本記事は、YouTube動画『半導体株の買い時と売り時』の内容を基に構成しています。
半導体株は、株式市場の中でも特に値動きが大きい業種として知られています。人工知能(AI)の普及やデータセンター投資の拡大によって急騰することがある一方、好決算を発表したにもかかわらず、株価が突然急落することもあります。
2026年11月2日の東京株式市場では、半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスが約16%下落する一方、半導体製造装置大手の東京エレクトロンは5%を超える上昇となりました。同じ半導体関連株でありながら、株価の動きが大きく分かれたのです。
こうした現象を理解するうえで重要になるのが、半導体業界特有の景気循環である「シリコンサイクル」です。
半導体業界には、好況と不況が数年単位で繰り返される特徴があります。そして過去のデータを見ると、半導体株の株価は実際の業績よりも数カ月早く動く傾向があります。
今回は、シリコンサイクルの仕組みを解説するとともに、過去の半導体株の値動きから買い時と売り時を探ります。さらに、キオクシア、東京エレクトロン、アドバンテストなどの決算を比較し、今後の半導体株投資で注目すべきポイントを整理します。
半導体株で何が起きているのか?2026年11月の市場動向
2026年11月に入り、世界の半導体関連株には大きな変化が現れています。
米国市場では、半導体大手インテルの株価が取引中に30%を超える下落を記録しました。動画で紹介された報道によると、約50年ぶりとなる大幅な下落です。
また、米国の半導体関連株で構成される指数も、1日で7%を超える急落となりました。
その影響が意識される中、11月2日の東京株式市場では日経平均株価が前営業日比208円安の6万3,081円となりました。
ただし、半導体関連株が一斉に売られたわけではありません。
キオクシアホールディングスは2,125円安の1万1,345円となり、約16%の大幅下落を記録しました。
一方、東京エレクトロンは5%を超える上昇となり、半導体検査装置大手のアドバンテストも約3%上昇しました。
動画では、東京エレクトロンとアドバンテストの株価上昇が日経平均を500円以上押し上げたと説明されています。
つまり、キオクシアの大幅下落があったにもかかわらず、他の半導体関連株の上昇が日経平均の下落幅を抑えたことになります。
この違いを理解するためには、半導体関連企業がどのような事業を展開しているのかを知る必要があります。
半導体株は3つのタイプに分けて考えることが重要
半導体関連株といっても、企業ごとに収益構造や業績が変化するタイミングは異なります。
主な企業は、メモリー、製造装置、検査装置という3つのタイプに分けて考えることができます。
メモリー関連企業:キオクシア
メモリーとは、データを記憶するための半導体です。
代表的な企業がキオクシアホールディングスです。
メモリー業界の大きな特徴は、製品価格の変動が企業業績に直接影響することです。
メモリーが不足すると販売価格が上昇し、メーカーの利益は急増します。しかし、供給過剰になると価格が急落し、利益が大幅に減少する場合があります。
そのため、メモリー関連企業はシリコンサイクルの影響を特に強く受ける傾向があります。
半導体製造装置関連企業:東京エレクトロン
東京エレクトロンは、半導体メーカーが工場で使用する製造装置を販売する企業です。
半導体メーカーが生産能力を増やすために設備投資を拡大すると、製造装置の需要も増加します。
逆に、半導体メーカーが設備投資を抑制すると、製造装置メーカーの受注や売上にも影響が出ます。
重要なのは、半導体の販売価格が上昇してから設備投資が拡大するまでには時間差があるという点です。
そのため、製造装置関連企業の業績は、メモリーメーカーよりも遅れて変化する場合があります。
半導体検査装置関連企業:アドバンテスト
アドバンテストは、製造された半導体が正常に動作するかを検査する装置を手がけています。
近年は生成AIの普及に伴い、高性能な半導体の需要が拡大しています。
AI向け半導体は高性能で複雑なため、検査装置にも高度な技術が求められます。
こうした背景から、アドバンテストはAI関連投資の拡大による恩恵を受けています。
同じ半導体関連株でも、メモリー、製造装置、検査装置では業績を左右する要因が異なります。
その違いが、株価の上昇や下落のタイミングにも表れているのです。
