本記事は、YouTube動画『エモリのグローバルマクロトレードはどのようにして作られたのか』の内容を基に構成しています。動画では、世界経済を大きな視点から捉えて投資判断につなげる「グローバルマクロトレード」がどのように形成されてきたのかについて、商社での商品取引、コモディティ分析、ヘッジファンド運用などの経験を交えながら詳しく語られています。
グローバルマクロという言葉は難しく聞こえるかもしれません。しかし、その基本的な考え方は比較的シンプルです。世界経済、金融政策、資金の流れ、市場参加者の心理などを大きな視点から捉え、その中で生じている「市場の歪み」を投資機会として利用するというものです。
動画では、ジョージ・ソロス氏の投資思想から影響を受けながら、現物取引や資産運用の経験を組み合わせることで、現在のグローバルマクロ戦略が形作られていった過程が紹介されています。
グローバルマクロトレードとは何か
動画では、グローバルマクロについて「地球規模で世の中を見る」という考え方が紹介されています。
世界で何が起きているのかを把握し、その出来事が株式、債券、為替、コモディティなどの価格にどのような影響を与えるのかを考え、投資利益につなげていく方法です。
重要なのは、特定の金融商品だけを見るのではなく、世界経済全体を俯瞰することです。
例えば、中央銀行が金融緩和を行えば市場に供給される資金が増えます。その資金が株式市場や商品市場に流れ込めば、資産価格を押し上げる可能性があります。
逆に金融引き締めが行われ、市場から資金が吸収されれば、株式やコモディティなどの価格に下落圧力がかかる場合があります。
このように、金融政策、景気、金利、為替、株式、コモディティなどの関係を横断的に分析するのがグローバルマクロの基本的な考え方です。
動画では「何をやってもいいが、根拠が必要」と説明されています。
つまり、投資対象そのものに制限があるわけではありません。株式でも、為替でも、債券でも、コモディティでも構いません。
重要なのは、世界経済をトップダウンで分析し、その投資判断に合理的な根拠があるかどうかです。
グローバルマクロ戦略の原点は商社での経験
現在のグローバルマクロ戦略を形成するうえで大きな影響を与えたのが、商社でのキャリアだったと語られています。
動画では、大手商社の住友商事に入り、さまざまな商品取引を経験したことが紹介されています。
その後、資産運用の世界にも携わるようになり、「実物の世界」と「金融市場の世界」の両方を経験することになります。
これはグローバルマクロを理解するうえで非常に重要な経験だったといいます。
金融市場では、チャートや経済指標だけを見ていると、実際の商品の需給や企業活動がどのように動いているのかが見えにくいことがあります。
一方、商社では実際に商品を仕入れたり販売したりするため、現実の需給を肌で感じることができます。
銅取引を通じて学んだ「実需」の世界
商社時代には、特に銅などの金属取引に関わっていました。
国内では住友金属鉱山や古河電工、三菱マテリアルなどの企業と取引しながら、実際の銅市場の需給や価格動向を見ていたと説明されています。
また、海外から商品を輸入したり輸出したりするため、多くの国を訪れる機会もありました。
こうした経験から、単純な金融市場の値動きだけではなく、「実際に世界でモノがどのように動いているのか」を理解するようになったといいます。
特にコモディティ市場では、生産量、在庫、需要、物流など、現実の需給が価格に大きな影響を与えます。
そのため、株価チャートだけを見る投資とは異なり、実物経済を見る力が重要になります。
世界最大級のメタルトレーディング会社で見た市場の現実
その後、ロンドンで当時世界最大級だった金属トレーディング会社に移り、商社時代とは桁違いの取引規模を目の当たりにしたと語られています。
取り扱う金属の量だけでなく、人脈、資金力、ビジネスルートなど、あらゆる面で規模が違っていたといいます。
動画では、金融機関から巨額の資金を調達しながら金属を大量に保有し、市場の価格形成にも影響を与えるような取引が行われていたことが紹介されています。
こうした世界を実際に経験したことで、市場価格というものが単純な需要と供給だけで決まっているわけではないことも実感したといいます。
資金力のあるプレーヤーがどのように行動しているのか、誰が市場を動かしているのかという視点も、グローバルマクロでは重要になります。
