本記事は、YouTube動画『10月1日に各国の債券市場で起こった変化』の内容を基に構成しています。
世界的な金利上昇が続いてきた債券市場で、10月1日にこれまでとは少し異なる動きが見られました。
これまでは米国、欧州、日本など多くの国で国債利回りがそろって上昇する展開が続いていました。しかし10月1日には、フランスやイタリアなど一部の国の債券が大きく売られる一方で、米国債やドイツ国債の利回りは低下しました。
単純な「世界的金利上昇」から、安全性や信用力によって債券が選別される局面へ移りつつある可能性があります。
動画では、こうした債券市場の変化をどのように見ればよいのか、ハイイールド債ETFのHYGや投資適格社債ETFのLQDなども含めて解説しています。
世界的に続いてきた長期金利の上昇
まず、これまでの債券市場を振り返ります。
動画によると、米国の10年国債利回りは3月ごろから緩やかな上昇を続けてきました。
背景には、インフレへの警戒を受けたFRBの利上げ観測や財政悪化への懸念、さらに世界的な金利上昇などがあると考えられています。
米国10年国債利回りは3月前半には4%を下回っていましたが、10月1日には一時5.3%を超える水準まで上昇しました。
同じような金利上昇は米国だけで起きているわけではありません。
ドイツの10年国債利回りは3月の2.6%台から9月末には3.6%台へ上昇しました。
日本の10年国債利回りについても年初の2%強から3.1%台へ上昇し、英国も4.2%台から5.5%程度まで上昇しています。
そのほか、イタリア、スペイン、フランス、カナダ、オーストラリアなどでも金利上昇が進みました。
国によって事情は異なるものの、インフレへの警戒、中央銀行による利上げ、財政悪化への懸念などが金利を押し上げる要因になっていると動画では説明しています。
10月1日に起きた債券市場の異変
ところが10月1日、これまでとは少し違った動きが現れました。
米国10年国債利回りは一時5.3%を超えたものの、その後は低下し、動画では最終的に5.25%でこの日の取引を終えたと説明されています。
重要なのは、単に米国金利が下がったという点ではありません。
これまでは多くの国で国債利回りが同じ方向に上昇していましたが、この日は国によって動きが分かれました。
フランスやイタリアなどでは国債が大きく売られ、利回りが上昇しました。一方、米国やドイツでは国債が買われ、利回りが低下しました。
つまり、債券市場の中で「売られる債券」と「買われる債券」が明確に分かれ始めたということです。
動画では、これを債券市場が新たなフェーズに入りつつある兆候として捉えています。
フランス国債の利回り差が大きく拡大
欧州の債券市場を見る場合、単純に各国の国債利回りを見るだけではなく、ドイツ国債との利回り差、いわゆるスプレッドを見る方法があります。
ユーロ圏ではドイツ国債が安全性の高い基準となる国債として扱われるためです。
動画によれば、10月1日の10年国債について、ドイツ国債との利回り差は次のように拡大しました。
スペインは0.08%拡大して0.63%、フランスは0.14%拡大して1.41%、イタリアは0.16%拡大して1.19%となりました。
たとえばフランスの1.41%という数字は、フランス10年国債の利回りがドイツ10年国債より1.41%高いという意味です。
投資家がフランス国債を保有するためには、ドイツ国債よりも高い利回りを求めているということになります。
フランスの財政懸念を映す国債スプレッド
動画で特に注目されているのがフランスです。
フランスとドイツの10年国債の利回り差である1.41%は、動画によれば2011年の欧州債務危機時の最高水準とほぼ同じレベルです。
つまり市場では、フランスの財政状況に対してかなり強い警戒が生じていると動画では解説しています。
一方、イタリアについては10月1日に特別な新材料が出たわけではないものの、ドイツ以外の欧州国債が売られる流れの中で大きく売られました。
同時にドイツ国債や米国債が買われていることから、市場全体を一律に売る状態ではなく、信用力の違いによる選別が始まっていると見ることができます。
金利上昇局面では「質の悪い債券」から売られやすい
こうした現象は、債券市場では珍しいものではありません。
金利上昇局面の初期には、国債も社債も幅広く利回りが上昇する傾向があります。
