本記事は、YouTube動画『【日本国債】個人は利付国債買えない?扱っている証券会社がない?業界の裏側』の内容を基に構成しています。
個人は本当に利付国債を買えないのか
日本国債に関心を持つ個人投資家が増える中で、よく聞かれる疑問の1つが「個人向け国債ではなく、普通の利付国債は個人では買えないのか」というものです。
国債と聞くと、多くの人は財務省が個人向けに販売している「個人向け国債」を思い浮かべるかもしれません。しかし、機関投資家の世界では、個人向け国債とは別に、通常の利付国債が日々大きな金額で取引されています。
そこで疑問になるのが、なぜ証券会社は個人投資家に対して、利付国債をあまり積極的に販売しないのかという点です。
一部では「証券会社が個人投資家を不利に扱っているのではないか」「個人には有利な商品を売りたくないのではないか」といった見方もあります。しかし、動画の内容では、その理由はかなり現実的なものとして説明されています。
結論から言えば、証券会社が個人向けに利付国債を積極販売しない最大の理由は「儲からないから」です。
個人向け国債と利付国債は何が違うのか
まず整理しておきたいのは、「個人向け国債」と「利付国債」は同じ日本国債であっても、販売のされ方や取引のされ方が異なるという点です。
個人向け国債は、その名前の通り、個人投資家向けに設計された国債です。銀行や証券会社などを通じて購入でき、最低購入単位も小さく、個人が買いやすい仕組みになっています。また、中途換金の仕組みも整っているため、個人にとって扱いやすい商品です。
一方、利付国債は、主に機関投資家の世界で取引されている国債です。銀行、保険会社、年金基金、投資信託、海外投資家など、大きな資金を運用する投資家が売買する市場で使われています。
もちろん、利付国債そのものが個人に禁止されているわけではありません。動画内でも説明されているように、対面営業を行っている大手証券会社であれば、個人でも買えるケースはあります。
ただし、問題は「買えるかどうか」ではなく、「証券会社が積極的に売りたがるかどうか」です。
証券会社が利付国債を個人に売りたがらない理由
最大の理由は証券会社が儲からないこと
動画では、証券会社が利付国債を個人に積極的に販売しない理由について、非常にシンプルに説明されています。
それは、証券会社が儲からないからです。
株式取引の場合、多くの人は売買手数料をイメージします。ネット証券では手数料無料化も進んでいますが、従来は株を買うとき、売るときに手数料が発生するのが一般的でした。
しかし、債券取引では株式のように明確な「手数料」という形を取らないことが多くあります。証券会社が顧客の相手方となって債券を売買する場合、債券価格の中に証券会社の取り分が含まれます。
つまり、顧客に対して「手数料はいくらです」と表示するのではなく、売買価格や利回りの差の中に証券会社の利益が含まれているということです。
国債取引の証券会社の取り分は非常に小さい
動画では、国債取引における証券会社の取り分について、具体的な数字が紹介されています。
市場環境によって変わるものの、国債の場合、証券会社の取り分は利回りで0.005%程度が標準的な水準とされています。
この0.005%という数字だけを見ると、かなり小さく感じるかもしれません。実際、非常に小さい数字です。
では、金額にするとどれくらいになるのでしょうか。
10年国債を10億円取引した場合、証券会社の取り分はおおよそ40万円程度になります。5年債であれば10億円取引して20万円程度、2年債であれば10億円取引して8万円程度です。
つまり、機関投資家向けの国債取引は、1件あたりの利益率は非常に薄いものの、取引金額が10億円、100億円、1000億円という大きな単位になるため、ビジネスとして成り立っているわけです。
個人投資家の取引単位では利益が小さすぎる
では、これを個人投資家に当てはめるとどうなるのでしょうか。
個人投資家が10億円の国債を買うケースはかなり限られます。多くの場合、100万円、300万円、1000万円といった単位になるでしょう。
動画では、1000万円の10年利付国債を購入するケースが紹介されています。
仮に機関投資家と同じように、証券会社の取り分を利回り0.005%程度にすると、証券会社の利益は約4000円にしかなりません。
さらに、100万円の取引であれば、証券会社の取り分は約400円です。
この金額では、顧客対応、説明、事務処理、システム処理、コンプライアンス対応などにかかるコストを考えると、証券会社側にとって採算が合いにくくなります。
つまり、利付国債は安全性が高く、投資家にとっては魅力的な選択肢になり得る一方で、証券会社にとっては「手間のわりに儲からない商品」になってしまうのです。
