本記事は、YouTube動画『50代60代の新NISA完全ガイド』の内容を基に構成しています。
50代・60代の新NISAは「何を買うか」だけで終わってはいけない
2024年から新NISAが始まり、資産運用を始める人が大きく増えています。特に多いのが、「オルカンでいいですか」「S&P500でいいですか」という質問です。
もちろん、全世界株式、いわゆるオルカンやS&P500に投資すること自体は、初心者にとっても非常に分かりやすい選択肢です。幅広く分散されたインデックスファンドであり、長期投資の中心に置きやすい商品です。
しかし、50代・60代の資産形成では、「何を買うか」だけで終わってしまうと不十分です。なぜなら、若い世代と違って、運用できる期間が比較的短く、退職や年金生活、資産の取り崩し時期が近づいているからです。
20代や30代であれば、仮に相場が大きく下落しても、長い時間をかけて回復を待つことができます。しかし、50代・60代の場合は、老後資金として実際に使うタイミングが近いため、投資商品を選んだ後に「いくら投資するのか」「いくら現金で残すのか」「いつ、どのように使うのか」まで考える必要があります。
よくある失敗は「商品を買って終わり」になること
動画では、50代・60代が陥りやすい失敗として、まず2つのパターンが紹介されています。
1つ目は、何を買えばいいのか悩み続け、結局何も始められないパターンです。オルカンがいいのか、S&P500がいいのか、高配当株がいいのか、債券を入れるべきなのかと迷い続けるうちに、時間だけが過ぎてしまいます。
2つ目は、よく分からないままオルカンやS&P500を毎月買っているものの、それが自分に合っているのか検証しないまま続けてしまうパターンです。これは一見すると投資を始めている分だけ良さそうに見えますが、「自分はいくら必要なのか」「この積立額で老後資金は足りるのか」という視点が抜けています。
つまり、投資商品を選ぶことはスタートにすぎません。大切なのは、その次のステップです。
50代・60代がやってはいけない3つの投資パターン
50代・60代の資産形成で特に注意したいのは、無計画に投資を進めてしまうことです。動画では、よくある失敗として次の3つが挙げられています。
- 退職金や現金で貯めてきたお金を無計画に投資してしまう
- 相場が30%や50%下落する可能性を具体的に想定していない
- 生活費や年金額を逆算せず、なんとなく投資してしまう
これらに共通しているのは、目的地を決めずに走り出している点です。
旅行にたとえると分かりやすいですが、目的地も地図もないまま車を運転しても、どこかにたどり着けるとは限りません。たまたま良い場所に着くことはあるかもしれませんが、それは偶然です。資産形成も同じで、目的地を決めずに投資を続けても、老後に必要なお金を計画的に準備できるとは限りません。
まずは老後に必要な毎月の生活費を決める
50代・60代が最初にやるべきことは、老後に必要な毎月の生活費を具体的に決めることです。
たとえば、老後に夫婦で毎月30万円あれば安心して生活できると考えたとします。この金額は人によって異なります。持ち家か賃貸か、車を持つか、旅行をしたいか、医療費をどの程度見込むかによっても変わります。
大切なのは、「なんとなく不安」ではなく、「毎月いくらあれば生活できるのか」を数字で出すことです。
次に確認すべきなのが、毎月受け取れる年金額です。ここを感覚で考えている人は非常に多いですが、年金額の見込みは必ず確認しておくべきです。年金定期便やねんきんネットを見れば、自分が将来どのくらい年金を受け取れそうかを確認できます。
たとえば、老後の生活費として毎月30万円が必要で、夫婦の年金が毎月18万円だとします。この場合、不足額は毎月12万円です。
つまり、資産運用で準備すべきなのは、年金とは別に毎月12万円を補える資金ということになります。
年金額のズレは老後資金に大きな差を生む
年金額を「たぶん15万円くらい」「なんとなく12万円くらい」と考えるのは危険です。
仮に年金額の見込みが毎月5万円ずれていたとします。65歳から20年間受け取ると考えると、5万円×12ヶ月×20年で1200万円の差になります。
毎月のズレは小さく見えても、老後のように20年、30年と続く期間では非常に大きな金額になります。そのため、まずは自分の年金見込み額を確認し、老後生活費との差額を明確にすることが重要です。
金融電卓を使えば必要な老後資金を逆算できる
毎月の不足額が分かったら、次は「その不足額を補うために、老後資金がいくら必要なのか」を計算します。
動画では、金融電卓を使った計算例が紹介されています。
たとえば、毎月12万円を25年間取り崩すとします。運用利回りを年5%と仮定すると、必要な元本は約2075万円になります。
これは、ただ現金を取り崩すのではなく、資産を運用しながら毎月12万円を取り崩していく前提です。運用しながら取り崩すことで、単純に12万円×12ヶ月×25年の3600万円を用意する必要はなくなります。
このように、毎月の不足額、取り崩す期間、想定利回りを入力することで、自分に必要な老後資金の目安が見えてきます。
目標金額から毎月の積立額を逆算する
次に考えるべきなのは、その必要額を作るために毎月いくら投資すればよいのかです。
動画では、55歳の人が65歳までの10年間で老後資金を準備する例が紹介されています。
