暴落と金利上昇に備える日本版バイ・ボロー・ダイ戦略|有価証券担保ローンで資産を売らずに現金を作る方法

本記事は、YouTube動画『暴落と金利上昇に備える日本版バイ・ボロー・ダイ戦略』の内容を基に構成しています。

目次

株を売らずに現金を作るという選択肢

投資信託や株式で含み益が出ているとき、急にまとまった現金が必要になる場面は少なくありません。教育費、住宅関連費用、事業資金、生活上の大きな支出など、理由は人によってさまざまです。

しかし、多くの投資家にとって悩ましいのは、保有している投資信託や株式を売却すると、利益に対して約20%の税金がかかることです。せっかく長期運用で育ててきた資産を売ってしまえば、複利のエンジンも止まってしまいます。

そこで動画内で紹介されているのが、「有価証券担保ローン」という方法です。これは、自分が保有している株式や投資信託などを担保にして、金融機関からお金を借りる仕組みです。

つまり、資産を売らずに現金を調達し、運用を継続しながら必要資金を確保するという考え方です。

有価証券担保ローンとは何か

有価証券担保ローンとは、株式、債券、投資信託、ファンドラップなど、金融機関が担保価値を認める有価証券を担保にしてお金を借りるローンのことです。

通常、現金が必要になった場合、多くの人は保有資産を売却します。しかし、有価証券担保ローンを使えば、保有資産を売却せずに資金を調達できます。

この方法の大きなメリットは、売却益に対する税金を先送りできる点です。投資信託や株式を売却して利益が出れば、原則として約20%の税金がかかります。しかし、借り入れであれば売却ではないため、その時点では譲渡益課税は発生しません。

さらに、保有資産を売らずに済むため、長期運用による複利効果を継続できます。資産形成において、複利の力を止めないことは非常に重要です。

バイ・ボロー・ダイ戦略とは

動画では、有価証券担保ローンを活用した考え方として「バイ・ボロー・ダイ戦略」が紹介されています。

これは英語で「Buy, Borrow, Die」と呼ばれる戦略で、日本語にすると「買って、借りて、死ぬ」という意味になります。

アメリカの富裕層の間で知られる資産管理手法で、株式などの資産を買い、値上がりした資産を売らずに担保としてお金を借り、最終的に相続まで保有し続けるという考え方です。

資産を売却しなければ、売却益に対する税金を先送りできます。そして借り入れによって生活資金や事業資金を確保することで、資産を保有したまま現金を使うことができます。

ただし、動画内でも説明されている通り、アメリカの制度をそのまま日本に当てはめることはできません。日本とアメリカでは相続時の取得価格の扱いが異なるためです。

それでも、日本においても「資産を売らずに借りる」という考え方には大きな意味があります。

最大のリスクはロスカット・強制売却

有価証券担保ローンは便利な仕組みですが、当然リスクもあります。特に注意すべきなのが、ロスカット、つまり強制売却です。

担保に入れている株式や投資信託の価値が大きく下がると、金融機関側が担保不足と判断し、強制的に担保資産を売却する可能性があります。

動画では、野村證券の「野村Webローン」を例に説明されています。野村Webローンの場合、担保持続率が70%を下回るとロスカットの対象になるとされています。

担保持続率は、次のような考え方で計算されます。

担保評価額 ÷ 借入残高 × 100

たとえば、1000万円分のトヨタ株を保有していて、それを担保に500万円を借りた場合、担保評価額や掛目によって担保持続率が計算されます。

重要なのは、借りられる上限いっぱいまで借りると、暴落時にロスカットされる危険性が高まるという点です。

LTVは35%が1つの目安

動画の結論として示されているのが、ローン資金を口座外に持ち出して使う場合、LTVは35%程度に抑えるのが1つの目安だという考え方です。

LTVとは、担保資産に対してどれくらい借りているかを示す比率です。たとえば、1000万円の株式を担保に350万円を借りれば、LTVは35%です。

なぜ35%なのかというと、株価が50%下落するような大暴落が起きても、ロスカットラインにかかりにくい水準だからです。

具体例で見ると、1000万円分の株式を担保に350万円を借りたとします。その後、株価が半分になり、担保資産の価値が500万円になった場合でも、担保持続率はおおむね71.4%となり、ロスカットラインの70%をギリギリ上回ります。

もちろん、これはあくまで計算上の目安です。実際には銘柄、担保掛目、金融機関のルール、相場環境によって変わります。それでも、暴落に備えて借入比率を低く抑えるという考え方は非常に重要です。