ファンドラップとの収益差は非常に大きい
動画では、利付国債とファンドラップの収益性の違いも比較されています。
たとえば、証券会社が1000万円のファンドラップを販売した場合、年間報酬が1.5%であれば、証券会社には年間15万円の収益が入ります。
しかも、これは1回限りではなく、顧客がファンドラップを継続している限り、毎年入ってくる可能性がある収益です。
一方、1000万円の10年国債を販売して、機関投資家向けと同じような薄い利ざやで取引した場合、証券会社の取り分は約4000円です。
この差は非常に大きいといえます。
証券会社の営業担当者や会社全体の収益を考えれば、利付国債よりも、投資信託、ファンドラップ、仕組債、外貨建て商品など、収益性の高い商品を提案したくなるのは自然な流れです。
もちろん、これは投資家にとって常に良いこととは限りません。むしろ、個人投資家側から見れば、証券会社が儲かる商品と、自分にとって本当に必要な商品は必ずしも一致しないという点に注意が必要です。
利回りを下げれば証券会社は儲かるが、顧客には不満が出る
では、証券会社が利付国債で十分な利益を得ようとすればどうなるのでしょうか。
動画では、10年国債を1000万円販売して、証券会社が15万円程度の利益を得ようとするケースが紹介されています。
仮に市場で取引されている10年国債の利回りが2.7%だったとします。このとき、証券会社が顧客に対して利回り2.5%で販売すれば、その差が証券会社の取り分となり、15万円程度の利益を確保できる可能性があります。
しかし、顧客の立場から見れば、「市場では2.7%なのに、なぜ自分が買うと2.5%になるのか」という不満が出ます。
証券会社側が「それくらい利益を取らないと採算が合わない」と説明しても、顧客から見れば「抜きすぎではないか」と感じられてしまいます。
このように、証券会社が十分な利益を取ろうとすれば顧客の不満につながり、逆に顧客に有利な価格で売れば証券会社が儲からないという構造があります。
そのため、証券会社としては、個人向けに利付国債を大々的に宣伝しにくいのです。
対面証券では買える可能性があるが、宣伝されにくい
動画では、対面営業を行っている大手証券会社であれば、利付国債を買えるケースは多いと説明されています。
大手証券会社は、機関投資家向けに債券取引を行う機能を持っています。そのため、システム上も業務上も、国債を売買する能力はあります。
ただし、個人向けに積極的に販売しているわけではありません。ホームページや広告で大きく宣伝されることも少なく、一般の個人投資家から見ると「取り扱っているのかどうかわからない」という状態になりやすいのです。
つまり、「買えない」のではなく、「売る側が積極的ではない」という表現の方が実態に近いといえます。
ネット証券では扱っている会社と扱っていない会社がある
ネット証券の場合は、さらに事情が分かれます。
動画では、ネット証券には機関投資家向けの債券サービスを提供している会社と、そうでない会社があると説明されています。
機関投資家向けの債券サービスを提供している会社であれば、債券取引に必要な機能を持っているため、個人投資家向けにも利付国債を提供できる可能性があります。動画では、SBI証券がそのような会社の一例として挙げられています。
一方で、そもそも機関投資家向けに国債取引サービスを提供していないネット証券もあります。そのような会社は、債券の業者間市場に参加していなかったり、ポジション調整の仕組みを持っていなかったりするため、個人向けに利付国債を販売することが難しくなります。
仮にそうしたネット証券が個人向けに利付国債を販売しようとすれば、大手証券会社と提携し、取引をサポートしてもらう必要があります。
しかし、そうなると追加コストが発生します。ただでさえ利付国債は収益性が低い商品ですから、提携コストまでかかると、ますます採算が合わなくなります。
その結果、ネット証券では利付国債を扱う会社が限られることになります。
昔は「課税玉」と「非課税玉」の問題もあった
動画では、現在の収益性の問題だけでなく、過去に存在した制度上の問題についても触れられています。
それが「課税玉」と「非課税玉」の問題です。
個人投資家が国債を保有して利子を受け取ると、通常は利子所得として課税されます。一方、機関投資家などの金融法人の場合、一定の仕組みの中で非課税扱いとなるケースがありました。
10年以上前には、課税される投資家が取引する債券と、非課税の投資家が取引する債券で、事務手続きが異なっていました。
