本記事は、YouTube動画『楽天証券・SBI証券はなぜ手数料無料でも儲かるのか?決算から読み解くネット証券の収益構造』の内容を基に構成しています。
楽天証券やSBI証券では、国内株式の売買手数料が無料となり、個人投資家にとって株式投資のハードルが大きく下がりました。
しかし、ここで疑問が生まれます。証券会社は株式の売買手数料を無料にして、どのように利益を上げているのでしょうか。
実際、楽天証券は2026年4~6月の3か月間で約209億円の利益を計上したと動画では紹介されています。同期間の売上高は約582億円で、利益率は約35.9%に達します。
しかも楽天証券は、決算資料で国内株式の取引手数料無料化による影響について「払拭した」と説明しています。
手数料を無料にしたにもかかわらず、収益力を維持しているのです。
その背景には、信用取引の金利、投資信託の信託報酬、外国株式の取引手数料、為替関連の収益など、一般の投資家には見えにくい収益構造があります。
今回は楽天証券とSBI証券の決算資料を手掛かりに、ネット証券がどこで利益を上げているのか、個人投資家が実際にどの程度の費用を負担しているのかを詳しく解説します。
楽天証券は手数料無料化後も高い利益を確保
楽天証券とSBI証券は、2023年に国内株式の売買手数料無料化を本格的に進めました。
それまで証券会社の代表的な収益源だった株式売買手数料を無料にすることは、業界にとって大きな転換点となりました。
通常、企業が主要サービスの価格を無料にすれば、売上高や利益は減少すると考えられます。
ところが、楽天証券の2026年4~6月の業績は、こうした一般的な予想とは異なる結果になっています。
動画で紹介された数字によると、同期間の売上高は約582億円、利益は約209億円でした。
売上高に対する利益の割合は約35.9%です。
これは、売上高100円に対して約36円の利益が残る計算になります。
もちろん、証券会社にはシステム開発費、人件費、営業費用、資金調達費用などの負担があります。それでも、手数料無料化後にこれだけの収益を確保している点は注目に値します。
では、証券会社はどこで利益を上げているのでしょうか。
国内株式の売買手数料が無料でも、すべてのサービスが無料ではない
ネット証券の収益構造を理解するうえで、最初に押さえておきたいのが「無料になる範囲」です。
楽天証券やSBI証券が無料にしたのは、主に国内株式の売買手数料です。
証券口座を利用する際のあらゆる費用が無料になったわけではありません。
SBI証券の手数料無料化には条件がある
SBI証券は、2023年9月30日発注分から国内株式の売買手数料を無料とする「ゼロ革命」を開始しました。
ただし、無料化の適用には条件があります。
その代表的なものが、取引報告書などの電子交付への切り替えです。
従来は紙で受け取っていた書類をインターネット上で確認する方式に変更することで、証券会社は郵送費や印刷費を削減できます。
こうしたコスト削減も、手数料無料化を支える要因となっています。
楽天証券は注文の執行方法への同意が重要
楽天証券では、国内株式の売買手数料が無料になる「ゼロコース」が用意されています。
原則として、SORと呼ばれる注文の自動振り分けサービスを利用することが条件です。
SORは「スマート・オーダー・ルーティング」の略称で、複数の市場から条件に合う取引場所を選び、注文を執行する仕組みです。
楽天証券のゼロコースでは、SORや同社の取引システム「Rクロス」の内容を理解したうえで、利用に同意することが求められます。楽天証券
つまり、利用者は手数料無料というメリットを受ける一方で、証券会社が定める注文執行の仕組みを利用することになります。
この注文の仕組みについては、後ほど詳しく説明します。
楽天証券の収益の42.7%は金融収益だった
動画で特に注目されているのが、楽天証券の収益の内訳です。
2026年1~6月の収益構成について、次の数字が紹介されています。
| 収益項目 | 構成比 |
|---|---|
| 金融収益 | 42.7% |
| 株式などの売買委託手数料 | 15.9% |
| 株式・債券などの売買関連収益 | 19.5% |
| 投資信託の代行手数料など | 13.8% |
動画で紹介された楽天証券の2026年1~6月の収益構成。主要項目のみ掲載しています。
この数字から分かるのは、証券会社が必ずしも株式売買手数料を中心に稼いでいるわけではないということです。