しかし、社債は国債よりも信用リスクが高いため、通常は国債よりも大きく利回りが上昇します。
債券価格と利回りは反対方向に動くため、これは社債の方がより大きく売られていることを意味します。
問題は、その動きがどこまで続くかです。
社債利回りがあまりにも高くなると、企業が社債市場から資金を調達するコストも急激に上昇します。
特に財務状態の弱い企業ほど、高い金利でなければ資金を借りられなくなります。
借り換えコストが急上昇すれば、企業活動そのものへの悪影響も大きくなっていきます。
社債市場が混乱すると国債が買われることがある
金利上昇がさらに進み、信用力の低い社債市場で投げ売りが起きるようになると、状況は変わります。
社債市場の混乱が景気へ悪影響を及ぼすとの懸念が高まり、安全性の高い国債へ資金が移動することがあるためです。
その結果、社債はさらに売られる一方で、国債は買われ、国債利回りが低下するという現象が起きます。
これが、今回米国債やドイツ国債の利回りが低下した一方で、信用面への懸念が強い債券の利回りが上昇した背景の1つとして動画では説明されています。
投資家が単純に「金利が上がるか下がるか」を見る段階から、「どの債券なら安全なのか」を重視する段階へ移っていくわけです。
米国ではCCC格社債の上乗せ金利が10%に
信用力の低い社債市場でも警戒すべき動きが出ています。
動画では、米国のCCC格社債について、国債に対する上乗せ金利が10%に達したことが話題になっていると紹介しています。
CCC格は、格付け会社によってかなり信用リスクが高いと評価されている債券です。
国債利回りにさらに10%程度の上乗せ金利が求められるのであれば、実際の社債利回りは15%を超える水準になるケースも出てきます。
これほど高い金利になると、企業にとって新規の資金調達や既存債務の借り換えがかなり難しくなります。
特に借金への依存度が高い企業では、金利上昇が経営を直接圧迫する可能性があります。
ユーロ圏でも国債の「質」が選別される
通常の国では、その国の国債が最も安全性の高い債券として扱われ、その下に社債があります。
しかしユーロ圏では事情が少し異なります。
同じユーロを使用する国でも、それぞれの政府が別々に国債を発行しているためです。
動画では、比較的信用力の高いドイツ国債に対し、スペイン、イタリア、フランスなどでは財政状況によって評価が異なると説明しています。
スペインの財政状況は比較的良好で、イタリアはもともと財政状態に問題を抱えているものの改善傾向にあり、一方のフランスでは財政悪化が目立っているという整理です。
こうした状況では、社債市場で信用力の低い債券から売られるのと同じように、国債の中でも財政への不安が強い国ほど売られやすくなります。
10月1日にフランスやイタリア国債が売られる一方でドイツ国債が買われたことは、そのような「質への逃避」が始まっている可能性を示していると動画では指摘しています。
なぜ信用力の低い債券ほど大きく売られるのか
理由は、債券が基本的に「利回りを得る商品」だからです。
仮に安全性の高い債券でも5%の利回りを得られるのであれば、投資家がわざわざ信用リスクの高い債券を5%で購入する理由は小さくなります。
リスクの高い債券を買うのであれば、安全な債券よりも十分に高い利回りが必要です。
そのため、安全資産の金利が上昇すると、信用力の低い債券にはさらに高い利回りが求められます。
結果として、信用力の低い債券価格はより大きく下落します。
金利上昇が急激に進む局面では、単に国債利回りを見るだけでなく、「信用力の低い債券がどこまで売られているか」を確認することが重要になるわけです。
ハイイールド債を見るなら「HYG」
では、一般の投資家が信用力の低い債券市場の状況を確認するにはどうすればよいのでしょうか。
動画で紹介されているのが「HYG」です。
HYGは、ハイイールド債へ投資する代表的なETFの1つです。
ハイイールド債とは、信用格付けが低い代わりに高い利回りを提供する社債のことで、「ジャンク債」と呼ばれる場合もあります。
企業の信用不安が高まれば、こうした債券は売られやすくなります。
そのためHYGの価格が急激に下落しているのか、それとも比較的緩やかな下落にとどまっているのかを見ることで、信用市場がどの程度緊張しているのかを確認する1つの材料になります。
投資適格社債を見るなら「LQD」
