ソ連が世界恐慌を乗り越えた理由とその影響

1929年に始まった世界恐慌は、世界中で大きな経済的混乱を引き起こしました。

アメリカをはじめ、ヨーロッパ、日本も経済的な打撃を受け、多くの国で失業者が溢れかえりました。

この時、資本主義を採用していた各国の経済は急激に縮小し、社会全体が混乱状態に陥りました。し

かし、この混乱の中でも例外的に驚異的な経済成長を遂げた国が存在しました。それがソ連です。

なぜソ連だけが世界恐慌の影響を受けず、むしろ経済成長を遂げることができたのでしょうか?この記事では、その理由と背景について詳しく説明します。

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目次

そもそも世界恐慌とは?

まず、世界恐慌の発端となったのは1929年10月24日の暗黒の木曜日です。

この日、ニューヨーク株式市場で株価が大暴落し、それが瞬く間にアメリカ国内、そして世界中に波及しました。この出来事により、世界中の金融システムが崩壊し、多くの国で企業の倒産や銀行の破綻が相次ぎました。

たとえば、当時のアメリカでは失業率が25%に達し、ニューヨークダウ平均株価はピーク時の86ドルから41ドルまで下落し、その下落率はなんと89%にも及びました。

このように世界中の経済が混乱に陥る中、ソ連は他の国々とは全く異なる状況にありました。

ソ連の計画経済

ソ連が世界恐慌の影響を受けなかった理由の一つは、資本主義ではなく社会主義という異なる経済システムを採用していたことにあります。

資本主義では、企業や個人が自由に経済活動を行い、供給と需要によって物価や賃金が決まります。

しかし、社会主義では国家が経済を統制し、全ての企業が国有化され、計画経済という仕組みで管理されます。

つまり、ソ連では政府が経済の全てを管理し、国が生産や価格を決定していたため、市場の変動に左右されることがありませんでした。

例えば、パン工場では、どのようなパンをどれだけ生産するか、価格はいくらにするかを全て国家が決めていました。このように、ソ連の経済は政府の命令によって動いていたため、自由な市場経済の混乱に影響されずに済んだのです。

スターリンの5カ年計画

特に、ソ連が経済成長を遂げたのはスターリンが推し進めた5カ年計画によるものでした。

この計画は、5年間で工業生産を250%増、重工業を330%増、農業生産を150%増という驚異的な目標を掲げていました。

具体的には、農業機械や戦車、飛行機といった重工業に大量の労働力が投入され、その分野が急速に発展しました。特に、ウクライナ地域ではこの時期に大規模な重工業化が進められました。

驚くべきことに、この計画は実際に達成され、ソ連は急速に経済力をつけることができました。この成功により、ソ連は世界の国々から注目され、スターリンは「社会主義の勝利」を大いに宣伝しました。

ソ連の犠牲の実態

しかし、ソ連のこの経済成長には大きな犠牲が伴っていました。

特に注目すべきは、労働力の確保方法です。ソ連では、スターリン政権に反対する人々や敵対する民族を強制収容所(ラーゲリ)に送り、そこから労働力を得ていました。

例えば、有名なバルト海運河の建設では、約10万人の強制労働者が動員され、その大部分が人力によって建設が進められました。このような強制労働がソ連の急速な経済発展の裏側に存在していたのです。

また、農業においても問題が発生しました。ウクライナでは、スターリンが大量の穀物を強制的に取り立てたため、飢餓が発生しました。この出来事はホロドモールと呼ばれ、1930年代のわずか1年半の間に、ウクライナで400万人から1000万人が命を落としたとされています。

計画経済の光と影

ソ連の5カ年計画は一時的には成功したかもしれませんが、その成功は持続不可能であり、多くの人々の命が犠牲になりました。

このように、計画経済は一見うまくいっているように見えても、実際には人々の自由や生活の質が大きく犠牲にされていたのです。

まとめ

ソ連は、スターリンの計画経済によって世界恐慌の影響を受けずに済み、短期間で経済成長を遂げました。

しかし、その裏には多くの犠牲があり、特に強制労働や農業政策の失敗が重大な問題を引き起こしました。

ソ連の成功は一時的なものであり、最終的には1991年のソ連崩壊までそのシステムは持続しませんでした。現在のロシア経済も、当時の問題を引き継いでおり、独裁的な政治体制と軍事力の偏重が課題となっています。

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知っておきたい専門用語集

  • 世界恐慌:1929年にニューヨーク株式市場の大暴落に始まり、世界中の経済に影響を与えた大規模な経済危機のこと。失業者や倒産が急増し、世界中で深刻な不況を引き起こした。
  • 暗黒の木曜日:1929年10月24日、ニューヨーク株式市場で株価が大暴落した日。世界恐慌の引き金となった。
  • 資本主義:企業や個人が自由に経済活動を行い、供給と需要に基づいて物価や賃金が決まる経済体制。国家の干渉が少なく、競争原理によって経済が発展することを目指す。
  • 社会主義:国家が経済を統制し、企業や財産が公有化される経済体制。計画経済が特徴で、個々の自由な経済活動が制限される。
  • 計画経済:政府が経済活動を管理し、何をどれだけ生産するか、価格はどうするかをすべて国家が決定する経済システム。ソ連の5カ年計画などが例。
  • 5カ年計画:ソ連のスターリン政権下で行われた経済発展計画。5年間で工業や農業の生産を急激に増やし、社会主義国としての経済力を高めることを目指した。
  • 重工業:自動車、戦車、農業機械などの大規模な機械や装置を製造する産業分野。ソ連では経済発展の中心的な分野とされた。
  • バルト海運河:ソ連時代に強制労働を使って建設された運河。労働者の大部分は強制収容所から集められた囚人で、短期間で人力によって建設が進められた。
  • 強制労働:囚人や反体制派の人々を強制的に働かせる制度。ソ連では強制収容所に収容された人々が、国家の経済発展のために利用された。
  • ラーゲリ:ソ連における強制収容所のこと。政治犯や反体制派が収容され、労働力として利用された。
  • ホロドモール:1932年から1933年にかけてウクライナで発生した大飢饉。スターリン政権が穀物を強制徴収した結果、多数のウクライナ人が飢餓で命を落とした。
  • 満州国:日本が中国の満州地方に設立した傀儡国家。日本の植民地政策の一環として経済発展を進めるために設立され、重工業や農業開発が進められた。
  • ニューディール政策:アメリカが世界恐慌からの経済復興を目指して行った政策。国家主導で公共事業を増やし、失業者に仕事を提供することで経済を立て直す試み。
  • 集団農場:ソ連で農業を効率化するために導入された制度。農民たちが集団で一つの農地を耕作し、協力して収穫を行う仕組みだが、強制的に進められたため多くの問題が発生した。
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