本記事は、YouTube動画『【米CPI速報】9月利上げは遠のいた?S&P500最高値更新!半導体+74% vs S&P+14%「二極化相場」の行方』の内容を基に構成しています。
米国の7月消費者物価指数(CPI)が発表され、総合CPI、コアCPIともに市場予想通りの結果となりました。インフレ率は依然として高い水準にあるものの、前年同月比では伸びがやや鈍化しています。
この結果を受け、市場では「9月の追加利上げは見送られるのではないか」との見方が強まりました。利上げ懸念が後退すれば、金利上昇の影響を受けやすいAIや半導体などの成長株に資金が戻る可能性もあります。
一方で、原油価格やサービス価格は依然として高止まりしており、FRBが完全に利上げを終了したと判断するにはまだ早い状況です。
今回は、7月の米CPIの内容から、FRBの今後の金融政策、米国株、債券、為替、ゴールドや原油などのコモディティ市場への影響まで詳しく解説します。
7月の米CPIは市場予想通りの結果に
今回発表された7月の米国CPIでは、総合指数が前年同月比3.4%上昇となりました。
前月は3.5%上昇だったため、わずかではありますがインフレ率の伸びが鈍化しています。市場予想も3.4%だったため、結果はほぼ予想通りでした。
前月比では0.1%上昇となっています。前月は0.4%のマイナスだったため、今回はプラスに転換した形です。
一方、食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年同月比2.5%上昇でした。
こちらも前月の2.6%から伸びが鈍化しています。
前月比では0.2%上昇となり、前月の0.0%からは上昇ペースがやや加速しました。
今回の特徴は、総合CPIもコアCPIも市場予想とほぼ一致したことです。
市場にとって大きなインフレサプライズはなく、少なくとも急激に利上げ懸念が高まるような内容ではありませんでした。
住居費やガソリン価格の落ち着きがCPIを押し下げ
CPIの内訳を見ると、インフレを押し下げた項目と、依然として価格上昇が続いている項目が明確になっています。
まず注目されたのが住居費です。
住居費は前月比0.1%上昇にとどまり、上昇ペースは徐々に鈍化しています。
米国のCPIでは住居費の割合が大きいため、この項目が落ち着いてくることはインフレ全体の鈍化につながります。
宿泊料金も低下しました。
動画では、ワールドカップ終了に伴う需要の一服などを背景として、ホテルなどの宿泊料金が3.3%下落したと説明されています。
さらにエネルギー価格もCPIを押し下げました。
ガソリン価格は前月比2.9%下落しています。
前月も9.7%下落していたため、2か月連続でガソリン価格が低下したことになります。
エネルギー価格は消費者物価に直接影響するだけでなく、物流費や製造コストなどを通じて幅広い商品の価格にも影響します。
そのため、ガソリン価格の低下はインフレ抑制という意味ではポジティブな材料です。
食品価格は落ち着く一方、一部サービス価格は上昇
食品全体では前月比0.1%上昇となりました。
食料品店で販売される食品については0.1%低下しており、牛ひき肉や豚肉など一部の食品価格が下落しています。
動画では、レタス価格が16.4%下落したことも紹介されています。
一方で、インフレを押し上げている項目もあります。
特に医療サービスは0.4%上昇しました。
航空運賃も2.2%上昇しています。
また、AI関連需要の拡大に伴うハードウェア価格の上昇も確認されています。
IT関連商品は1.4%上昇し、周辺機器も3.5%上昇しました。
AI投資の拡大によって半導体やサーバーなどの需要が急増しているため、こうした分野の価格上昇がインフレ要因になる可能性があります。
過去7年ではコーヒーや牛肉など生活必需品が大幅上昇
短期的にはCPIの伸びが鈍化しているものの、長期的に見ると米国の生活コストは大幅に上昇しています。
動画では過去7年間の価格変化についても紹介されています。
コーヒーは約123%、牛肉は約81%、卵も約76%上昇しているとされています。
こうした食品価格の上昇は、消費者の生活に直接影響します。
また、電気料金も上昇傾向にあります。
特に2021年以降、米国では電気料金の上昇が明確になっています。
