東大卒ポーカー王者がAI・半導体株の暴落を警戒する理由とは?木原直哉氏が語る「2年後の未来」と負けない投資術

本記事は、YouTube動画『トップポーカープレイヤーに学ぶ株式投資術』の内容を基に構成しています。

AI(人工知能)関連株や半導体株が株式市場を牽引するなか、世界トップクラスのポーカープレイヤーであり、個人投資家でもある木原直哉氏が、AI関連銘柄の将来に慎重な見方を示しました。

木原氏は、AIの技術進歩そのものには非常に強気です。しかし、AIが急速に進化するからこそ、現在のAIブームや半導体株の高値が長続きするとは限らないと考えています。

特に注目されるのが、今後2年程度でAIと人間の能力差が決定的になり、AIサービスの価格競争が激化するという予測です。

また、半導体市場ではメモリー価格の急騰を警戒する一方、半導体製造を支える中小企業や、人間ならではの価値を提供するサービス業に投資機会があると指摘しています。

今回は、ポーカーと株式投資の共通点から、AI・半導体市場の将来、フィジカルAIの可能性、AI時代に価値が上がる職業まで、木原氏の投資哲学を詳しく解説します。

目次

東大卒のポーカー世界王者・木原直哉氏とは

木原直哉氏は1981年に北海道で生まれ、東京大学理学部を卒業したプロポーカープレイヤーです。

世界最大級のポーカー大会であるWSOP(ワールド・シリーズ・オブ・ポーカー)では、日本人として初めて優勝者に贈られるゴールドブレスレットを獲得しました。

さらに2026年のWSOPでは新たに2つのブレスレットを獲得し、通算3個のブレスレットを持つトッププレイヤーとなりました。

WSOPのブレスレットは、ゴルフでいうツアー大会の優勝タイトルに近いものです。大会によって規模や競技形式は異なりますが、世界的に高い評価を受ける実績です。

ポーカー大会の優勝賞金は1億円を超えることも

木原氏によると、2012年に優勝した大会の賞金は約50万ドルで、当時の為替レートでは約3,900万円でした。

その後、2026年に獲得した2つのタイトルでは、賞金がそれぞれ約40万ドルと約30万ドルとなり、合計で約70万ドルに達したといいます。

日本円に換算すると約1億1,000万円という規模です。

ただし、ポーカー大会は高額な賞金を獲得できる一方、参加費を失うリスクも大きい競技です。

例えば、参加費1万ドルの大会に10回出場し、すべて敗退すれば10万ドルの損失となります。

そのため、プロポーカープレイヤーの多くは大会だけで生計を立てるのではなく、カジノで行われるキャッシュゲームを主な収入源としています。

ポーカーと株式投資には多くの共通点がある

木原氏は、ポーカーと株式投資について、非常によく似たゲームだと説明しています。

ポーカーは運だけで勝敗が決まるものではありません。相手の行動や確率を分析し、自分に有利な状況で勝負する能力が求められます。

一方、株式投資でも企業価値や市場環境を分析し、将来の値上がりが期待できる銘柄を選択します。

どちらも不確実性のある状況で意思決定を繰り返し、長期的に利益を積み重ねることが重要です。

実際、海外では優秀なポーカープレイヤーが投資ファンドに採用されるケースもあるといいます。

木原氏自身も株式投資に本格的に取り組み、2024年以降は株式投資の利益で生活費を賄うようになりました。

現在ではポーカーよりも株式投資が活動の中心となり、日本国内で企業分析を行う時間が増えているそうです。

ポーカーより株式投資の方が生活費を稼ぎやすい理由

木原氏は、ポーカーと株式投資の両方を経験した立場から、興味深い比較をしています。

それは、少額の利益を得る段階ではポーカーの方が容易である一方、生活費を安定的に稼ぐ段階では株式投資の方が有利だという考え方です。

ポーカーでは、実力を高めれば比較的小さな利益を積み重ねられるようになります。しかし、そこから生活できるほどの利益を確保するには、より高いレートで戦う必要があります。

