本記事は、YouTube動画『【NTT株】空売り激増でヤバい事起きる』の内容を基に構成しています。
NTT株に何が起きているのか
日本を代表する通信会社であるNTT株に、個人投資家の注目が集まっています。
NTTは正式名称を日本電信電話株式会社といい、証券コードは9432です。日本を代表する大型株であり、通信インフラを担う企業であることから、長年にわたり「景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄」として見られてきました。
しかし、2026年6月22日、NTT株は一時144円を割り込み、年初来安値を更新しました。終値は144円台となり、2026年1月6日につけた年初来高値161円台から見ると、半年足らずで約10%下落したことになります。
一見すると、10%程度の下落は株式市場では珍しくないようにも見えます。しかし、今回の問題は単なる株価下落ではありません。
その背後には、信用買い残2億5000万株超、信用倍率42倍という極端な受給の歪みがあります。
信用倍率42倍とは何を意味するのか
今回のNTT株で特に注目されているのが、信用倍率42倍という数字です。
信用倍率とは、信用買い残を信用売り残で割った数値です。簡単に言えば、信用取引で買っている人の株数が、信用取引で売っている人の株数の何倍あるかを示すものです。
信用買いとは、証券会社から資金を借りて株を買う取引です。将来的には、その株を売って決済する必要があります。つまり、信用買い残は将来の売り圧力になり得ます。
一方、信用売りは、株を借りて先に売り、後で買い戻す取引です。こちらは将来的な買い戻し圧力になります。
2026年6月19日時点で、NTT株の信用買い残は2億522万9000株、信用売り残は591万8900株とされています。この結果、信用倍率は約42倍となりました。
これは、将来売られる可能性のある株数が、買い戻される可能性のある株数に比べて非常に大きいことを意味します。
しかも、この数字は急激に悪化しています。2026年6月12日時点では信用倍率は約27倍でした。それがわずか1週間で42倍まで跳ね上がったのです。
信用買い残は1週間で655万6000株増えています。短期間でこれほど信用買いが積み上がるのは、非常に強い買い意欲が集中したことを示しています。
なぜNTT株に信用買いが集まったのか
NTT株に個人投資家の資金が集まった大きなきっかけは、2023年7月に実施された株式分割です。
NTTは1株を25株に分割しました。これにより、以前は数万円単位の投資が必要だったNTT株が、1万円台で買える銘柄になりました。
この低価格化によって、2024年から始まった新NISAの非課税枠を使い、投資初心者や若年層の個人投資家がNTT株を買いやすくなりました。
NTTは個人投資家にとって、非常に魅力的に見える銘柄でした。長期にわたり増配を続けており、2027年3月期も1株あたり5.4円の配当が予定されています。さらに、長期保有によってDポイントが付与される株主優待もあります。
「大企業」「安定配当」「少額から買える」「新NISAで買いやすい」という条件が重なったことで、多くの個人投資家がNTT株を安全資産のように見なすようになりました。
しかし、ここに今回の問題の本質があります。
安全だと信じられたからこそ、株価が下がっても「押し目買い」や「ナンピン買い」が増えました。155円から150円に下がれば買い増し、150円から145円に下がってもさらに買い増す。こうした行動が積み重なった結果、信用買い残が膨らみ続けたのです。
つまり、安全だと信じて買われた銘柄ほど、信用取引による潜在的な売り圧力を抱えることになったという逆説が起きています。
信用買い残が多いとなぜ危険なのか
信用取引には期限があります。制度信用取引の場合、原則として最長6ヶ月以内に決済しなければなりません。
信用買いでNTT株を保有している投資家は、いずれ株を売って決済する必要があります。株価が上がっていれば問題は小さいですが、株価が下落すると状況は厳しくなります。
信用取引では、証券会社に担保を差し入れています。株価が下がると担保価値が低下し、一定水準を下回ると追加証拠金、いわゆる追証が発生します。
追証を入金できなければ、証券会社によって強制的に株が売却されます。これが強制決済です。
信用買い残が2億5000万株規模まで膨らんでいる場合、株価がさらに下落すると、強制決済が連鎖的に起きる可能性があります。その売りがさらに株価を下げ、また別の投資家の追証や強制決済を誘発するという悪循環です。
ただし、ここで注意すべき点もあります。
