モメンタム投資とは何か 現代株式市場で存在感を増す投資手法を学術研究と実務の両面から解説

本記事は、YouTube動画『現代株式で猛威を振るう投資手法 モメンタム投資の学術研究』の内容を基に構成しています。

目次

導入

近年の株式市場を見ていると、「高すぎるのではないか」と思われる銘柄がさらに上昇し続ける場面が目立っています。従来であれば、PERやPBR、配当利回りなどの指標をもとに「割高」「割安」を判断し、それに沿って投資判断をするのが王道とされてきました。しかし足元の市場では、その常識だけでは説明しきれない値動きが増えています。

その背景にある代表的な考え方が、モメンタム投資です。これは簡単に言えば、「最近強い銘柄は、しばらく強い傾向が続く」という前提に立って投資する手法です。実際、近年の日本株でも、勢いのついた銘柄に資金が集中し、そのまま大きく上昇していくケースが珍しくなくなりました。

本記事では、モメンタム投資とは何か、その基本的な仕組み、相対モメンタムと絶対モメンタムの違い、学術研究でどのように分析されてきたのか、さらに実務の世界でどのように活用されているのかを、初心者にも分かりやすく丁寧に整理していきます。

背景説明

株式市場で主流になる投資手法は、時代によって変わります。2020年頃には、新型コロナウイルスの影響による金融緩和を背景に、グロース株が大きく買われました。特に中小型の成長株には強い資金流入が起こり、短期間で株価が何倍にもなるような銘柄も相次ぎました。

その後、2022年から2023年にかけては、グロース株のバリュエーションが上がり過ぎた一方で、PBRやPERが低く、配当利回りも高いバリュー株が割安なまま放置されていることに注目が集まりました。さらに2023年には、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業への改善要請を本格化させたことで、企業価値向上への期待からバリュー株への資金流入が進みました。

そして2025年から2026年にかけて、さらに存在感を高めているのがモメンタム投資です。足元では、割安だから買う、割高だから売るという考え方だけではなく、「とにかく今強い銘柄に資金が集まり、その流れ自体がさらなる上昇を生む」という相場が形成されやすくなっています。これは、現代の市場で流動性の高い銘柄に資金が集中しやすい構造と深く関係しています。

モメンタム投資とは何か

モメンタム投資の「モメンタム」とは、勢いや流れを意味します。投資の世界では、「最近上がっているものは、しばらく上がりやすい」「逆に弱いものは、しばらく弱い」という傾向を利用する考え方です。

非常にシンプルに表現すると、強い銘柄を買う投資手法です。例えば、ある時期に市場で注目されている銘柄があり、その銘柄に資金がどんどん流れ込んでいるとします。そこで「もう上がり過ぎだ」と考えて逆張りするのではなく、「勢いがある限り、その流れに乗る」という発想で投資するのがモメンタム投資です。

従来のファンダメンタル分析では、企業の利益や資産、将来の成長性などから妥当な株価を考えます。しかしモメンタム投資では、必ずしもその時点の理論価値だけを重視しません。むしろ「市場参加者が今どこに資金を集中させているか」「どの銘柄に最も流動性が集まっているか」といった点が重要になります。

今の市場では、業績や事業内容を深く理解していなくても、「流動性が高く、売買代金が多く、値動きに勢いがある銘柄」を中心に資金が集まることがあります。そうした動きが連鎖すると、株価は想定以上に大きく上昇しやすくなります。

モメンタム投資には2種類ある

相対モメンタムとは何か

モメンタム投資には大きく分けて、相対モメンタムと絶対モメンタムの2種類があります。現在の市場で特に人気が高いのは、相対モメンタムです。

相対モメンタムとは、市場全体の中で比較したときに、相対的に強い銘柄を選ぶ考え方です。つまり、「今の株式市場の中で、どの銘柄が一番強いか」という順位づけを行い、上位に入るものへ投資する方法です。ここで重視されるのは、売買代金の大きさや流動性の高さです。

要するに、今もっとも市場参加者の注目を集めている銘柄を買う、という発想に近いです。対象となる銘柄そのものの中身よりも、「今この瞬間に市場の主役になっているか」が重視されやすくなります。そのため、半導体関連株であっても、防衛関連株であっても、非鉄金属株であっても、あるいは消費関連株であっても、資金が集中していて流動性が高ければ対象になり得ます。