高額なゲームになるほど相手のレベルも上がるため、安定して勝つことが難しくなります。

一方、株式投資は継続的に利益を出せる段階に到達すること自体が難しいものの、その実力を身につければ投資資金を増やすことで利益の絶対額を拡大できる可能性があります。

つまり、ポーカーでは小さな利益から大きな利益への壁が高いのに対し、株式投資では勝てる仕組みを確立した後の資金規模の拡大が比較的容易だというわけです。

もちろん、株式投資でも資金量の増加に伴って流動性や価格変動の問題が生じます。しかし、木原氏は両者の違いを理解したうえで、現在は株式投資を中心に活動しています。

木原直哉氏がAI・半導体関連株を積極的に買わない理由

現在の株式市場では、生成AIの普及を背景に半導体関連企業への期待が高まっています。

AI向け半導体や半導体製造装置、メモリー関連企業などに投資資金が集まり、大幅に株価が上昇した銘柄もあります。

しかし、木原氏はこうしたAI関連株の上昇に積極的には参加していません。

半導体大手やAI関連の代表的な銘柄についても、短期売買で触れることはあるものの、基本的には長期投資の対象としていないそうです。

その理由は、AIの将来性を否定しているからではありません。

むしろ木原氏は、一般的な投資家以上にAIの進化を高く評価しています。

問題は、AIが進歩することと、現在のAI関連企業が将来も高い利益を維持できることは別問題だという点です。

木原氏の投資スタイルは、将来利益が拡大すると考えられる企業を、株価が上昇する前に買って待つというものです。

そのため、すでに市場の期待が大きく織り込まれている企業には慎重になります。

AIは2年後に人間を圧倒する?ゲームの歴史から考える未来

木原氏がAI関連株に慎重な理由を理解するには、AIと人間の能力差についての考え方が重要です。

木原氏は囲碁、将棋、バックギャモン、麻雀、ポーカーなど、さまざまな頭脳ゲームを経験してきました。

そして、これらの競技でAIが人間の能力に追いつき、さらに追い越していく過程を見てきたといいます。

AIと人間が互角の時期に最も注目が集まる

チェスでは1990年代後半、将棋では2010年代前半、囲碁では2016年前後に、人間のトッププレイヤーとAIの対決が大きな話題となりました。

この時期には、人間とAIのどちらが勝つのかという競争そのものが注目されました。

ところが、AIの実力がさらに向上し、人間がほとんど勝てない状況になると、対決への関心は急速に薄れていきました。

木原氏によれば、AI同士の対決についても同様の現象が見られたといいます。

人間とAIが互角のときには、AIの進歩そのものが大きなニュースになります。しかし、AIが圧倒的に強くなると、その能力が当たり前になってしまうのです。

動画では、100メートル走に例えて説明しています。

仮にロボットが人間の記録を破れば、最初は大きな話題になります。

しかし、その後にロボットが7秒、6秒、5秒と記録を更新し続けても、人々が同じ熱量で関心を持ち続けるとは限りません。