シリコンサイクルとは?半導体業界で好況と不況が繰り返される理由
シリコンサイクルとは、半導体業界で需要と供給のバランスが変化し、好況と不況が繰り返される現象です。
一般的には、回復、好況、過熱、調整という4つの局面に分けられます。
回復局面:在庫が減少し価格の下落が止まる
不況が続くと、半導体メーカーは生産を抑制し、過剰な在庫を減らそうとします。
やがて在庫が減少すると、半導体価格の下落が止まり始めます。
ただし、この段階では売上や利益が前年を下回っていることも珍しくありません。
ニュースでは依然として業績悪化が報じられ、市場の雰囲気も悲観的になりがちです。
しかし、株価は将来の回復を先取りするため、業績が悪い段階から上昇を始めることがあります。
好況局面:需要拡大で売上と利益が急増
半導体需要が回復すると、製品価格が上昇し、メーカーの売上や利益が増加します。
企業は生産能力を増やすために設備投資を拡大し、新しい工場の建設や製造装置の導入を進めます。
この局面では、過去最高益や大型設備投資といった明るいニュースが増えてきます。
株価も上昇しやすく、半導体関連株への投資家の関心が高まります。
過熱局面:過去最高益でも株価が下落することがある
好況が長く続くと、多くの企業が生産能力を拡大します。
ところが、新しい工場が稼働し始める頃には需要の伸びが落ち着いている場合があります。
企業業績は依然として好調でも、売上や利益の成長率が鈍化し始めるのです。
この段階で注意したいのが、株価と業績の関係です。
株価は将来の業績を先取りするため、現在の利益が過去最高でも、将来の成長鈍化が意識されれば下落することがあります。
好決算が続いているのに株価が上がらなくなった場合は、過熱局面に入っている可能性があります。
調整局面:供給過剰で価格と利益が下落
新しい工場から半導体の供給が増える一方、需要が想定ほど伸びなければ供給過剰になります。
在庫が積み上がると、半導体メーカーは製品価格を引き下げるようになります。
その結果、売上や利益が減少し、設備投資も縮小します。
この段階では業績悪化や在庫増加といったニュースが目立ちます。
ただし、株価は業績悪化に先行して下落していることが多く、調整局面の終盤には次の回復を織り込み始める場合があります。
なぜシリコンサイクルは繰り返されるのか?
シリコンサイクルが繰り返される最大の理由は、需要の変化と生産能力の拡大に時間差があるためです。
半導体が不足すると、メーカーは価格を引き上げることができます。
価格上昇によって利益が増えると、各社は新しい工場の建設や設備投資を進めます。
しかし、半導体工場を建設し、本格的な生産を開始するまでには一般的に2〜3年程度かかることがあります。
投資を決定した時点では需要が非常に強くても、工場が完成する頃には需要が落ち着いているかもしれません。
さらに、複数の半導体メーカーが同じ時期に設備投資を拡大すると、生産能力が一斉に増加します。
その結果、供給過剰が発生し、半導体価格が下落するのです。
この仕組みによって、半導体業界では好況と不況が繰り返されます。
また、半導体業界の回復は、一般的に製品価格の上昇から始まります。
製品価格が上昇するとメーカーの利益が増え、利益が増えると設備投資が拡大します。
その設備投資によって東京エレクトロンなどの製造装置メーカーの受注が増加し、最終的には新しい工場から半導体の供給が増えます。
このように、半導体価格、メーカーの利益、設備投資、製造装置の売上、生産能力の拡大という順番で変化が波及していきます。
半導体株は業績より4〜8カ月早く動く
半導体株投資で特に重要なのが、株価は実際の業績に先行して動くという特徴です。
動画では、2010年以降の世界の半導体売上高と米国の半導体関連株指数を比較しています。
米国の半導体株指数は、米国市場に上場する主要な半導体関連企業で構成されています。
世界の半導体売上高と株価指数の前年同月比を比較すると、株価の変化が売上高の変化よりも早く現れる傾向が確認されたと説明されています。
過去4回の下落局面では株価の底が先に到来
動画で紹介された過去4回の半導体不況では、いずれも株価の底が業界売上の底より早く訪れました。
その時間差は4〜8カ月だったとされています。
つまり、半導体業界の売上が最も悪化した時点では、株価がすでに上昇を始めていたケースがあったということです。
なぜこのような現象が起きるのでしょうか。
