本記事は、YouTube動画『2026年5月公表】平均貯蓄2059万円の真実|投資する家計・しない家計で格差は広がるのか【総務省統計局】』の内容を基に構成しています。
平均貯蓄2059万円という数字は本当に日本の実態を表しているのか
総務省統計局が2026年5月19日に公表した家計調査報告の貯蓄・負債編では、2025年時点の日本の2人以上世帯における貯蓄や負債の状況が示されました。
この調査で特に注目されたのが、2人以上世帯の平均貯蓄額が2059万円となり、2000万円を超えたという点です。これだけを見ると、「日本人は意外とお金を持っているのではないか」「自分の家計はかなり少ないのではないか」と感じる人も多いかもしれません。
しかし、ここで重要なのは、平均値だけを見て家計の実態を判断してはいけないということです。平均値は、一部の高額資産保有世帯によって大きく押し上げられる性質があります。たとえば、10世帯のうち9世帯が500万円しか持っていなくても、1世帯が1億円を持っていれば、平均値は大きく上がります。
そのため、一般的な家計の実感に近い数字を見るには、中央値も確認する必要があります。今回の調査では、2人以上世帯の貯蓄額の中央値は1264万円でした。さらに、貯蓄0世帯を含めた中央値では1167万円となっています。
つまり、平均値の2059万円と中央値の1264万円の間には大きな差があります。この差こそが、日本の家計における資産格差を示す重要なポイントです。
貯蓄の定義には預金だけでなく株式や投資信託も含まれる
今回の調査でいう「貯蓄」は、単なる銀行預金だけを指しているわけではありません。普通預金や定期預金のほか、生命保険の掛金、株式、債券、投資信託、金銭信託、社内預金なども含まれます。
特に重要なのは、株式や投資信託が時価で評価されている点です。つまり、株高が進めば、それだけ貯蓄額として集計される金額も増えます。近年は新NISAの普及や株高の影響もあり、有価証券を持っている世帯の貯蓄額が押し上げられやすい環境になっています。
一方で、住宅ローンなどの負債は、この貯蓄額から差し引かれていません。たとえば、住宅ローンが2000万円あっても、預金や株式などで1000万円持っていれば、貯蓄額は1000万円として集計されます。つまり、この数字は純資産ではなく、あくまで金融資産としての貯蓄額です。
この点を理解しておかないと、「貯蓄が1000万円あるなら安心だ」と単純には言えません。住宅ローンなどの負債も合わせて見なければ、家計全体の本当の余裕度は分からないのです。
平均値と中央値の差から見える資産の二極化
今回の調査では、貯蓄額の分布にも注目すべき点があります。4000万円以上の貯蓄を持つ世帯は15.2%にのぼります。一方で、100万円未満の世帯も10.1%存在します。
この数字から分かるのは、日本の2人以上世帯では、かなり貯蓄を持っている世帯と、ほとんど貯蓄がない世帯が同時に存在しているということです。
特に4000万円以上の世帯が15.2%もあるという点は、平均値を大きく押し上げる要因になっています。3000万円から4000万円未満の世帯も7.5%あるため、3000万円以上の貯蓄を持つ世帯はかなりの割合を占めています。
一方で、500万円未満の世帯も一定数あります。動画内では、世間一般の分布として、500万円未満が約28%、500万円から2000万円未満が約37%、2000万円以上が約34%という見方が紹介されています。
つまり、日本の家計は単純に「みんな平均的に2000万円持っている」という状態ではありません。むしろ、資産を多く持つ層と、まだ十分な貯蓄を持てていない層に分かれていると考える方が自然です。
勤労者世帯では平均値も中央値も下がる
2人以上世帯全体の数字を見ると平均貯蓄額は2059万円ですが、勤労者世帯に限定すると数字は下がります。
勤労者世帯、つまり現役で働いている世帯では、平均貯蓄額が1717万円、中央値が1075万円、貯蓄0世帯を含めた中央値は964万円となっています。
