であり、信用倍率もまだ2.62倍です。
本格的な踏み上げにつながるには、172.5円を終値で突破し、空売り勢を明確に含み損へ追い込む必要があります。
また172.5円は、中立評価の目標株価173円にほぼ到達した水準でもあります。
ここから191円、194円という強気側の評価へ近づくためには、単なる需給改善ではなく、第2四半期以降の利益進捗や通期業績の上振れ期待など、ファンダメンタルズ面での再評価が必要になります。
今後見るべきなのは、「信用倍率が低いから株価が上がる」と単純に判断することではありません。
株価が上昇しても信用買い残が増えていないか。
信用売り残が買い戻し余地として残っているか。
NTT自身による自社株買いが実際に続いているか。
そして株価上昇に業績評価が追いついているか。
この順番で確認していくことが重要です。
172.5円が上昇第2波の入り口だったのか、それとも短期的な天井だったのか。
その答えは、今後発表される信用残、自社株買いの進捗、配当、そして第2四半期決算を通じて徐々に明らかになっていくことになりそうです。


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