AIについても、これと同じことが起こるのではないかという見方です。

現在の生成AIは人間と互角の段階にある

木原氏は、現在の生成AIが人間とほぼ互角の段階にあると考えています。

例えば、ChatGPTなどの生成AIは情報収集や文章作成などで非常に優れた能力を示します。

一方、明らかな間違いをしたり、意味の通らない回答をしたりすることもあります。

人間より優れた部分と、人間の方が優れている部分が混在している状況です。

しかし、過去の頭脳ゲームにおけるAIの進化を考えると、こうした状況は長続きしない可能性があります。

木原氏は、今後約2年でAIの能力がさらに向上し、多くの分野で人間がAIにかなわないと認めるようになると予測しています。

これは動画内で示された木原氏個人の予測であり、実現が確定しているわけではありません。

ただし、AIの進歩が非常に速いという認識は、木原氏の投資判断の重要な前提となっています。

AIが進化すると、なぜAI企業の利益が減る可能性があるのか

ここで重要なのが、AIの技術進歩とAI関連企業の収益性の関係です。

一般的には、AIの性能が上がるほど利用者が増え、AI企業の利益も拡大すると考えられます。

しかし、木原氏は必ずしもそうならないと予測しています。

その理由は、AIサービスが高度化すると、各社の製品に対する利用者の評価が変わる可能性があるためです。

ChatGPTとClaudeの競争はいつまで続くのか

現在、生成AI市場ではChatGPTやClaudeなどが競争しています。

利用者は新しいモデルが登場するたびに性能を比較し、より優れたサービスに課金することがあります。

しかし、仮にどちらのAIも人間の能力を大幅に超え、一般的な仕事を十分にこなせるようになったらどうでしょうか。

利用者にとって、わずかな性能差の重要性が低下する可能性があります。

例えば、電卓で普通の計算をするだけなら、高額な製品でなくても十分です。

同じように、生成AIが一般的な業務を問題なく処理できる段階になれば、利用者は性能より価格を重視するようになるかもしれません。

木原氏は、こうした競争がAIサービスの利用料金を引き下げると考えています。

AIの利用者は増えても、単価が下がる可能性

木原氏が特に強調しているのは、AIの需要そのものが減るとは考えていない点です。

むしろAIを利用する人や企業は今後さらに増えると予測しています。

ただし、利用者が増えても、1人当たりの利用料金やサービス単価が下がれば、企業の収益が期待ほど伸びない可能性があります。

例えば、現在は高い利用料金を支払っている顧客でも、将来は低価格のAIで十分になるかもしれません。

過去にはゲームソフトが1本6,000~7,000円程度で販売されていた時代がありましたが、現在では低価格や無料で遊べるゲームも数多く存在します。

スマートフォンについても、新しい機種が登場するたびに大きな性能向上を実感できた時代から、日常的な用途では旧型でも十分と考える利用者が増える段階へ移行してきました。