この違いが生まれる理由として考えられるのは、すでに退職した高齢世帯が全体の平均や中央値を押し上げていることです。高齢世帯の中には、長年の貯蓄や退職金、資産運用によってまとまった金融資産を持っている人も少なくありません。
一方で、現役世代は住宅ローン、教育費、生活費、子育て費用などの負担が大きく、貯蓄を大きく増やしにくい時期でもあります。そのため、自分の家計状況を判断する際には、全世帯の平均ではなく、勤労者世帯の数字も合わせて見ることが大切です。
日本でも貯蓄から投資への流れが進み始めている
貯蓄の中身を見ると、日本人の家計が少しずつ変化していることも分かります。
2人以上世帯全体では、最も多いのは通貨性預貯金で34.5%です。通貨性預貯金とは、普通預金のようにいつでも引き出せる預金のことです。次に多いのが定期性預貯金で、その後に有価証券、生命保険などが続きます。
日本人は昔から現金や預金を好む傾向が強いといわれてきました。実際、今回のデータでも、預貯金系の資産が全体の大きな割合を占めています。
ただし、前年との比較では、有価証券の割合が19.0%から21.4%へ上昇しています。一方で、通貨性預貯金や定期性預貯金の割合は低下しています。
この変化は、いわゆる「貯蓄から投資へ」という流れが少しずつ進んでいることを示していると考えられます。もちろん、株高によって有価証券の評価額が膨らんだ影響もあります。しかし、新NISAの普及や投資信託の積立を始める人の増加も、家計の資産構成に影響している可能性があります。
現役世代では有価証券比率の伸びがさらに大きい
勤労者世帯に限ると、有価証券の割合はさらに注目すべき動きを見せています。2020年には有価証券の割合が11.5%だったのに対し、2025年には21.5%まで上昇しています。
わずか5年ほどで、現役世代の家計に占める有価証券の割合がほぼ倍増したことになります。
この背景には、新NISAやiDeCo、積立投資の普及があります。特に2024年から新NISA制度が始まり、年間投資枠が拡大したことで、投資を始めるハードルは以前よりも下がりました。
また、YouTubeやSNS、ブログなどを通じて、インデックス投資や長期積立投資の情報に触れる機会も増えています。これまで投資に距離を置いていた人たちも、少額から投資信託を買うようになり、家計の中に有価証券が組み込まれるケースが増えていると考えられます。
ただし、投資をしている家計と、預金中心の家計との間では、将来的に資産形成の差が広がる可能性があります。株式や投資信託は値下がりリスクもありますが、長期的には経済成長や企業利益の拡大を取り込める可能性があります。一方、現金だけを持ち続ける場合、インフレによって実質的な購買力が下がるリスクがあります。
負債の多くは住宅ローンである
次に、負債の状況を見ていきます。
2人以上世帯全体では、負債0世帯を含めた平均負債額は675万円です。ただし、この数字は住宅ローンを持っていない世帯も含まれているため、あまり実感に近くないかもしれません。
負債を保有している世帯だけを見ると、平均負債額は1802万円、中央値は1511万円となっています。そして、そのうち91.9%が住宅や土地のための負債です。
つまり、日本の家計における負債の大半は住宅ローンだと考えてよいでしょう。
勤労者世帯に限定すると、負債保有世帯の平均負債額は1928万円、中央値は1735万円です。現役世代は住宅ローンを抱えている割合が高いため、全世帯よりも負債額が大きくなります。
この点からも、貯蓄額だけを見て家計の豊かさを判断するのは不十分です。たとえば、貯蓄が1000万円あっても、住宅ローンが3000万円残っていれば、純資産ではマイナスになります。逆に、貯蓄が1500万円で住宅ローンがほとんどなければ、家計の安定度はかなり高いといえます。
年齢別に見ると40代までは純資産がマイナスになりやすい
年齢別に見ると、家計の姿はさらに分かりやすくなります。
負債保有世帯に限ると、40歳未満では貯蓄が約1000万円ある一方で、負債は約3000万円あります。つまり、純資産で見ると約マイナス2000万円という状態です。
