暴落時でも売ってはいけない?三菱商事・東京海上・信越化学に見る長期保有銘柄の条件

本記事は、YouTube動画『暴落でも絶対に売ってはいけない永久保有銘柄3選を徹底解説』の内容を基に構成しています。

目次

暴落時こそ問われる「本当に持ち続けられる銘柄」

株式市場では、株価が大きく下落すると、多くの投資家が不安になります。特に決算の見出しに「減益」「減収」「下方修正」といった言葉が並ぶと、思わず売りたくなる人も少なくありません。

しかし、長期投資で重要なのは、表面的な数字だけで判断しないことです。減益に見えても、その裏側では本業の収益力が強くなっている場合があります。また、現金が減っているように見えても、それが財務悪化ではなく、株主還元や成長投資の結果であることもあります。

今回の動画では、暴落局面でも簡単に売るべきではない銘柄として、三菱商事、東京海上ホールディングス、信越化学工業の3社が取り上げられています。いずれも日本を代表する企業でありながら、それぞれ異なる強みとリスクを持っています。

三菱商事:3期連続減益でも見逃せない本当の実力

まず取り上げられたのは三菱商事です。

2026年3月期の連結決算では、税引前利益が前期比21%減、当期純利益は8,500億円で16%減となりました。これだけを見ると、3期連続の減益であり、投資家にとっては不安材料に見えるかもしれません。

しかし、動画では「見出しだけで判断するのは早い」と説明されています。前期にはローソンを完全子会社化する過程で発生した株式の再評価益や、オーストラリアの炭鉱の一部売却益といった一時的な利益が含まれていました。つまり、今期の減益は本業が大きく悪化したというよりも、前期にあった一時的な利益の反動という面が大きいのです。

むしろ注目すべきは、持分法による投資損益です。これは三菱商事が出資している海外事業などから得られる利益を示すもので、前期の3,375億円から今期は4,679億円へと、1,300億円以上増加しています。

特にチリの銅事業などが貢献しており、資源価格が下落する中でも、実力ベースの収益力はむしろ高まっていると説明されています。

資源だけに頼らない三菱商事のポートフォリオ

三菱商事は資源ビジネスの印象が強い企業ですが、実際には非常に幅広い事業を展開しています。

金属資源部門では、原料炭の相場下落によって利益が落ち込みました。しかし、それを補ったのが社会インフラ部門です。プラント事業を手掛ける千代田化工建設の採算改善などにより、この部門の利益は453億円増加しました。

資源が弱い時期に、インフラや電力トレーディングなど別の部門が支える。この分散された事業構造こそ、総合商社の強みです。

さらに三菱商事が力を入れているのが、2025年4月に始動した「経営戦略2027」です。目標として、営業収益キャッシュフローの平均成長率10%以上、ROE12%以上を掲げています。

その中心にあるのが、KDDIと進めるローソンを軸とした生活インフラ構想です。ローソンは全国に約1万4,600店舗を持ち、KDDIは3,100万人規模のデジタル接点を持っています。この2つを組み合わせることで、コンビニを単なる買い物の場所ではなく、医療や生活サービスの入り口へ変えようとしているのです。

実際に2026年7月1日には、処方薬をローソン店舗で受け取れる仕組みが始まりました。オンラインで服薬指導を受け、薬は自宅または近所のローソンで受け取る。これは、近くに調剤薬局がない地域や、忙しくて薬局に行きづらい人にとって、大きな利便性を持つサービスです。

三菱商事のリスクと株価シナリオ

一方で、三菱商事には注意すべきリスクもあります。

まず、資源価格と為替への感応度が高い点です。ドル円が1円動くだけで、年間利益に数十億円規模の影響が出るとされています。資源以外の事業が成長しているとはいえ、資源安と急激な円高が同時に進めば、非資源部門だけで吸収しきれない可能性があります。

また、信用買い残が約610万株と高水準にある点も短期的な重荷です。株価が上昇した局面では、利益確定や整理売りが出やすくなる可能性があります。

動画では、上振れシナリオとして、利益目標への進捗が順調で、銅価格の反発や生活インフラ事業の収益化が確認されれば、5,800円近辺を目指す展開もあるとしています。

一方で、世界景気の後退、資源価格の下落、急激な円高が重なった場合には、3,850円近辺まで調整する可能性もあると説明されています。

東京海上ホールディングス:バークシャーが選んだ日本の保険会社

2社目は東京海上ホールディングスです。

2026年3月期の純利益は9,804億円で、前期比7%減となりました。一見すると減益ですが、海外保険事業の収益は約29%伸びており、基盤そのものは拡大しています。