AIサービスでも同様に、性能の向上が必ずしも高価格の維持につながらない可能性があります。

ただし、AIを利用する総量の増加によって単価低下を補える可能性もあるため、価格低下だけで企業全体の売上高や利益が減少すると決まるわけではありません。

ソフトバンクグループとOpenAIへの巨額投資に潜むリスク

動画では、ソフトバンクグループの孫正義氏によるAI投資についても議論されています。

ソフトバンクグループはAI分野への投資を重要な戦略としており、OpenAIへの投資も大きな注目を集めています。

番組内では、年利4.75%程度の資金調達に関する話題も取り上げられました。

仮に1,000万円を年利4.75%で調達すれば、年間47万5,000円の利息負担が発生する計算です。

企業が借り入れによって巨額の投資を行う場合、その資金調達コストを上回る利益や企業価値の上昇を実現する必要があります。

木原氏は、孫氏の投資判断について、その規模や発想が非常に大きいため、外部から簡単に評価することはできないとしています。

その一方で、特定のAI企業に大きな資金を投じることへの警戒感も示しました。

例えば、OpenAIが競合企業との競争で劣勢になった場合や、期待された企業価値を実現できなかった場合には、投資家側にも影響が及ぶ可能性があります。

また、未上場企業への巨額投資では、将来の株式上場や株式売却などによって投資資金を回収できるかどうかも重要になります。

もっとも、木原氏は孫氏の戦略が間違っていると断定しているわけではありません。

自分には理解できないほど大きな投資判断であり、結果的に孫氏の見通しが正しい可能性もあると述べています。

ここでも、木原氏の基本姿勢は一貫しています。

自分が十分に理解できない投資対象には、大きなリスクを取らないという考え方です。

半導体メモリー価格はバブルなのか?5倍に急騰した市場への警戒

AI関連株のなかでも、木原氏が特に警戒しているのが半導体メモリー市場です。

AIデータセンターの建設や高性能な計算処理への需要拡大によって、半導体市場では一部製品の価格が大きく上昇しています。

動画では、メモリー価格が約2年前の5倍になっているとの認識が示されました。

木原氏は、このような価格上昇について、少なくともメモリー市場ではバブル的な状況になっている可能性があると考えています。

100円の商品が500円になったときの危険性

木原氏は、半導体価格の上昇を分かりやすい例で説明しています。

例えば、2年前に100円だった商品が、現在500円になっているとします。

通常の物価上昇を考えれば、100円の商品が150円になっただけでも大幅な値上げです。

ところが、実際には500円まで上昇しているとすれば、需要と供給のバランスが大きく崩れている可能性があります。

もし将来的に供給量が増え、価格が500円から150円へ戻ったとしても、それ自体は不自然ではないという考え方です。

500円から150円への下落率は70%です。

もちろん、動画で挙げられた価格は市場の状況を説明するための例であり、すべての半導体メモリー製品が同じ価格推移をたどっているわけではありません。

それでも、現在の高価格を前提に企業の利益が予想されている場合、価格下落が業績に大きな影響を与える可能性があります。

半導体需要の増加と株価上昇は別問題

木原氏は、半導体の需要が今後減少するとは考えていません。

AIの利用が拡大すれば、必要となる半導体の数量も増えると予測しています。

しかし、販売数量が増えても、製品価格が大幅に下落すれば利益が減る可能性があります。

例えば、半導体の販売数量が2倍になっても、販売価格が5分の1になれば、単純計算で売上高は元の40%になります。

実際の企業業績は製品構成や原価、設備投資などによって変わりますが、需要の拡大だけで利益成長を判断することは危険だというわけです。

株式市場では、将来の高成長を期待して株価が先行して上昇することがあります。

そのため、企業の事業自体が成長していても、市場の期待に届かなければ株価が下落する可能性があります。

木原氏がAI関連株に慎重なのは、このような期待と実際の収益の差を警戒しているためです。

木原氏は2年後のAI・半導体株の下落を予測

木原氏は、AI関連株について今後2年程度の時間軸で下落リスクを警戒しています。