最大の収益源は金融収益で、全体の42.7%を占めています。
金融収益には、信用取引で投資家にお金を貸した際の利息などが含まれます。
一方、株式などの委託手数料が占める割合は15.9%にとどまります。
国内株式の手数料を無料にしても、証券会社には他の収益源が存在しているのです。
さらに動画では、委託手数料が前年同期比で51.5%増加したことも紹介されています。
国内株式の売買手数料を無料にしているにもかかわらず、委託手数料収入が増えているという点は興味深いところです。
これは、米国株など無料化の対象外となる取引が存在するためです。ただし、どの取引が増収にどれだけ寄与したかは、この構成比だけでは判断できません。
SBI証券でも金融収益が4割を超える
同様の傾向はSBI証券にも見られます。
動画によると、SBI証券の2026年4~6月の決算では、金融収益が全体の41.5%を占めていました。
楽天証券の42.7%と近い水準です。
両社の比較期間や集計基準は完全には一致しませんが、金融収益が重要な収益源になっている点は共通しています。
つまり、ネット証券のビジネスモデルは、単純な売買手数料を中心としたものから、金融サービス全体で収益を生み出す仕組みへと変化していると考えられます。
楽天証券は顧客1人当たり年間いくら稼いでいるのか
次に動画では、楽天証券の収益を口座数で割り、顧客1人当たりの売上高を試算しています。
楽天証券で、過去1年間に取引があったか、証券残高がある口座は約970万口座とされています。
2026年1~6月の売上高を単純に2倍して年間の売上高を推計すると、1口座当たりの年間売上高は約2万2,381円になります。
さらに、費用を差し引いた1口座当たりの利益は約7,326円と試算されています。
また、すべての口座を含めた約1,439万口座で計算した場合でも、1口座当たりの年間売上高は約1万5,086円になります。
ただし、この計算には注意点があります。
まず、半年間の実績を単純に2倍しているため、年間の業績を正確に予測した数字ではありません。
さらに、顧客1人当たりの売上高が約2万円だからといって、すべての利用者が年間2万円を証券会社に支払っているわけではありません。
利用者によって取引内容が大きく異なるためです。
投資信託を積み立てるだけの人もいれば、信用取引で数百万円を借りて売買する人もいます。
こうした違いが、証券会社にもたらす収益の格差につながっています。
オルカン500万円を保有しても証券会社の取り分は年間875円
動画では、投資信託だけを積み立てている投資家の例として、人気の投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が取り上げられています。
通称「オルカン」です。
オルカンは、日本を含む世界各国の株式に幅広く投資するインデックスファンドで、新NISAでも人気のある商品です。
特徴の1つが、信託報酬の低さです。
信託報酬は誰に支払われているのか
動画で使用されたオルカンの信託報酬は、年率0.05775%(税込)です。
この費用は、投資信託を購入した際にまとめて支払うものではありません。
保有期間中、投資信託の資産から日々差し引かれています。
信託報酬は、大きく分けて運用会社、販売会社、信託銀行に配分されます。
動画で紹介された内訳は、それぞれ税込年率0.01925%です。
例えば、オルカンを500万円分保有している場合、販売会社である証券会社に配分される金額は次のようになります。
500万円 × 0.01925% = 962.5円
これは消費税込みの金額です。
税抜きでは年間875円になります。
つまり、500万円という比較的大きな金額を投資信託に預けていても、販売会社が受け取る信託報酬は年間875円程度なのです。
この内訳は、公開されているファンド情報でも確認できます。投信ライブラリー
SBI証券ではポイント還元によって実質的な負担がさらに小さくなる
動画では、SBI証券の投信マイレージについても紹介されています。
これは、対象となる投資信託の保有残高に応じてポイントが付与されるサービスです。
動画で使用されたオルカンのポイント付与率は年率0.0175%です。
500万円を保有していれば、年間875ポイント相当になります。
証券会社が受け取る信託報酬の税抜き相当額875円と、ポイント還元875ポイント相当がほぼ一致する計算です。
そのため、ポイントを1ポイント=1円として利用でき、ほかの費用や収益を考慮しなければ、証券会社に残る金額は非常に小さくなります。