たとえば、現在の資産が1000万円あり、そのうち500万円はすでに運用中、残り500万円は現金として持っているとします。この状態から10年後に約2000万円を目指す場合、年利5%で運用できると仮定すると、毎月およそ7万6000円から8万円の積立が必要になります。
このように計算すると、「なんとなく月5万円」ではなく、「自分の場合は月8万円が必要だ」と分かります。
ここが非常に重要です。目標がないと、人はなんとなくキリのいい金額で投資してしまいます。しかし、必要な金額から逆算すれば、自分が本当に積み立てるべき金額が見えてきます。
月5万円と月8万円では10年後に約500万円の差が出る
動画では、月5万円をなんとなく投資した人と、月8万円を目標に沿って積み立てた人の差も説明されています。
月5万円を10年間積み立てると、元本は600万円です。これが年利5%で運用された場合、10年後には約771万円になります。
一方、月8万円を10年間積み立てると、元本だけで960万円になります。これが年利5%で運用されると、10年後には約1234万円になります。
その差は約463万円です。動画では、ざっくり500万円ほどの違いになると説明されています。
この差は、投資商品を変えたから生まれるものではありません。目標金額を明確にし、そこから逆算して積立額を決めたかどうかで生まれる差です。
目標があるから積立を続けられる
月8万円の積立は、決して楽な金額ではありません。目標がなければ、途中で「やっぱり月5万円でいいか」となりやすい金額です。
しかし、「65歳までに約2000万円を作る」「年金に加えて毎月12万円を取り崩せる状態を作る」という目標が明確であれば、月8万円を積み立てる理由がはっきりします。
投資で大切なのは、リターンの高い商品を探すことだけではありません。自分がなぜその金額を投資しているのかを理解し、継続できる仕組みを作ることです。
積立期間中の暴落はむしろ味方になることもある
50代・60代の方がよく不安に感じるのが、相場の暴落です。
「毎月8万円も投資して、もし暴落したらどうするのか」と不安に思う人も多いでしょう。
しかし動画では、積立投資をしている期間中の暴落は、基本的に気にしなくてよいと説明されています。なぜなら、積立投資では価格が下がったときに安く多く買えるからです。
株価がずっと右肩上がりだと、資産が増えているように見えて気分は良いかもしれません。しかし、毎月買い続ける立場からすると、どんどん高い価格で買うことになります。
一方で、途中で下落があると、安い価格で多くの口数を買うことができます。その後、相場が回復すれば、安く買った分が大きく資産増加に貢献します。
もちろん、これは長期的に成長が期待できる資産に投資していることが前提です。オルカンやS&P500のように幅広く分散されたインデックスファンドは、短期的な下落はあっても、長期では成長を期待して投資するものです。
暴落で一番避けるべきなのは途中でやめること
積立期間中に最も避けるべきなのは、暴落に驚いて投資をやめてしまうことです。
相場が30%下落したり、時には50%近く下落したりすることは、歴史的にも起きています。しかし、幅広く分散されたインデックスに長期投資しているのであれば、一時的な下落だけを見てやめてしまうのは非常にもったいない判断です。
積立投資では、下落局面でも淡々と買い続けることが重要です。むしろ、将来の回復を前提に考えるなら、下落局面は安く買える期間とも言えます。
毎月積立か一括投資かは「続けやすさ」で決める
動画では、毎月積立と一括投資についても触れられています。
確率論でいえば、生活防衛費を確保したうえで、早めにまとまった金額を投資した方が、資産が増える可能性は高いとされています。年初一括投資や数年分をまとめて投資する方が、長く市場に資金を置けるためです。
しかし、これはあくまで確率論です。一括投資をした直後に大きく下落する可能性もあります。特に投資初心者の場合、大きな含み損に耐えられず、途中で売却してしまうリスクがあります。
そのため、最も重要なのは「どの方法なら自分が長く続けられるか」です。
一括投資の方が理論上有利だからといって、自分のメンタルが耐えられない方法を選ぶ必要はありません。毎月積立の方が安心して継続できるなら、それも十分に合理的な選択です。
新NISAは、短期的に一番得をする方法を探す制度ではなく、長く続けることで成果を出しやすくなる制度です。だからこそ、自分にとってストレスの少ない方法を選ぶことが大切です。
投資先はシンプルでよい
投資先については、動画ではS&P500やオルカンで問題ないと説明されています。
ただし注意したいのは、投資先を複雑にしすぎないことです。
S&P500やオルカンに投資している一方で、個別株を何十銘柄も持ち、債券、高配当株、ゴールド、テーマ型ファンドなども大量に保有している人がいます。もちろん、それぞれに意味があって保有しているなら問題ありません。
しかし、あまりに複雑になると、自分の資産全体がどのくらいのリターンを期待できるのか分からなくなります。また、老後に取り崩す段階になったとき、どの商品から売ればいいのか判断しにくくなります。
資産形成では、複雑にすることが上級者の証ではありません。むしろ、自分で管理できる範囲にシンプルに整えることが大切です。
すでに複雑なポートフォリオなら少しずつ整理する