株式市場では、投資家が現在の業績だけでなく、半年後や1年後の業績を予想して売買しているためです。
現在の業績が悪くても、将来回復すると考える投資家が増えれば株価は上昇します。
逆に、現在の業績が好調でも、将来の成長率が低下すると予想されれば株価は下落します。
また、半導体業界の売上高は集計されてから公表されるため、統計が発表された段階では市場がすでに先の変化を織り込んでいる場合があります。
このため、好決算が発表されてから株を買おうとすると、すでに株価が大きく上昇している可能性があります。
反対に、悪いニュースが続いている段階でも、業績悪化のペースが鈍り始めれば、株価は先に反転することがあるのです。
ただし、過去の4回で先行したことが、今後も必ず同じ時間差になることを意味するわけではありません。
半導体株は3年かけて上昇し、数カ月で急落する傾向
動画では、半導体株の上昇期間と下落期間についても分析しています。
その結果、上昇局面は長期間続く一方、下落局面は比較的短期間で急激に進む傾向が見られました。
過去の半導体株の上昇・下落サイクル
| 時期 | 下落期間・下落率 | その後の上昇 |
|---|---|---|
| 2011年頃 | 9カ月で約18%下落 | 41カ月で2倍超 |
| 2015〜2016年 | 7カ月で約16%下落 | 35カ月で2倍超 |
| 2018年頃 | 4カ月で約18%下落 | 36カ月で3倍超 |
| 2022年頃 | 9カ月で約42%下落 | 45カ月で6倍超 |
| 2026年 | 4カ月で約25%下落 | 今後の展開は不明 |
これらのデータを見ると、半導体株は数年かけて大きく上昇する一方、下落する際には短期間で大幅に値下がりしていることが分かります。
動画で取り上げられた下落期間は平均約7カ月です。
一方、上昇期間はおおむね3年前後に及んでいます。
特に2022年の下落局面では、約9カ月で42%下落しました。その後の上昇局面では45カ月にわたって上昇し、株価指数は6倍を超えたとされています。
そして2026年については、6月に株価指数が天井をつけた後、約4カ月で25%下落したという分析が紹介されています。
この傾向から分かるのは、半導体株では上昇相場が長く続いても、急落への警戒を怠ってはいけないということです。
数年かけて積み上げた上昇の一部が、わずか数日で失われることもあります。
もっとも、下落が何カ月続くか、どこまで下がるかを過去の平均値だけで予測することはできません。
半導体株の買い時を判断する重要なサイン
では、半導体株はどのようなタイミングで買うのが有利なのでしょうか。
動画で紹介された過去の検証では、業界売上高の前年同月比が重要な手がかりになっています。
売上のマイナス幅が2カ月連続で縮小
注目するのは、半導体業界の売上高が前年より減少しているものの、その減少幅が2カ月連続で縮小したタイミングです。
例えば、世界の半導体売上高の前年同月比が次のように推移したとします。
| 月 | 売上高の前年同月比 |
|---|---|
| 1月 | -20% |
| 2月 | -15% |
| 3月 | -10% |
このケースでは、売上高は依然として前年を下回っています。
しかし、減少率は-20%から-15%、さらに-10%へと縮小しています。
これは、業界全体の状況が悪いながらも改善に向かっている可能性を示しています。
動画では、過去4回の半導体不況について、このサインが出た後の米国半導体株指数を検証しています。
その結果、サイン出現から1年後の株価は4回とも上昇しており、平均上昇率は約30%だったと紹介されています。
ただし、これは4回という限られた事例に基づく結果です。
将来も同じような上昇が発生する保証はなく、偶然の影響も否定できません。
一度に全額投資せず分割購入する方法
買い時のサインが出たとしても、その時点が株価の底とは限りません。
そこで動画では、投資資金を3回に分ける方法が紹介されています。
例えば、最初に業界売上高の改善サインが出た時点で資金の3分の1を投資します。
その後、株価の上昇傾向が明確になった段階で、さらに3分の1を追加します。
残りの資金については、業績回復が進んだ段階で投資するという考え方です。
この方法であれば、最初の判断が外れて株価がさらに下落しても、投資資金のすべてを高値で投入することを避けられます。
ただし、分割購入でも損失が発生する可能性はあり、必ずしも一括購入より有利になるとは限りません。