ただし、ここで重要なのは、今すぐ株価が下がると断定しているわけではないことです。

例えば、今後半年間はさらに株価が上昇し、その後に下落する可能性もあります。

1年間上昇が続いた後に大幅な調整が起こる可能性もあります。

あるいは、すでに株価が天井をつけている可能性も否定できません。

木原氏は、最終的な方向性を予測できたとしても、そこに至るまでの値動きを正確に当てることは難しいと説明しています。

この点は投資家にとって非常に重要です。

例えば、将来株価が下落すると考えて空売りをしても、その前に株価が大幅に上昇すれば大きな損失を被る可能性があります。

反対に、上昇相場が続いているからといって高値で買い進めれば、将来の価格調整に巻き込まれる危険があります。

木原氏は、こうした不確実性を理解したうえで、あえて投資しないという判断を選択しています。

ポーカー王者が重視する「負けない投資」とは

木原氏の投資哲学を象徴するのが、ハイリスク・ハイリターンを追求するのではなく、ローリスク・ミドルリターンを目指すという考え方です。

多くの投資家は短期間で株価が2倍、3倍になる銘柄に魅力を感じます。

しかし、木原氏は大幅な値上がりの可能性があっても、大きな損失を被る危険性が高ければ投資を避けます。

これは、ポーカーで長期的に利益を出すための考え方にも通じています。

有利な状況で勝負し、不利な状況では無理に参加しないことが重要なのです。

100円の株を150円で売る投資を繰り返す

動画では、100円のものを150円にすることができれば、それで十分だという考え方が示されています。

そして、利益を確定した後は、次に100円から150円になる可能性が高い投資対象を探します。

大切なのは、1回の投資で最大限の利益を得ることではありません。

大きな損失を避けながら、期待値の高い投資を積み重ねることです。

もちろん、実際の株式投資では将来の株価上昇が保証されるわけではありません。

そのため、木原氏は企業の事業内容や将来の利益成長を詳しく分析し、できるだけ有利な価格で投資することを重視しています。

大きく勝つことより大きく負けないことを優先

ポーカーでは、感情的になって無理な勝負を続けるプレイヤーほど大きな損失を出しやすくなります。

株式投資でも同じです。

周囲がAI関連株で利益を出しているからといって、自分も急いで買う必要はありません。

相場が盛り上がっているときほど、冷静にリスクと期待リターンを比較することが大切です。

木原氏の投資哲学は、株価の上昇に乗り遅れることよりも、十分に理解していない銘柄で損失を出すことを警戒するものです。

AI・半導体市場で注目するのは時価総額200億円規模の中小企業

木原氏はAI関連株を全面的に避けているわけではありません。

半導体の製造数量が今後増加すること自体には強気の見方を持っており、その恩恵を受ける可能性がある企業には投資しているといいます。

特に注目しているのが、時価総額200億円程度の小規模な企業です。

こうした企業は、半導体大手ほど注目されていない一方、特定の技術や部品の需要が増えれば業績が大きく変化する可能性があります。

半導体の微細化から投資先を探す

木原氏が紹介した企業分析の例が、半導体の微細化です。

半導体は性能向上のために、より小さく、より高密度に製造される方向へ進んできました。

しかし、微細化が進むと製造工程が複雑になり、製品の破損や不良を防ぐことが重要になります。

そこで木原氏は、次のように考えます。

半導体が小さくなれば、どのような問題が起こるのか。

その問題を解決するためには、どのような材料や装置が必要になるのか。

必要となる部品や装置を製造している企業はどこなのか。

このように、技術進歩から生じる新たな需要を予測し、その恩恵を受ける企業を探していきます。

単純に「AIが成長するから半導体株を買う」という発想ではなく、成長の過程で必要となる技術や設備を掘り下げる投資手法です。

大企業より中小企業の方が利益成長のインパクトが大きい

木原氏が小規模企業を重視する理由は、事業規模に対する成長の影響が大きいためです。

例えば、売上高1兆円の企業で、ある製品の売上高が10億円増えたとしても、企業全体への影響は限定的です。