ただし、ポイント還元を受けるには所定の条件を満たす必要があります。また、付与率や対象銘柄は変更される場合があります。
厳密には、証券会社の売上高とポイント還元費用だけで、その顧客から得られる最終的な利益が決まるわけでもありません。
それでも、低コストの投資信託を保有するだけの顧客からは、大きな収益を得にくいことが分かります。
楽天証券でもオルカンの収益性は限定的
動画では、楽天証券の投信残高ポイントプログラムにおいて、オルカンが対象商品に含まれていないことも紹介されています。
この前提で考えると、オルカン500万円を保有する顧客から楽天証券が受け取る信託報酬の税抜き相当額は年間875円です。
楽天証券全体の1口座当たり推計売上高である約2万2,381円と比較すると、わずか約25分の1にすぎません。
ただし、これは信託報酬の販売会社配分だけを比較した数字です。実際には、証券会社と顧客の間には別の収益や費用が発生する場合もあります。
なぜ証券会社は利益の少ない積立投資家を集めるのか
ここで新たな疑問が生まれます。
オルカンを長期間保有するだけの顧客から得られる収益が小さいのであれば、証券会社はなぜ積立投資家を積極的に集めているのでしょうか。
理由の1つとして考えられるのが、将来的なサービス利用の拡大です。
まず、証券口座を開設してもらうことで、顧客との接点が生まれます。
最初は毎月数万円の投資信託を積み立てているだけでも、将来は個別株を購入したり、米国株に投資したり、信用取引を利用したりする可能性があります。
また、楽天証券であれば楽天グループの他のサービスとの連携も期待できます。
動画によれば、楽天証券の口座保有者の86.7%が楽天会員であるとされています。
楽天市場や楽天カード、楽天銀行などのサービスを利用する顧客が証券口座も持つことで、グループ全体の顧客基盤が強化されます。
ただし、証券口座の開設が他のサービスの利用増加にどれだけ結び付いているかは、この数字だけで証明できるわけではありません。
それでも、低コストの投資信託を入口に顧客を集め、長期的な関係を築くことは、ネット証券にとって重要な戦略といえるでしょう。
信用取引の金利が証券会社の大きな収益源になっている
ネット証券の収益構造を理解するうえで、特に重要なのが信用取引です。
信用取引とは、証券会社からお金や株式を借りて売買する取引です。
自己資金より大きな金額を運用できる一方で、金利や貸株料などの費用が発生します。
ここで重要なのは、売買手数料が無料でも、借りたお金に対する金利は無料ではないという点です。
300万円を年利2.80%で借りると年間8万4,000円
動画では、楽天証券の信用取引金利を年率2.80%として計算しています。
仮に300万円を借り、1年間同じ金額を借り続けた場合の金利は次のとおりです。
300万円 × 2.80% = 8万4,000円
1年間で8万4,000円もの金利負担が生じます。
月平均にすると7,000円です。
例えば、信用取引で300万円分の株式を購入し、半年後に決済したとします。
その後、再び300万円分の信用買いを行い、さらに半年間保有すれば、結果的に年間を通じて300万円を借り続けたのと近い金利負担になります。
株式の売買手数料が0円でも、資金を借りている限り費用は発生するのです。
なお、実際の金利は信用取引の種類や適用条件によって異なります。上記は動画で紹介された年率を用いた単純計算です。
オルカン投資家96人分に相当する金利収入
ここで、先ほどのオルカン500万円を保有する投資家と比較してみましょう。
販売会社が受け取る信託報酬の税抜き相当額は年間875円でした。
一方、300万円を年率2.80%で借り続ける信用取引の金利は年間8万4,000円です。
8万4,000円 ÷ 875円 = 96倍
つまり、300万円を1年間借り続ける顧客1人から得られる金利収入は、オルカン500万円を保有する顧客96人分の信託報酬収入に相当します。
もちろん、信用取引の金利収入がそのまま証券会社の利益になるわけではありません。
証券会社にも資金調達費用などが発生します。
しかし、収益規模に大きな差があることは確かです。
手数料無料化によって取引のハードルが下がっても、信用取引を利用すれば相応の費用を負担することになります。
楽天証券の信用取引残高は約1兆8,197億円
信用取引が証券会社全体の収益にどの程度影響しているのか、動画では決算資料の数字を使って検証しています。