背景にはAI需要の拡大もあります。
Google、Microsoft、Amazon、Metaなどの巨大IT企業は、AI向けデータセンターへの大規模投資を続けています。
AIデータセンターでは大量のGPUやサーバーだけでなく、それらを稼働させるための膨大な電力が必要です。
今後AIインフラ投資がさらに拡大すれば、電力需要の増加が電気料金を押し上げ、結果的にCPIの上昇要因になる可能性があります。
CPIはFRBの政策金利を下回る水準に
今回のCPIで注目されるもう1つのポイントが、FRBの政策金利との関係です。
動画では現在のFFレートが3.5~3.75%付近で推移している一方、総合CPIは3.4%となり、政策金利をわずかに下回ったと説明されています。
FFレートとは、米国の中央銀行であるFRBが金融政策の中心として利用している短期金利です。
一般的に、政策金利がインフレ率を上回っている状態では金融引き締め効果が強くなります。
そのため、CPIが政策金利を下回ってくると、FRBが急いで追加利上げをする必要性は低下します。
これが今回、「9月利上げの可能性が低下した」と市場が判断している理由の1つです。
原油価格次第では再びインフレが上昇する可能性も
ただし、今回CPIが低下したからといって、インフレ問題が完全に解決したわけではありません。
動画では原油価格とCPIの関係についても解説されています。
原油価格は輸送費、電力、製造コストなど幅広い経済活動に影響するため、原油価格が上昇すると時間差を伴ってCPIを押し上げる傾向があります。
最近は原油価格が低下したこともあり、CPIにも低下圧力がかかっています。
しかし、原油価格には再び反転する動きも見られています。
もし原油がさらに上昇すれば、米国のインフレ率が再び上向く可能性があります。
そのため、今後のFRBの金融政策を考えるうえでは、CPIだけでなく原油価格にも注目する必要があります。
過去のオイルショックと似たインフレになるのか
動画では、第1次オイルショック、第2次オイルショックと今回のインフレを比較したチャートについても解説されています。
1970年代から1980年代初頭にかけて、米国ではインフレ率が一度低下した後、再び上昇する「2つの山」が形成されました。
今回のインフレでも、一度低下したインフレ率が再上昇する可能性が意識されています。
ただし、今回のCPIでは再び低下する動きが確認されました。
このままインフレ率が低下していくのか、それとも再び上昇するのかは今後の重要なポイントになります。
世界的にもインフレ率は依然として高い
インフレ問題は米国だけではありません。
日本、ユーロ圏、英国など主要国でもインフレ率は中央銀行の目標を上回る状態が続いています。
多くの中央銀行はインフレ率2%程度を目標としています。
しかし現状では、多くの国でこの水準を上回っています。
日本でも政府による補助金などによって物価上昇が抑えられている面があります。
そのため、表面的なCPI以上に実際のインフレ圧力は強い可能性があります。
こうした世界的なインフレの粘着性が、中央銀行にとって金融政策を難しくしています。
世界の長期金利は上昇傾向
インフレ率が高止まりしていることを背景に、世界的に債券利回りも高い状態が続いています。
動画では米国、英国、欧州、日本などの2年国債や10年国債、30年国債の利回りが上昇傾向にあることが紹介されています。
特に長期金利は高止まりしています。
日本の30年国債利回りについても約4%付近まで上昇していると説明されています。
長期金利の上昇には、将来的なインフレへの警戒だけでなく、政府の財政問題なども影響します。
政府債務が増加すると、国債を購入する投資家はより高い金利を要求するためです。
9月のFRB利上げは見送られる可能性が高まる
今回のCPIを受けて、市場では9月のFOMCで追加利上げが見送られるとの見方が強まっています。
動画では、CPIが市場予想通りだったことに加え、直近の雇用統計も弱かったことから、FRBが9月に利上げを行う可能性は低下したと説明されています。
市場が織り込む9月の利上げ確率は40.1%とされています。
