本記事は、YouTube動画『資産を貯めすぎないで。65歳でこの金額なら貯金はやめよう。』の内容を基に構成しています。
老後に備えて5000万円、あるいは1億円の資産を築いたとしても、お金を使うことに不安を感じる人は少なくありません。
「もう少し増えれば安心できる」と考えて貯蓄を続けても、実際に資産が増えると今度は減らすことが怖くなり、さらに高い目標金額を追いかけてしまうことがあります。
しかし、老後の資産形成では、貯めることだけでなく、貯めた資産をどのように取り崩し、生活に活用していくかという出口戦略が重要です。
今回の動画では、過去のS&P500の実績を使い、3000万円を運用しながら毎月一定額を取り崩した場合の資産推移を検証しています。
その結果、毎月10万円を20年間使い続けても、資産が大幅に増えたケースが確認されました。
一方で、資産を多く残すことが必ずしも豊かな老後につながるわけではないという、興味深い結果も示されています。
今回は、老後資金の取り崩し方法と、生活費の安定性を確保しながら資産運用を続けるための考え方を詳しく解説します。
3000万円から毎月10万円を使っても20年後に8900万円残る?
まず、65歳時点で3000万円の資産を保有しているケースを考えてみます。
毎月10万円ずつ取り崩せば、年間の支出は120万円です。これを20年間続けると、合計2400万円を使用することになります。
仮に3000万円を現金のまま保有し、利息や物価上昇を考慮しなければ、20年後の残高は600万円です。
ところが、同じ3000万円をS&P500で運用しながら取り崩すと、結果は大きく異なります。
S&P500の過去データを使った35年間の検証
動画では1972年から2025年までのS&P500の実績を使用し、運用開始年を1年ずつずらした35パターンを検証しています。
1972年に取り崩しを開始したケースから、2006年に開始したケースまで、各ケースについて20年間の資産推移を比較する方法です。
計算には配当を含むS&P500のリターンを使用し、ドル円相場の変動も反映した円ベースの結果が示されています。
3000万円から毎月10万円を取り崩した場合、20年後の資産残高は次のようになりました。
| 項目 | 20年後の資産残高 |
|---|---|
| 現金で保有した場合 | 600万円 |
| S&P500運用の中央値 | 8919万円 |
| S&P500運用の最少ケース | 2708万円 |
注目したいのは中央値の8919万円です。
20年間で2400万円を使ったにもかかわらず、当初の3000万円から資産が約3倍に増えた計算になります。
さらに、35パターンの中で最も残高が少なかったケースでも、約2708万円が残りました。
この結果から分かるのは、老後の取り崩しは必ずしも資産を減らし続ける行為ではないということです。
取り崩さずに残した資金は、その後も株式市場で運用されます。株価の上昇や配当によって資産が増えることで、生活費として引き出した金額を運用益が上回る場合があるのです。
ただし、これは特定の過去データに基づく検証結果です。将来も同じ結果になるとは限らず、為替相場や株価の推移、取り崩し開始時期によって結果は大きく変化します。
毎月12万5000円使っても中央値は約7200万円
それでは、取り崩す金額を増やした場合はどうなるのでしょうか。
月10万円ではなく、月12万5000円を取り崩すと、年間150万円、20年間で3000万円を使用する計算になります。
現金で保有していれば、当初の資産をちょうど使い切る金額です。
しかし、S&P500で運用を続けた場合、20年後の資産残高の中央値は約7200万円となりました。
一方、月15万円まで取り崩しを増やすと、20年後の中央値は5500万円以上残ったものの、35パターン中4パターンで途中の資産が枯渇しました。
つまり、中央値だけを見て取り崩し額を決めるのは危険だということです。
運用成績が良かった場合には十分な資産が残っても、株式市場が低迷した時期に取り崩しを始めると、途中で資産が尽きる可能性があります。
老後の資金計画では、平均的なケースだけでなく、厳しい市場環境でも生活を維持できるかを確認する必要があります。
65歳で5000万円、1億円あれば毎月いくら使える?