2004年の原油市場予測で注目を集める
その後、日本に戻ってからコモディティ分析を始めました。
動画では、自ら「コモディティストラテジスト」を名乗り、原油市場の見通しを分析していたことが紹介されています。
そして2004年頃、原油価格に関する予測が相次いで的中したことで、ロイター、ブルームバーグ、日本経済新聞、ウォール・ストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズなど、さまざまなメディアから取材を受けるようになったと語られています。
この経験を通じて、実需だけではなく資金の流れを見ることの重要性がさらに明確になっていきました。
原油をはじめとするコモディティ市場を分析するためには、世界経済だけではなく、中央銀行の金融政策や為替、金利、株式市場なども理解する必要があります。
つまり、1つの市場を理解しようとすると、その周辺にある別の市場も自然に見る必要が出てきます。
これが、現在の「マルチアセット」の考え方につながっていったと説明されています。
ジョージ・ソロスとの出会いが投資思想を変えた
もう1つ、現在の投資スタイルに大きな影響を与えた人物として紹介されているのが、著名投資家ジョージ・ソロス氏です。
ソロス氏は1992年の英ポンド危機において、英ポンドを大量に売ることで巨額の利益を上げたことで世界的に知られるようになりました。
動画では、1990年代前半にソロス氏の存在を知り、その投資思想を研究するようになったことが語られています。
特に強く影響を受けたのが「市場には歪みや偏見があり、そこに投資機会が存在する」という考え方でした。
市場の「歪み」を利益に変える
動画の中で繰り返し登場する重要な言葉が「歪み」です。
市場価格は常に正しいとは限りません。
本来であれば経済状況や企業業績から考えてこの価格になるはずなのに、実際の市場価格が大きく離れている場合があります。
その差が「歪み」です。
市場参加者の期待、思い込み、恐怖、楽観などが価格形成に影響するため、市場価格と現実との間にズレが生まれる場合があります。
グローバルマクロでは、このズレを投資チャンスとして捉えます。
動画では、「本来こうなるはずなのに、株価は違う場所にある」という状態を見つけ、その差が修正される方向へ投資するという考え方が説明されています。
これは、単純に「安いから買う」「高いから売る」という話ではありません。
なぜその価格になっているのか、市場参加者は何を期待しているのか、そして現実と期待の間にどの程度のズレがあるのかを考える必要があります。
ファンダメンタル分析とテクニカル分析だけでは足りない
一般的な投資では、企業業績や経済指標を見るファンダメンタル分析と、チャートを見るテクニカル分析がよく使われます。
しかし動画では、それだけでは十分ではないと説明されています。
さらに重要なのが市場参加者の心理です。
投資家が何を考えているのか。
どのような期待を持っているのか。
どのような偏見やバイアスを持っているのか。
こうした要素まで考えることで、市場価格がなぜ現在の位置にあるのかを理解できるようになります。
つまりグローバルマクロでは、「経済の現実」と「市場参加者が考えている世界」の両方を見る必要があります。
仮説が崩れたらすぐに撤退する
グローバルマクロ戦略でもう1つ重要なのがリスク管理です。
動画では、ソロス氏の考え方として「まず生き残れ。その後に儲けよ」という考え方が紹介されています。
投資では、すべての予測を当てることはできません。
重要なのは、間違ったときにどう行動するかです。
自分が考えていた市場シナリオが崩れた場合には、損失額にこだわるのではなく、その投資仮説そのものが間違っていたと判断してポジションを閉じます。
そして必要であれば、新しいシナリオへ柔軟に切り替えます。
この柔軟性が、長期間市場で生き残るために重要だと説明されています。
中央銀行の金融政策とマネーフローを見る
グローバルマクロでは、中央銀行の動きも非常に重要です。
中央銀行がどの程度の資産を保有しているのか。
市場に資金を供給しているのか。
それとも資金を回収しているのか。
こうした「流動性」を確認します。
市場に資金が大量に供給されれば、そのお金が株式、債券、コモディティ、為替などに流れ込む可能性があります。
逆に金融政策が引き締められれば、市場から資金が減り、資産価格に下落圧力がかかる可能性があります。