楽天証券の2026年6月末時点の信用取引関連の残高として、約1兆8,197億円という数字が紹介されています。
この金額に仮に年率2.80%を適用すると、年間の金利収入は次のようになります。
1兆8,197億円 × 2.80% = 約509.5億円
一方、動画では2026年4~6月の信用取引関連収益が127.4億円とされています。
この数字を単純に4倍して年間換算すると、約509.6億円です。
両者は非常に近い数字になります。
ただし、これは信用取引残高全体に同じ金利を適用した概算にすぎません。
実際には、信用売りに伴う貸株料、異なる金利条件、残高の変動などがあるため、信用取引の収益がすべて年率2.80%の貸付金利で説明できるわけではありません。
それでも、信用取引が年間数百億円規模の収益につながり得ることを示す計算です。
投資信託の積立だけを行う顧客と、多額の信用取引を行う顧客では、証券会社にもたらす収益が大きく異なります。
米国株は売買手数料だけでなく為替コストにも注意
ネット証券で発生する費用は、信用取引の金利だけではありません。
米国株などの外国株式を取引する場合も、国内株式とは異なる費用体系が適用されます。
動画では、米国株を円貨決済で購入する場合の為替コストが取り上げられています。
100万円分の米国株を往復売買すると約3,333円の為替コスト
動画の試算では、為替コストを1ドル当たり片道25銭、為替レートを1ドル150円と仮定しています。
100万円をドルに交換すると、約6,667ドルです。
これに1ドル当たり25銭を掛けると、片道の為替コストは約1,667円になります。
購入時と売却時の往復では約3,333円です。
これは米国株の売買手数料とは別の費用です。
例えば、米国株の売買を何度も繰り返す場合、1回当たりの為替コストが小さくても、年間では無視できない金額になる可能性があります。
ただし、為替手数料や為替スプレッドは証券会社、通貨、取引方法、適用条件によって異なります。円貨決済で必ずこの金額が発生するという意味ではありません。
また、為替スプレッドの全額が証券会社の利益になるとは限りません。
重要なのは、国内株式の売買手数料が無料でも、外国株式の取引費用は別に確認する必要があるということです。
投資信託によって証券会社の取り分は大きく異なる
先ほど紹介したオルカンは、信託報酬が非常に低い投資信託です。
しかし、すべての投資信託の信託報酬が同じように低いわけではありません。
投資信託によっては、運用会社や販売会社が受け取る費用が相対的に大きい商品もあります。
動画では、楽天証券の投資信託関連の収益を基に、販売会社が受け取る取り分を年率約0.116%と概算しています。
これは個々の投資信託に適用される正式な手数料率ではなく、代行手数料以外の収益も含めた大まかな推計です。
仮に500万円に年率0.116%を適用すると、年間約5,800円になります。
オルカンの販売会社取り分である年間875円と比較すると、約6.6倍です。
このことからも、投資信託はどの商品を保有しているかによって、証券会社の収益が大きく変わることが分かります。
投資信託の購入手数料が無料でも保有コストは発生する
初心者が特に注意したいのは、購入時手数料と信託報酬の違いです。
購入時手数料は、投資信託を購入するときに支払う費用です。
一方、信託報酬は保有期間中に継続して発生する費用です。
例えば、信託報酬が年率1%の投資信託を500万円保有している場合、年間約5万円相当の費用が発生します。
オルカンのような低コストの投資信託とは、長期的な負担に大きな違いがあります。
もっとも、信託報酬が高いから必ず悪い商品というわけではありません。
アクティブ運用など、運用方針によって必要なコストが異なるためです。
重要なのは、支払う費用に見合った運用成果が期待できるかを判断することです。
証券口座に預けた現金も収益に関係する
動画では、証券口座に預けている現金についても言及されています。
楽天証券が顧客から預かっている現金は、2026年6月末時点で約3.19兆円と紹介されています。
このような資金も、証券会社の金融収益や資金管理に関係します。
特に金利が上昇する局面では、資金の運用利回りが高くなる可能性があります。
一方、顧客にどれだけ利息が支払われるかは、証券会社の預り金の取り扱いや銀行との連携サービスなどによって異なります。
例えば、証券口座と銀行口座を連携させた場合には、銀行側の預金金利が適用される場合があります。