半導体株の売り時を判断する3つのサイン
買い時と同じくらい重要なのが、売り時や警戒すべきタイミングです。
動画では、主に3つのサインが紹介されています。
売上高の成長率が鈍化する
1つ目は、半導体業界の売上高の伸び率が鈍化し始めたときです。
売上高が前年より増えていても、その増加率が小さくなっている場合は注意が必要です。
例えば、前年同月比で40%増、30%増、20%増と推移している場合、売上高自体は増加しています。
しかし、成長の勢いは弱まっています。
株価が高い成長率を前提に上昇していた場合、成長鈍化によって株価が調整する可能性があります。
次の四半期の業績見通しが横ばいになる
2つ目は、企業が発表する次の3カ月の業績見通しが横ばい、あるいは減少に転じたときです。
特に過去最高益が続いている企業では、市場がさらなる増益を期待していることがあります。
そのため、利益が高水準でも成長が止まっただけで株価が売られる場合があります。
2026年11月2日のキオクシアの株価下落は、このサインに当てはまる事例として紹介されています。
好決算なのに株価が下落する
3つ目は、企業が好決算を発表したにもかかわらず、株価が下落するケースです。
株式市場では、発表された決算が良いか悪いかだけでなく、市場予想を上回ったかどうかが重要です。
例えば、利益が前年より80%増加していても、市場が100%増を期待していた場合には失望売りが出る可能性があります。
逆に、利益が前年より減少していても、将来の受注見通しが改善すれば株価が上昇することがあります。
このように、株価は現在の業績よりも将来への期待によって動いているのです。
SCREENホールディングスは大幅増益でも急落
半導体製造装置大手のSCREENホールディングスは、好決算でも株価が下落する事例として紹介されています。
2026年7〜9月期の営業利益は402億円となり、前年同期比で80%以上増加しました。
通常であれば非常に好調な決算といえます。
しかし、市場では420億円程度の営業利益が予想されていたため、実際の利益は期待を下回りました。
その結果、株価は2,157円安と急落しました。
重要なのは、利益が前年より増えていても、市場の期待を下回れば株価が下がるという点です。
特に半導体株のように投資家の期待が高まりやすい業種では、決算の内容だけでなく、事前の市場予想との比較が欠かせません。
レーザーテックは減益でも株価が大幅上昇
一方、半導体関連企業のレーザーテックでは、逆の現象が起きました。
2026年7〜9月期の営業利益は前年同期比で40%以上減少し、市場予想も約100億円下回りました。
決算の数字だけを見ると、厳しい内容です。
ところが、企業側は今期の受注見通しを大幅に引き上げました。
従来の受注見通しは3,000億〜4,000億円でしたが、新たに4,000億〜5,000億円へと上方修正しました。
これを受けて株価は3,020円高と大幅に上昇しました。
現在の利益が減少していても、将来の需要拡大が期待されれば株価は買われます。
SCREENホールディングスとレーザーテックの対照的な株価の動きは、株式市場が将来の業績を重視していることを示す事例といえます。
半導体株のPERには落とし穴がある
半導体株を評価する際に注意したいのが、PER(株価収益率)です。
PERは株価を1株当たり利益で割った指標で、株価が利益の何倍で取引されているかを表します。
例えば、株価が1,000円で1株当たり利益が100円なら、PERは10倍です。
一般的にはPERが低いほど利益に対して株価が割安と考えられます。
しかし、半導体株ではこの考え方が必ずしも当てはまりません。
利益が最大のときにPERが低くなる理由
半導体メーカーの利益は、シリコンサイクルによって大きく変動します。
半導体価格が上昇する好況期には、企業利益が急増します。
PERは株価を利益で割って計算するため、利益が急増するとPERが低下します。
その結果、企業が過去最高益を記録している時期に、PERが非常に低く見えることがあります。
しかし、その利益が好況期の一時的なものであれば、将来の利益減少によってPERが上昇する可能性があります。
つまり、PERが低いからといって、必ずしも株価が割安とは限らないのです。
不況期にはPERが高く見えることもある
反対に、半導体不況で利益が大幅に減少するとPERは高くなります。