減益の主な要因は、前期にあった特別利益の反動や、一時的な保険金支払いの影響です。つまり、収益力が大きく崩れたというよりも、一時要因の影響が大きいと見られます。

そして、東京海上を語る上で重要なのが、2026年3月23日に発表されたバークシャー・ハサウェイとの資本業務提携です。

バークシャー傘下の再保険会社が、東京海上の自己株式のうち発行済み株式の約2%、金額にして2,874億円分を取得しました。これは単なる株式取得ではなく、事業面でも大きな意味を持つ提携です。

東京海上とバークシャー提携の意味

この提携のポイントは大きく2つあります。

1つ目は、自然災害リスクの分散です。東京海上は保険会社である以上、台風や地震などによる巨額の保険金支払いリスクを抱えています。そこに世界最大級の再保険能力を持つバークシャーが関わることで、巨大災害時のリスクを一部移転しやすくなります。

2つ目は、共同でのM&Aの可能性です。東京海上はすでに海外保険会社を買収し、海外利益比率を50%超まで高めています。ここにバークシャーの資金力が加われば、これまで単独では難しかった数兆円規模のグローバル買収も視野に入ります。

つまり、世界的な投資会社が日本の保険会社を対等な事業パートナーとして選んだという点で、非常に大きな意味を持つ出来事だと言えます。

東京海上の株主還元と注意点

東京海上は配当面でも強みがあります。

2020年3月期に75円だった年間配当は、2026年3月期には218円まで増加し、2027年3月期は245円を計画しています。実現すれば7期連続増配となり、約7年で配当は3倍以上になります。

また、政策保有株式の削減にも積極的です。日本企業では長年、企業同士が株式を持ち合う構造がありましたが、近年は資本効率の観点から解消が進んでいます。東京海上はこの流れに積極的に取り組み、自己株TOBなどを通じて資本効率の改善を進めています。

ただし、短期的には株価の過熱感があります。バークシャーとの提携発表後、株価は2日連続でストップ高となり、上場来高値を更新しました。その結果、個人投資家の信用買いが急増し、信用倍率は約53倍という高い水準に達しています。

信用買いが多い状態では、株価が下がった時に投げ売りが出やすくなります。そのため、長期的な魅力はある一方で、短期的な調整リスクには注意が必要です。

上振れシナリオとしては、バークシャーとの提携を背景に大型M&Aが実現したり、再保険の最適化によるコスト削減が評価されれば、1万400円前後を目指す展開も考えられます。

逆に、信用買い残の解消を伴う売りが出たり、大規模自然災害によって保険金支払いが急増した場合には、提携発表前の6,400円近辺まで調整する可能性もあるとされています。

信越化学工業:現金36%減少の裏にある資本政策

3社目は信越化学工業です。

信越化学は、塩化ビニール樹脂と半導体シリコンウェハーの両方で世界トップクラスのシェアを持つ企業です。素材産業の中でも、非常に重要なポジションを握っています。

2026年3月期の決算では、売上高がほぼ横ばいの2兆5,739億円だった一方、営業利益は14%減の6,352億円、純利益は11%減の4,744億円となりました。

減益の主な理由は、中国の不動産不況によって、行き場を失った塩化ビニール樹脂がアジア市場に流れ込み、価格と利益率を圧迫したことです。

しかし、厳しい市況の中でも信越化学は高い黒字を維持しています。これは、同社が持つ低コスト生産体制と高い参入障壁によるものです。

信越化学の強さは「不況時に攻められる財務力」

信越化学の強みは、徹底したコスト管理と財務の強さです。

塩化ビニールのような汎用素材であっても、アメリカ子会社では原料や電力まで自前で確保する垂直統合モデルを維持しています。そのため、業界の中でも低コストで生産できる体制を持っています。

さらに、半導体シリコンウェハーは、半導体メーカーが一度認定した部材を簡単に切り替えられないため、参入障壁が非常に高い分野です。この安定した需要基盤も信越化学の強みです。

注目すべきは、不況時にこそ攻める姿勢です。中国発の供給過剰で市況が冷え込む中、信越化学は2026年3月、アメリカ・ルイジアナ州で5,300億円規模の大型増産投資を決定しました。

通常であれば、需要が弱い時に生産能力を増やすのはリスクが高い判断です。しかし、信越化学は競合が投資を止める局面であえて設備を増強し、将来的に市場が回復した時のシェア拡大を狙っています。