ただし、顧客の預り金すべてを証券会社が自由に運用できるわけではありません。
顧客資産には分別管理などの規制があり、信用取引の貸付金や証券会社の自己資金とも区別する必要があります。
そのため、預り金の残高に市場金利を掛けた金額を、そのまま証券会社の利益と考えることはできません。
動画の論点は、株式売買手数料以外にも、金利環境や顧客の資産残高が証券会社の業績に影響するという点にあります。
注文は必ず東京証券取引所で成立するわけではない
ここから動画では、ネット証券の注文執行の仕組みに話題が移ります。
通常、国内株式を購入するとき、多くの投資家は東京証券取引所で売買が成立すると考えるかもしれません。
しかし、実際には株式を売買する場所は東京証券取引所だけではありません。
PTSと呼ばれる私設取引システムや、ダークプールと呼ばれる注文マッチングの仕組みも存在します。
PTSとは何か
PTSは、証券取引所とは別に株式などを売買できる私設取引システムです。
取引所と異なる価格で売買できる場合や、取引所の通常取引時間外に売買できる場合があります。
複数の市場が存在することで、投資家はより有利な価格で取引できる可能性があります。
一方、注文がどこに回されるかを理解していないと、自分がどの市場で取引したのか把握しにくくなる場合があります。
SBI証券の注文ルーティング
動画では、SBI証券の注文執行方針について、東京証券取引所と同じ価格で約定できる場合に、PTSなどへ注文を優先的に回す仕組みが紹介されています。
その理由として挙げられているのが、取引コストです。
さらに、SBIグループが出資するPTS運営会社も存在することから、動画では証券会社と注文の執行先との関係について疑問が提示されています。
ただし、グループ会社が関係する市場で取引が成立したからといって、投資家が不利益を受けたと断定することはできません。
同じ価格で約定し、取引条件にも問題がないのであれば、少なくとも価格面で不利になったとは限らないためです。
楽天証券の「Rクロス」はどのような仕組みなのか
楽天証券には「Rクロス」というダークプールがあります。
ダークプールとは、株式の注文情報を通常の取引所の板情報のように事前公開せず、売買注文をマッチングする仕組みです。
楽天証券のRクロスでは、機関投資家を含む顧客同士の注文が合致した場合、東証の立会外市場で売買を成立させます。
なお、Rクロスの対象は現物取引であり、信用取引は対象外です。また、顧客がRクロスを指定して直接注文することはできません。楽天証券
楽天証券が機関投資家から手数料を受け取る場合もある
動画では、Rクロスを通じた取引において、楽天証券が注文の相手方となる機関投資家から委託手数料を受け取る場合があることも紹介されています。
これは、個人投資家の売買手数料を無料にしながら、別の取引参加者から収益を得る仕組みとして注目されています。
個人投資家が無料で取引できる一方、他の参加者が費用を負担する形です。
ただし、こうした取引が個人投資家に不利な条件で成立していると断定することはできません。
注文の執行価格や市場の状況などを総合的に判断する必要があります。
米国のPFOFと日本の注文執行制度の違い
動画では、米国で広く知られるPFOFという仕組みについても解説されています。
PFOFとは「Payment for Order Flow」の略称です。
証券会社が顧客の注文を特定のマーケットメーカーなどに回し、その対価を受け取る仕組みを指します。
米国では、株式取引の手数料無料化を支える収益源の1つとして知られています。
ただし、この仕組みには利益相反の問題があります。
証券会社が顧客にとって最も有利な執行先ではなく、自社がより多くの収益を得られる執行先を優先する可能性があるためです。
一方で、マーケットメーカー間の競争により、投資家が有利な価格で約定できる可能性もあります。
楽天証券の仕組みはPFOFに該当するのか
動画では、金融庁が2021年に示した資料に言及し、日本では当時、米国型のPFOFの事例が確認されていないとされていたことが紹介されています。
そのうえで、楽天証券のRクロスにおける手数料の仕組みが、PFOFと類似する側面を持つのではないかという問題提起がされています。
しかし、注文の仕組みが似ているからといって、直ちに米国型のPFOFと同じ制度だと判断することはできません。
また、投資家が実際に損失を被っているかどうかも、公開資料だけでは結論を出せません。
