NTT株が144円台へ下落した理由とは?信用買い残・金利上昇・AIインフラ戦略から今後のシナリオを解説

本記事は、YouTube動画『今日はNTTが144円へ大暴落。これから起こる衝撃シナリオ』の内容を基に構成しています。

目次

NTT株が144円台まで下落した背景

2026年6月19日、NTT株は終値144.4円まで下落しました。始値は147.1円、安値は144.3円、出来高は4億137万株に達しており、単なる小幅な値下がりとは言い切れない動きとなりました。

NTTはこれまで、日本株市場の中でも代表的なディフェンシブ株と見なされてきました。通信インフラは景気の良し悪しにかかわらず利用され続けるため、売上が急激に落ちにくいという特徴があります。そのため、相場が不安定な局面では、投資家が資金を避難させる銘柄として選ばれることも少なくありませんでした。

しかし、そのNTT株が2026年1月6日に付けた年初来高値161円から、半年足らずで144.4円まで下落しました。下落率は約10%です。数字だけを見れば暴落というほどではないと感じる人もいるかもしれませんが、問題は下落率そのものよりも、下落の背景にある需給構造です。

現在のNTT株には、1億9000万株を超える個人投資家の信用買いポジションが残っているとされています。これは、400万人が50株ずつ保有しているのと同じ規模です。しかも、その多くは150円台を底値圏と見て積み上げられた買いポジションであり、144円台まで下落したことで、多くの投資家が含み損を抱えている状態と考えられます。

150円の防衛ラインが崩れた意味

NTT株にとって150円という水準は、単なる株価の数字以上の意味を持っていました。投資家心理の面では「ここを割らなければ大丈夫」という節目であり、信用取引で買い向かった個人投資家にとっても重要な防衛ラインだったと考えられます。

しかし、その150円を割り込んだことで、市場の見方は一変しました。信用取引で買っていた投資家は、株価が下がるほど証券会社に追加保証金を求められる可能性が高まります。これがいわゆる追証です。追証に対応できない場合、保有株は強制的に売却されることがあります。

このような仕組みがあるため、株価が一定水準を下回ると、売りが売りを呼ぶ展開になりやすくなります。150円割れは、まさにその引き金になった可能性があります。

25分割が個人投資家を呼び込んだ

NTT株の現在の需給構造を理解するうえで、2023年7月に実施された株式分割は非常に重要です。NTTは1株を25株に分割しました。

分割前のNTT株は1株4000円前後で、100株を購入するには約40万円が必要でした。これでは、投資初心者や少額投資をしたい個人投資家にとっては、ややハードルの高い銘柄でした。

しかし、25分割によって株価は100円台半ばとなり、最低購入金額は1万4000円台まで下がりました。これにより、新NISAをきっかけに投資を始めた個人投資家や、配当目的で少額から投資したい層が大量に流入しました。

一方で、株価が低くなったことで、信用取引を使う短期トレーダーにとっても売買しやすい銘柄になりました。信用取引では、自己資金以上の金額を運用できます。たとえば30万円の資金で、約3倍の90万円分の株を買うことも可能です。利益が出れば大きい反面、損失も拡大しやすい取引です。

その結果、NTT株には信用買いが急増しました。2026年6月5日時点では、信用買い残が2億2381万6000株に達し、信用倍率は29倍という極端な水準になっていました。信用倍率29倍とは、信用売りに対して信用買いが29倍も多い状態を意味します。これは、市場が大きく買いに偏っていることを示す数字です。

信用買い残が株価の重荷になっている

2026年6月5日時点で2億2381万6000株あったNTT株の信用買い残は、6月12日時点で1億9167万3000株まで減少しました。約2週間で3214万株以上が減った計算です。

これは、一部の投資家が損失に耐えきれず売却した可能性を示しています。ただし、この減少分がすべて強制ロスカットによるものかどうかは確認できません。自主的な損切りや、短期売買による決済も含まれている可能性があります。

重要なのは、それでもまだ1億9000万株超の信用買い残が市場に残っていることです。

この状態では、株価が少し上昇しても、含み損を抱えていた投資家が「ようやく損失が減った」と考えて売りに回る可能性があります。これを戻り売り、またはやれやれ売りと呼びます。NTT株の上値が重くなりやすい理由の1つは、この信用買い残の重さにあります。

