本記事は、YouTube動画『小規模企業共済は満額が正解?出口の税金まで含めて徹底解説』の内容を基に構成しています。
個人事業主や中小企業経営者にとって、小規模企業共済は非常に人気の高い節税制度です。
「掛金は全額所得控除」
「将来の退職金を準備できる」
「貸付制度も利用できる」
このようなメリットが知られているため、多くの人が「とりあえず上限の月7万円まで掛けておけば間違いない」と考えています。
しかし実際には、受け取り時の税金まで考慮すると、必ずしも満額掛金が最適とは限りません。
今回は小規模企業共済の仕組みや節税効果を確認しながら、出口の税金を踏まえた最適な掛金の考え方や、老後資金を効率よく受け取るための方法について詳しく解説します。
小規模企業共済とは何か
小規模企業共済とは、中小企業基盤整備機構が運営する、小規模事業者向けの退職金制度です。
会社員であれば退職金制度があるケースもありますが、個人事業主や中小企業経営者には退職金制度が存在しないことも少なくありません。
そのため、自分で積み立てながら将来の退職金を準備できる制度として設けられています。
事業を廃業した場合や役員を退任した場合などに、積み立てた掛金に応じた共済金を受け取ることができます。
加入できる人の条件
小規模企業共済には加入条件があります。
業種によって従業員数の上限が異なります。
卸売業、小売業、サービス業では常時使用する従業員が5人以下、製造業や建設業などでは20人以下が目安です。
なお、加入時点で条件を満たしていれば、その後に従業員数が増えて基準を超えても継続加入できます。
そのため、加入資格があるうちに早めに手続きを済ませておくことが重要です。
最大のメリットは掛金全額所得控除
小規模企業共済最大の魅力は、掛金が全額所得控除になる点です。
掛金は月額1,000円から7万円まで設定でき、500円単位で自由に変更できます。
例えば月7万円を掛けた場合、年間掛金は84万円になります。
この84万円全額が所得控除となるため、高所得者ほど大きな節税効果を得られます。
仮に課税所得が2,000万円程度ある人の場合、年間約42万円もの税金軽減効果になるケースもあります。
これを30年間継続した場合、累計節税額は1,200万円を超える可能性があります。
老後資金を積み立てながら毎年大きな節税効果を得られることが、小規模企業共済が高く評価される理由です。
実は便利な貸付制度もある
小規模企業共済には貸付制度も用意されています。
掛金の積立額に応じて、積立金の7割から9割程度まで借り入れが可能です。
一般貸付制度では最大2,000万円、それ以外の制度でも最大1,000万円まで借りられます。
特徴としては、
・担保不要
・保証人不要
・比較的低金利
・審査が比較的スムーズ
という点が挙げられます。
また借換制度を利用することで、利息を支払えば返済期間を延長することも可能です。
ただし最終的には返済が必要であり、返済しなければ将来受け取る共済金と相殺されるため注意が必要です。
本当に重要なのは出口の税金
多くの人は掛金による節税ばかりに注目します。
しかし実は、本当に重要なのは受け取り時の税金です。
小規模企業共済は受け取り方によって税金の計算方法が大きく変わります。
特に有利なのが一括受取です。
一括受取なら退職所得になる
共済金を一括で受け取ると、税法上は退職所得として扱われます。
退職所得には非常に大きな税制優遇があります。
その中心となるのが退職所得控除です。
例えば加入期間30年の場合、退職所得控除額は1,500万円になります。
つまり受取額が1,500万円以内であれば、基本的に税金が発生しない可能性が高くなります。
さらに退職所得は、
(受取額-退職所得控除額)÷2
で課税所得を計算します。
仮に1,000万円受け取った場合でも、控除額の範囲内であれば課税対象はゼロです。
この制度があるため、小規模企業共済は非常に強力な節税制度として知られています。
月7万円満額が最適とは限らない理由
ここで考えたいのが掛金設定です。
30年間加入し、退職所得控除が1,500万円になるケースを考えてみましょう。
もし最終的な受取額を1,500万円以内に収められれば、受取時の税金は実質ゼロになります。
逆算すると、
1,500万円 ÷ 360か月
で月額約4万1,000円になります。
つまり、
「出口で完全非課税を狙う」
という考え方であれば、月7万円ではなく月4万1,000円程度が1つの目安になるのです。
満額掛金だと税金はいくらかかるのか
一方で月7万円を30年間積み立てた場合、受取額はおよそ2,500万円程度になります。
退職所得控除1,500万円を超える部分は約1,000万円です。
退職所得の計算ルールにより課税所得は約500万円になります。
所得税と住民税を合わせると、おおよそ100万円前後の税負担になる可能性があります。
もちろん掛金期間や税率によって変動しますが、出口でまとまった税金が発生する点は理解しておく必要があります。
浮いた資金はiDeCoに回すという考え方
そこで注目されるのがiDeCoです。
小規模企業共済を月4万1,000円程度に抑え、残りをiDeCoに回すという方法です。
iDeCoも掛金全額が所得控除になります。
さらに運用益も非課税です。
つまり、
・小規模企業共済で節税
・iDeCoで節税
・運用益も非課税
という形で複数のメリットを享受できます。
退職所得控除は共通の枠である
ここで注意したいのが退職所得控除です。
実はこの控除枠は小規模企業共済専用ではありません。
以下のようなものも同じ枠を使います。
・iDeCo
・会社の役員退職金
・企業型DC
つまり老後資金全体で考える必要があります。
個別最適ではなく、全体最適を考えなければなりません。
知らないと損する10年ルールと20年ルール
近年特に重要になったのが10年ルールです。
iDeCoを一時金で受け取った後、会社の退職金などを受け取る場合、10年以内だと退職所得控除が十分に使えなくなります。
もともとは5年ルールでしたが、2026年から10年ルールへ改正されました。
さらに会社の退職金を先に受け取り、その後iDeCoを受け取る場合には20年ルールがあります。
20年以内だと控除額に影響が出る可能性があります。
このルールを知らずに受け取ると、本来払わなくて済んだ税金を支払うことになりかねません。
節税効果を最大化する黄金スケジュール
動画内で紹介されていた理想的な受け取り方法は次のような流れです。
60歳でiDeCoを年金受取
まず60歳からiDeCoを年金形式で受け取ります。
年金受取であれば10年ルールの影響を受けにくくなります。
さらに60歳から65歳までは公的年金がまだ本格的に始まっていないため、税負担を抑えやすくなります。
65歳で小規模企業共済を一括受取
15年以上加入していれば、社長を続けながらでも共済金を受け取れる特例があります。
そのため引退せずに共済金だけ受け取ることが可能です。
退職所得控除を利用して税負担を抑えながら受け取れます。
70歳で役員退職金を受取
その後も会社経営を続け、70歳で引退して役員退職金を受け取ります。
65歳から70歳まで5年空いているため、退職所得控除を再び有効活用しやすくなります。
結果として、
・iDeCo
・小規模企業共済
・役員退職金
の3つを効率よく受け取ることができます。
まとめ
小規模企業共済は非常に優秀な節税制度ですが、単純に「月7万円を満額掛ければよい」というわけではありません。
重要なのは掛金を決める段階から出口戦略まで考えることです。
特に退職所得控除をどのように使うかによって、最終的な手取り額は大きく変わります。
30年間加入するのであれば、退職所得控除額とのバランスを考えながら掛金を設定し、さらにiDeCoや役員退職金との関係も含めて総合的に設計することが重要です。
小規模企業共済は「加入して終わり」ではなく、「どう受け取るか」まで考えて初めて真価を発揮する制度と言えるでしょう。


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