絶対モメンタムとは何か

もう1つが絶対モメンタムです。これは個別銘柄そのもののチャートや価格推移を見て、上昇トレンドにあるかどうかで判断する考え方です。トレンドフォロー、あるいはタイムシリーズモメンタムと呼ばれることもあります。

相対モメンタムが「市場全体の中での順位」を重視するのに対し、絶対モメンタムは「その銘柄自身が上昇トレンドにあるか」を見ます。例えば、知名度はそれほど高くなく、流動性もそこまで大きくないものの、時価総額500億円前後で右肩上がりのチャートを描いている銘柄は日本市場にも多くあります。こうした銘柄のトレンドに乗るのが、絶対モメンタムの考え方です。

現在は相対モメンタムの方が話題になりやすい傾向がありますが、投資手法としては絶対モメンタムも古くから知られており、多くの投資家が意識しています。

なぜモメンタム投資は機能するのか

モメンタム投資がなぜ有効なのかについては、長年さまざまな研究が行われてきました。しかし、実は決定的な説明はまだ難しいとされています。市場参加者の行動心理、情報の伝わり方、機関投資家の運用ルール、売買システムの影響など、多くの要因が絡み合っているからです。

1つの見方としては、人は強いものに集まりやすいという行動特性があります。株価が上昇している銘柄を見ると、「まだ上がるかもしれない」と感じて買う投資家が増えます。さらにメディアやSNSで話題になれば、新たな買いが入ります。その結果、上昇が上昇を呼びやすくなります。

また、空売りをしていた投資家が買い戻しを迫られるショートスクイーズも、モメンタムを加速させる要因になります。ある銘柄が「割高だ」と考えて売りから入っていた投資家が、予想に反して株価がさらに上昇すると、損失拡大を防ぐために買い戻さなければなりません。この買い戻しがさらに上昇圧力となり、株価が一段と跳ね上がることがあります。

このように、モメンタム投資は単に「人気株を追いかける」という話ではなく、資金の流れ、投資家心理、流動性、ショートカバーといった複数の要素が重なって成立する現象だといえます。

モメンタム投資の学術研究

1990年代から続く研究の蓄積

モメンタム投資は、最近になって突然注目された手法ではありません。学術的には1993年頃から本格的に研究が進められてきた、非常に歴史のあるテーマです。つまり、今から30年以上も前から、「上がっている銘柄はしばらく上がりやすいのではないか」という仮説が検証されてきたことになります。

しかも重要なのは、単なる思いつきではなく、長期にわたって再現性があると報告されてきた点です。過去3カ月から12カ月の値動きをもとに、強い銘柄を買い、弱い銘柄を売るという戦略では、月平均で約1.3%、年率にすると17%から19%程度のリターンが得られるという研究結果が示されてきました。

もちろん、これは理論上のバックテストや特定条件下での分析であり、常に同じ成果が保証されるわけではありません。それでも、長期間にわたって一定の有効性が確認されてきたことは、モメンタム投資が単なる流行ではないことを示しています。

研究が進むほど精度も高まっている

モメンタム研究は、1993年以降だけで終わっていません。2001年、2013年、2016年といった時期にも継続的に研究が行われ、そのたびに分析手法の精度が高まってきました。

以前は単純に過去の上昇率だけを比較するケースも多かったのですが、近年では市場全体の上昇要因を除外したうえで個別銘柄の強さを見る方法や、極端な外れ値の影響を弱める統計処理など、より洗練されたモデルが使われています。

つまり、「何となく強い銘柄を買う」という感覚的な話ではなく、数量化・スコア化・統計処理を通じて、より再現性のある戦略として組み立てられているのです。

実務の世界でのモメンタム活用

金融機関もモメンタムをスコア化している

モメンタム投資は、個人投資家だけが使う手法ではありません。実際には大手金融機関や指数算出会社も、モメンタムを明確にスコア化してポートフォリオに取り入れています。

例えば、MSCIのような指数関連の世界では、12カ月や6カ月のリターンを組み合わせてモメンタムスコアを算出する方法が採用されています。また、外れ値の影響を和らげるための処理も用いられています。これは、極端に急騰した一部銘柄だけに引っ張られず、全体として安定したモメンタムを測るための工夫です。