赤字の場合はPERそのものを計算できないこともあります。
そのため、PERだけを見ると投資しにくい企業に見えるかもしれません。
しかし、将来の業績回復を株価が先取りしている場合、そのような局面が結果的に買い場となることもあります。
このように半導体株では、利益の山でPERが低くなり、利益の谷でPERが高くなるという現象が起こります。
PERの低さだけで投資判断を行うのは危険です。
PBRも組み合わせて半導体株の割安度を判断
半導体株の評価では、PERとともにPBR(株価純資産倍率)も確認することが重要です。
PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍で取引されているかを表す指標です。
純資産とは、会社が保有する資産から負債を差し引いたものです。
PBRが1倍であれば、株価が1株当たり純資産と同じ水準にあることを意味します。
企業利益は景気によって大きく変動しますが、純資産は一般的に利益ほど短期間では変動しません。
そのため、シリコンサイクルの影響が大きい企業では、PERとPBRを組み合わせることで評価の偏りを抑えられます。
動画で紹介された2026年11月2日時点の主な半導体株の指標は次のとおりです。
| 企業 | PER | PBR |
|---|---|---|
| 東京エレクトロン | 約26倍 | 約10倍 |
| アドバンテスト | 約35倍 | 約23倍 |
| キオクシア | 利益の集計期間で大きく変動 | 約6倍 |
アドバンテストはPER、PBRともに高水準となっています。
これは、AI関連の半導体需要拡大などによって、将来の成長に大きな期待が寄せられていることを反映していると考えられます。
一方、キオクシアでは利益の変動が極めて大きいため、PERを計算する際にどの期間の利益を使うかが重要になります。
なお、PBRについても、資本効率や収益性、成長期待によって適正な水準は異なります。単純に数値が低いほど割安というわけではありません。
キオクシアは過去最高益でも約16%急落
2026年11月2日の半導体株市場で特に注目を集めたのが、キオクシアホールディングスの大幅下落です。
キオクシアは、AI向けデータセンターの需要拡大を背景に業績が大きく改善してきました。
メモリー価格の上昇も追い風となり、利益は過去最高水準に達しています。
動画では、4〜9月期の売上高が4兆2,472億円、最終利益が2兆19億円に達したと紹介されています。
中間配当の実施も発表されるなど、業績の数字だけを見れば非常に好調な内容でした。
しかし、株価は大幅に下落しました。
次の四半期の業績見通しが市場予想を下回る
株価下落の大きな要因となったのが、2026年10〜12月期の業績見通しです。
会社側は売上高を約2兆5,000億円と予想しました。
これは前の3カ月と比較して約1%の増加にとどまる水準です。
営業利益についても、会社側の見通しは約2兆円でした。
一方、市場では約2兆3,000億円が予想されていたため、会社側の見通しは投資家の期待を下回りました。
最終利益の見通しも1兆3,600億円となり、市場が予想していた1兆6,000億円弱には届きませんでした。
会社側からは、一部の売上計上時期が7〜9月期に前倒しされたことや、別の一部が翌年1〜3月期にずれ込むことについて説明があったとされています。
それでも市場は、業績の成長ペースが鈍化する可能性を強く意識しました。
結果として、株価は約16%下落し、1万1,345円で取引を終えました。
10月23日につけた安値も下回り、株価の調整が続く形となりました。
動画によると、時価総額は18兆674億円まで減少しました。
10月初めには28兆円台だったことから、約1カ月で時価総額が大幅に縮小したことになります。
ただし、これらの決算数値や株価は動画で紹介されたものであり、ここでは個別の開示資料との照合は行っていません。
キオクシアのPERは3倍にも33倍にもなる
キオクシアの株価を考えるうえで、特に注意したいのがPERです。
動画では、11月2日の株価1万1,345円を基準として、3種類の利益でPERを計算しています。
| 利益の計算基準 | 1株当たり利益 | PER |
|---|---|---|
| 2026年3月期の利益 | 341円 | 約33.3倍 |
| 直近4四半期の利益 | 1,657円 | 約6.8倍 |