老後資金を考える際には、最初に必要な生活費を把握することが重要です。
例えば、年金の手取り収入が月20万円で、生活費が月30万円の場合、資産から取り崩す必要があるのは月10万円です。
月30万円すべてを貯蓄で用意する必要はありません。
逆に、年金収入だけで日常生活を維持できる場合、貯蓄は旅行や趣味、住宅の修繕などに使う資金として考えることができます。
資産1000万円~1億円を20年・30年で取り崩す場合
ここでは、運用せずに現金を均等に取り崩した場合を比較します。
| 保有資産 | 20年間で使う場合 | 30年間で使う場合 |
|---|---|---|
| 1000万円 | 月4.2万円 | 月2.8万円 |
| 2000万円 | 月8.3万円 | 月5.6万円 |
| 3000万円 | 月12.5万円 | 月8.3万円 |
| 5000万円 | 月20.8万円 | 月13.9万円 |
| 1億円 | 月41.7万円 | 月27.8万円 |
※物価上昇、税金、利息、運用益を考慮しない単純計算です。
例えば65歳で5000万円を保有していれば、95歳までの30年間、毎月約13万9000円を取り崩すことができます。
年金収入が月20万円なら、合計で月33万9000円程度を使える計算です。
1億円を保有していれば、運用しなくても30年間で月約27万8000円を取り崩せます。
もちろん、95歳以降も生活は続く可能性がありますし、医療費や介護費などの支出も考えておかなければなりません。
それでも、漠然と「老後資金はいくら必要なのか」と考えるより、年金で足りない金額はいくらで、それを何年間補う必要があるのかと考える方が、具体的な計画を立てやすくなります。
定額取り崩しと定率取り崩しでは老後生活が大きく変わる
資産の取り崩しでは、金額だけでなく方法も重要です。
代表的な方法には「定額取り崩し」と「定率取り崩し」があります。
動画では、2000年から取り崩しを始めたケースを使い、両者を比較しています。
2000年以降の米国株式市場は、ITバブル崩壊と2008年のリーマンショックを経験した厳しい時期でした。
定額取り崩しは毎月の生活費を安定させやすい
定額取り崩しとは、資産残高に関係なく、毎月または毎年一定の金額を引き出す方法です。
3000万円を運用しながら、毎年120万円、月換算で10万円を取り崩すケースが該当します。
株価が上昇しても下落しても、原則として引き出す金額は変わりません。
この方法で2000年から20年間取り崩した場合、最終残高は約2868万円でした。
20年間で2400万円を使用しながら、当初の3000万円に近い資産が残ったことになります。
定額取り崩しのメリットは、家計を管理しやすいことです。
年金に毎月10万円を上乗せできるため、日常生活の予算を組みやすくなります。
ただし、相場が暴落している時期でも同じ金額を売却するため、資産の減少を加速させる可能性があります。
定率取り崩しは資産が残りやすいが生活費が減る
定率取り崩しは、毎年の資産残高に一定の割合を掛けて引き出す方法です。
例えば、毎年残高の4%を取り崩すとします。
最初の資産が3000万円なら、初年度の取り崩し額は120万円です。
定額取り崩しと同じ金額から始まります。
しかし、残高が1500万円に減少すれば、4%は60万円となり、月換算では5万円に下がります。
この方法で2000年から20年間運用した場合、最終残高は約4523万円となりました。
定額取り崩しの約2868万円と比較すると、1655万円も多く残った計算です。
ところが、生活費として引き出せた金額を見ると、別の問題が浮かび上がります。
2009年には、月換算の受取額が約4万4000円まで減少していました。
もともと年金20万円に10万円を加え、月30万円で暮らす予定だった人の場合、実際に使えるお金は24万4000円程度になります。
株価が下がっても、食費や電気代、住居費などが同じ割合で下がるわけではありません。
つまり、定率取り崩しは資産を守りやすい一方、株価下落時に生活水準を維持しにくいという弱点があります。
最終的な残高が多かったのは、相場が悪い時期に引き出す金額を大きく減らしたことも理由の1つなのです。
投資信託の口数を均等に売却する方法もある
もう1つの方法として、保有する投資信託の口数を一定期間で均等に売却する方法があります。
例えば、保有口数を20等分し、毎年そのうちの1つを売却すれば、20年間で全口数を売り切ることになります。
動画の2000年開始のケースでは、最初の年の受取額は月換算約12万5000円でしたが、最後の年には約32万8000円となりました。
株価が上昇すれば、同じ口数を売却しても受け取れる金額が増えるためです。
ただし、65歳から開始した場合、受取額が最も大きかったのは83歳の年でした。
若くて元気なうちに旅行や趣味を楽しみたい人にとっては、支出したい時期と受取額が増える時期が一致しない可能性があります。
さらに、20年後には投資信託をすべて売却するため、それ以降の生活費について別の備えが必要になります。
資産の出口戦略では、最終的な残高だけでなく、人生のどの時期にいくら使えるかが重要です。
老後の資産取り崩しで最も怖い「リターンの順序リスク」
株式投資を続けながら取り崩す場合、特に注意したいのが「リターンの順序リスク」です。
これは、運用期間全体の平均リターンが同じでも、株価の上昇や下落が起こる順序によって、最終的な資産残高が大きく変化するリスクを指します。