ゴールドマン・サックスのような金融機関でも、11カ月程度の累積リターンをベースにしながら、市場全体の上昇分を差し引いた個別銘柄の強さを重視する設計が取られています。例えば、S&P500全体が20%上昇している中で、ある個別株も20%上がっているだけなら、市場平均と同じ動きに過ぎません。しかし、同じ環境で40%上がっていれば、その銘柄には市場平均を超える独自の強さがあると判断できます。

このように、実務の世界では「どれだけ上がったか」だけではなく、「市場全体と比べてどれだけ強いか」という視点が重視されています。

モメンタム戦略の代表例

代表的なモメンタム戦略としては、クロスセクション・モメンタムがあります。これは、一定期間のパフォーマンスを比較し、成績上位の銘柄を買い、下位の銘柄を売るという手法です。

一般的には11カ月程度のパフォーマンスを見て、1カ月から3カ月ほど保有することが多いとされます。投資対象は、流動性が高く、あまりにも小さいマイクロキャップは除外されるのが一般的です。そのうえで、例えば上位10%の銘柄を買い、下位10%の銘柄を売るという形でポートフォリオを構成します。

実際の運用では、こうした単純なルールだけでなく、売買コストや流動性、ボラティリティ、相関関係なども加味して調整されます。理論としてはシンプルでも、実際に資金を動かす現場ではかなり細かい設計が必要になるのです。

モメンタム投資とリスク管理

モメンタム投資は魅力的なリターンが期待される一方で、非常に重要なのがリスク管理です。なぜなら、上がるときは大きく上がる一方で、崩れるときも一気に崩れやすいからです。

モメンタム戦略を100%で組んでしまうと、相場が順調なときは高いパフォーマンスを出しやすい反面、逆回転が起きたときのダメージも大きくなります。そのため、実務ではバリュー株を組み合わせたり、株式だけでなく先物や債券など他資産も組み入れたり、ボラティリティが高まったときにポジションを自動的に縮小したりと、さまざまな工夫が行われています。

例えば、ある銘柄が1日に10%以上動くような高ボラティリティ状態に入った場合、その銘柄の保有比率を下げるという考え方もあります。こうした調整を行うことで、急変時の損失を抑えようとするわけです。

要するに、モメンタム投資は「強い銘柄に乗る」だけで完結する手法ではなく、勢いが崩れたときにどう対応するかまで含めて初めて成り立つ手法だといえます。

モメンタムクラッシュとは何か

上昇の裏側にある最大の弱点

モメンタム投資を語るうえで、避けて通れないのがモメンタムクラッシュです。これは、これまで強く買われていたモメンタム銘柄が、何らかのきっかけで一斉に急落する現象です。

普段は売買代金が多く、人気も高く、上昇トレンドが続いているため、安心感があるように見えるかもしれません。しかし、こうした銘柄は市場心理が変化した瞬間に、真っ先に売られやすい特徴もあります。1日で10%以上下落することも決して珍しくありません。

発生頻度そのものは高くないとしても、一度起きたときの破壊力は非常に大きく、短期間で大きな損失につながる可能性があります。だからこそ、金融機関もモメンタムだけに資金を集中させず、バリューや他資産との組み合わせでリスクを抑えようとしているのです。

モメンタムは万能ではない

学術研究で有効性が確認されているからといって、モメンタム投資が万能というわけではありません。むしろ、優位性があるからこそ、多くの投資家が集まり、その結果として混雑し過ぎるリスクもあります。人気が集中し過ぎると、何かのきっかけで一斉に出口へ向かう可能性も高まります。

このため、モメンタム投資を使う場合には、「勢いがあるうちは強いが、崩れるときは想像以上に速い」という性質を前提に考える必要があります。

日本株市場でモメンタム投資をどう考えるか

日本市場は米国市場に比べると、全体の規模が小さく、ショート戦略の実行やコスト面でも制約が多い場面があります。そのため、日本株でモメンタム投資を考える場合は、弱い銘柄を売るよりも、強い銘柄を買うロングオンリーの方が現実的だという考え方があります。