| 市場予想の利益 | 3,406円 | 約3.3倍 |
同じ1万1,345円という株価でも、使用する利益によってPERは約3倍から33倍まで変化します。
これは、キオクシアの利益が短期間で急増したことを示しています。
市場予想の利益を使えばPERは約3.3倍となり、一見すると非常に割安に見えます。
しかし、メモリー価格の上昇によって利益が一時的に大きく増えている可能性も考慮しなければなりません。
将来、メモリー価格が下落して利益が減少すれば、PERは大きく上昇する可能性があります。
つまり、現在の予想利益に基づくPERが低いことと、将来の株価が上昇することは別の問題です。
過去には大幅赤字から急回復した時期も
キオクシアの過去の業績を見ると、メモリー市場の景気循環による影響がよく分かります。
動画によると、3年前の会計年度には約990億円の営業赤字を計上していました。
その翌年度には赤字が約2,527億円に拡大しています。
当時はPERを計算できない状態でした。
しかし、その後のメモリー市場の回復によって業績は急改善し、前年度には8,000億円を超える営業黒字を計上したと紹介されています。
不況期には大幅赤字だった企業が、好況期には過去最高益を記録するという、シリコンサイクル特有の大きな変化が表れています。
だからこそ、現在の利益だけを見て企業価値を判断するのではなく、数年単位の業績推移を確認することが重要です。
信用倍率33倍超も株価の重荷になる可能性
キオクシアでは、信用取引の需給にも注意が必要です。
動画によると、信用倍率は33倍を超えていました。
信用倍率とは、信用買い残を信用売り残で割った指標です。
信用倍率が33倍ということは、信用買い残が信用売り残の約33倍あることを意味します。
信用買いは、証券会社から資金を借りて株式を購入する取引です。
将来的には反対売買によって決済する必要があるため、信用買い残が多い銘柄では、株価が反発した際に利益確定や損失縮小を目的とした売りが出やすくなる場合があります。
さらに株価が下落すると、損失拡大によって売却を迫られる投資家が増える可能性もあります。
そのため、信用倍率が高い銘柄では、業績だけでなく需給面にも注意する必要があります。
東京エレクトロンは市場予想を上回る好決算
キオクシアとは対照的に、東京エレクトロンは市場予想を上回る決算を発表し、株価が上昇しました。
動画によると、7〜9月期の営業利益は2,954億円となり、市場予想の約2,600億円を上回りました。
さらに、会社側は通期の営業利益見通しを1兆1,690億円と発表しました。
この見通しも市場予想を大きく上回る内容だったとされています。
また、上限1,500億円の自社株買いも発表しました。
自社株買いは、企業が市場などから自社の株式を取得することです。
取得した株式を消却した場合には発行済み株式数が減少するため、1株当たり利益などの改善につながる可能性があります。
企業が株主還元を重視しているというメッセージにもなります。
こうした材料が評価され、東京エレクトロンの株価は上昇しました。
ただし、動画では東京エレクトロンのPERが約26倍、PBRが約10倍と紹介されています。
業績が好調であっても、株価にはすでに高い成長期待が織り込まれている可能性があります。
今後も株価が上昇するためには、設備投資需要の拡大や利益成長が市場の期待を上回り続けることが重要になるでしょう。
アドバンテストはAI需要で業績見通しを上方修正
アドバンテストも、AI関連の半導体需要拡大によって業績が好調な企業として紹介されています。
2026年10月28日に発表された決算では、市場予想を大きく上回る内容となりました。
動画によると、通期の営業利益予想は9,670億円へ引き上げられました。
背景にあるのは、AI向けの高性能半導体の需要拡大です。
AI半導体は高度な演算処理が求められるため、製造後の検査工程も重要になります。
高性能な半導体の生産量が増えることで、検査装置への需要も拡大しています。
ただし、アドバンテストの株価には高い成長期待が織り込まれています。
動画で紹介されたPERは約35倍、PBRは約23倍です。
これは市場が将来の高い収益成長を期待していることを示す一方、成長率が予想を下回った場合には株価が大きく調整する可能性も意味しています。
今後はAI関連投資の持続性や、顧客企業による設備投資の動向が重要になります。
半導体スーパーサイクルは本当に始まるのか?