もう1つ動画で紹介されているのが「LQD」です。
LQDは、ハイイールド債よりも格付けの高い投資適格社債を中心に保有するETFです。
一般に、BBB格以上が投資適格債として扱われます。
HYGより信用力が高いため、通常はLQDの方が値動きは小さくなります。
しかし、LQDも国債ではなく社債です。
信用市場全体への不安が大きくなれば、投資適格社債であっても価格変動が大きくなることがあります。
まず信用力の低いHYGが大きく下落し、その後LQDまで急激に動き始めれば、信用不安がより質の高い社債市場まで広がっている可能性があります。
動画では、LQDとHYGが9月23日ごろから急落しており、すでにその時点で市場環境の変化を示していたとしています。
「全面的な金利上昇」は終わりつつあるのか
ここまでの動きを踏まえ、動画では、これまでのように世界中の金利が一斉に上昇する相場は一旦終わりつつある可能性を指摘しています。
今後重要になるのは、それぞれの国や企業が高金利にどこまで耐えられるかです。
特に欧州では、フランスやイタリアなどの国債利回り上昇が各国経済や財政へどの程度影響するのかが焦点になります。
米国でも同様です。
住宅ローン金利7%超、企業の借り換え負担も増大
動画では、米国の30年住宅ローン金利が7%を超えたことにも触れています。
住宅ローン金利が上昇すれば、同じ住宅を購入する場合でも毎月の返済額が増えます。
そのため住宅購入需要が減少し、不動産市場や住宅関連産業にも影響が広がる可能性があります。
さらに、CCC格社債の上乗せ金利が10%程度となり、社債利回りが15%を超えるような状況では、企業の借り換えも難しくなります。
過去に低金利で発行した社債が満期を迎え、新しい社債へ借り換えようとすれば、以前より大幅に高い利息を負担しなければならないためです。
高金利の期間が長期化するほど、資金調達力の弱い企業から影響が表面化しやすくなります。
金利だけではなく「信用市場」を見ることが重要
金利上昇局面では、「米国10年国債利回りが何%になったか」という数字だけに注目しがちです。
しかし、金利がかなり高い水準まで上昇してくると、それだけでは市場の状態を正確に捉えにくくなります。
重要になるのが、信用力による価格差です。
国債と社債の利回り差、ドイツ国債とフランス国債の利回り差、投資適格社債とハイイールド債の動きなどを見ることで、投資家がどの程度リスクを警戒しているのかを確認できます。
HYGやLQDといったETFは、こうした信用市場の変化を比較的簡単に確認する方法の1つです。
債券市場で進む「質への逃避」
10月1日の債券市場で重要だったのは、単純に金利が上昇した、あるいは低下したということではありません。
これまで幅広い債券が売られていた状態から、安全性や信用力によって投資家の行動が分かれ始めた点です。
信用不安が強い国や企業の債券は売られる一方、安全性が高いと考えられている米国債やドイツ国債には資金が向かう。
こうした「質への逃避」が強まれば、これまでの全面的な金利上昇とは異なるマーケットになります。
まとめ
世界の債券市場では、3月ごろから長期金利の上昇が続いてきました。
しかし10月1日には、フランスやイタリアなどの国債が大きく売られる一方、米国債やドイツ国債が買われるという変化が見られました。
特にフランスとドイツの10年国債利回り差は1.41%まで拡大し、動画では2011年の欧州債務危機時に近い水準として注目されています。
また米国でも、信用力の低いCCC格社債の上乗せ金利が10%に達するなど、信用市場への警戒が強まっています。
今後の金融市場を見るうえでは、単純な国債利回りだけではなく、HYGやLQDなどを通じて社債市場の動きを確認することも重要になります。
金利上昇が進んだ先で問題になるのは、「金利がどこまで上がるのか」だけではありません。
その金利に企業や政府、住宅購入者がどこまで耐えられるのか。そして市場の中で、どの資産が「安全」と判断され、どの資産から資金が逃げ始めるのか。
10月1日に起きた債券市場の変化は、世界的な金利上昇相場が「全面安」から「信用力による選別」へ移りつつある可能性を示す動きとして、今後も注意して見る必要がありそうです。


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