特に取り崩し開始直後に大きな暴落が起きると、資産寿命に深刻な影響を与えることがあります。
S&P500でも50%以上下落した時期がある
S&P500は長期的に成長してきた代表的な米国株価指数ですが、過去には大幅な下落を経験しています。
動画では、主な暴落として次の事例が紹介されています。
| 出来事 | S&P500の最大下落率の目安 |
|---|---|
| ITバブル崩壊 | 約49% |
| リーマンショック | 約57% |
| コロナショック | 約34% |
2007年10月の高値をS&P500が再び上回ったのは2013年3月で、約5年半を要しました。
ただし、これは主にドル建ての価格指数による比較であり、配当込みのリターンや円換算の評価額では回復時期が異なります。
長期チャートでは、一時的に下落した後に回復したように見えます。
しかし、その間も生活費の支払いは続きます。
現役世代であれば、暴落時に売却せず回復を待つ選択がしやすいかもしれません。
一方、退職後に資産を取り崩して生活している場合は、株価が下がっていても必要な資金を引き出さなければならないことがあります。
株価が戻っても資産が元に戻るとは限らない
例えば、1個1万円の投資商品を10個保有しているとします。
当初の資産価値は10万円です。
これが半値の5000円になれば、資産価値は5万円に減ります。
売却せずに保有していれば、価格が1万円に回復した時点で資産価値も10万円に戻ります。
しかし、価格が5000円のときに生活費として2万円が必要になり、4個を売却した場合はどうでしょうか。
保有数量は6個に減少します。
その後、価格が1万円に戻っても、資産価値は6万円にしかなりません。
売却した4個は、株価が回復しても戻ってこないためです。
このように、株価が下落している時期の取り崩しは、その後の資産回復力を低下させる可能性があります。
だからといって、老後資金をすべて現金にすればよいというわけでもありません。
現金だけでは株式市場の成長を取り込めず、物価上昇によって購買力が低下するリスクがあります。
そこで重要になるのが、運用資産と生活資金を組み合わせる方法です。
定額取り崩し・定率取り崩し・現金を組み合わせた「蓄電池戦略」
動画では、生活費を安定させながら株式運用を続ける方法として、「蓄電池戦略」が紹介されています。
これは、定率取り崩しと定額取り崩しのメリットを組み合わせる考え方です。
仕組みは太陽光発電に例えられています。
太陽光発電は晴れた日に多くの電気を生み出しますが、曇りの日には発電量が減ります。
それでも家庭では、冷蔵庫や照明などに一定の電力が必要です。
そこで、晴れた日に発電した電気を蓄電池に貯め、発電量が少ない日に使用します。
これを資産運用に置き換えます。
S&P500が太陽光パネル、現金が蓄電池、毎月の生活費が家庭で使う電気という関係です。
運用資産からは毎年一定割合を取り崩し、その資金を現金として確保します。
一方、日常生活では現金から毎月一定額を使用します。
つまり、運用資産からは定率で引き出し、生活費は定額で受け取るという仕組みです。
これは、老後資金を用途や使用時期に応じて複数の資産に分ける「バケット戦略」に近い考え方です。
3000万円のうち600万円を現金で確保する
具体的なシミュレーションを見てみましょう。
当初の資産は3000万円です。
このうち600万円を現金で確保し、残りの2400万円をS&P500で運用します。
生活費として毎月10万円、年間120万円を取り崩す計画です。
現金600万円は、ちょうど5年分の生活補填資金に相当します。
運用資産からは、毎年初めに残高の5%を現金口座へ移します。
この5%という数字は、動画の比較のために設定された仮定であり、一般的に安全と保証された取り崩し率ではありません。
初年度は2400万円の5%に当たる120万円を現金に移します。
同時に生活費として120万円を使うため、現金残高は600万円のままです。
翌年、運用資産が3000万円に増えたと仮定すると、5%の150万円を現金に移します。
生活費120万円を差し引いても30万円が残るため、現金残高は630万円に増えます。
反対に、運用資産が1200万円まで減少した場合、5%は60万円です。
生活費120万円との差額60万円を現金から補うため、現金残高は60万円減少します。
この仕組みによって、株価が下落した年でも生活費を急激に減らす必要がなくなります。
ただし、暴落時にも運用資産の5%を売却するため、安値での売却を完全に避けられるわけではありません。
2000年開始でも20年間、毎月10万円の取り崩しを維持
この蓄電池戦略を、ITバブル崩壊とリーマンショックを経験した2000年開始のケースに適用すると、興味深い結果になりました。
3000万円からスタートし、20年間にわたって月10万円を取り崩したにもかかわらず、最終的な総資産は約3012万円となりました。
当初の資産とほぼ同じ金額が残った計算です。
さらに、20年間を通じて毎月10万円の生活費を減額する必要はありませんでした。
運用資産から当初設定した5%を超えて追加売却することもなかったとされています。
ただし、現金残高が常に十分だったわけではありません。
最も少なかった年末には約64万円まで減少しました。
これは生活補填資金の約6か月分に相当します。
したがって、蓄電池戦略を採用すれば必ず安心できるというわけではなく、現金残高の推移を定期的に確認する必要があります。
現金は何年分確保すればよいのか?