すでに多くの商品を持っている人は、これを機にポートフォリオを見直すのもよいでしょう。
思ったより増えていない商品、なぜ持っているのか説明できない商品、昔なんとなく買ったまま放置している商品がある場合は、少しずつ整理していくことが大切です。
もちろん、すぐに全部売却する必要はありません。税金や相場状況もありますので、焦らずに整理することが重要です。
大切なのは、最終的に自分が理解できる形にすることです。投資は長く続けるものですから、見ていて不安になるほど複雑な資産構成よりも、シンプルで管理しやすい形の方が継続しやすくなります。
取り崩し期には暴落への対応ルールが必要
積立期間中の暴落はあまり気にしなくてよい一方で、取り崩し期の暴落には注意が必要です。
なぜなら、資産を取り崩している最中に大きな下落が起きると、安い価格で資産を売却することになり、資産寿命が短くなる可能性があるからです。
動画では、取り崩し期に入ったら生活費の2年分程度の現金を持っておくことが勧められています。
たとえば、毎月30万円の生活費が必要であれば、30万円×24ヶ月で720万円です。この程度の現金を持っておけば、暴落時に無理に投資資産を売却せず、現金で生活費をまかなうことができます。
最高値から20%以上下落したら取り崩しを一時停止する
動画では、取り崩し期の具体的なルールとして、最高値から20%以上下落したら取り崩しを一時停止するという考え方が紹介されています。
20%下落は、一般的に弱気相場入りの目安とされます。5%や10%の下落はよくある調整ですが、20%以上の下落になると、下落が長引く可能性も考える必要があります。
そのため、最高値から20%以上下がった場合は、投資資産の取り崩しを止め、あらかじめ準備しておいた現金から生活費を出します。
その後、相場が回復し、最高値からの下落率が20%未満に戻ってきたら、少しずつ取り崩しを再開し、減った現金を補充していきます。
このようなルールを事前に決めておけば、暴落時に慌てて判断する必要がなくなります。
55歳・資産1000万円の人の具体例
動画では、55歳で資産1000万円を持っている人の例が紹介されています。
この人は、現金500万円、運用資産500万円を持っています。65歳で仕事をリタイアし、老後は毎月30万円の生活をしたいと考えています。年金は毎月18万円受け取れる見込みです。
この場合、年金との差額は毎月12万円です。65歳以降、この12万円を資産から取り崩していく必要があります。
金融電卓で計算すると、毎月12万円を25年間取り崩すには、年利5%の前提で約2075万円が必要になります。
現在すでに運用資産が500万円あるため、65歳までの10年間で約2000万円を目指すには、毎月およそ8万円の積立が必要になります。
このように、老後の生活費、年金額、不足額、必要資産、毎月の積立額を順番に出していけば、自分がやるべきことがかなり明確になります。
理想通りにいかない前提で調整する
もちろん、シミュレーションはあくまで目安です。実際の運用利回りが年5%になる保証はありません。7%や8%になる可能性もあれば、もっと低くなる可能性もあります。
また、取り崩し期に必要な現金も、理想では720万円持っておきたいとしても、現実には500万円しか準備できない場合もあります。
その場合は、生活費を少し下げるのか、働く期間を延ばすのか、積立額を増やすのか、現金比率を調整するのかを考える必要があります。
大切なのは、完璧な計画を作ることではありません。自分の状況を数字で把握し、優先すべきことと、多少妥協してもよいことを整理することです。
まとめ|50代・60代の新NISAは「逆算」が成功のカギになる
50代・60代の新NISAでは、オルカンやS&P500を買うこと自体は悪い選択ではありません。しかし、それだけで老後資金の準備が完了するわけではありません。
大切なのは、老後に毎月いくら必要なのかを決め、年金でいくら受け取れるのかを確認し、その差額を資産運用でどう補うかを逆算することです。
たとえば、毎月30万円の生活をしたい人が、年金を18万円受け取れるなら、不足額は12万円です。その12万円を25年間取り崩すには、運用しながらでも約2000万円規模の資産が必要になります。そして、その資産を作るために、現在の年齢や資産額から毎月いくら積み立てるべきかを計算します。
なんとなく月5万円を投資する人と、目標から逆算して月8万円を積み立てる人では、10年後に約500万円近い差が出る可能性があります。この差は、投資商品の違いではなく、計画の有無によって生まれるものです。
また、積立期間中の暴落は過度に恐れる必要はありません。むしろ安く買える機会になる場合もあります。ただし、取り崩し期の暴落には注意が必要です。生活費の2年分程度の現金を準備し、最高値から20%以上下落した場合は取り崩しを一時停止するなど、事前にルールを決めておくことが大切です。
新NISAは、始めることも大切ですが、それ以上に「どう続けるか」「いつ使うか」「どう取り崩すか」が重要です。50代・60代の資産形成では、投資商品を選んだ後こそが本番です。自分の年金額、生活費、必要資金、積立額を具体的に確認し、自分に合った老後資金計画を作っていくことが、失敗しない資産運用への第一歩になります。


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