一方、売上高100億円の企業で10億円の売上増加が実現すれば、売上高は10%増えることになります。

利益率が高い事業であれば、利益の伸びはさらに大きくなる可能性があります。

従業員100人や200人程度の専門メーカーでも、世界的に重要な技術を持っていれば、半導体市場の成長から大きな恩恵を受けられるかもしれません。

木原氏は、こうした市場から十分に評価されていない企業を探すことに魅力を感じているようです。

ただし、時価総額の小さい企業は株式の流動性が低いこともあり、売買によって株価が大きく変動する場合があります。

実際に木原氏も、保有する銘柄について具体名を公表すると市場に影響を与える可能性があるため、発言を控えていました。

フィジカルAIは今後成長するのか

動画では、近年注目が高まっているフィジカルAIについても議論されました。

フィジカルAIとは、AIがロボットや機械などの物理的な装置を制御し、現実世界で作業を行う技術です。

工場の自動化や物流、接客、清掃など、さまざまな分野で活用が期待されています。

木原氏は、フィジカルAIの市場そのものについては成長を期待しています。

ただし、ここでも事業の成長と株価の上昇を区別する必要があると指摘しています。

頭脳労働の自動化が先に進んだ理由

かつてAIやロボットが普及すると、最初に肉体労働が機械に置き換わると考えられていました。

ところが、実際には生成AIの登場によって、文章作成、翻訳、情報収集、プログラミングなど、頭脳労働の一部で自動化が先行しています。

木原氏は、この理由をデジタル情報の複製が容易であることに求めています。

ソフトウェアやAIモデルは、一度開発すれば多くの利用者に提供できます。

一方、ロボットの場合は、AIの頭脳に相当するソフトウェアを複製できても、現実世界で動く機械本体を製造しなければなりません。

ロボットには材料費や製造費、輸送費、保守費用などが必要です。

そのため、フィジカルAIはデジタルサービスとは異なる経済構造を持っています。

木原氏は、こうした分野は日本が長年強みとしてきた製造業とも共通点が多いと考えています。

フィジカルAI関連株には期待が織り込まれている

フィジカルAIの市場が成長するとしても、関連銘柄の株価がすでに大きく上昇していれば、投資妙味は低下する可能性があります。

木原氏は、フィジカルAIという名称が注目されたことで、関連企業の株価が実際の収益成長に先行しているケースを警戒しています。

AIが付く事業であること自体が投資家の期待を高め、株価を押し上げている可能性があるということです。

このため、フィジカルAIの将来性を肯定しながらも、現在の株価で積極的に買うことには慎重な姿勢を示しました。

コンビニの完全自動化は実現するのか

フィジカルAIの具体例として、動画ではコンビニエンスストアの自動化が取り上げられました。

コンビニは24時間営業の店舗も多く、人件費が大きな経営負担となります。

仮に時給1,200円で従業員を2人配置し、24時間営業するとします。

この場合、単純計算で1日当たりの人件費は5万7,600円になります。

30日間では約173万円、年間では約2,100万円です。

10年間では約2億1,000万円に達します。

この計算から、仮に2億円程度で長期間稼働する完全自動化システムを導入できれば、人件費との比較で経済的な合理性が生まれるのではないかという議論が展開されました。

ただし、この試算は賃金や勤務人数を単純化したもので、ロボットの保守費用、電気代、設備更新費用などは含まれていません。

また、現在のコンビニの構造をそのままロボット化する必要はないという指摘もありました。

例えば、利用者がタッチパネルで商品を選び、内部の自動搬送装置が商品を取り出して提供する仕組みです。

このような店舗では、従来の売り場やレジの設計そのものが変わる可能性があります。

さらに、バックヤードでの飲料補充や在庫確認といった作業についても、自動化技術の導入が進められています。

人間の従業員が常駐しない店舗が増えれば、照明や空調などの設備についても、従来とは異なる設計が可能になるかもしれません。

フィジカルAIの普及は、単純な人員削減だけでなく、店舗の仕組みそのものを変える可能性を持っています。

AI時代には芸人やスポーツ選手の価値が上がる?

