イラン戦争で急落するJAL株は買い場なのか?PBR0.84倍・信用倍率20倍・原油高リスクから読み解く航空株の投資判断

本記事は、YouTube動画『今日はイラン戦争で大暴落しているあの大型株、今仕込めば爆益確定か』の内容を基に構成しています。

目次

導入

中東情勢の緊迫化によって、世界の金融市場は大きく揺れています。特に今回の動画では、イラン戦争の影響を受けて株価が下落している大型株として、日本航空、いわゆるJALに焦点が当てられています。

一見すると、JALは非常に割安に見えます。株価は下落し、PBRは0.84倍、配当利回りも約3.8%とされています。さらに、2026年3月期の決算では売上収益や利益が過去最高水準に達しており、表面的には「業績好調なのに株価が安い」という魅力的な銘柄に見える状況です。

しかし、動画では「安いから買い」と単純に判断するのは危険だと指摘しています。なぜなら、JALの株価には原油価格、円安、迂回ルートによる機材稼働率の低下、そして信用倍率20.24倍という需給面の大きな歪みが重なっているからです。

この記事では、動画の内容をもとに、イラン戦争がJAL株に与える影響、PBR0.84倍という割安感の裏側、信用買い残が多い銘柄のリスク、そして長期投資家が見るべきポイントについて、初心者にも分かりやすく整理していきます。

イラン戦争とホルムズ海峡封鎖が市場に与える影響

今回の動画で最初に取り上げられているのは、2026年2月28日に起きた中東情勢の急変です。イスラエルとアメリカがイランへの直接攻撃を実行し、その後、イラン側も報復に動いたことで、周辺地域の緊張が一気に高まりました。

特に重要なのが、ホルムズ海峡の問題です。

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ非常に重要な海上ルートです。世界の原油供給の約2割が通過するとされる場所であり、エネルギー市場にとってはまさに「動脈」とも言える存在です。

このホルムズ海峡が事実上封鎖されると、原油や天然ガスの輸送に大きな支障が出ます。通常であれば、原油価格は1バレル150ドル、場合によっては200ドルに向かって急騰してもおかしくない状況です。

ところが、動画内では2026年5月1日時点のWTI原油先物価格が1バレル107ドル付近にとどまっていると説明されています。中東情勢が緊迫しているにもかかわらず、原油価格が爆発的に上がっていない点が、今回の市場を見るうえで非常に重要なポイントです。

原油価格が急騰しない理由は「需要破壊」への警戒

動画では、原油価格が想定ほど急騰していない理由として「需要破壊」が挙げられています。

需要破壊とは、価格が高くなりすぎたことで、消費者や企業がその商品やサービスを使わなくなる現象です。たとえばガソリン代が2倍になれば、自動車での移動を控える人が増えます。航空券が3倍になれば、海外旅行を諦める人も増えるでしょう。

原油価格が高騰すると、ガソリン、電気代、物流費、航空燃料費など、さまざまなコストが上がります。その結果、企業の利益は圧迫され、消費者の財布のひもも固くなります。

つまり、市場は「供給不足で原油価格が上がる」というシナリオだけでなく、「原油価格が高すぎて世界経済が冷え込み、結果的に原油需要が減る」というシナリオも同時に見ているということです。

この状態が、動画で語られている「嵐の前の静けさ」です。原油価格107ドルという水準は安定ではなく、供給不安と需要減少不安が綱引きしている不安定な均衡だと説明されています。

JALの決算は好調に見えるが、次期予想に不安がある

ここから動画の中心テーマであるJALに話が移ります。

JALは2026年4月30日に2026年3月期決算を発表しました。動画によると、売上収益は2兆15億円となり、再上場後の最高記録を更新しました。EBITは前期比26%増の2180億円、純利益は1376億円、年間配当は96円とされ、表面上は非常に好調な内容です。

普通に考えれば、これだけの決算であれば株価は評価されてもよさそうです。

しかし、問題は次の期の見通しです。JALは2027年3月期の業績予想として、純利益が前期比20%減の1100億円になるという見通しを示しています。

ここで重要なのは、悪化要因が単なる燃料費の上昇だけではないという点です。動画では、機関投資家が本当に警戒しているのは「迂回ルートによる機材稼働率の低下」だと説明されています。

