なぜイランは世界経済を停止させる「石油戦争」を引き起こす可能性があるのか?徹底解説

※本記事は、YouTubeチャンネル「VisualPolitikEN」による動画「Why Iran Could Trigger A Great OIL WAR That Stops The Global Economy」を基に構成しています。

目次

結論:イランは世界の原油供給の要所「ホルムズ海峡」を封鎖することで、石油価格を急騰させ、世界経済に甚大な影響を及ぼす力を持つ

2025年現在、中東の緊張が再び高まっています。

特にイランとイスラエルの対立は、地政学的リスクだけでなく、世界のエネルギー価格や経済成長にも直結する重大な問題です。

本記事では、なぜイランが「世界経済の急停止」を引き起こす力を持つのか、その仕組みと背景、そして今後起こり得る最悪のシナリオについて、初心者にもわかりやすく解説します。


イスラエルへの攻撃とその影響

2025年、イランはテルアビブやハイファなどの都市に対し大規模なミサイル攻撃を行い、多数の死傷者が発生しました。特にハイファでは発電所が被弾し、都市の電力網に被害が出るなど、民間インフラにも深刻な影響が及びました。

これを受けてイスラエルは報復を宣言し、テヘラン市民の間では大規模な避難が始まっています。

この事態により、ブレント原油価格は12.5%上昇し、一時78.5ドルまで高騰。その後73ドル台まで下落したものの、依然として通常の水準(65ドル前後)を大きく上回っています。


石油市場の動揺:供給の問題ではなく「不安」が原因

意外なことに、価格の急騰はイランからの原油供給が実際に途絶えたからではありません。イランの輸出量は約1日170万バレルに過ぎず、世界の需要のわずか2%程度です。

それにもかかわらず価格が急騰した最大の理由は、「今後何が起こるか誰にもわからない」という不安です。世界中の企業や政府が備蓄を急いでいるため、需給バランスが大きく乱れています。


世界経済の心臓部:ホルムズ海峡というチョークポイント

イランが本当に世界を揺るがす力を持つ最大の理由は、「ホルムズ海峡」の存在です。

  • ホルムズ海峡は世界の原油の約20%(1日2100万バレル)が通過するルート
  • イラク、クウェート、サウジアラビア、UAEの原油もここを経由
  • 液化天然ガス(LNG)の約3分の1も通過

この狭い水路(イランとオマーンの間)は、まさに「世界経済の動脈」と言える場所です。

イランの「非対称戦力」

イランは米国海軍のような巨大戦力は持たないものの、以下のような低コスト兵器を活用できます。

  • 高速ボート
  • 海中機雷
  • 小型潜水艦
  • 無人海上機(シードローン)
  • 沿岸ミサイル

これらを駆使することで、タンカーを妨害・封鎖し、石油輸送の大混乱を引き起こすことが可能です。


イランが封鎖をためらう理由

ただし、イランがホルムズ海峡を完全に封鎖する可能性には慎重な見方も存在します。

理由1:国際社会の報復リスク

  • アメリカは第5艦隊をバーレーンに駐留させており、即座の反撃が可能
  • サウジアラビアやイラクなどの湾岸諸国の軍事介入も予想される
  • 中国も最大の原油輸入国として、封鎖に反対する可能性が高い

理由2:イラン自身も損をする

ホルムズ海峡を封鎖すれば、イラン自身のタンカーも通れなくなります。特に中国はイラン原油の最大の輸入国で、イランの密輸原油の20%以上が中国に流れていると推定されます。


最悪のシナリオ:イスラエルが「カーク島」を空爆した場合

イスラエルが本気でイランの石油輸出を止める場合、イラン原油の90%が出荷される「カーク島(Kharg Island)」への空爆が現実的なシナリオになります。

もしそれが実行されれば、イランは報復として以下の行動に出る可能性が高いです。

  • ホルムズ海峡の封鎖
  • サウジアラビアの石油施設へのミサイル攻撃

実際、2019年にはイランがサウジ最大の石油施設に無人機攻撃を行い、原油生産が一時的に半減しました。その時の価格は20%上昇しています。


米国とトランプの思惑

現在のアメリカは「シェール革命」により、世界トップ級の石油・ガス輸出国になりました。

そのため、過去のように中東依存ではなくなっていますが、世界経済が不況に陥れば結局は米国も打撃を受けます

一方で、トランプの対中関税政策が原因で原油価格が下落しており、アメリカ国内の石油業界は操業停止やリグ数の減少という問題に直面しています。


結論:イランは「やれる力」はあるが「やるか」は別問題

イランがホルムズ海峡を封鎖する技術力と戦略は持っているのは確かです。しかし、

  • 世界からの軍事・経済的報復
  • 自国の収入減
  • 中国との関係悪化

などのリスクを考慮すると、脅しとして使うことはあっても、全面的な封鎖には踏み切らない可能性が高いと言えます。


今後どうなるのか?

今後の鍵を握るのは以下の3点です。

  1. イスラエルがどこまで軍事行動を拡大するか
  2. イランが実際に封鎖や攻撃に踏み切るか
  3. アメリカ(およびトランプ)がどのように介入するか

まとめ:地政学リスクと経済の連動を見逃すな

イラン・イスラエル間の対立は、単なる地域紛争ではなく、世界経済を直撃するリスク要因です。特に石油価格は、インフレ、金利、消費活動などに波及するため、投資家も一般消費者も無関心ではいられません。

今後の動向に注視しながら、リスクヘッジやポートフォリオの見直しも検討すべきタイミングかもしれません。

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