本記事は、YouTube動画『NTT株160円の裏で信用売り残3.6倍で踏み上げるか』の内容を基に構成しています。
NTT株が160円前後まで上昇する一方で、信用取引の中身に大きな変化が起きています。
特に注目されているのが、信用売り残の急増です。7月10日時点で約418万株だった信用売り残は、8月7日には約1,522万株まで増え、わずか約1カ月で約3.6倍となりました。
その一方、信用買い残は約1億8,664万株から約9,710万株までほぼ半減しています。この結果、信用倍率は44.60倍から6.38倍まで急低下しました。
「空売りが増えているなら、踏み上げ相場が起きるのではないか」と考えたくなるところですが、今回のNTT株では信用売り残だけを見ると本質を見誤る可能性があります。
重要なのは、売り残が増えていることと同時に、これまで株価の上値を重くしてきた信用買い残が大幅に整理されていることです。
今回は、NTT株の信用需給、160円前後の株価、2026年度第1四半期決算、自社株買い、株主構成などを整理しながら、今後の注目ポイントを詳しく見ていきます。
NTTの信用需給に大きな変化
まず確認しておきたいのが、2026年7月から8月にかけての信用取引の変化です。
7月10日時点では、信用売り残が418万4,800株、信用買い残が1億8,664万9,000株で、信用倍率は44.60倍でした。
信用倍率とは、信用買い残を信用売り残で割った数字です。
例えば信用倍率が10倍であれば、信用売り残に対して信用買い残が10倍あることを意味します。
一般的には信用倍率が極端に高い銘柄ほど、将来的に返済売りとなる信用買いポジションが多く、「上値が重くなりやすい」と考えられます。
NTTでは7月10日時点で44倍を超えていたため、かなり信用買いに偏った状態でした。
ところが、その後状況が大きく変わります。
7月17日には信用売り残が約649万株まで増加する一方、信用買い残は約1億3,710万株まで減少し、信用倍率は21.10倍まで低下しました。
さらに7月24日は18.91倍、7月31日には12.29倍となり、8月7日には6.38倍まで低下しています。
わずか約1カ月で信用倍率が44.60倍から6.38倍まで下がったことになります。
信用倍率低下で重要なのは「分子と分母」
信用倍率が低下したという事実だけを見ると、「NTTの信用需給が改善した」と考えたくなります。
しかし、信用倍率を見るときには、その数字がなぜ低下したのかを確認する必要があります。
信用倍率が下がる理由は、大きく2つあります。
1つは信用売り残が増えることです。
もう1つは信用買い残が減ることです。
現在のNTTでは、この2つが同時に起きています。
7月10日から8月7日までの約1カ月間で、信用売り残は約3.6倍に増加しました。
一方、信用買い残は約48%減少しています。
つまり今回のNTTでは、単純に「空売りが増えている」というだけではありません。
それ以上に重要なのが、これまで大量に積み上がっていた信用買いポジションが急速に整理されていることです。
約9,000万株の信用買い残が減少
7月10日時点で約1億8,664万株あった信用買い残は、8月7日には約9,710万株まで減少しました。
減少した信用買い残は約8,955万株に達します。
信用買いは、いずれ反対売買によって決済されます。
株価が下がれば損切りや追証による返済売りが出る可能性があり、株価が上がった場合でも利益確定の返済売りが発生します。
そのため、信用買い残が大量に積み上がった状態は、将来の「売り予備軍」が大量に存在している状態とも考えられます。
その信用買い残が1カ月程度で約9,000万株減ったことは、NTTの需給を考えるうえで大きな変化です。
特に今回興味深いのは、信用買い残が減少する一方で株価が上昇していることです。
株価上昇と信用買い残減少が同時進行
7月10日のNTT株の終値は147.6円でした。
その後、7月17日に151.1円、7月24日に151.3円となり、7月下旬から上昇が加速します。
7月28日には156.4円、7月29日には160.3円まで上昇し、一時161.2円をつけました。
つまり、信用買い残が大きく整理されていた時期に、株価は147円台から160円前後まで上昇していたのです。
これは需給面では注目すべき動きです。
一般的に、信用買い残が急減する場合には、株価下落による損切りや投げ売りによって整理されるケースがあります。
しかし今回は、株価が上昇する中で信用買い残が減少しています。
そのため、過去に信用買いしていた投資家が株価上昇を利用してポジションを解消した可能性があります。