重要なのは、証券会社がどのような基準で注文の執行先を選んでいるのかを把握することです。
売買手数料が無料であっても、約定価格やスプレッド、注文執行の仕組みは取引の実質的なコストに影響する可能性があります。
楽天証券は2026年に初心者向け信用取引を開始
動画の後半では、楽天証券が2026年2月1日に開始した「らくらく信用」についても取り上げられています。
このサービスは、投資経験のない初心者でも申し込める信用取引サービスです。
従来、信用取引は一定の投資経験を持つ投資家が利用するものという印象がありました。
しかし、楽天証券はレバレッジを1倍に抑えることで、初心者にも利用しやすい仕組みを導入しました。
楽天証券の公式案内でも、2026年2月1日から投資経験がなくても申し込めるレバレッジ1倍の信用取引サービスを開始したことが確認できます。楽天証券
レバレッジ1倍でも金利は発生する
ここで注意したいのが、レバレッジ1倍という言葉です。
レバレッジとは、自己資金に対してどの程度の金額を取引できるかを示す倍率です。
レバレッジ1倍であれば、自己資金の範囲内に取引額を抑えられます。
そのため、通常の信用取引に比べて過大なポジションを持つリスクを抑えられます。
しかし、レバレッジ1倍だからといって、現物取引と同じになるわけではありません。
信用取引である以上、買い建てでは金利、売り建てでは貸株料など、取引内容に応じた費用が発生します。
売買手数料が無料でも、ポジションを保有する期間が長くなればコストが積み重なります。
将来的にレバレッジを引き上げられる仕組み
動画では、らくらく信用の利用開始後、一定期間が経過すると、所定の条件のもとでレバレッジ2倍や3.3倍への変更が可能になることも紹介されています。
また、楽天証券は通常の信用取引口座についても、レバレッジを1倍、2倍、3.3倍から選べる仕組みを導入しています。楽天証券
こうした制度は、投資家が自分のリスク許容度に応じて取引規模を調整できるというメリットがあります。
一方、信用取引に慣れていない投資家が、金利や損失拡大の仕組みを十分に理解しないまま利用することには注意が必要です。
動画では、こうした初心者向け信用取引サービスが、ネット証券の信用取引利用者の拡大につながる可能性についても指摘されています。
ただし、証券会社が意図的に顧客を高リスク取引へ誘導していると断定することはできません。
SBI証券の信用取引残高は3兆円規模に
楽天証券だけでなく、SBI証券でも信用取引は重要な事業となっています。
動画では、SBI証券の信用取引残高が2026年6月に3兆円に達し、ネット証券として初めての規模になったことが紹介されています。
信用取引残高が大きくなるほど、金利や貸株料などの収益機会も拡大します。
もっとも、信用取引残高のすべてに同じ金利が適用されるわけではなく、証券会社側の資金調達コストや取引条件も異なります。
それでも、数兆円規模の信用取引残高は、ネット証券にとって無視できない収益基盤です。
国内株式の売買手数料無料化が進んだ現在、信用取引に関連する金融収益が業績に与える影響は大きくなっています。
手数料無料でも投資家が確認すべき費用とは
ここまでの内容から分かるのは、ネット証券の手数料無料化そのものが問題なのではないということです。
国内株式の売買手数料が無料になることは、個人投資家にとって明確なメリットがあります。
特に、少額投資や長期積立を行う人にとって、売買コストの低下は資産形成に有利に働きます。
問題になるのは、無料という表示だけを見て、他の費用を確認せずに取引してしまうことです。
信用取引は年間の金利負担を計算する
例えば、300万円を年率2.80%で借りる場合、年間の金利負担は8万4,000円です。
仮に信用取引で年間10万円の利益を上げても、金利負担だけで8万4,000円が発生していれば、税金やその他の費用を考慮する前の利益は1万6,000円まで減少します。
反対に、取引で損失が出た場合には、その損失に金利負担が加わります。
信用取引を行う際は、値上がり益だけでなく、保有期間中の金利負担も考慮する必要があります。
米国株は売買手数料と為替コストを合わせて考える
米国株を購入する場合も、売買手数料だけを見て判断するのは適切ではありません。
円貨決済を利用する場合には、適用される為替レートや為替スプレッドを確認する必要があります。
また、米国株を頻繁に売買する場合、1回当たりの費用が少額でも、取引回数に応じて年間のコストは増加します。