機関投資家が意図的に個人投資家の追証を狙って売り崩している、という見方はあくまで推測にすぎません。重要なのは、悪意の有無ではなく、信用買い残が大きすぎるため、株価下落時に売り圧力が増幅されやすい構造があるという点です。
株価下落の背景にあるNTTデータ完全子会社化
NTT株の下落要因は、受給面だけではありません。企業の実力面、つまりファンダメンタルズにも変化が起きています。
大きな要因の1つが、NTTデータグループの完全子会社化です。
NTTはNTTデータを完全子会社にするため、1株4000円でTOBを実施しました。買い付け代金の総額は約2兆3700億円です。
問題は、この資金をNTTが全額借入れで調達したことです。つまり、手元の利益ではなく、借金によって子会社化を進めたということです。
この結果、NTTグループ全体の有利子負債は大きく増加しました。
財務体質の悪化を受けて、格付け会社のS&Pグローバル・レーティングはNTTの格付けを引き下げました。格付けが下がると、企業が資金を借りる際の金利が高くなりやすくなります。
金利負担が増えれば、将来の利益を圧迫します。特に金利上昇局面では、この影響は無視できません。
さらに、2027年3月期の業績予想も市場の期待を下回りました。NTTが示した連結税引前利益の予想は前期比で減益となり、市場コンセンサスを下回る水準でした。
借金が増え、利益見通しも弱い。この組み合わせが、大口投資家の売りを誘いやすい状況を作っています。
ドコモ事業の収益悪化も懸念材料
NTTの業績を見るうえで、NTTドコモの収益低下も重要です。
NTTドコモの2026年3月期の営業利益は、前年から減少したとされています。背景には、KDDIやソフトバンクとの競争激化があります。
特に注目されているのが、スマートフォンの端末返却プログラムです。
この仕組みでは、利用者がスマートフォンを購入し、一定期間後に端末を返却することで、残りの支払いが免除されます。通信会社は、返却された端末を中古市場などで売却することを想定しています。
しかし、想定以上に端末の返却が増えたり、中古端末の価格が下がったりすると、通信会社は損失に備えるための引当金を積み増す必要があります。
動画では、この影響によりドコモが約300億円の引当金を追加で積む必要が生じたと説明されています。
また、KDDIやソフトバンクが料金プランの値上げによって収益改善を進める一方、ドコモは既存プランの価格を据え置いており、収益性改善で遅れを取っているという見方も示されています。
今後は、ドコモがARPU、つまり1契約あたりの平均収入をどこまで改善できるかが重要になります。
政府保有株の売却問題というオーバーハング
NTT株には、もう1つ大きな構造問題があります。それが政府保有株の売却です。
現在、NTTの大株主には財務大臣が含まれています。政府はNTT株を大量に保有しており、その規模は金額にして約5兆円とも説明されています。
政府内では、このNTT株を長期間かけて段階的に売却し、防衛財源に充てる議論が進んでいます。
このように、将来的に大量の株式が市場に出てくる可能性がある状態を、株式市場では「オーバーハング」と呼びます。
オーバーハングがあると、投資家は「将来、大量の売りが出るかもしれない」と考えます。そのため、株価の上値が重くなりやすくなります。
NTTは自社株買いも実施していますが、政府保有株の売却規模が大きいため、自社株買いだけで完全に吸収できるとは限りません。
この構造が、機関投資家の長期保有意欲を弱めている可能性があります。
IOWNはNTT株の長期的な希望材料
一方で、NTTには長期的な成長材料もあります。その代表がIOWNです。
IOWNとは、光電融合技術を中核とする次世代通信構想です。現在、世界では生成AIの普及により、データセンターの電力消費が急増しています。
AIを動かすには膨大な計算能力が必要であり、そのためには大量の電力が必要です。世界的に、AIと電力不足は大きな課題になっています。
NTTが進める光電融合技術は、従来は電気で行っていた処理の一部を光に置き換えることで、高速化と省電力化を目指すものです。
もしNTTの技術が世界のAIデータセンターで標準的に採用されるようになれば、NTTの評価は単なる通信会社から、AIインフラを支える企業へと大きく変わる可能性があります。
動画では、IOWNの商用化やグローバル企業との協業、将来的な電力効率改善の可能性が紹介されています。
ただし、このような長期材料が株価に反映されるまでには時間がかかります。短期的には信用買い残、格付け、業績、政府売却といった問題を乗り越える必要があります。
NTT株の強み・弱み・機会・脅威
ここで、NTT株の現状を整理します。
