2025年、カナダ経済にとって大きな試練が訪れる可能性があります。
アメリカのトランプ政権がカナダ製品に対して25%の関税を課す決定を下し、これがカナダ経済に深刻な影響を与えると考えられています。本記事では、カナダの経済見通し、関税がもたらす影響、そしてカナダ政府の対応策について詳しく解説します。
2025年のカナダ経済:関税がない場合の見通し
まず、関税がなかった場合のカナダ経済の見通しを整理してみましょう。
カナダ中央銀行(バンク・オブ・カナダ)は2024年1月29日に最新の経済見通しを発表しました。これによると、カナダの実質GDP成長率(インフレ調整後の成長率)は次のように予測されています。
- 2024年:+1.3%
- 2025年:+1.8%
- 2026年:+1.8%
この見通しは、2024年6月以降の段階的な利下げによって景気がやや回復すると予想されていることを反映しています。
カナダの利下げ政策
バンク・オブ・カナダは2024年から積極的な利下げを実施しています。
- 2024年6月:0.25%の利下げ
- 2024年10月:0.5%の利下げ
- 2024年12月:0.5%の利下げ
- 2025年1月:0.25%の利下げ
これらの措置により、カナダの経済成長は2024年よりも上向くと予測されていました。しかし、2025年と2026年の成長率は2023年10月時点の予測よりも下方修正されました。
移民政策の変化とその影響
カナダは長年にわたり積極的に移民を受け入れてきた国であり、先進国の中でも最も早いペースで人口が増加していました。しかし、移民の急増により社会インフラ(医療、学校、住宅など)が追いつかず、国内で不満の声が高まっていました。
これを受けて、カナダ政府は2025年の移民受け入れ人数を2024年比で2割減とする方針を発表しました。これが経済の伸び悩みの要因の一つと考えられています。
物価動向
カナダのインフレ率は2022年6月に8.1%というピークを記録しましたが、その後は徐々に低下し、2024年12月時点では1.8%まで落ち着きました。
バンク・オブ・カナダの予測では、
- 2025年:+2.3%
- 2026年:+2.1%
と、インフレは安定する見通しでした。
25%の関税がカナダ経済に与える影響
アメリカがカナダ製品に25%の関税を課すことで、以下の影響が予想されます。
1. 輸出の減少
アメリカ市場への輸出が大幅に減少すると考えられます。特に影響を受けるのは、
- 原油・エネルギー産業:カナダはアメリカへの原油輸出が主要な収入源の一つ。
- 自動車・自動車部品:カナダの自動車産業はアメリカ市場と密接に結びついている。
関税実施前の2025年1月には、アメリカが駆け込みでカナダ産原油の輸入を増やしたという報道もありましたが、関税が実施されるとこうした取引は減少すると考えられます。
2. 報復関税による物価上昇
カナダも対抗措置としてアメリカ製品に報復関税を課す可能性が高いです。これにより、カナダ国内の輸入物価が上昇し、インフレ圧力が高まることが予想されます。
3. GDP成長率の下押し
投資銀行の試算によると、25%の関税により2025年のGDP成長率が2〜3%下がる可能性が指摘されています。
- 2025年の成長率予測:+1.8% → -0.2%〜-1.2%(リセッションの可能性)
- 2026年の成長率予測:+1.8% → 0.8%〜0.3%
この影響を考えると、2025年にはカナダ経済がリセッション(景気後退)に突入する可能性が高いです。
4. スタグフレーションの懸念
関税の影響で輸入物価が上昇する一方で、景気の悪化によるデフレ圧力も発生します。結果として、
- 2025年:物価は小幅上昇、景気後退
- 2026年:景気回復の兆しはあるが、物価上昇圧力が続く
という状況が予想されます。
カナダ政府の対応と今後の展開
カナダ政府は今後、アメリカのトランプ政権との交渉を進め、関税の緩和や貿易条件の改善を目指す可能性があります。また、国内経済の刺激策としてさらなる利下げや財政出動が検討されるかもしれません。
しかし、現時点では不確実性が高く、カナダ経済は2025年に極めて厳しい局面に直面すると考えられます。
まとめ
- 2025年からカナダ製品に25%の関税が課せられる
- 関税がなければ2025年のGDP成長率は+1.8%の見込みだった
- 関税の影響で2025年はリセッション(-0.2%〜-1.2%成長)の可能性がある
- カナダ政府は移民削減や利下げを行っているが、経済成長の鈍化は避けられない
この関税政策が今後どのように変化するか、引き続き注目していく必要があります。
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