東京エレクトロンやアドバンテストの好決算を受けて、半導体業界では「スーパーサイクル」という言葉が注目されています。
スーパーサイクルとは、通常の景気循環を超えて、長期間にわたり大きな成長が続く状態を指します。
従来のシリコンサイクルでは、半導体の需要拡大と供給過剰が繰り返されてきました。
しかし、AIの普及やデータセンターへの巨額投資によって、半導体需要が従来よりも長期間拡大する可能性が指摘されています。
特にAI関連の半導体では、高性能な演算装置やメモリー、検査装置など幅広い分野で需要が拡大しています。
一方で、同じ時期にキオクシアが業績見通しの鈍化を理由に大幅に売られたことも事実です。
これは、半導体業界全体が好況であっても、すべての企業の株価が同じように上昇するわけではないことを示しています。
また、AI向け設備投資が長期的に続いたとしても、企業による供給能力の拡大が需要を上回れば、従来と同様に価格下落や業績調整が起こる可能性があります。
スーパーサイクルという言葉だけを根拠に投資するのではなく、実際の受注、設備投資、利益成長率などを確認することが重要です。
キオクシア・東京エレクトロン・アドバンテストはサイクルのどこにいる?
動画では、主要な半導体関連株について、シリコンサイクル上の現在位置を分析しています。
ただし、これは動画内の分析に基づく見方であり、将来の株価や業績を断定するものではありません。
キオクシア:過熱局面の終盤
キオクシアについては、過熱局面の終盤にある可能性が指摘されています。
利益は過去最高水準に達していますが、次の四半期の見通しはほぼ横ばいとなりました。
さらに、株価はすでに6月頃に高値をつけ、その後の調整が続いているとされています。
好業績が続いていても、利益成長の鈍化を株価が先取りしている可能性があります。
今後はメモリー価格の推移や需要見通しが重要になります。
東京エレクトロン:好況の中盤から後半
東京エレクトロンは、好況局面の中盤から後半にあると分析されています。
半導体メーカーの設備投資需要は強く、会社側の業績見通しも市場予想を上回りました。
ただし、株価のバリュエーションは低くありません。
今後の成長期待がすでに株価に織り込まれている可能性があるため、受注や利益成長の持続性が重要です。
アドバンテスト:好況から過熱局面への移行期
アドバンテストについては、好況局面から過熱局面に入る入り口にあると分析されています。
AI向け半導体の検査需要は引き続き強い一方、株価にはかなり高い成長期待が反映されています。
そのため、決算が市場予想を上回り続けるかどうかが重要になります。
利益が増加していても、成長率の鈍化や市場予想を下回る見通しが示されれば、株価が調整する可能性があります。
半導体株投資で確認したい6つのチェックポイント
ここまでの内容を踏まえると、半導体株の売買を判断する際には、主に6つのポイントが重要になります。
| 判断 | チェックポイント |
|---|---|
| 買いを検討するサイン | 業界売上高のマイナス幅が縮小している |
| 買いを検討するサイン | 会社の業績見通しが増収に転じる |
| 買いを検討するサイン | 株価が安値を切り上げ始める |
| 売り・警戒のサイン | 業界売上高の成長率が鈍化する |
| 売り・警戒のサイン | 会社の業績見通しが横ばい、減収になる |
| 売り・警戒のサイン | 好決算にもかかわらず株価が下落する |
重要なのは、1つのサインだけで判断しないことです。
例えば、キオクシアでは、次の四半期の見通しが横ばいとなったことに加え、好業績にもかかわらず株価が急落しました。
これは売り・警戒のサインが複数重なったケースと考えられます。
一方、東京エレクトロンでは、通期の利益見通しが市場予想を大きく上回りました。