動画では、こうしたグローバルな資金の流れを可視化し、投資判断へ結びつけることが重要だと説明されています。
トップダウンで世界経済を見る
グローバルマクロの最大の特徴の1つが「トップダウンアプローチ」です。
まず世界経済全体を見ます。
次に、どの資産クラスへ資金が流れそうなのかを考えます。
そのうえで株式、債券、為替、コモディティなどの中から投資対象を選び、最後にいつ取引するのかを判断します。
つまり、
世界経済 → 資産クラス → 投資対象 → 売買タイミング
という順番で考えるわけです。
動画では、この方法によって細かなニュースや短期的な材料に振り回されにくくなると説明されています。
個別企業のニュースや政治家の発言などは市場を短期的に動かす場合があります。
しかしマクロの大きな方向性を考える場合、それらが必ずしも最重要情報とは限りません。
大局を見ることで、短期的なノイズと長期的な流れを区別することができます。
2008年のリーマンショックでもショートで利益を狙う
その後、ヘッジファンド運用にも携わることになります。
動画によれば、2008年5月頃にファンド運用を開始しました。
その直後、世界金融危機、いわゆるリーマンショックが発生します。
通常であれば株価急落によって多くの投資家が大きな損失を抱える局面でした。
しかしグローバルマクロでは、上昇相場だけを狙うわけではありません。
相場が下落すると判断すれば、ショートポジションを取ることもできます。
実際、動画ではショートを活用して利益を上げた経験が紹介されています。
この「上昇でも下落でも対応できる柔軟性」も、グローバルマクロの大きな特徴です。
相場は「予想」ではなく「想定」する
動画後半では、実際に相場を考える際の重要な考え方が紹介されています。
それが「予想ではなく想定する」という考え方です。
将来を完全に当てようとするのではありません。
過去の相場データを分析し、現在の状況と似た局面を探します。
そして、
「過去のパターンから考えると、今回はこうなる可能性が高そうだ」
と考えます。
ただし、そのシナリオが外れる可能性もあらかじめ想定しておきます。
つまり、1つの未来を断定するのではなく、複数のシナリオを考えながら行動するわけです。
動画では「すべては過去のデータに詰まっている」という考え方が示され、過去データを利用して再現性のある投資判断を目指すことが重要だとされています。
投資家心理とマネーフローを組み合わせる
過去データだけを見るわけでもありません。
最終的には、
投資家心理
投資家の行動
マネーフロー
といった要素を組み合わせます。
相場は人間が参加する市場であるため、経済合理性だけでは説明できない動きも少なくありません。
恐怖による売り、期待による買い、過度な楽観、過度な悲観などが価格を動かします。
だからこそ、経済データだけではなく、市場参加者がどのような心理状態にあるのかを見る必要があります。
グローバルマクロはヘッジファンドの王道戦略
動画では、グローバルマクロ戦略はヘッジファンド運用の中でも「王道」と呼ばれる投資手法だと説明されています。
世界経済の動向、金融政策、政治情勢などを分析しながら、株式、債券、通貨、コモディティなど幅広い資産を売買します。
そのため高い専門知識や経験が必要になります。
特定の銘柄だけを分析するのではなく、世界経済全体の構造を理解する必要があるからです。
ジョージ・ソロスと1992年の英ポンド危機
グローバルマクロを象徴する投資家として、動画では改めてジョージ・ソロス氏が紹介されています。
1992年、英国は欧州為替相場メカニズムの枠組みの中でポンドの為替水準を維持しようとしていました。
しかしソロス氏は、当時のポンドが割高になっていると判断し、大規模なポンド売りを仕掛けました。
イングランド銀行はポンド買い介入などで対抗しましたが、最終的にはポンドの下落を止めることができませんでした。
動画では、この取引によってソロス氏が最後の1日だけで約1200億円を稼いだとされるエピソードが紹介されています。
この出来事は、巨大な中央銀行に対して1人の投資家が勝った象徴的な出来事として知られるようになりました。
動画の出演者にとっても、この出来事は大きな衝撃だったと語られています。
ソロス流投資術から学べる考え方
動画では、ジョージ・ソロス氏の投資思想として、市場に向き合う際の重要な考え方も紹介されています。