2階建て投資の場合は考え方が変わる

動画では、有価証券担保ローンで借りた資金を別の支出に使うケースと、さらに投資に回すケースが分けて説明されています。

借りた資金を教育費や住宅ローンの頭金などに使う場合、そのお金は担保資産として残りません。そのため、LTVを35%程度に抑える方が安全だとされています。

一方で、借りた資金でさらに同じ株式や投資信託を購入し、それを追加担保として差し入れる場合、担保持続率はある程度回復します。これが、いわゆる「添え担保」です。

たとえば、1000万円分の株式を担保に500万円を借り、その500万円でさらに株式を購入して担保に入れた場合、合計1500万円分の株式を保有する形になります。

その後、株価が50%下落して750万円になっても、借入額が500万円であれば、計算上はロスカットラインを上回る可能性があります。

ただし、これはレバレッジをかけた投資であり、リスクは高くなります。初心者が安易に真似するべきものではありません。

金利上昇局面では注意が必要

現在の日本では、日銀の利上げが意識される局面に入っています。有価証券担保ローンの金利は、基本的に政策金利の影響を受けます。

動画内では、野村Webローンの金利が2.15%であることを前提に、今後さらに利上げが進めば、ローン金利が3%近くまで上がる可能性もあると説明されています。

借入金利が上がれば、当然ながら負担は増えます。特に、有価証券担保ローンでは利息を毎年現金で支払うのではなく、借入残高に組み入れられる形になる場合があります。

たとえば、100万円を金利2%で借りた場合、1年後には利息2万円が元本に加わり、借入残高は102万円になります。その翌年は102万円に対して利息がかかるため、借金も複利で増えていきます。

この点は、有価証券担保ローンを使う上で必ず理解しておくべきリスクです。

それでも有利になる可能性がある理由

動画では、ローン金利が3%になったとしても、投資先の期待リターンが7%程度あるなら、有価証券担保ローンを使うメリットは残ると説明されています。

たとえば、1000万円の株式を年7%で運用し、そこから350万円を有価証券担保ローンで借りたとします。ローン金利を年3%と仮定すると、350万円の借金は20年後に約632万円まで膨らみます。

一方、1000万円の株式が年7%で20年間運用されると、約3869万円になります。そこから元本や借金を差し引いても、大きな資産が残るという計算です。

一方で、350万円分の株式を売却して現金化し、残り650万円を年7%で20年間運用した場合、最終的な資産は約2515万円になります。

この比較では、有価証券担保ローンを使った方が、理論上は約400万円近く有利になる可能性があるとされています。

もちろん、これは将来のリターンが一定であるという前提に基づいたシミュレーションです。実際の相場は上下しますし、金利も変動します。それでも、「借金だから悪い」と決めつけるのではなく、数字で判断することが重要だという点は大きな学びです。

日本版バイ・ボロー・ダイ戦略のポイント

アメリカのバイ・ボロー・ダイ戦略では、相続時に株式の取得価格が時価に書き換えられる仕組みがあります。そのため、相続後に売却しても大きなキャピタルゲイン課税を避けられるケースがあります。

しかし、日本では原則として取得価格が引き継がれます。つまり、親が安く買った株式を子が相続し、その後に売却した場合、親の時代からの含み益に対しても課税される可能性があります。

このため、日本ではアメリカとまったく同じ形でバイ・ボロー・ダイ戦略を使うことはできません。

それでも、日本版として考えるなら、所得税の繰り延べと相続税の債務控除がポイントになります。

株式を売らずに借り入れで現金を調達すれば、譲渡益課税を先送りできます。また、借金を抱えたまま相続が発生した場合、プラスの資産とマイナスの負債を合算することで、相続税評価を圧縮できる可能性があります。

富裕層の相続対策では、借金をうまく活用することは珍しくありません。ただし、やりすぎると税務上問題になる可能性もあるため、実行する場合は専門家への相談が不可欠です。

NISA口座の資産は担保にできるのか

動画では、有価証券担保ローンの注意点として、NISA口座の資産は担保にできないケースが多いと説明されています。

野村Webローンや楽天証券のローンでは、現状、NISA口座の株式や投資信託は担保対象外とされています。

一方で、一部の証券会社ではNISA資産を担保にできる商品もあるようですが、金利が高めに設定されている場合があります。動画内では、大和証券の「ダイワLMS」が新NISA資産も担保にできる例として触れられていますが、借入金利が4%弱と高いため、使い勝手には注意が必要だとされています。