金利上昇がNTT株に与える影響

NTT株の下落要因は、個人投資家の信用買い残だけではありません。より根深い問題として、日本の金利上昇があります。

2026年6月19日時点で、日本の10年物国債利回りは2.643%に達したとされています。また、個人向け国債の変動10年金利も1.74%と、過去最高水準を更新していると説明されています。

NTTの年間配当は1株あたり5.4円予想です。株価144.4円で計算すると、配当利回りは約3.74%になります。

かつて日本がゼロ金利に近い時代だった頃、国債利回りはほぼ0%に近く、NTT株の3%台の配当利回りは非常に魅力的でした。年金基金や機関投資家にとって、NTT株は安定した利回りを得られる債券の代替のような存在だったと考えられます。

しかし、国債利回りが2.64%まで上昇すると、NTT株の配当利回り3.74%との差は約1.1%に縮まります。この差はイールドスプレッドと呼ばれます。

株式には元本割れリスクがあります。一方、国債は相対的に安全性が高い資産です。そのため、リスクを取ってNTT株を持つ意味が以前より薄れていると判断する機関投資家が出てきても不思議ではありません。

このように、株式から債券や預金へ資金が移る現象は、グレートローテーションと呼ばれます。金利上昇局面では、高配当株であっても、配当利回りと国債利回りの差が縮まることで売られやすくなるのです。

EBITDA目標の先送りが示す収益回復の遅れ

NTTは2026年5月8日、中期経営戦略の見直しを発表しました。その中で市場が注目したのが、連結EBITDA4兆円の達成目標を2027年度から2030年度へ延期した点です。

EBITDAとは、利息、税金、減価償却費などを差し引く前の利益を指します。企業の本業がどれだけ稼ぐ力を持っているかを見るうえで、重要な指標の1つです。

NTTの2026年度会社予想は、営業収益15兆600億円、営業利益1兆7100億円、当期利益9800億円、EBITDA3兆4300億円とされています。数字だけを見れば、決して弱い企業ではありません。

しかし、問題は成長スピードです。EBITDA4兆円に到達するには、さらに6000億円以上の積み上げが必要です。その達成時期が3年先送りされたことで、市場は収益回復が想定より遅れていると受け止めた可能性があります。

その主な要因として挙げられているのが、NTTドコモのモバイル事業です。近年、ドコモは大都市や主要路線で通信品質の低下に直面してきました。動画が止まる、通信がつながりにくいといった問題への対応として、2025年度だけで1万200の基地局を新たに稼働させたとされています。

さらに、3Gサービス終了に伴う電波帯域の4G転換、5G対応設備、ネットワーク自動化システムなどの投資も重なっています。こうしたコストが一時的に集中したことで、ドコモの利益が圧迫され、グループ全体の収益回復も遅れているという構図です。

Dカード問題と金融事業への不安

2026年6月18日に開催されたNTTの定時株主総会では、ドコモショップで十分な説明がないままDカードゴールドを契約させられたという株主からの苦情が出たとされています。

これに対して、ドコモ側は謝罪し、接客改善とコンプライアンス遵守を約束したと説明されています。現時点では、組織的な不正や行政処分が確認されたわけではありません。

ただし、この問題が注目される理由は、NTTドコモが金融事業を成長の柱にしようとしているためです。2026年7月1日には、NTTドコモ金融グループが発足する予定とされています。通信事業の成長が鈍化する中で、Dカードを中心とした決済・金融サービスは、NTTグループの新たな収益源として期待されています。

その金融事業の入口であるドコモショップで、顧客説明に関する問題が出ているとすれば、信頼性に影響する可能性があります。仮に今後、消費者庁や総務省などの行政対応に発展すれば、金融事業の成長ストーリーに傷がつく恐れがあります。

現在の株価144.4円に、このリスクがどこまで織り込まれているかは不透明です。そのため、今後も注意して見るべき材料といえます。

政府保有株という長期的なオーバーハング

NTT株には、もう1つ長期的な需給リスクがあります。それが政府保有株です。

政府はNTT株を発行済み株式総数のおよそ3分の1保有しており、その価値は約5兆円規模とされています。NTT法の見直しや政府保有株の売却については、過去にも議論されてきました。