投資信託は信託報酬を確認する
長期投資では、信託報酬の違いが運用成果に影響します。
例えば、1,000万円を保有している場合、信託報酬が年率0.1%なら年間約1万円、年率1%なら年間約10万円相当です。
単純計算でも年間9万円の差があります。
長期間保有するほど、こうした費用の違いは重要になります。
また、信託報酬だけでなく、売買委託手数料などを含む実質的な運用コストにも目を向けることが大切です。
証券会社が破綻した場合、預けた株式や現金はどうなるのか
動画の最後では、証券会社が経営破綻した場合の顧客資産の取り扱いについても触れられています。
日本の証券会社には、顧客から預かった有価証券や金銭を自社の財産と区別して管理する「分別管理」が義務付けられています。
この仕組みによって、証券会社が破綻した場合でも、顧客の資産は原則として保護されることになっています。
また、万が一、証券会社が顧客資産を返還できない場合には、一定の条件のもとで日本投資者保護基金による補償の対象となります。
ただし、分別管理や投資者保護基金は、株価の下落や投資信託の運用損失まで補償する制度ではありません。
さらに、信用取引で発生した借入金や損失が、証券会社の経営破綻によって自動的に消滅するわけでもありません。
証券会社の経営リスクと、投資そのものの価格変動リスクは区別して考える必要があります。
追加解説:ネット証券の手数料無料化は今後も続くのか
楽天証券やSBI証券の手数料無料化は、国内の個人投資家に大きな影響を与えました。
従来は売買のたびに手数料が発生していたため、特に少額投資では費用負担が無視できませんでした。
しかし、国内株式の売買手数料が無料になったことで、少額でも取引しやすい環境が整いました。
一方、証券会社の収益構造は大きく変化しています。
信用取引の金利、投資信託の信託報酬、外国株式の関連収益などが、従来以上に重要な役割を担っています。
こうした収益源が十分に確保されるのであれば、証券会社は国内株式の売買手数料を無料にしたまま事業を続けられる可能性があります。
ただし、金利環境や市場環境、競争状況が変われば、収益構造にも影響が及びます。
信用取引残高が減少したり、金融収益が縮小したりすれば、証券会社の経営にも影響するでしょう。
そのため、現在の手数料無料サービスが永久に続くとは限りません。
今後も各社の決算や手数料体系の変更を確認することが重要です。
まとめ:無料の証券会社で得をする人と費用を多く払う人の違い
楽天証券とSBI証券の決算を読み解くと、国内株式の売買手数料を無料にしても、証券会社が大きな利益を確保できる理由が見えてきます。
その中心にあるのが、信用取引の金利などを含む金融収益です。
動画で紹介された数字では、楽天証券の金融収益は全体の42.7%、SBI証券でも41.5%を占めています。
一方、オルカンを500万円保有するだけの投資家から証券会社が受け取る信託報酬は、動画の前提では年間875円程度です。
これに対して、300万円を年率2.80%で1年間借り続ける信用取引の金利負担は8万4,000円になります。
同じ証券会社を利用していても、投資方法によって証券会社に支払う金額は大きく異なるのです。
また、米国株の為替コストや投資信託の信託報酬、注文の執行方法など、売買手数料以外にも確認すべき点があります。
ただし、証券会社がこうしたサービスから収益を得ること自体が不当というわけではありません。
信用取引の金利は資金を借りるための費用であり、信託報酬は投資信託の運用や管理に必要な費用です。
大切なのは、それぞれの費用を理解したうえで、自分に合ったサービスを選択することです。
国内株式の現物取引や低コストの投資信託を中心に利用すれば、ネット証券の手数料無料化の恩恵を大きく受けられる可能性があります。
反対に、信用取引で多額の資金を借りたり、外国株式を頻繁に売買したりする場合には、見落としがちな費用が積み重なることがあります。
「手数料0円」と「投資にかかる費用が0円」は、決して同じではありません。
ネット証券を賢く利用するためには、売買手数料の無料という表示だけではなく、金利、為替コスト、信託報酬、注文の執行条件まで含めて確認することが重要です。
投資の利益を増やす方法を考えるだけでなく、不要な費用を減らすことも、長期的な資産形成における重要な戦略といえるでしょう。


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