安値で強制的に投げ売りされる形で信用買い残が減る場合と、株価が上昇する中で返済が進む場合とでは、需給の意味が大きく異なります。
後者の場合、過去の信用買いポジションが市場に吸収されながら整理されるため、将来の戻り売り圧力が軽くなる可能性があります。
信用売り残3.6倍は踏み上げ相場の燃料になるのか
一方で、今回大きな注目を集めているのが信用売り残です。
7月10日に約418万株だった信用売り残は、8月7日には約1,522万株まで増加しました。
約3.6倍です。
特に7月31日から8月7日までの1週間でも、約949万株から約1,522万株へ大きく増加しています。
160円前後まで株価が上昇したことで、「NTTはこのあたりが高値だ」と考えた投資家が信用売りを増やした可能性があります。
信用売りは、最終的に株を買い戻して返済する必要があります。
そのため、予想に反して株価が上昇すると、空売りしている投資家には含み損が発生します。
損失を抑えるために買い戻しが増えると、その買いによってさらに株価が上昇し、別の空売り投資家も買い戻しを迫られることがあります。
これがいわゆる「踏み上げ相場」です。
その意味では、信用売り残の増加は将来の買い需要となる可能性があります。
NTTでは「3.6倍」という増加率だけで判断できない
ただし、NTTの場合は注意も必要です。
信用売り残が3.6倍になったという数字だけを見ると非常に大きく感じますが、NTTは国内でも売買量の非常に多い大型株です。
動画では、7月29日にNTTが160.3円まで上昇した日の出来高が約4億6,755万株、翌30日も約2億4,489万株だったことが紹介されています。
それに対して信用売り残は約1,522万株です。
したがって、信用売り残の増加率は大きいものの、NTT全体の売買量と比較すると「空売りだけで一気に需給が枯れ、株価が急騰する」と断定できるほどではありません。
ここは非常に重要です。
「空売りが増えた=必ず踏み上げる」と考えるのではなく、その銘柄の出来高との比較も必要になります。
信用売りより信用買い残減少の方が重要な可能性
今回のNTTで注目したいのは、信用売り残の増加以上に信用買い残の減少です。
信用売り残が約1,100万株増えた一方で、信用買い残は約8,955万株減少しました。
規模だけを比較すれば、信用買い残の整理の方がはるかに大きな変化です。
また、信用倍率6.38倍という数字も、まだ信用買い残が信用売り残を6倍以上上回っていることを意味します。
つまり、NTTはまだ「売り長」の銘柄ではありません。
需給が完全に売り優勢へ逆転したわけではないのです。
現在の状況をより正確に表現するなら、
「信用買いによる上値の重さが急速に減る一方、上昇に逆らう信用売りが増えている状態」
と見ることができます。
この組み合わせが今後のNTT株を考えるうえで重要になります。
160円前後が重要な攻防ライン
NTT株は7月29日に一時161.2円まで上昇しました。
しかし、その後7月31日には152円台まで大きく下落しています。
つまり、160円を超えたからといって、そのまま一方向に上昇したわけではありません。
160円前後には利益確定売りや戻り売りが存在していることが確認できます。
そのため、現在の160円前後は、信用需給の改善が本当に株価上昇につながるのかを確認する重要な価格帯と考えられます。
今後は、
- 160円前後を維持できるか
- 上昇時に出来高が増えるか
- 信用買い残が再び増えないか
- 信用売り残が多い状態でも株価が崩れないか
といった点を合わせて確認する必要があります。
単純に160円を超えたかどうかだけではなく、「どのような需給で160円を維持しているのか」が重要です。
NTTの2026年度第1四半期決算は増収増益
信用需給と合わせて確認しておきたいのがNTTの業績です。
動画によると、NTTが8月6日に発表した2026年度第1四半期決算では、営業収益、営業利益、当期利益がいずれも前年同期を上回りました。
営業収益は約3兆円規模となり前年同期比で増加、営業利益は4,251億円、当期利益は2,748億円となっています。
第1四半期として営業収益は過去最高となりました。
数字だけを見ると、NTTの株価を支える材料としては十分に強い決算と考えられます。
しかし、ここでも注意点があります。
好決算でも通期予想は据え置き
第1四半期が増収増益だった一方、NTTは通期予想を大幅に引き上げているわけではありません。
2026年度の会社予想では、営業収益は15兆600億円、営業利益は1兆7,100億円、当期利益は9,800億円とされています。
営業利益は前年比でほぼ横ばいの計画で、最終利益については減益予想です。