この問題は、2026年6月19日の急落の直接的な材料ではありません。しかし、将来的に大量の株式が市場に放出される可能性があるというだけで、株価の上値を抑える心理的な圧力になります。これをオーバーハングと呼びます。

さらに、NTT株には外国人保有比率の上限があるため、政府が売却した場合でも、海外機関投資家が無制限に買い増せるわけではありません。つまり、売却時の受け皿が限られる可能性があります。

これは短期的な下落要因というよりも、長期投資家が頭に入れておくべき構造的なリスクです。

それでもNTTに残る成長期待

ここまで、NTT株に対する弱気材料を中心に見てきました。しかし、NTTには長期的な成長期待も残されています。

その中心にあるのが、光電融合技術とIOWN構想です。

光電融合とは、コンピューター内部や通信ネットワークで使われる電気信号の一部を光に置き換える技術です。電気信号は熱を生みます。そのため、データセンターでは膨大な電力が消費され、冷却コストも大きくなります。

一方、光による通信は熱の発生を抑えられるため、消費電力を大幅に削減できる可能性があります。生成AIの普及によってデータセンターの電力消費が急増する中、電力効率を改善する技術は世界的に重要性を増しています。

NTTが2026年度末までの商用化を目指しているPEC2というデバイスは、コンピューター基盤の間を光で接続し、消費電力問題を解決しようとするものです。仮にこの技術が世界の半導体サプライチェーンやAIデータセンターで採用されるようになれば、NTTの評価は大きく変わる可能性があります。

IOWNは、AIとネットワークを融合させた次世代インフラ構想です。NTTは単なる通信会社ではなく、日本のAIインフラを支える企業へと進化することを目指しています。

ロードマップとしては、2027年度中に全国47都道府県の主要都市を800Gbpsの光ネットワークで接続し、全国160以上のデータセンターを低遅延で結ぶ計画が示されています。さらに、2029年中には品川、栃木、福岡に大型データセンターを開設し、2030年度には千葉県印西・白井エリアに250MW規模のデータセンターキャンパスを新設する予定とされています。

2033年度には、NTTグループ全体のデータセンター容量を現在の約3.3倍となる1000MW規模へ拡張する計画もあります。

このシナリオが実現すれば、NTTは従来の電話・通信会社という評価から、AI時代のインフラ企業として再評価される可能性があります。

自己株買いが下支え要因になる可能性

NTTは2026年5月11日から2027年3月31日まで、上限14億株、金額にして最大2000億円の自己株買いを実施しています。

自己株買いとは、企業が市場から自社株を買い戻すことです。需給面では、市場に一定の買い需要が発生することを意味します。

もちろん、1億9000万株超の信用買い残を一気に吸収できるほどの力があるとは限りません。しかし、株価下落局面では一定の下支え要因になる可能性があります。

また、EBITDA4兆円目標が2030年度へ延期されたことは悪材料として受け止められていますが、NTTが成長戦略を諦めたわけではありません。AIインフラ、データセンター、金融領域を成長軸として掲げている点は、長期投資家にとって引き続き注目すべきポイントです。

動画内では、アナリストのコンセンサスにおける平均目標株価が173円とされており、現在の144.4円から約20%上の水準にあるとも説明されています。

NTT株の上昇シナリオ

NTT株が今後上昇するためには、いくつかの条件が重なる必要があります。

まず、光電融合デバイスPEC2が2026年度末に商用化され、半導体やデータセンター関連のサプライチェーンで採用が広がることです。生成AIの普及によって電力消費問題が深刻化する中、NTTの技術が実用面で評価されれば、企業価値の見直しにつながる可能性があります。

次に、データセンターの拡張計画が予定通り進み、AI企業からの需要が積み上がることです。NTTが全国規模の低遅延ネットワークとデータセンター網を構築できれば、AIインフラ企業としての存在感が高まります。

さらに、自己株買いが進む中で信用買い残が自然に整理され、需給が改善することも重要です。信用買い残が減少すれば、戻り売り圧力が弱まり、株価が上がりやすくなります。

そして、2030年度のEBITDA4兆円目標達成が市場に前倒しで織り込まれるようになれば、NTT株の評価は通信会社からAIインフラ企業へと変わる可能性があります。

NTT株の下落シナリオ

一方で、下落シナリオも無視できません。

最も警戒すべきなのは、1億9000万株超の信用買い残が整理されないまま返済期限を迎え、2026年後半にかけて強制的な売却や損切りが連鎖する展開です。株価が140円を下回れば、さらに投資家心理が悪化する可能性があります。