蓄電池戦略を考える際に重要なのが、現金を何年分確保するかという問題です。
現金を多く保有すれば、株価暴落時にも生活費を確保しやすくなります。
一方、現金を増やしすぎると株式で運用できる資金が減るため、長期的な資産成長には不利になる可能性があります。
3年分・5年分・7年分を比較
毎月10万円を取り崩す場合、必要な現金は次のようになります。
| 確保する期間 | 現金保有額 |
|---|---|
| 3年分 | 360万円 |
| 5年分 | 600万円 |
| 7年分 | 840万円 |
動画では、2000年から取り崩しを開始したケースについて、それぞれを比較しています。
3年分の現金を確保した場合、途中の2年間で現金が不足し、合計50万円を追加で売却する必要がありました。
一方、5年分と7年分の現金を確保した場合、予定外の追加売却は発生しませんでした。
ただし、最終的な総資産は現金保有額が多いほど少なくなる結果となっています。
現金を厚く確保するほど、株式市場の成長を取り込める金額が減少するためです。
現金の保有期間に万人共通の正解はありません。
生活費をある程度減らせる人であれば、現金を少なめにして運用比率を高める選択も考えられます。
反対に、年金以外の収入が少なく、相場が悪くても一定の生活水準を維持したい人には、現金を厚めに確保する考え方が適しています。
35パターンすべてで20年間の取り崩しを継続
動画では、5年分の現金を確保する蓄電池戦略について、1972年から2006年までの35パターンを検証しています。
その結果、すべてのパターンで20年間、月10万円の取り崩しを継続できました。
20年後の総資産の中央値は約6354万円です。
全額をS&P500で運用し、毎月10万円を定額で取り崩した場合の中央値は約8919万円でした。
つまり、現金を確保した戦略では、最終的な資産残高が中央値で約2565万円少なくなりました。
これは現金を保有することによる運用機会の損失と考えられます。
ただし、その代わりとして、生活費の一部を株式市場から切り離して確保することができます。
株価が大幅に下落した局面でも、手元に数年分の現金があれば、生活費をすぐに削減しなければならない状況を避けやすくなります。
資産運用ではリターンの大きさが注目されがちですが、退職後には生活の安定性も重要な判断材料となります。
老後の出口戦略で決めるべき3つのルール
ここまでの検証を踏まえると、老後の資産取り崩しでは次の3つを決めることが重要です。
1. 資産から毎月いくら受け取るのか
最初に決めるのは、年金収入だけでは不足する生活費です。
例えば、年金が月20万円、必要な生活費が月30万円なら、取り崩す金額は月10万円です。
65歳から95歳までの30年間を想定する場合、運用しなければ合計3600万円が必要になります。
ただし、これは毎年同額を使う場合の計算であり、物価上昇や臨時支出は含まれていません。
また、住宅の修繕費、医療費、介護費、家族に残したい資金などは、日常生活の取り崩し資金とは分けて考えることが望まれます。
2. どのような方法で取り崩すのか
次に、取り崩し方法を決定します。
定額取り崩しは生活費を安定させやすい一方、相場下落時には資産を大きく減らす可能性があります。
定率取り崩しは資産残高に応じて引き出す金額を調整するため、資産の枯渇リスクを抑えやすいものの、生活費が大幅に減少する場合があります。
動画で紹介された蓄電池戦略は、この2つの特徴を組み合わせた方法です。
どの方法が適しているかは、年金収入、生活費の柔軟性、運用資産の額などによって異なります。
3. 現金を何年分確保するのか
最後に、現金の保有額を決めます。
月10万円を取り崩す計画なら、5年分は600万円です。
ただし、5年分の現金を保有していれば、どのような暴落にも対応できるというわけではありません。
株式市場が長期間低迷する場合や、想定以上の支出が発生した場合には、現金が不足する可能性があります。
そこで、年に1度は資産残高と現金残高を確認し、必要に応じて取り崩し額や運用資産の売却方法を見直すことが重要です。
例えば、現金が残り2年分まで減少したら、支出を抑えるか、現金を補充する方法を検討するといったルールを事前に設定しておくことも考えられます。