木原氏は、AIの進化によって価値が低下する仕事がある一方、むしろ価値が上昇する仕事もあると考えています。

その代表例として挙げたのが、芸人やスポーツ選手など、人間が目の前で能力を発揮する職業です。

一見すると、AIと芸人には直接的な関係がないように思えます。

しかし、木原氏は生成AIによる映像制作技術の進歩が、ライブで行われるパフォーマンスの価値を高めると予測しています。

AI動画が普及すると本物のライブに価値が生まれる

生成AIの進歩によって、本物の映像とAIが制作した映像を見分けることが難しくなっています。

今後さらに技術が向上すれば、映像の中に登場する人物が実在するのか、実際にその行動をしたのかを判断することは一段と難しくなる可能性があります。

しかし、実際に劇場へ足を運び、目の前で芸人が観客を笑わせていれば、その場で人間が能力を発揮していることを直接確認できます。

木原氏は、このようなライブの価値が今後高まると考えています。

AIが高度なコンテンツを大量に制作できるようになるほど、本物の人間が目の前で演じる体験が希少になる可能性があるためです。

この考え方は、お笑いだけでなく、音楽ライブや演劇、スポーツ観戦などにも当てはまります。

高級寿司店にも人間ならではの価値がある

動画では、高級寿司店についても同様の議論が行われました。

例えば、職人が目の前で寿司を握る店に3万円を支払う人がいるとします。

仮にロボットが同じ食材を使い、同じ味の寿司を提供できるようになったとしても、利用者は同じ3万円を支払うでしょうか。

木原氏は、多くの人がロボットの寿司にはそこまで高い料金を支払わないのではないかと考えています。

つまり、利用者は料理の味や品質だけでなく、職人の技術、接客、会話、店の雰囲気などを含めた体験に価値を感じているということです。

AIやロボットによって大量生産が可能になれば、標準化された商品の価格は下がるかもしれません。

しかし、人間が直接提供するサービスには、別の価値が残る可能性があります。

天然魚と養殖魚の価格差についても、品質だけでは説明できない希少性や価値観の違いがあるという話題が取り上げられました。

AIに仕事を奪われない職業の共通点

木原氏は、人間同士のつながりが重要な仕事は、AI時代にも残りやすいと考えています。

その例として挙げたのが教師やパーソナルトレーナーです。

教師の仕事は知識を教えるだけではない

AIが高度化すれば、学校で教える知識の多くをAIが説明できるようになる可能性があります。

そのため、教師はAIに代替される職業の1つとして議論されることがあります。

しかし、木原氏は教師という職業自体がなくなるとは考えていません。

その理由は、人間には知識を持っているだけでは行動できないという特徴があるためです。

例えば、ダイエットを成功させるためには、食事の管理や適切な運動が必要だと多くの人が理解しています。

それでも、自分1人で継続することは簡単ではありません。

そこでパーソナルトレーナーに費用を支払い、指導を受けながら運動を続ける人がいます。

トレーナーの価値は、単に運動方法を教えることだけではありません。

目標に向かって努力を続けられるように励ましたり、行動を管理したりする役割にも価値があります。

教師についても同様に、知識の伝達だけでなく、生徒との信頼関係や学習意欲を引き出す能力が重要だという考え方です。

人間関係そのものが経済的価値を持つ

AIが多くの仕事を代替するようになっても、人間が他者とのつながりを求める性質はなくならないと木原氏は考えています。

むしろ、デジタルサービスが便利になるほど、人間と直接交流する機会に価値を感じる人が増える可能性があります。

スポーツ選手、芸人、教師、接客業などでは、技術や知識だけでなく、人間としての魅力や信頼関係が重要になります。

こうした価値は、AIがどれほど高度化しても完全には置き換えられないかもしれません。

芸人の価値が上がっても全員が稼げるわけではない

一方、動画では芸人の将来について楽観的な意見だけが示されたわけではありません。

芸人という職業の価値が高まったとしても、芸人の人数が増えれば競争は激しくなる可能性があります。

番組内では、M-1グランプリの参加組数が1万2,000組を超えるなど、お笑いの世界への参入が増えていることも話題になりました。

さらに、芸人として長年活動している人が引退せず、40代、50代、60代と年齢を重ねても活動を続けることで、業界全体の人数が増えるという指摘もありました。

かつては少数のベテラン芸人が担っていた仕事を、将来は何倍もの人数で競うことになるかもしれません。

その場合、芸人全体の需要が増えても、個々の芸人の収入が必ずしも増えるとは限りません。

木原氏も、芸人という職業そのものは残る一方、人気や実力による格差が拡大する可能性を認めています。

500人の熱心なファンがいれば生活できる時代へ

芸人の将来について、木原氏はもう1つ興味深い予測を示しています。

それは、大勢の人から広く人気を集めることだけでなく、少数の熱心なファンを持つことの価値が高まるというものです。

従来の芸能界では、テレビ出演などによって全国的な知名度を獲得することが、大きな収入につながる重要な方法でした。

しかし、インターネットの普及によって、個人がファンと直接つながる手段が増えています。

木原氏は、今後は500人程度の熱心なファンがいれば、生活を成り立たせられる人が増えるのではないかと考えています。

例えば、500人のファンが毎月3,000円を支払えば、月間の売上高は150万円になります。

もちろん、これは仕組みを説明するための単純計算であり、実際には運営費用や決済手数料、税金などが発生します。また、500人全員が継続的に料金を支払うとも限りません。