また、日銀が追加利上げを継続し、10年国債利回りが3%台に近づいた場合、NTTの配当利回りとの差がさらに縮小します。その場合、年金基金や信託銀行などの機関投資家が、NTT株から債券へ資金を移す動きが強まる可能性があります。

Dカード問題が行政指導などに発展した場合も、金融事業の成長ストーリーが傷つくリスクがあります。

さらに、5Gやミリ波関連への設備投資が消費者の端末普及スピードと噛み合わず、巨額投資が利益を圧迫し続ける展開も懸念材料です。

このように、NTT株には上昇シナリオと下落シナリオの両方が存在しています。

SWOT分析で見るNTTの現状

NTTの現状を冷静に整理すると、強み、弱み、機会、脅威がはっきり見えてきます。

強みとしては、PER12倍、PBR1.21倍というバリュエーション、配当利回り3.74%、最大2000億円の自己株買い、通信インフラ企業としての安定収益基盤、そして光電融合やIOWNという次世代インフラ技術が挙げられます。

弱みとしては、1億9000万株超の信用買い残、EBITDA4兆円目標の先送り、ドコモのモバイル事業における設備投資コストの集中、短期的な収益成長の見えにくさがあります。

機会としては、AI産業の電力消費問題が深刻化する中で、光電融合技術の採用が進む可能性があります。また、データセンター需要の拡大や、NTTドコモ金融グループの発足による金融事業の成長も期待材料です。

脅威としては、日銀の追加利上げによる国債利回り上昇、政府保有株の売却議論、Dカード問題の拡大、5G関連投資の収益化遅れなどが挙げられます。

長期投資家は何を確認すべきか

長期投資家が今のNTT株を見るうえで、重要なのは株価だけを追いかけないことです。動画では、特に次の点を確認すべきだと説明されています。

まず、信用買い残の推移です。2026年6月12日時点で1億9167万株あった信用買い残が、今後1億株を下回る水準まで整理されるかどうかが重要です。信用倍率が1桁台まで改善すれば、需給面の重さはかなり軽減される可能性があります。

次に、Dカード問題の行方です。消費者庁や総務省などから行政指導のような動きがあるかどうかは、金融事業への信頼に関わります。

3つ目は、NTT法や政府保有株に関する国会の議論です。政府保有株の売却が具体化すれば、長期的な需給圧力が強まる可能性があります。

4つ目は、光電融合デバイスPEC2の商用化進捗です。2026年度末の商用化が実現するかどうかは、NTTの成長ストーリーを左右する重要な節目です。

5つ目は、10年国債利回りです。これが3%台に近づくようであれば、NTT株の配当利回りとの魅力度の差が縮まり、機関投資家の売り圧力が強まる可能性があります。

まとめ

NTT株が144.4円まで下落した背景には、単なる株価調整ではなく、複数の要因が重なっています。

最大の短期要因は、1億9000万株を超える信用買い残です。150円台を底値と見て買い向かった個人投資家が多く、150円割れによって需給の歪みが表面化しました。この信用買い残が整理されない限り、株価が反発しても戻り売りに押されやすい展開が続く可能性があります。

中期的には、日本の金利上昇も大きな圧力です。国債利回りが上昇する中で、NTT株の配当利回りとの魅力度の差が縮まり、機関投資家にとって保有継続の合理性が低下する可能性があります。

企業業績面では、EBITDA4兆円目標の2030年度への先送りや、ドコモの設備投資負担が懸念材料です。さらに、Dカード問題や政府保有株のオーバーハングも、今後の注意点として残っています。

一方で、NTTには光電融合技術やIOWN、データセンター拡張といった長期成長シナリオもあります。もしNTTが通信会社からAIインフラ企業へと評価される局面が来れば、株価の見方は大きく変わる可能性があります。

現在のNTT株は、割安感と需給悪化が同時に存在する難しい局面にあります。長期投資家にとって重要なのは、焦って株価だけを見るのではなく、信用買い残、金利、Dカード問題、NTT法、光電融合技術の進捗を確認しながら、冷静に判断することです。

なお、本記事は動画内容を基にした情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の資金状況やリスク許容度を踏まえて行うことが大切です。

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