S&P500は今買うべきではない?ポール・チューダー・ジョーンズ氏の警告と次の投資戦略

本記事は、YouTube動画『S&P500は今買うべきではない?米国株バブルと次の投資戦略』の内容を基に構成しています。

目次

S&P500の高バリュエーションに警鐘を鳴らす著名投資家

米国株式市場では、S&P500が高値圏で推移する一方で、今後の長期リターンに対する警戒感も強まっています。特に注目されているのが、1987年のブラックマンデーを事前に予測したことで知られる著名投資家、ポール・チューダー・ジョーンズ氏の発言です。

同氏は、現在のバリュエーションでS&P500を買った場合、今後10年間の予想リターンはマイナスになる可能性があると指摘しました。これは、S&P500への投資を全面的に否定するものではありませんが、少なくとも短期から中期、特に今後10年という時間軸では、期待リターンがかなり低下している可能性を示すものです。

動画では、S&P500の予想PERと、その後10年間の年率トータルリターンの関係が紹介されています。過去のデータを見ると、予想PERが低い割安局面で投資した場合、その後10年間のリターンは高くなりやすい傾向があります。一方で、予想PERが20倍を超えるような割高局面で投資した場合、その後10年間のリターンは年率0%から数%程度、場合によってはマイナスになりやすいとされています。

現在のS&P500の予想PERは22倍から23倍付近にあり、歴史的に見てもかなり高い水準にあります。そのため、長期的な期待値という観点では、慎重に見た方がよい局面だといえます。

高PERはすぐに暴落を意味するわけではない

ただし、ここで重要なのは、高PERだからといって、すぐに株価が暴落するとは限らないという点です。

バリュエーションは短期的な売買タイミングを測る指標ではなく、長期的な期待リターンを測る指標です。たとえばAIバブルのように、投資家の期待がさらに膨らむ局面では、割高な市場がさらに割高になることもあります。また、企業業績の上方修正が続けば、株価は高値圏を維持する可能性もあります。

そのため、現在のS&P500が割高であるという話は、「明日すぐに売るべき」という意味ではありません。むしろ、「今の価格で買った場合、今後10年のリターンは過去平均よりも低くなる可能性が高い」という見方です。

新NISAで積み立てている人はどう考えるべきか

動画では、S&P500への投資を全否定する必要はないとも説明されています。

特に、新NISAなどを使ってS&P500やオール・カントリーに長期積立投資をしている人にとって、30年、40年という長い時間軸で見れば、引き続き年率平均8%から10%程度のリターンが期待できる可能性があります。

つまり、老後資金や長期の資産形成を目的に、毎月一定額をコツコツ積み立てている人は、その方針を大きく変える必要はないという考え方です。

一方で、今後10年程度のリターンを重視する場合は、米国株だけに集中するのではなく、欧州株、新興国株、金、ビットコインなど、別の資産にも目を向けるべきだと動画では述べられています。

ハイパースケーラーの自社株買い減少が意味するもの

現在の米国株高を支えている大きなテーマがAIです。特に、アルファベット、メタ、マイクロソフト、アマゾンといった巨大テック企業、いわゆるハイパースケーラーは、AIブームの中心に位置しています。

しかし動画では、これらの企業の自社株買いが急減している点に注目しています。2020年から2025年にかけて、ハイパースケーラー4社は毎四半期、数百億ドル規模の自社株買いを続けてきました。自社株買いは発行済み株式数を減らすため、1株あたり利益を押し上げ、株価上昇の追い風になります。

ところが、2026年第1四半期には自社株買いが大きく減少し、過去数年と比べてほぼ消えたような水準になったと説明されています。これは、株主還元に使われていた資金が、AI向けのデータセンター、GPU、電力インフラ、クラウド設備投資に回されているためです。

つまり、これまで株価を支えていた「自社株買いによる需給の追い風」が弱まりつつあるということです。

増資と大型IPOが米国株の需給を悪化させる可能性

さらに動画では、アルファベットの大型増資や、メタによる増資検討にも触れられています。増資とは、新たに株式を発行して資金を調達することです。これは自社株買いとは逆に、発行済み株式数を増やすため、既存株主にとっては1株あたりの価値が薄まる要因になります。

また、今後はアンソロピックやOpenAIのようなAI関連企業の大型IPOも控えているとされています。IPOが増えるということは、市場に新たな株式供給が増えるということです。

そのため、米国株式市場では、企業による自社株買いという買い支えが減る一方で、増資やIPOによって株式供給が増える可能性があります。これは、需給面では株価にとって逆風になり得ます。

AIバブルは続くのか、それとも崩壊するのか

もちろん、AI投資そのものが悪いわけではありません。AI向けの大型投資が将来的に大きな売上や利益を生むのであれば、企業が資金を投じることは合理的です。

問題は、その投資がどれだけ早く回収できるのか、そして市場の期待を上回るだけのキャッシュフローを本当に生み出せるのかという点です。

動画では、現時点ではAI投資の回収が明確に見えていない一方で、株価だけが上昇し続けていると指摘されています。これは典型的なバブル相場の特徴でもあります。

バブル相場では、リスクを取った投資家ほど大きな利益を得ることがあります。そのため、資産の最大化を目指すなら、簡単に相場から降りることはできません。しかし、永遠に続くバブルはありません。さらに、バブル崩壊のタイミングを正確に見極めることは誰にもできません。