一般的に、金融市場では政策変更の確率が70%を超えてくると「かなり織り込まれている」と判断されることが多いため、40%程度ではまだ利上げの確度は高いとは言えません。
10月も利上げ確率は低いが12月は状況が変わる
動画では10月と12月の利上げ確率についても紹介されています。
10月の利上げ確率は54.7%です。
こちらもまだ市場が利上げを強く確信している水準ではありません。
一方、12月までに利上げが行われる確率は77.5%とされています。
つまり、市場は「9月や10月は利上げを見送る可能性が高いものの、年末までには再び1回利上げする可能性がある」と考えているわけです。
ただし、今後CPIがさらに低下したり、雇用市場が急速に悪化したりすれば、この確率も低下する可能性があります。
FRBは完全に利上げを終了したわけではない
今回のCPIによって利上げ懸念は低下しましたが、FRBが完全に利上げ終了を決めたわけではありません。
背景にはいくつかのリスクがあります。
まず原油価格が依然として高い水準にあります。
さらにサービスインフレも粘着的です。
サービス価格は賃金などの影響を受けやすく、一度上昇すると下がりにくい傾向があります。
また、9月のFOMC前には8月のCPIも発表されます。
その結果が予想以上に強ければ、FRBの政策判断が再び変化する可能性があります。
FRBは今後も経済指標を確認しながら政策を決める「データ依存」の姿勢を続けると考えられます。
CPI鈍化は米国株にとって追い風
では、今回のCPIは株式市場にどのような影響を与えるのでしょうか。
最大のポイントは、追加利上げ懸念が後退したことです。
金利が上昇すると、株式の理論的な価値を計算する際の割引率が高くなるため、特に成長株のバリュエーションには逆風となります。
逆に利上げ懸念が後退すると、株式市場全体のバリュエーションは支えられやすくなります。
特にAI、半導体、ITインフラ関連企業は決算も好調で、再び資金が流入する可能性があります。
動画では、調整局面があればAI、半導体、ITインフラ関連株の押し目買いを検討する戦略も紹介されています。
AI・半導体への資金集中が続く「二極化相場」
現在の米国株市場では、すべての銘柄が同じように上昇しているわけではありません。
AIや半導体など一部の成長分野に資金が集中する一方、消費関連などでは値動きが鈍い銘柄もあります。
つまり、市場全体が上昇していても、その中身には大きな差があります。
動画タイトルでも「半導体+74% vs S&P+14%」と表現されているように、AI・半導体関連の上昇率と市場平均の差は非常に大きくなっています。
こうした相場では、単純に「S&P500が上がっているから米国株全体が強い」と判断するのではなく、どのセクターに資金が流れているのかを確認することが重要です。
AI・半導体だけに集中するのはリスクもある
AIや半導体関連株が強いからといって、ポートフォリオのすべてをこうした銘柄に集中させるのはリスクがあります。
AI関連株は成長期待が大きい反面、バリュエーションが高くなりやすいためです。
市場の期待を下回る決算が出たり、金利が再び急上昇したりすれば、大きく下落する可能性があります。
動画では、不動産やインフラ、高配当株などのディフェンシブなセクターも組み合わせることで、ポートフォリオ全体を安定させる方法が紹介されています。
成長株とディフェンシブ株を組み合わせることで、上昇相場の利益を狙いながら下落リスクにも備えるという考え方です。
米国債は短中期金利が低下する可能性
今回のCPI発表後、米国債市場では利回りが低下しました。
インフレ率の低下によって追加利上げの可能性が低くなると、短期から中期の国債利回りには低下圧力がかかります。
ただし、30年国債など長期債の利回りは依然として高止まりしています。
そのため、短期金利が低下する一方で長期金利が下がらない場合、イールドカーブがスティープ化する可能性があります。
イールドカーブのスティープ化とは、短期金利と長期金利の差が拡大することです。
債券投資ではバーベル戦略も選択肢
動画では債券投資の方法として「バーベル戦略」も紹介されています。
バーベル戦略とは、短期債と長期債の両方を組み合わせる方法です。
例えば2年国債と10年国債を組み合わせます。