つまり、「上がっている銘柄を選んで買う」ことに集中し、無理にショートを組み合わせない方が扱いやすいということです。特に個人投資家にとっては、空売りの管理や逆日歩、急騰時の損失リスクまで含めると難易度が上がります。そのため、日本株のモメンタム投資は、まずロング中心で考える方が実践的だといえるでしょう。

また、日本でもモメンタムの考え方を取り入れたファンドが登場しています。動画内では、三井住友が手がける日本株式モメンタムファンドの例が紹介されていました。このファンドでは、500銘柄を投資ユニバースとし、流動性でスクリーニングを行ったうえで、短期・中期・長期の3種類のモメンタムを使って銘柄を選定し、7銘柄ずつ計21銘柄でポートフォリオを組んでいると説明されています。

組み入れ銘柄には、近年大きく上昇した著名な銘柄が並んでおり、3カ月ごとにリバランスを行うとのことです。これはまさに、モメンタムを定量的に捉え、一定ルールで機械的に運用する考え方の一例といえます。

追加解説

ここで初心者にとって特に重要なのは、モメンタム投資は「高値づかみをする危険な手法」と単純に片づけられるものではない、という点です。確かに、上がっている銘柄を買うことには心理的な抵抗があります。多くの人は、安くなったものを買いたいと考えるからです。

しかし、株式市場では「安いから上がる」とは限りません。むしろ、安いまま放置される銘柄も多くあります。一方で、強い銘柄はさらに強くなることがあり、それを学術的にも実務的にも利用しようというのがモメンタム投資です。

ただし、だからといって誰にでも最適な手法とは限りません。バリュー株投資が得意な人もいれば、高配当株投資に向いている人もいます。投資の世界では、同じ市場を見ていても、人によって勝ちやすいスタイルが異なります。

2020年にはグロース投資が最強だと言われ、2023年にはバリュー株が注目され、2025年から2026年にかけてはモメンタム投資が強い存在感を示しています。しかし、来年や再来年も同じ構図が続くとは限りません。再びグロースが主役になる可能性もあれば、バリュー株が見直される可能性もありますし、まったく新しい投資スタイルが台頭する可能性もあります。

つまり、モメンタム投資を知ることの本当の意味は、「今この市場ではどういう資金の流れが起きているのか」を理解することにあります。自分がその手法を採用するかどうかは別として、いま市場で何が起きているのかを知っておくことは、投資判断を行ううえで大きな助けになります。

まとめ

モメンタム投資とは、相対的に強い銘柄を買い、弱い銘柄を売ることを基本とする投資手法です。現在の株式市場では、特に流動性が高く、売買代金が大きい銘柄に資金が集中しやすく、その流れがさらに上昇を生む構図が目立っています。

モメンタム投資には、相対モメンタムと絶対モメンタムの2種類があり、前者は市場全体の中で強い銘柄を選ぶ方法、後者は個別銘柄の上昇トレンドに乗る方法です。学術研究では1993年頃から長年にわたって有効性が検証されており、月平均約1.3%、年率17%から19%程度のリターンが得られる可能性が示されてきました。

さらに、MSCIやゴールドマン・サックスのような実務の世界でも、モメンタムはスコア化され、実際のポートフォリオ構築に活用されています。一方で、モメンタムクラッシュと呼ばれる急落局面では大きな損失が出やすく、リスク管理が極めて重要です。

日本株で活用する場合は、米国のようなロング・ショート戦略よりも、強い銘柄を買うロングオンリーの方が現実的だという考え方もあります。いずれにしても、モメンタム投資は「強いものには理由がある」という現代市場の一面を映し出す手法です。

最近株式投資を始めた人にとっては、「強い銘柄を買い、弱い銘柄には触らない」という考え方自体が新鮮に映るかもしれません。しかし、いまの市場を理解するうえで、モメンタム投資という概念は非常に重要です。自分が実践するかどうかに関係なく、現代の株式市場で何が起きているのかを知るための1つの視点として、しっかり押さえておく価値があるといえるでしょう。

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