過去のバブルでも、崩壊後には数年分の上昇を一気に吐き出すような下落が起きてきました。そのため、過度な楽観は危険だといえます。

日本株は分散投資としてありだが主力にはしにくい

動画では、日本株についても解説されています。

日本株が上昇している主な要因は、AIバブルと円安です。半導体関連株を中心に、AI関連の期待が日本株にも波及しています。また、円安は日本の輸出企業や海外売上比率の高い企業にとって追い風になりやすく、株価上昇の要因になります。

そのため、AIバブルと円安という2つのエンジンが動いている限り、日本株は好調に推移する可能性があります。

しかし、90年代のドットコムバブルと同じように、AI産業そのものが成長しても、AI関連株が暴落する可能性はあります。株価は将来の成長を先に織り込むため、実際の成長が市場の期待を下回れば、失望売りにつながるからです。

動画では、日本株を分散投資の一部として組み入れるのはありだとしつつも、主要な投資先にするべきではないと説明されています。オール・カントリーに占める日本株の割合が約5%程度であることを踏まえると、ポートフォリオの30%を日本株にするのは、世界平均から大きく偏ることになります。

したがって、世界株式と同程度の分散を意識するなら、日本株は5%程度にとどめるのが自然だとされています。ただし、趣味の投資や余裕資金の範囲で日本株に投資することは、リスク許容度の範囲内であれば選択肢になります。

VXUSを買うタイミングはまだ早いのか

動画では、米国を除く世界株式に投資するETF、VXUSについても取り上げられています。

VXUSは、米国以外の先進国株や新興国株に広く投資できるETFです。米国株が割高になっているなら、今からVXUSを買うべきではないかと考える投資家もいるでしょう。

しかし動画では、VXUSを本格的に買い始めるにはまだ早いとの見方が示されています。理由は、米国株が米国以外の株式を本格的に下回り始めるのは、次の景気拡大局面からだと考えられるためです。

VTIをVXUSで割った相対指数を見ると、長期的にはVTIがVXUSを上回ってきました。2024年12月以降、やや上値が抑えられる場面はあったものの、長期上昇トレンドはまだ完全には崩れていないとされています。

さらに、米国株市場ではアンソロピックやOpenAIのIPO期待があり、AIバブルがもう一段加熱する可能性もあります。また、FRBの利上げ観測が高まっている局面では、ドル高になりやすく、米国以外の株式には逆風となることがあります。

そのため、今すぐVXUSを本格的に買い増すよりも、米国の景気後退を伴う株価下落局面を待つ方がよいという見方です。

次の景気拡大局面は国際分散投資の時代になる可能性

動画では、過去の投資ブームの歴史にも触れています。

70年代にブームとなった金は80年代に低迷し、80年代にブームとなった日本株は90年代に低迷しました。90年代にブームとなった米ハイテック株は2000年代に低迷し、2000年代にブームとなった新興国株は2010年代に低迷しました。

この流れを踏まえると、2010年代から2020年代にかけて大きく上昇した米国株は、次の景気拡大局面で低迷する可能性があると動画では説明されています。

2020年代も米国株ブームが続いている理由としては、コロナ禍での大規模な財政出動と金融緩和によって、市場に大量のドルが供給されたことが挙げられています。この過剰流動性がバブルの燃料となり、米国株高を支えてきたという見方です。

しかし、永遠に続くバブルはありません。いずれバブルが弾けると、投資マネーは新たな成長先を求めて、欧州株、新興国株、コモディティ、暗号資産など、米国株以外の資産へシフトしていく可能性があります。

動画で示された今後の相場見通し

最後に、動画では今後の相場見通しが示されています。

S&P500が史上最高値圏で推移していることを踏まえると、景気後退を伴う本格的な下落相場は、まだ少し先になるとの見方です。3月の急落によって、いわゆるセルインメイ的な下落の可能性は後退したとされています。

一方で、労働市場や個人消費には減速の兆しが見られるため、ここから米国株の大相場が新たに始まるというよりも、最後の上昇相場になる可能性があると説明されています。

過去のデータでは、S&P500の景気後退を伴う下落相場は、天井をつけてから平均15ヶ月後に底打ちする傾向があります。また、3月と10月は相場の転換点になりやすいとされています。

動画では、2027年10月頃に底打ちする可能性があるとの予想が示されています。また、S&P500の最大下落率はドル建てで50%、円建てでは60%程度になる可能性があるとも述べられています。

さらに、2025年12月末を起点とした2040年までのS&P500の年率平均リターンは1桁台前半にとどまる一方で、欧州株、新興国株、コモディティ、暗号資産は2桁の比較的高いパフォーマンスになる可能性があるとされています。

まとめ

今回の動画では、S&P500のバリュエーションが歴史的に高い水準にあり、今後10年間の期待リターンが低くなる可能性があることが解説されました。

ただし、これはS&P500への投資を完全にやめるべきという意味ではありません。30年、40年という長期の資産形成を目的に、新NISAなどでS&P500やオール・カントリーに積み立てている人は、引き続き愚直に継続することが基本になります。

一方で、今後10年という時間軸では、米国株だけに集中するのではなく、欧州株、新興国株、金、コモディティ、暗号資産など、米国株以外の資産にも目を向ける必要があります。

AIバブルはまだ続く可能性がありますが、自社株買いの減少、増資、大型IPO、景気後退リスクなどを考えると、過度な楽観は危険です。特に、バブル崩壊のタイミングを正確に当てることはできないため、コア資産とサテライト資産を分けて考えることが重要になります。

今後の投資戦略としては、コア資産ではS&P500やオール・カントリーへの長期積立を続けつつ、サテライト資産では米国株以外の資産に少しずつ目を向けることが、次の時代に備える現実的な選択肢になるといえます。

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