短期債だけ、あるいは長期債だけに投資するのではなく、両方を保有することで金利変動リスクを分散します。
現在のように金利の方向性が読みづらい局面では、債券の満期を分散させることでポートフォリオを安定させる考え方です。
ドル円は円安基調が続く可能性
為替市場では、米国の利上げ懸念が後退すれば、本来はドル安要因になります。
しかし動画では、ドル円については円安基調が続く可能性があると分析されています。
理由の1つが日米金利差です。
日本と米国の金利差が大きい状態が続けば、金利の低い円を売って金利の高いドルを買う「キャリートレード」が続きやすくなります。
さらに地政学的リスクが高まる局面では、安全資産としてドルが買われることもあります。
その結果、日本政府が為替介入を行ったとしても、円高が長続きしにくい状況が生まれます。
ドル円は159円付近が押し目候補
動画ではドル円の具体的な水準についても触れています。
159円を下回る場面では押し目買いを検討する一方、160円に近づくと為替介入への警戒感が強まりやすいため、短期的には利益確定を意識した方がよいとの見方です。
160円という水準は市場参加者に強く意識されやすく、日本の通貨当局による対応への警戒も高まります。
そのため、ドル円は長期的には円安基調でも、160円付近では急激な値動きが発生する可能性があります。
原油は地政学リスクで下がりにくい
コモディティ市場では、まず原油が重要です。
IEAなどの機関では原油需要見通しが下方修正されており、世界景気の減速懸念が原油価格の下落要因になっています。
しかし一方で、中東の地政学的リスクが供給不安を高めています。
動画ではイランをめぐる緊張やホルムズ海峡の問題などが取り上げられています。
仮に中東情勢がさらに悪化すれば、原油供給が混乱する可能性があります。
そのため需要が弱くても、供給リスクによって原油価格が下がりにくい状態が続く可能性があります。
ゴールドは利上げ懸念後退が追い風
ゴールドにとっても今回のCPIは重要な材料です。
ゴールドは利息を生まない資産のため、金利が上昇すると相対的な魅力が低下します。
逆にFRBの利上げ懸念が後退して米国金利が下がれば、ゴールドには追い風になります。
ドルが弱くなることも、ドル建てで取引されるゴールドにとってプラス要因です。
動画では、ゴールドをポートフォリオの代替資産として保有し、大きく下落した場面では買い増しを検討する戦略が紹介されています。
CPI低下だけで楽観しすぎるのは危険
今回の7月CPIを総括すると、総合CPIは前年同月比3.4%、コアCPIは2.5%となりました。
いずれも市場予想通りで、大きなインフレサプライズはありませんでした。
住居費、ガソリン価格、ホテル料金などが落ち着いていることから、インフレ率の鈍化傾向は確認できます。
その結果、9月のFOMCで追加利上げが行われる可能性は低下しています。
これはAI、半導体、ITインフラなど成長株にとって追い風になる可能性があります。
ただし、インフレ率は依然として3%を超えています。
さらに原油価格の高止まりやサービスインフレも残っています。
9月のFOMC前には8月CPIも発表されるため、FRBの政策判断が再び変わる可能性もあります。
まとめ
7月の米CPIは市場予想通りとなり、前年同月比では総合CPI、コアCPIともに伸びが鈍化しました。
これによって9月の追加利上げ観測は後退し、株式市場、とりわけAI、半導体、ITインフラ関連株にはプラス材料となっています。
一方で、今回のCPIだけを見て「インフレは完全に終わった」と判断するのは早いでしょう。
原油価格、サービス価格、電力料金などには依然としてインフレ圧力が残っています。
今後は8月CPIや雇用統計、原油価格などを確認しながら、FRBが年内に再び利上げするのか、それとも現在の金利を維持するのかを見極める必要があります。
株式市場ではAIや半導体への資金集中が続く可能性がある一方、相場の二極化も進んでいます。
そのため成長株だけに集中するのではなく、ディフェンシブ株や債券、ゴールドなども組み合わせながら、金利やインフレの変化に対応できるポートフォリオを構築することが重要になりそうです。


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