市場は常に正しいとは限らないと考えること。
市場に生じている歪みを見つけること。
間違いに気づいたら早く認めること。
勝てる局面では積極的にポジションを取ること。
市場環境に応じてポジションを柔軟に調整すること。
そして、相場は予測するのではなく、その流れに乗ることです。
何より重要なのは「生き残ることが最優先」というリスク管理の考え方です。
これらはグローバルマクロだけではなく、あらゆる投資に応用できる考え方といえるでしょう。
長期投資と短期トレードを組み合わせる
動画では、資産運用の基本として長期的な株式ポートフォリオを持つことが前提だとされています。
そのうえで、短期トレードによって現金収入を作り、その利益を長期投資へ回すという考え方が紹介されています。
具体的にはCFD取引やオプション取引などを利用しながら短期的な収益機会を狙い、そこで得た資金を収益性のある銘柄への長期投資へ振り向けるという方法です。
つまり、
長期投資で資産形成を行う一方、短期トレードでキャッシュフローを作る
という2つの運用を組み合わせています。
「銘柄」だけでなく「運用手法」も分散する
一般的な分散投資では、複数の銘柄を保有することでリスクを分散します。
しかし動画では、もう1段階進んだ考え方が紹介されています。
それが「運用手法そのものを分散する」という発想です。
例えば株式の長期投資だけではなく、CFD、オプション、短期トレードなど複数の運用手法を持ちます。
そうすることで、株式市場が上昇しているときだけではなく、下落相場やレンジ相場など、さまざまな市場環境に対応できる可能性があります。
投資の「手札」を増やしておくことで、特定の市場環境だけに依存しない運用を目指すわけです。
グローバルマクロを学ぶうえで重要な3つの視点
動画全体を通して見ると、グローバルマクロを理解するうえで特に重要なのは「実体経済」「マネーフロー」「市場心理」の3つだと考えられます。
実体経済とは、企業活動、商品の需給、世界の物流など、現実の経済活動です。
マネーフローとは、中央銀行や機関投資家などが市場へ供給したり引き上げたりする資金の流れです。
そして市場心理とは、投資家が将来をどのように考えているのかという期待や恐怖、バイアスです。
グローバルマクロでは、この3つを別々に見るのではなく、互いにどのように影響し合っているのかを考えます。
ここが、単純なチャート分析や企業分析との大きな違いです。
グローバルマクロは「世界を見るための投資思考」
グローバルマクロという言葉から、複雑な経済指標を大量に分析する投資手法を想像する人もいるかもしれません。
しかし今回の動画を見ると、その本質はもう少し大きなところにあります。
重要なのは、1つのニュースや1つの銘柄だけを見るのではなく、世界経済の大きな流れを捉えることです。
中央銀行は何をしているのか。
世界のどこに資金が流れているのか。
投資家は何を期待しているのか。
そして、市場価格と経済の現実との間にどのようなズレがあるのか。
これらを総合的に考えることで、投資機会を探していきます。
まとめ
今回の動画では、グローバルマクロトレードがどのように形成されてきたのかについて、商社での現物取引、海外でのメタルトレーディング、コモディティ分析、ヘッジファンド運用などの経験を振り返りながら説明されました。
その原点にあるのは、実際の商品取引を通じて身につけた需給感覚です。
そこにジョージ・ソロス氏から学んだ「市場には歪みが存在する」という投資思想が加わり、さらに中央銀行の金融政策、マネーフロー、投資家心理、過去データなどを組み合わせることで、現在のグローバルマクロ戦略へと発展していったとされています。
特に重要なのは、市場を当てようとするのではなく「想定する」という考え方です。
過去データから可能性の高いシナリオを考え、その方向へ投資しながらも、シナリオが崩れればすぐに撤退します。
そして株式、債券、為替、コモディティなどを横断的に見ながら、市場に生じた歪みや資金の流れを捉えていきます。
グローバルマクロは決して簡単な投資手法ではありません。
しかし「細かなニュースに振り回されるのではなく、世界経済の大きな流れから投資を考える」という視点は、個人投資家にとっても市場を見るうえで有効な考え方といえるでしょう。


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