それでも、全国的な知名度がなくても、固定ファンとの関係を深めることで収益を確保できる可能性があります。

ファンに対して誠実に接し、継続的に価値を提供することが、これまで以上に重要になるという考え方です。

こうした変化が進めば、芸能事務所に所属して大きな仕事を獲得するだけでなく、個人でファンを集め、収益を生み出す働き方も広がるかもしれません。

木原氏が現在注目する投資先は人間のライブ体験関連企業

動画の終盤で木原氏は、現在特に注目している投資分野についても言及しました。

それは、人間が直接提供するライブ体験や、ファンとの関係を中心としたビジネスです。

木原氏は、今後AIが普及するほど、人間が直接サービスを提供する価値が高まると考えています。

そのため、ライブイベントやファンビジネスなど、人間同士のつながりから収益を生み出す企業に注目しているといいます。

実際に、こうした分野に関連する小型株を複数保有していることも明かしました。

ただし、投資先の株価は現時点で期待したほど上昇しておらず、苦戦しているという率直な発言もありました。

これは、木原氏の投資スタイルを理解するうえで重要です。

将来成長すると考える企業を買ったとしても、すぐに株価が上昇するとは限りません。

市場がその企業の価値を認識するまで、長い時間がかかる場合があります。

木原氏は、短期的な株価の変動を追いかけるのではなく、将来的に成長する可能性がある事業を先回りして探すことを重視しています。

なお、具体的な保有銘柄名については動画内で公表されませんでした。

AI時代の株式投資で重要になる3つの視点

ここまでの木原氏の発言から、AI時代の株式投資では3つの考え方が重要になると読み取れます。

1. 技術の進歩と企業の利益成長を分けて考える

AIが急速に進化することと、AI関連企業の利益が長期的に成長し続けることは同じではありません。

利用者が増えても、サービス価格が下落すれば収益性が低下する可能性があります。

半導体市場についても、販売数量が増える一方で製品価格が下落する可能性があります。

企業の将来性を分析するときには、市場規模の拡大だけでなく、販売価格や競争環境、利益率の変化を確認することが重要です。

2. 市場の期待が高すぎる銘柄を避ける

企業の事業が成長していても、株価がすでに将来の高成長を織り込んでいれば、投資家が十分な利益を得られないことがあります。

特にAIやフィジカルAIのように大きな注目を集めている分野では、期待によって株価が先行している可能性があります。

木原氏が重視するのは、将来性の高い企業を見つけるだけでなく、投資価格に対して十分な利益が期待できるかどうかです。

3. 大きな成長を見込める未評価の企業を探す

AI関連株への投資は、必ずしも有名な半導体メーカーやAI開発企業に限定されません。

半導体の製造工程で必要となる部品や材料を供給する企業、将来の技術課題を解決する専門メーカーなどにも投資機会があります。

また、AIによって代替されにくいライブ体験やファンビジネスなども、長期的な成長分野として考えられます。

重要なのは、話題になっている産業をそのまま追いかけるのではなく、今後どのような需要が生まれ、どの企業が利益を増やすのかを具体的に分析することです。

まとめ:AIが進化するほどAI株が上がるとは限らない

今回の動画で最も印象的だったのは、AIの技術的な将来性に強気でありながら、AI関連株の投資判断には慎重であるという木原直哉氏の姿勢です。

木原氏は、過去の囲碁や将棋などの世界でAIが人間を超えていく過程を見てきた経験から、今後2年程度で生成AIも多くの分野において人間を圧倒する可能性があると予測しています。

しかし、AIが高度化するほどサービスが一般化し、企業間の価格競争が進む可能性があります。

その結果、利用者が増えても、現在市場が期待しているほど企業の利益が伸びない状況が生まれるかもしれません。

半導体市場についても、長期的な需要拡大には強気である一方、急騰したメモリー価格や株価の調整リスクを警戒しています。

一方で、半導体製造を支える小規模な専門企業や、人間ならではのライブ体験を提供する企業には、今後の成長余地があると考えています。

こうした判断の根底にあるのが、ポーカーで培った確率思考です。

大きな利益が得られる可能性だけを追いかけるのではなく、損失の危険性と期待できる利益を比較し、有利な状況で投資することを優先しています。

短期的な株価の上昇に乗り遅れたとしても、自分が理解できない銘柄に無理をして投資する必要はありません。

AI時代の投資で重要なのは、最も注目されている企業を買うことではなく、将来の利益成長を合理的に予測できる企業を、適切な価格で買うことです。

木原氏の投資哲学は、AI関連株の上昇が続く現在の市場において、リスク管理と長期的な企業分析の重要性を改めて考えさせる内容となっています。

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