これは業績面では前向きな材料です。
ただし、業績の好調さと株価の割安さは別の問題であり、PERやPBR、今後の設備投資需要なども確認する必要があります。
また、株価の安値切り上げを確認する場合も、1日だけの上昇ではなく、一定期間にわたる価格の動きを見ることが大切です。
こうしたサインを決算のたびに確認していくことで、ニュースの印象だけに左右されない投資判断につながります。
2026年11月4日以降の半導体株市場で注目したい材料
2026年11月3日は文化の日にあたり、東京株式市場は休場です。
一方、米国では半導体大手AMDの決算発表が予定されています。
AMDはAI向け半導体やパソコン向けCPUなどを手がける企業であり、業績見通しは米国の半導体株全体にも影響を与える可能性があります。
特にAI向け半導体の売上やデータセンター事業の成長率は注目されるでしょう。
また、11月3日には米国の中間選挙の投票が行われます。
選挙結果によっては、米国の経済政策や通商政策、半導体産業に対する支援策などへの見方が変化する可能性があります。
選挙結果は日本時間の11月4日以降に順次明らかになる見込みであり、東京市場の取引時間中にも新たな情報が伝わる可能性があります。
半導体関連株はもともと値動きが大きいため、米国企業の決算や政治イベントによって短期間で株価が大きく変動することも考えられます。
まとめ:半導体株の買い時は「悪いニュースの中の改善」、売り時は「良いニュースの中の鈍化」
半導体株の投資判断では、現在の業績だけでなく、シリコンサイクルのどの局面にあるのかを見極めることが重要です。
動画で紹介された過去のデータでは、半導体株の底は業界売上の底より4〜8カ月早く訪れる傾向がありました。
また、株価の上昇局面はおおむね3年前後と長く続く一方、下落局面は数カ月程度で急激に進むケースが多く見られました。
こうした特徴を踏まえると、半導体株の買い時を考える際には、業績が悪い中でも改善の兆しが現れているかを確認することが重要になります。
反対に、売り時や警戒すべき局面では、好業績が続いていても成長率が鈍化していないか、市場の期待が高まりすぎていないかを確認する必要があります。
2026年11月2日のキオクシアの大幅下落と、東京エレクトロンやアドバンテストの上昇は、こうした半導体株の特徴を示す事例といえます。
さらに、半導体株ではPERの扱いにも注意が必要です。
利益が急増している時期にはPERが低くなり、割安に見えることがあります。しかし、その利益がシリコンサイクルのピークに近い水準であれば、将来の利益減少によって評価が大きく変わる可能性があります。
そのため、PERだけでなくPBRや利益の推移、受注見通し、業界全体の需給も合わせて確認することが大切です。
半導体株は高い成長が期待できる一方、急落リスクも大きい業種です。
重要なのは、業績が良いから買う、悪いから売るという単純な判断ではなく、今後の業績が市場の期待に対して改善するのか、それとも鈍化するのかを見極めることです。
シリコンサイクルの仕組みを理解し、業界の統計や企業決算を継続的に確認することで、急激な値動きにも冷静に対応しやすくなるでしょう。
※本記事は投資に関する情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の購入や売却を推奨するものではありません。記事内の数値や企業分析は動画で紹介された内容を基にしており、個別の一次資料による検証は行っていません。投資判断は最新の企業開示情報などを確認したうえで、ご自身の責任で行ってください。


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