これができる背景には、自己資本比率79%という極めて強固な財務基盤があります。

自社株買いで現金は減ったが、財務悪化とは限らない

動画では、信越化学の現金が約36%減少した点にも触れられています。

一見すると、現金が減ることは財務悪化のように見えるかもしれません。しかし、その背景には大規模な自社株買いがあります。2025年5月から2026年4月にかけて、上限2億株、金額にして5,000億円の自社株買いを実行しました。

年間配当と合わせた総還元性向は147%に達しています。

つまり、使い道のない現金をただ貯め込むのではなく、株主価値を高めるために活用したということです。これは財務の劣化ではなく、資本政策としての意図的な選択と見るべきだと動画では説明されています。

ただし、注意点もあります。信越化学は2027年3月期の業績や配当について、会社として公式な予想をまだ出していません。市場では目標株価8,200円やEPS300円といった予想もありますが、これはあくまで一部アナリストの見方であり、会社の公式見通しではありません。

中国発の供給過剰リスクが続く中で、強気シナリオが実現するかどうかはまだ不透明です。

上振れシナリオとしては、AI関連の半導体投資が加速し、業績がアナリスト予想に近づけば、8,200円水準を試す展開が考えられます。

一方で、原材料価格の上昇や中国メーカーによる輸出攻勢が長期化した場合、自社株買いによる下値支援が一巡していることもあり、5,900円から6,100円のレンジまで調整する可能性もあります。

3社を組み合わせることで高まるポートフォリオの耐性

今回取り上げられた3社は、業種も収益構造も大きく異なります。

三菱商事は、資源、商社、小売り、ヘルスケアを組み合わせた生活インフラ企業としての顔を持っています。

東京海上ホールディングスは、保険と金融の企業であり、海外利益比率が50%を超え、バークシャーとの提携によって再保険リスクの分散も進めています。

信越化学工業は、塩化ビニールと半導体材料という産業の基礎部分を支える素材企業です。

インフレが進む局面では、資源や小売りを持つ三菱商事が強みを発揮しやすくなります。金利上昇局面では、運用収益が増える東京海上にとって追い風になります。そして、世界的にデフレ的な市況になったとしても、信越化学は低コスト体質によって生き残り、半導体という中長期の成長テーマの恩恵を受ける可能性があります。

このように、異なる経済シナリオに強い企業を組み合わせることで、特定の相場環境だけに依存しないポートフォリオを作ることができます。

追加解説:長期投資では「減益=悪」と決めつけないことが重要

初心者が株式投資で陥りやすいのは、決算の見出しだけを見て判断してしまうことです。

たとえば「減益」と書かれていると、すぐに悪い決算だと考えてしまいます。しかし、その減益が一時的な特別利益の反動なのか、本業の悪化なのかでは意味がまったく違います。

また、現金が減っている場合も、それが赤字の穴埋めで減ったのか、自社株買いや成長投資に使ったのかで評価は変わります。

今回の3社はいずれも、表面的な数字だけでは判断しづらい企業です。三菱商事は減益でも投資損益が改善し、東京海上は減益でも海外事業が伸び、信越化学は現金減少でも株主還元と成長投資を進めています。

長期投資家に必要なのは、数字の裏側にある構造を見る力です。

まとめ:暴落時に売らないためには、事前にシナリオを持つことが大切

今回の動画では、暴落時でも簡単に売るべきではない長期保有候補として、三菱商事、東京海上ホールディングス、信越化学工業の3社が解説されました。

三菱商事は、資源だけに頼らない生活インフラ事業への転換を進めています。ローソンとKDDIを軸に、コンビニを医療や生活サービスの拠点へ変えようとしている点は、今後の成長余地として注目されます。

東京海上ホールディングスは、バークシャー・ハサウェイとの提携によって、再保険リスクの分散と大型M&Aの可能性を広げました。配当成長や政策保有株式の削減も進めており、資本効率の改善が期待されます。

信越化学工業は、塩化ビニールと半導体シリコンウェハーで世界的な強みを持ち、不況時にも大型投資を実行できる財務力を持っています。現金減少も、単純な財務悪化ではなく、自社株買いを通じた資本政策の一環と見ることができます。

一方で、どの企業にもリスクはあります。三菱商事は資源価格と為替、東京海上は自然災害と信用買いの過熱、信越化学は中国発の供給過剰と業績予想の不透明感が課題です。

大切なのは、株価が上がるか下がるかを単純に当てようとすることではありません。どの条件が揃えば上に行きやすく、どの条件が揃えば下に振れやすいのか。そのシナリオを自分の中に持つことです。

決算の見出しだけで売買を判断するのではなく、数字の裏側にある事業構造、財務戦略、成長投資、リスク要因を丁寧に見ること。それが、機関投資家や短期筋に振り回されない長期投資家になるための重要な視点です。

なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください

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