物価上昇を考えると老後資金はさらに慎重な計画が必要
今回のシミュレーションでは、取り崩す金額を20年間一定としています。
しかし、実際の生活では物価上昇も考慮しなければなりません。
仮に物価が毎年2%上昇した場合、20年後には現在の10万円と同じ購買力を維持するために、約14万9000円が必要になります。
つまり、20年間ずっと月10万円を取り崩していると、名目上の受取額は同じでも、実際に購入できる商品やサービスの量は減ってしまいます。
そのため、老後資金の計画では、最初に決めた取り崩し額を固定するだけではなく、物価上昇に合わせた支出の見直しも必要です。
また、動画の検証では配当込みのS&P500と為替変動を考慮していますが、実際の投資では税金、投資信託の信託報酬、売買に伴う費用なども資産残高に影響します。
さらに、今回紹介された主な検証期間は20年間です。
65歳から95歳までの30年間を想定する人は、30年間の取り崩しでも資産を維持できるか、別途確認する必要があります。
特に、今回の過去データは1972年から2025年までという特定の期間に基づくものであり、将来の株式市場が同様の成績を残すことを保証するものではありません。
お金を貯める目的は、人生を豊かにすること
動画の最後には、投稿者の祖母との思い出が紹介されています。
幼い頃、夏休みに祖母の家へ遊びに行くと、祖母は古いがま口財布から1000円札を取り出し、そっと手渡してくれたそうです。
祖母は自分のためにはあまりお金を使わず、いつも似たような服を着ていました。
なぜ自分のものを買わないのかと尋ねたところ、祖母は「お金は、使いたい人がおるうちに使うもんよ」と答えたといいます。
しかし、高校生になる頃にはお小遣いを受け取ることが照れくさくなり、祖母が差し出したお金を断ってしまいました。
結果的に、それが祖母からお小遣いを受け取る最後の機会になったそうです。
この話は、資産形成の目的を考えるうえで重要な示唆を与えています。
お金には、将来の生活を守る役割があります。
一方で、旅行や趣味を楽しんだり、大切な人と時間を過ごしたりするための役割もあります。
老後資金を十分に貯めたとしても、使うことを先延ばしにし続ければ、年齢や健康状態の変化によって、希望していた経験ができなくなる可能性があります。
資産を残すこと自体が悪いわけではありませんが、何のために資産を築いてきたのかを考えることも大切です。
まとめ:65歳で貯金を増やし続けるより「使う計画」を考えることが重要
老後資金を考える際、多くの人は5000万円、1億円といった目標金額に注目します。
しかし、今回の動画で示されたのは、資産額そのものよりも、取り崩し方によって老後生活が大きく変わるということです。
過去のS&P500のデータを使った検証では、3000万円から毎月10万円を20年間取り崩した場合でも、20年後の資産残高の中央値は約8919万円となりました。
一方、取り崩し額を増やすと資産が途中で枯渇するケースもあり、運用を続ければ必ず資産が残るわけではありません。
また、定率取り崩しでは最終的な資産残高が多くなったものの、相場の悪い時期には生活費として受け取れる金額が大幅に減少しました。
こうした問題を緩和する方法として紹介されたのが、運用資産からの定率取り崩しと、現金からの定額取り崩しを組み合わせる蓄電池戦略です。
動画の検証では、3000万円のうち600万円を現金として確保することで、35パターンすべてにおいて20年間、毎月10万円の受け取りを継続できました。
ただし、これはあくまで過去の実績に基づくものであり、将来の安全性を保証するものではありません。
65歳時点でいくら貯金があれば十分なのかについても、すべての人に共通する金額はありません。
重要なのは、年金収入と生活費の差額、想定する老後期間、医療・介護などの予備資金を把握し、無理のない取り崩し計画を立てることです。
そして、資産を増やすことだけでなく、元気なうちにお金を使い、人生を楽しむことも老後の資産管理における大切な目標といえるでしょう。
貯蓄を続けることに不安を感じている人ほど、これからは「いくら貯めれば安心か」だけでなく、「今ある資産でどのような暮らしができるか」を考えてみる価値がありそうです。


コメント