迂回ルートが航空会社に与える本当のダメージ

中東情勢やロシア上空の問題によって、航空機は従来の最短ルートを飛べなくなる可能性があります。

動画では、東京からロンドンへ飛ぶ場合、従来は約11時間半だった飛行時間が、迂回ルートによって約16時間に伸びる例が紹介されています。これは約4時間半の増加です。

飛行時間が伸びれば、当然ながら燃料費は増えます。動画では燃料消費が28%増加すると説明されています。

しかし、より深刻なのは、飛行機そのものの回転率が落ちることです。

航空会社は、保有している飛行機をできるだけ効率よく飛ばすことで収益を上げています。1機あたり何十億円というリース料や減価償却費がかかるため、飛行機が地上にいる時間が長くなれば、それだけ利益効率は悪化します。

たとえば、これまで24時間以内に往復運用できていた機材が、飛行時間の延長によって同じスケジュールで運用できなくなると、便数を減らさざるを得ません。便数が減れば、売上機会も減ります。

つまり、迂回ルートの問題は「燃料費が少し増える」という単純な話ではありません。航空会社の収益構造そのものを揺るがす問題なのです。

JALにはプライシングパワーと非航空事業という強みもある

一方で、動画ではJALの強みについても触れています。ネガティブ材料だけで判断するのは正確ではありません。

まず、JALには一定のプライシングパワーがあります。プライシングパワーとは、価格を上げても顧客が離れにくい力のことです。

特にフルサービスキャリア事業では、ビジネス客や富裕層、インバウンド需要など、価格よりも利便性や品質を重視する顧客層があります。動画では、このフルサービスキャリア事業のEBITが前期比30%超増えたと説明されています。

一方で、LCC事業は売上が増えたにもかかわらず、EBITが17%落ちたとされています。これは、価格に敏感な顧客層が多いため、運賃上昇に対して需要が弱くなりやすいことを示しています。

さらに、JALは航空事業だけに依存しない経営を進めています。動画では、マイルプログラム、金融、コマース事業、グランドハンドリング、ドローン、空飛ぶ車、農業事業などへの展開が紹介されています。

特にマイル・金融・コマース事業では、売上収益が2222億円、EBITが455億円、前期比9%増とされ、安定的な成長が見られると説明されています。

このように、JALには航空需要が落ち込んでも利益を支える非航空事業が育ちつつあります。これは長期的には大きな強みです。

最大の問題は信用倍率20.24倍という需給の歪み

動画の中で最も重要なポイントとして語られているのが、JALの信用倍率です。

2026年5月1日時点で、JALの株価は2527円、時価総額は約1兆47億円、PBRは0.84倍、配当利回りは約3.80%とされています。一見すると、かなり割安に見えます。

しかし、信用倍率は20.24倍です。

信用倍率とは、信用買い残を信用売り残で割った数字です。簡単に言えば、信用取引で買っている人が、売っている人に比べてどれくらい多いかを示す指標です。

信用買いは、証券会社からお金を借りて株を買う取引です。そのため、いずれは売って返済しなければなりません。つまり、信用買い残が多いということは、将来の売り圧力が大きいということです。

JALの信用倍率20.24倍という数字は、ANAホールディングスの10.3倍と比べても高い水準だと動画では説明されています。

この状態で株価が下落すると、信用買いをしていた個人投資家は含み損を抱えます。さらに下がると、証券会社から追加保証金、いわゆる追証を求められる可能性があります。追証に対応できなければ、強制的に株を売らされます。

この強制売りが連鎖すると、企業価値とは関係なく株価が急落することがあります。動画では、このような局面を機関投資家が狙っている可能性があると指摘しています。

機関投資家が狙う「セリングクライマックス」とは何か

セリングクライマックスとは、投資家の売りが一気に集中し、株価が大きく下落した後に大底をつけるような局面を指します。

動画では、JALのように信用買いが積み上がっている銘柄は、機関投資家やヘッジファンドに狙われやすいと説明されています。

流れとしては、まず個人投資家が「割安だ」と考えて押し目買いをします。その後、株価が少し反発したところで機関投資家が売りを仕掛けます。さらに、中東情勢の悪化、原油価格の上昇、航空需要の減少といった悪材料が出ると、個人投資家の含み損が拡大します。