つまり、第1四半期の決算は好調だったものの、現時点ではNTT自身が年間利益の大幅な成長を見込んでいるわけではありません。
そのため、現在の160円前後までの上昇を「業績成長だけ」で説明することは難しいと考えられます。
ここに信用需給の改善、自社株買い、配当などの要素が加わっていると見る必要があります。
160円では予想PER約13倍
動画では160円を基準にしたNTT株のバリュエーションも紹介されています。
会社予想の1株利益12.10円を利用すると、160円時点の予想PERは約13.2倍です。
また、1株当たり株主資本を基準にするとPBRは約1.3倍程度になります。
年間配当5.4円を基準とした場合、配当利回りは約3.4%です。
この数字だけを見れば、160円という株価が極端な割高水準とまでは言い切れません。
一方で、利益が大幅に伸びる予想でもないため、ここからさらに株価の評価が切り上がるためには、第2四半期以降の利益進捗や需給改善の継続が必要になります。
最大2,000億円の自社株買いも需給を支える
もう1つ重要なのがNTT自身による自社株買いです。
NTTは2026年5月、最大14億株、取得総額最大2,000億円の自社株買いを決議しています。
取得期間は2026年5月11日から2027年3月31日までです。
動画によると、7月末までの取得額は331億円でした。
最大2,000億円に対して約16.6%の進捗です。
単純計算では、上限までまだ約1,669億円分の余地があります。
もちろん、NTTが残りの枠をすべて使い切るとは限りません。
自社株買いを実行するタイミングも一定ではありません。
それでも、信用買い残が大きく減少している中で、企業自身にはまだ大規模な買い余力が残っているという点は需給上の注目材料です。
信用買いと自社株買いは「買いの質」が違う
信用買いと自社株買いは、どちらも株を買う行為ですが、その性質は異なります。
信用買いには返済期限や損益があり、最終的には返済売りにつながります。
つまり、信用買いが増えれば、将来的な売り圧力も同時に増えることになります。
一方、自社株買いによって取得された株式は自己株式となるため、信用買いのような返済売りは発生しません。
そのため、
「個人投資家のレバレッジを使った信用買いが減り、企業による自社株買いが増える」
という変化が起これば、NTTの需給構造そのものが変化する可能性があります。
ただし、自社株買い枠があるからといって株価の下落を必ず防いでくれるわけではありません。
自社株買いは株価保証ではないため、毎月どの程度実際に取得しているのかを確認することが重要です。
315万人を超えるNTTの個人株主
NTTを分析するうえでは、株主構造も重要です。
動画によれば、2026年3月末時点でNTTの株主数は315万人を超えています。
2023年に実施された25分割によって1株あたりの価格が大きく下がり、少額から投資しやすくなったことで個人株主が増えました。
NTTは政府が大株主である一方、個人投資家の保有も非常に多い銘柄です。
こうした銘柄では、株価が長期間停滞すると信用買いが積み上がりやすくなります。
そして株価が上昇すると、過去に買った投資家が「ようやく戻った」と考えて売却するため、それが戻り売りとなって上値を抑える場合があります。
その意味でも、今回信用買い残が約1億8,664万株から約9,710万株まで減少したことは、単なる数字以上の意味を持つ可能性があります。
長期間残っていた戻り売り予備軍が整理されている可能性があるからです。
信用売り増加=機関投資家の弱気ではない
信用売り残が増えていることから、
「機関投資家がNTTを空売りしているのではないか」
と考える人もいるかもしれません。
しかし、信用残高の数字だけでは誰が売っているのかまでは分かりません。
個人投資家による信用売りかもしれませんし、ヘッジ目的の取引が含まれている可能性もあります。
そのため、「信用売り残が増えた=機関投資家がNTTに弱気」と断定することはできません。
機関投資家の動きを確認するためには、公表対象となる空売り残高や貸株市場、大量保有報告など、別のデータを確認する必要があります。
信用残高の数字だけからストーリーを作りすぎないことも重要です。
今後のNTT株を考える3つのシナリオ
動画では、今後のNTT株について強気、中立、弱気の3つのシナリオに分けて考えています。
強気シナリオ
最も強いパターンは、NTT株が160円前後を維持しながら信用買い残がさらに減少するケースです。
信用買い残が再び増えず、信用売り残だけが高水準に残れば、需給面では売り方の買い戻しが発生しやすくなります。
さらに自社株買いが進み、第2四半期以降も利益が順調に積み上がれば、現物買いと空売りの買い戻しが重なる可能性があります。