この点から考えると、特定口座に残っている長期保有資産は、いざという時に現金を引き出すための担保として活用できる可能性があります。

資産を移管しておく意味

動画では、特定口座で保有しているオルカンやS&P500などのインデックスファンドを、野村Webローンの担保対象になる証券会社に移管しておく考え方も紹介されています。

実際に借りるかどうかは別として、いざという時に現金を引き出せる体制を作っておくこと自体が重要だという考え方です。

急な出費に対応できるだけでなく、相場が大きく下落したときに追加投資する資金を確保できる可能性もあります。

資産運用においては、選択肢を持っていることが大きな強みになります。現金化する方法が「売却」しかない状態よりも、「担保にして借りる」という選択肢を持っている方が、柔軟な資産管理ができます。

有価証券担保ローンのデメリット

有価証券担保ローンには多くのメリットがありますが、デメリットも明確に存在します。

まず、金利上昇リスクです。今後、日本の政策金利がさらに上がれば、借入金利も上昇する可能性があります。

次に、ロスカットリスクです。担保資産が大きく値下がりすれば、強制売却される可能性があります。

さらに、この戦略は基本的に、担保にしている株式や投資信託が長期的に成長することを前提としています。もし長期的に値上がりしない資産を担保にして借り続ければ、スキーム自体が成り立たなくなります。

また、金融機関ごとに担保対象、担保掛目、金利、ロスカット基準は異なります。必ず事前に確認する必要があります。

証券会社員は何に投資しているのか

動画の後半では、証券会社員の投資事情についても触れられています。

証券会社員は、個別株を自由に売買できないケースが多いとされています。正確には、社内の承認を得れば売買できる場合もありますが、手続きが面倒であるため、個別株を積極的に売買する人は多くないようです。

一方で、投資信託については比較的ルールが緩い場合があり、証券会社員でも投資信託を活用して資産運用している人はいると説明されています。

投資信託は多数の銘柄に分散投資されているため、特定の個別企業の重要情報を知ったとしても、その影響は限定的です。そのため、個別株よりも売買制限が緩いケースがあるということです。

ただし、会社や部署によってルールは異なります。特に法人取引や機関投資家向け業務に関わる部署では、投資信託であっても厳しい制限がある場合があります。

借金には良い借金と悪い借金がある

今回の動画で重要なのは、「借金=悪」と単純に考えないことです。

もちろん、浪費のための借金や返済計画のない借金は危険です。しかし、資産を売却せずに運用を継続し、税金を先送りしながら資金を調達するための借金は、使い方によっては資産形成に役立つ可能性があります。

大切なのは、借入比率を抑え、金利上昇や暴落に耐えられる範囲で使うことです。

動画では、口座外に資金を持ち出す場合はLTV35%程度が1つの目安とされています。これは、50%程度の大暴落が起きてもロスカットにかかりにくい水準として説明されています。

ただし、どんな暴落にも完全に耐えられるわけではありません。リーマンショック級を超える下落や、個別銘柄の大暴落、金融機関側のルール変更などもあり得ます。

リスクをゼロにすることはできません。重要なのは、リスクを理解し、管理できる範囲で活用することです。

まとめ

有価証券担保ローンは、保有している株式や投資信託を売却せずに現金を調達できる仕組みです。売却益に対する税金を先送りし、複利運用を継続できる点で、長期投資家にとって有力な選択肢になります。

特に、含み益のある投資信託や株式を売却したくない人にとって、「売る」のではなく「借りる」という発想は大きな意味を持ちます。

一方で、金利上昇リスクやロスカットリスクは無視できません。借入比率を高めすぎると、暴落時に強制売却される可能性があります。そのため、動画ではLTV35%程度を1つの安全目安として紹介しています。

また、アメリカのバイ・ボロー・ダイ戦略を日本でそのまま再現することはできませんが、日本でも所得税の繰り延べや相続税の債務控除という観点から、資産管理のヒントになる部分はあります。

借金は怖いものというイメージがありますが、すべての借金が悪いわけではありません。重要なのは、金利、担保価値、暴落リスク、税金を総合的に見て、数字で判断することです。

有価証券担保ローンは、正しく使えば資産を売らずに現金を確保する強力な手段になります。しかし、使い方を誤れば大きな損失につながる可能性もあります。

資産運用では、リスクをゼロにすることではなく、リスクを理解してコントロールすることが重要です。今回の内容は、長期投資家が急な出費や暴落局面に備えるうえで、非常に参考になる考え方だと言えるでしょう。

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