そして、心理的な節目を割り込むと、追証や強制決済による売りが発生します。その結果、株価は本来の企業価値を大きく下回る水準まで売り込まれる可能性があります。

機関投資家は、その大底で空売りを買い戻したり、現物株を買い集めたりすることができます。

動画では、今のJALはこのセリングクライマックスの手前にいる可能性があると説明されています。

他セクターとの比較:海運株とエネルギー株

動画では、JALだけでなく、同じくイラン戦争やホルムズ海峡問題の影響を受ける他セクターとの比較も行われています。

まず海運セクターです。代表例として日本郵船が取り上げられています。ホルムズ海峡が封鎖されると、タンカーや輸送船は遠回りを余儀なくされます。輸送距離が伸びることで船舶需給が引き締まり、運賃が高騰する可能性があります。

動画では、日本郵船の信用倍率は2.84倍とされ、JALに比べて非常に健全な水準だと説明されています。つまり、同じ地政学リスクをテーマにしていても、需給の歪みが小さい銘柄のほうがリスク管理しやすいという見方です。

次にエネルギーセクターでは、INPEXが取り上げられています。中東で戦争が起きれば原油価格が上がり、INPEXに追い風になると考えやすいですが、動画では信用倍率が11.27倍まで膨らんでいる点がリスクとして指摘されています。

「誰もが上がると思っている銘柄」には、すでに個人投資家の買いが集中していることがあります。その場合、想定と逆方向に動いたときの下落圧力も大きくなります。

この比較から、動画では「ファンダメンタルズだけでなく、需給を見ることの重要性」が強調されています。

JAL株に重なる2つの追加リスク

動画では、JAL株を考えるうえで見落としてはいけない追加リスクとして、2つの要素が挙げられています。

日本経済全体へのダメージ

1つ目は、原油高による日本経済全体への悪影響です。

日本はエネルギー資源の多くを輸入に頼っています。そのため、原油価格が高騰すると、企業のコストが上がり、家計の負担も増えます。

動画では、原油価格が1バレル100ドルに上昇した場合、日本の実質GDPを0.3%以上押し下げる可能性があるという試算が紹介されています。

航空需要は景気と強く連動します。景気が悪くなれば、企業は出張を減らし、個人は旅行を控えます。これは航空会社にとって、燃料費上昇とは別の大きなマイナス要因になります。

円安によるドル建てコストの増加

2つ目は為替です。

動画では、2026年4月30日時点でドル円が160円を突破していると説明されています。航空会社にとって円安は大きな負担です。

なぜなら、航空機のリース料や燃料費はドル建てで発生することが多いからです。円安が進むと、同じドル建てコストでも円換算では負担が大きくなります。

仮に航空券の値上げができたとしても、円安によるコスト増がそれを打ち消してしまう可能性があります。

JALの強み・弱み・機会・脅威を整理する

動画では、JALをSWOT分析の形で整理しています。

JALの強みは、2026年3月期に売上収益2兆15億円、EBIT2180億円という過去最高水準の業績を出したことです。さらに、マイル、金融、コマース、地上支援などの非航空事業が成長しており、航空事業だけに依存しない収益構造を作りつつあります。

財務面でも、2000億円規模のハイブリッドファイナンスによって、格付け評価上の自己資本比率が41%超とされ、一定の安定性があります。

一方で弱みは、2027年3月期の純利益予想が20%減の1100億円とされていることです。また、信用倍率20.24倍という需給の歪みは非常に大きなリスクです。さらに、LCC事業は価格上昇に弱く、航空機リース料や人件費といった固定費負担も重い構造です。

機会としては、運賃上昇による収益改善、富裕層インバウンド需要、非航空事業の成長、地政学リスク後退後の旅行需要回復などがあります。

脅威としては、ホルムズ海峡問題の長期化、迂回ルートによる機材稼働率低下、円安160円台の定着、原油高による日本経済の悪化、そして信用買い残の整理による株価下落圧力が挙げられます。

今後のJAL株に考えられる2つのシナリオ

動画では、今後のJAL株について2つのシナリオが示されています。

シナリオA:株価3500円台への回復

1つ目は、ポジティブシナリオです。

地政学リスクが落ち着き、ホルムズ海峡以外の供給ルートが確保され、WTI原油価格が100ドル以下で安定する場合です。そのうえで、高騰した航空運賃をビジネス需要や富裕層インバウンドが吸収できれば、JALの業績予想が上方修正される可能性があります。

さらに、自社株買いなどの株主還元策が発表されれば、PBR0.84倍という割安感が見直され、株価が3500円台まで回復するシナリオもあり得ると動画では説明されています。