課税される投資家が取引する債券は「課税玉」、非課税業者が取引する債券は「非課税玉」と呼ばれ、市場が分断されていたのです。
機関投資家の国債市場では、主に非課税玉が取引されていました。仮に証券会社が非課税玉の市場で国債を調達し、それを課税される個人に販売しようとすると、非課税玉から課税玉に変更する手続きが必要でした。
この手続きが非常に面倒で、証券会社にとってはコストがかかるものでした。
そのため、過去にはこの課税玉と非課税玉の市場分断も、利付国債が個人向けに積極的に販売されてこなかった理由の1つになっていました。
ただし、動画では、この市場の分断はその後解消され、現在はなくなっていると説明されています。
個人向け国債が登場した背景
こうした複雑な事情の中で、個人向けに販売しやすい商品として登場したのが「個人向け国債」です。
個人向け国債は2003年から販売が開始されました。
個人向け国債は、個人投資家が買いやすいように設計された商品です。少額から購入でき、元本割れしにくい仕組みがあり、中途換金もしやすくなっています。
証券会社から見れば、個人向け国債も決して大きく儲かる商品ではありません。しかし、個人向け国債には別の役割があります。
それは、顧客との取引の入り口になる「ドアノック商品」としての役割です。
個人向け国債をきっかけに証券会社と取引を始めてもらい、その後、投資信託や株式、ファンドラップ、その他のリスク商品を提案することができます。
また、個人向け国債は比較的解約しやすい仕組みになっているため、証券会社としては、後から別の商品に乗り換えてもらう導線を作りやすいという側面もあります。
つまり、個人向け国債は単体で大きな利益を生む商品というよりも、顧客との関係を作るための商品として普及していった面があるのです。
最近、個人向け国債が注目されている理由
動画では、最近になって個人向け国債を積極的に推す動きが出ていることにも触れられています。
背景にあるのは、日本国債の安定消化に対する問題意識です。
かつて日本国債は、国内の銀行や生命保険会社などが大きな買い手となっていました。しかし、金利環境や金融機関の運用方針の変化によって、国内機関投資家の買い需要が以前ほど強くない局面も出てきています。
そのような中で、国債を安定的に消化するためには、個人投資家の資金を国債市場に取り込むことも重要になってきます。
動画では、海外の例としてイタリアにも触れられています。
イタリアでは、金利上昇局面で個人向け国債が非常に多く売れ、国債利回りの安定に貢献した実績があります。こうした海外事例もあり、日本の財務省としても、個人向け国債をより活用したいという狙いがあると考えられます。
つまり、個人向け国債が注目されている背景には、単に個人の資産形成だけでなく、国債市場全体の安定という政策的な意味合いもあるのです。
個人投資家は利付国債と個人向け国債をどう考えるべきか
ここからは、動画内容を踏まえて、個人投資家がどのように考えればよいのかを補足します。
まず、利付国債が個人に販売されにくいからといって、必ずしも「不正な裏側」があるわけではありません。
実態としては、証券会社の収益構造と事務コストの問題が大きいと考えられます。
国債は安全性が高い一方で、証券会社にとっては利益率が非常に薄い商品です。特に個人投資家のように取引金額が小さい場合、説明や手続きにかかるコストに対して、得られる収益が小さすぎます。
そのため、証券会社があまり積極的に宣伝しないのは、ビジネス上の合理性から見れば自然な面があります。
ただし、個人投資家の立場から見ると、この構造は非常に重要です。
なぜなら、証券会社が積極的にすすめる商品が、必ずしも投資家にとって最適な商品とは限らないからです。
証券会社にとって収益性の高い商品は、投資家にとってコストが高い商品である可能性があります。ファンドラップや一部の投資信託、仕組債などは、商品性をしっかり理解しないまま購入すると、思ったよりコストが高かったり、リスクが大きかったりすることがあります。
一方、国債のようなシンプルな商品は、投資家にとってわかりやすくても、販売会社にとっては儲かりにくいため、あまり目立つ場所に置かれないことがあります。
この点を理解しておくと、金融商品を選ぶときに「なぜこの商品がすすめられているのか」という視点を持てるようになります。
利付国債を買いたい場合に確認したいこと
個人投資家が利付国債を買いたい場合は、まず自分が利用している証券会社で取り扱いがあるかを確認する必要があります。
ただし、ホームページ上で大きく宣伝されていない場合もあります。そのため、対面証券であれば担当者に直接確認する、ネット証券であれば債券メニューや問い合わせ窓口で確認することが現実的です。