NTTの強みは、安定した配当と大企業としての信頼感です。株価が144円台まで下がったことで、配当利回りは約3.8%程度に達しているとされています。新NISAで長期保有する個人投資家にとっては、依然として魅力的に映る水準です。
また、自社株買いや長期的な技術開発力も評価材料です。
一方、弱みは財務体質の悪化です。NTTデータ完全子会社化に伴う借入増加、格付け引き下げ、業績予想の弱さは、投資家心理を冷やす要因になります。
機会としては、IOWNの商用化、ドコモの収益改善、金融事業の拡大などがあります。これらが順調に進めば、NTTの評価が見直される可能性があります。
脅威としては、信用買い残の多さ、株価下落時の強制決済リスク、政府保有株の売却、さらなる格下げリスクが挙げられます。
特に信用買い残2億5000万株という数字は、短期的な株価変動を大きくする要因になり得ます。
今後考えられる3つのシナリオ
動画では、NTT株の今後について3つのシナリオが示されています。
強気シナリオ
強気シナリオでは、株価が165円から185円程度まで回復する可能性が想定されています。
このシナリオが実現するには、信用買い残が大きく減少し、IOWNの商用化が順調に進み、ドコモのARPU改善が確認される必要があります。
さらに、政府保有株の売却が市場に大きな影響を与えない形で進むことも重要です。
ただし、これらの条件がすべて揃う必要があるため、現時点では簡単なシナリオではありません。
中立シナリオ
中立シナリオでは、株価が138円から155円程度のレンジで推移する展開が想定されています。
信用買い残が一気に解消されるわけではないものの、時間をかけて整理され、自社株買いや配当利回りが下値を支える展開です。
ドコモの業績も大きな悪化は避けるものの、強いサプライズもないという状態です。
動画では、この中立シナリオが現時点では最も現実的な展開として説明されています。
弱気シナリオ
弱気シナリオでは、株価が120円から135円程度まで下落する可能性が示されています。
株価が140円前後を明確に割り込むと、信用買いポジションの担保割れや強制決済が連鎖する可能性があります。
さらに、ドコモの収益悪化、追加の格下げ、政府保有株の売却スキーム具体化などが重なれば、下値模索が長期化する可能性もあります。
長期投資家はどう向き合うべきか
長期投資家にとって重要なのは、現物投資と信用取引を分けて考えることです。
現物でNTT株を長期保有している投資家にとっては、短期的な信用需給の悪化は一時的な問題として見ることもできます。信用買い残は、制度信用の期限があるため、いずれ整理されていきます。
ただし、その整理の過程で株価が大きく下がる可能性はあります。信用買い残の解消が穏やかに進むのか、それとも強制決済を伴って急激に進むのかは、今後の株価動向に大きく影響します。
一方、信用取引でNTT株を保有している人は、より慎重な管理が必要です。
追証が発生する水準、強制決済になるライン、自分の資金余力を必ず確認しておく必要があります。信用取引は、長期保有向きの現物投資とはまったく異なるリスクを持っているためです。
NTT株を見る際には、株価だけでなく、毎週発表される信用残高、ドコモの業績、IOWNの進捗、政府保有株の売却方針を確認することが重要です。
まとめ
今回のNTT株の下落は、単純に「安くなったから買い」や「下がっているから危険」と片付けられるものではありません。
背景には、信用買い残2億5000万株超、信用倍率42倍という極端な受給の歪みがあります。
2023年7月の25分割によってNTT株は少額で買いやすくなり、新NISAをきっかけに多くの個人投資家が参入しました。その結果、下落局面でも押し目買いやナンピン買いが増え、信用買い残が大きく膨らみました。
さらに、NTTデータ完全子会社化に伴う借入増加、格付け引き下げ、ドコモの収益悪化、政府保有株の売却問題といった材料も重なっています。
一方で、IOWNという長期的な成長材料も存在します。NTTがAI時代の通信・データセンターインフラ企業として再評価される可能性は残されています。
重要なのは、表面的な株価だけを見るのではなく、その背後にある受給、財務、業績、政策、技術開発の構造を理解することです。
NTT株は日本を代表する大型株であり、長期投資家にとって注目度の高い銘柄であることに変わりはありません。しかし、現在の局面では、信用取引による短期的な売り圧力と、長期的な成長期待がぶつかっている状態です。
投資判断を行う際には、自分の投資期間、資金余力、リスク許容度を確認したうえで、冷静に判断することが求められます。


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