特に7月29日の高値161.2円を明確に超え、その水準を維持できるかが1つのポイントになります。
その先では167円前後も、受給の変化を確認する水準として意識されます。
ただし、これは動画内でも「目標株価」ではなく、あくまで受給の状態を見るための観測水準として紹介されています。
中立シナリオ
信用買い残の整理が一巡し、株価が150円台から160円台で推移するケースです。
160円台では依然として戻り売りが出る一方、150円台では買いが入り、大きな方向感が出なくなる可能性があります。
この場合は信用倍率そのものより、第2四半期の業績や自社株買いの進捗など、次の材料を待つ相場になりやすいでしょう。
弱気シナリオ
警戒したいのは、160円前後で何度も上値を抑えられ、150円台前半を明確に割り込むケースです。
さらに株価が下落する中で信用買い残が再び増え始めると、現在まで進んできた需給改善が逆回転する可能性があります。
株価下落中に信用買いが増えると、新しい含み損ポジションが積み上がります。
一方、信用売りをしている投資家には利益が発生するため、急いで買い戻す必要がなくなります。
ここに業績の鈍化や自社株買いのペース低下まで重なると、160円前後まで上昇した株価には需給改善への期待が先に織り込まれていたという評価に変わる可能性があります。
信用倍率だけでは相場を判断できない
今回の動画で繰り返し強調されているのが、「信用倍率だけで判断しない」という点です。
例えば信用倍率が6.38倍から5倍へさらに低下したとしても、株価が下落しているのであれば必ずしも強気材料ではありません。
反対に信用倍率が8倍程度まで上昇したとしても、株価上昇、出来高増加、自社株買い、好調な業績が同時に確認できるのであれば、必ずしも弱気材料とは限りません。
重要なのは数字の方向と株価の動きを組み合わせることです。
信用買い残、信用売り残、出来高、自社株買い、業績など複数の材料が同じ方向を向いているかを見る必要があります。
長期投資家が確認したい3つのポイント
NTTを長期投資の対象として考える場合、短期的な信用倍率の変化だけで売買判断をする必要はありません。
動画では、今後確認すべきポイントを大きく3段階に整理しています。
まず第1に毎週発表される信用残高です。
信用買い残が引き続き減少するのか、それとも160円前後で新たな信用買いが積み上がるのかを確認します。
同時に、信用売り残が高水準に残るのか、それとも株価上昇とともに買い戻されるのかにも注目です。
第2に株価と出来高です。
160円を上回る際に出来高が増加しているのか、160円を超えてもすぐに押し戻されるのか、それとも押し目を形成しながら安値を切り上げるのかを見る必要があります。
第3に企業側の数字です。
自社株買いが毎月どの程度進んでいるのか、第2四半期以降も営業利益が通期計画に対して順調に進んでいるのか、配当方針に変化がないかを確認します。
こうした複数の情報を組み合わせることで、短期的な株価変動だけに振り回されにくくなります。
まとめ
現在のNTT株で最も注目すべきポイントは、「信用売り残が3.6倍になった」という事実だけではありません。
より大きな変化は、株価が147円台から160円前後まで上昇する中で、約1億8,664万株あった信用買い残が約9,710万株まで減少したことです。
これまで上値を抑える要因になり得た信用買いポジションが大幅に整理される一方、株価上昇に逆らう信用売りが増えています。
そのため、今後株価が160円前後を維持できれば、空売りの買い戻しが新たな買い需要となる可能性があります。
ただし、信用売り残約1,522万株はNTTの巨大な出来高と比較すると、それだけで大規模な踏み上げ相場を起こすと断定できる量ではありません。
また、信用倍率6.38倍も、依然として信用買い残の方が信用売り残よりかなり多い状態です。
今後重要になるのは、信用倍率という1つの数字ではなく、その中身です。
信用買い残がさらに減るのか、信用売り残がどう動くのか、160円前後を株価が維持できるのか、出来高は増えるのか、自社株買いは進むのか、そして第2四半期以降も業績が順調なのか。
これらを合わせて確認することで、現在のNTT株が単なる戻り相場なのか、それとも需給構造そのものが変わり始めているのかが見えやすくなります。
「空売りが増えたから上がる」「信用倍率が下がったから買い」と単純化するのではなく、信用買いと信用売りの両方、さらに株価、出来高、企業業績を合わせて見ることが重要です。


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