また、利付国債を購入する場合には、提示されている利回りが市場実勢と比べてどの程度なのかも意識したいところです。
債券価格には証券会社の取り分が含まれるため、完全に市場と同じ条件で買えるとは限りません。提示利回り、残存年数、購入単位、中途売却時の条件などを確認することが大切です。
特に、中途売却する可能性がある場合は注意が必要です。
債券は満期まで保有すれば額面で償還されますが、途中で売却する場合は市場価格で売ることになります。金利が上昇していれば、債券価格は下がり、売却損が出る可能性があります。
そのため、利付国債は「満期まで持つ前提」で考える方がわかりやすい商品です。
個人向け国債は初心者には扱いやすい選択肢
一方で、初心者にとっては、個人向け国債の方が扱いやすい場合も多いです。
個人向け国債は、個人が買いやすいように制度設計されています。少額から購入でき、原則として元本割れしにくく、中途換金のルールも比較的わかりやすい商品です。
特に、投資初心者が「株式や投資信託は怖いが、銀行預金より少しでも利回りを取りたい」と考える場合、個人向け国債は選択肢の1つになります。
ただし、個人向け国債にも注意点はあります。
利回りは市場金利に連動するものの、株式や高リスク資産のような大きなリターンは期待できません。また、インフレ率が高い場合には、実質的な購買力を十分に守れない可能性もあります。
そのため、個人向け国債は「大きく増やす商品」というよりも、「守るための商品」と考える方が自然です。
証券会社の販売姿勢から学べること
今回の動画で重要なのは、利付国債そのものの話だけではありません。
より大きなテーマは、金融業界では「投資家にとって良い商品」と「販売会社にとって売りたい商品」が一致しない場合があるということです。
証券会社も民間企業である以上、利益を出す必要があります。そのため、利益率の低い商品を積極的に販売するよりも、収益性の高い商品を販売したいと考えるのは当然です。
しかし、個人投資家はその構造を理解したうえで、自分にとって必要な商品を選ばなければなりません。
営業担当者にすすめられたから買う、広告でよく見るから買う、ランキング上位だから買うという判断だけでは、販売側の都合に乗ってしまう可能性があります。
金融商品を選ぶときには、その商品がどのような仕組みで、どこにコストがあり、誰がどのように儲かるのかを考えることが大切です。
今回の利付国債の話は、その意味で非常にわかりやすい事例といえます。
まとめ:利付国債が個人に広がりにくい理由は「裏」よりも収益構造にある
今回の動画では、個人投資家が利付国債を買いにくい理由について、証券会社の収益構造や業界の実務面から解説されていました。
結論として、利付国債が個人向けに積極的に販売されない最大の理由は、証券会社が儲かりにくいからです。
機関投資家向けの国債取引では、10億円、100億円、1000億円といった大きな単位で取引されるため、薄い利ざやでもビジネスとして成立します。しかし、個人投資家が100万円や1000万円単位で取引する場合、証券会社の取り分は非常に小さくなり、事務コストや説明コストに見合いにくくなります。
また、過去には課税玉と非課税玉という制度上の市場分断もあり、個人向けに利付国債を販売するには追加の手間がかかっていました。現在はこの問題は解消されているものの、歴史的に個人向け販売が広がりにくかった背景の1つになっていました。
その中で、個人が買いやすい商品として2003年に登場したのが個人向け国債です。個人向け国債は、証券会社にとって大きく儲かる商品ではないものの、顧客との取引の入り口となるドアノック商品として普及してきました。
最近では、日本国債の安定消化という観点からも、個人向け国債への注目が高まっています。国内機関投資家の買い需要が以前ほど強くない中で、個人マネーを国債市場に取り込むことは、国全体にとっても重要なテーマになりつつあります。
個人投資家にとって大切なのは、証券会社が積極的にすすめる商品だけを見るのではなく、なぜその商品がすすめられているのか、なぜ別の商品は目立たないのかを考えることです。
利付国債は「買えない商品」ではありません。しかし、証券会社にとって売りにくい商品であるため、個人投資家の目に触れにくくなっています。
金融商品を選ぶ際には、利回りや安全性だけでなく、販売会社の収益構造や商品のコストも理解することが重要です。今回の利付国債の話は、個人投資家が金融業界の仕組みを理解するうえで、非常に参考になる内容だといえるでしょう。


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