信用倍率が高いことは通常はリスクですが、株価が上昇に転じた場合には、売り方の買い戻しや個人投資家の追随買いによって、上昇が加速する可能性もあります。

シナリオB:株価1500円付近への暴落

2つ目は、ネガティブシナリオです。

WTI原油が120ドルを超えて定着し、世界的なスタグフレーションが現実化する場合です。企業の出張需要も個人の旅行需要も減り、円安160円台がコスト増に追い打ちをかけます。

その結果、JALの利益率が急激に悪化し、非航空事業だけでは航空事業の固定費を支えきれないという見方が広がる可能性があります。

株価が2000円の心理的節目を割り込むと、信用買いをしている個人投資家に追証が発生し、強制決済の売りが連鎖する可能性があります。その場合、PBR0.5倍台、株価で言えば1500円付近まで売り込まれるリスクもあると動画では説明されています。

長期投資家が見るべき3つの指標

動画の結論部分では、長期投資家として感情ではなくデータを見ることの重要性が強調されています。

特に見るべき指標は3つです。

まず1つ目は、WTI原油価格です。現在の107ドル付近から、100ドルを下回るのか、120ドルを超えるのかによって、JAL株の見方は大きく変わります。

2つ目は、JALの信用買い残と信用倍率です。信用倍率が20倍超から10倍以下、できれば1桁台前半まで低下するかどうかが重要です。信用買いの整理が進めば、将来の売り圧力が軽くなります。

3つ目は、為替です。ドル円が160円台に定着するのか、それとも円高方向に戻るのかは、JALの燃料費やリース料に大きく影響します。

PBR0.84倍という数字だけを見ると魅力的に見えますが、需給、原油、為替という3つの変数を見なければ、投資判断を誤る可能性があります。

追加解説:PBRが低いだけで買ってはいけない理由

初心者が株を選ぶとき、PBRが1倍を下回っている銘柄を「割安」と判断することがあります。

PBRとは、株価純資産倍率のことです。会社の純資産に対して、株価が何倍まで買われているかを示します。PBR1倍は、理論上「会社を解散したときの純資産価値と株価が同じくらい」という目安になります。

そのため、PBR0.84倍という数字だけを見ると、「会社の価値よりも安く買える」と感じるかもしれません。

しかし、株式市場では、PBRが低いからといって必ずしも買い場とは限りません。将来の利益が落ちると見られている場合、PBRが低くてもさらに売られることがあります。

特に航空会社のように、燃料費、為替、国際情勢、景気、固定費の影響を強く受ける業種では、過去の純資産よりも将来のキャッシュフローが重視されます。

つまり、JAL株を見る場合も、「PBR0.84倍だから安い」ではなく、「なぜ市場はPBR0.84倍まで売っているのか」を考える必要があります。

まとめ

今回の動画では、イラン戦争によって下落している大型株としてJALが取り上げられました。

JALは2026年3月期に売上収益2兆15億円、EBIT2180億円という好決算を出しており、表面的には非常に強い企業に見えます。PBR0.84倍、配当利回り約3.8%という数字も、長期投資家にとって魅力的に映ります。

しかし、その裏側には多くのリスクがあります。ホルムズ海峡問題による原油高、迂回ルートによる機材稼働率の低下、円安160円台によるドル建てコストの増加、日本経済全体への悪影響、そして信用倍率20.24倍という需給の歪みです。

特に信用倍率の高さは、将来の売り圧力が大きいことを意味します。株価が下落すれば、追証や強制決済による売りが連鎖し、企業価値とは関係なく株価が大きく下がる可能性があります。

一方で、JALにはフルサービスキャリアとしてのプライシングパワーや、マイル・金融・コマースなどの非航空事業という強みもあります。地政学リスクが落ち着き、原油価格が安定し、信用買い残の整理が進めば、株価が大きく見直される可能性もあります。

重要なのは、「暴落しているから買う」「怖いから売る」という感情的な判断を避けることです。

長期投資家が見るべきなのは、WTI原油価格、JALの信用倍率、そしてドル円相場です。この3つのデータを冷静に観察し、需給の歪みが解消されるタイミングを待てるかどうかが、今後の投資判断を大きく左右します。

JAL株は、単純な割安株ではありません。大きな上昇余地と大きな下落リスクが同時に存在する、非常に難しい局面にあります。だからこそ、PBRや配当利回りだけで判断するのではなく、地政学、原油、為替、信用需給まで含めて総合的に見ることが大切です。

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