40代でも、貯蓄が約1300万円に対して負債が約2200万円あり、純資産では約マイナス900万円です。50代になると、ようやく貯蓄と負債がほぼ釣り合う状態に近づきます。そして60代になると、住宅ローンの返済が進み、純資産が大きくプラスになっていく傾向があります。
この流れは、住宅を購入する一般的なライフサイクルを反映しています。20代から40代にかけて住宅ローンを組み、子育てや教育費も重なるため、家計は負債を抱えやすくなります。50代から60代にかけてローン返済が進み、子どもの独立や収入の安定によって、ようやく資産形成が進みやすくなるのです。
そのため、30代や40代で純資産がマイナスだからといって、必ずしも異常ではありません。住宅ローンを抱えている世帯では、ある程度自然な姿ともいえます。
ただし、住宅ローンが家計に対して重すぎる場合は注意が必要です。収入に対して返済額が大きすぎると、投資や貯蓄に回す余力がなくなり、将来の資産形成が遅れる可能性があります。
収入が多い世帯ほど貯蓄も負債も大きくなる
収入階級別に見ると、収入が高い世帯ほど貯蓄額も大きくなる傾向があります。これは直感的にも分かりやすい結果です。収入が多ければ、生活費を差し引いた後に残るお金も多くなり、貯蓄や投資に回しやすくなります。
一方で、収入が多い世帯ほど負債額も大きくなる傾向があります。これは、収入が高いほど金融機関から借りられる金額も大きくなり、住宅購入時に高額な住宅ローンを組みやすくなるためです。
つまり、高収入世帯だからといって、必ずしも負債が少ないわけではありません。むしろ、高収入だからこそ大きな住宅ローンを抱えるケースもあります。
この点は、家計管理を考えるうえで重要です。収入が高くても、住宅ローン、教育費、自動車費用、保険料などが大きければ、手元に残るお金は少なくなります。逆に、収入が平均的でも、支出を抑え、投資を継続していれば、長期的に大きな資産を築ける可能性があります。
貯蓄額が多い世帯ほど有価証券の比率が高い
今回の動画で特に重要なのが、貯蓄額別に見た資産の置き場所です。
貯蓄額を5階級に分けると、第1階級は285万円未満、第2階級は285万円から813万円、第3階級は813万円から1652万円、第4階級は1652万円から3259万円、第5階級は3259万円以上となっています。
この中で、第5階級の平均貯蓄額は6113万円です。3259万円以上という区分で平均が6113万円になるということは、この層には1億円以上の資産を持つ世帯も相当数含まれていると考えられます。
そして、貯蓄額が多い階級ほど、通貨性預貯金の比率は下がり、有価証券の比率が大きく上がっています。
これは非常に重要なポイントです。
資産が多いから有価証券に回せる余裕があるともいえますし、有価証券に回してきたからこそ資産が増えたともいえます。実際には、この2つは同時に起きている可能性があります。
一度資産が増え始めると、投資に回せる金額が増えます。投資額が増えると、株高や配当、分配金、複利効果によって資産がさらに増えやすくなります。そして増えた資産をさらに投資に回すことで、資産形成のサイクルが加速していきます。
動画内では、これをポジティブフィードバックと表現しています。資産が増える人はさらに増えやすくなり、投資をしていない人との差が徐々に広がっていく構造があるということです。
投資する家計としない家計で格差は広がる可能性がある
今回のデータから見える大きなテーマは、投資する家計としない家計の差です。
もちろん、投資にはリスクがあります。株式や投資信託は値下がりすることがありますし、短期的には大きく損をする可能性もあります。そのため、生活防衛資金まで投資に回すべきではありません。
しかし、長期的に見ると、現金だけを持つ家計と、有価証券を一定割合持つ家計では、資産形成のスピードに差が出る可能性があります。
特にインフレが進む局面では、現金の価値は目減りします。たとえば、物価が毎年2%ずつ上がる場合、銀行預金の金利がほとんど付かなければ、預金額は同じでも買えるものは少しずつ減っていきます。
一方、株式や投資信託は、企業の成長や利益拡大を通じて、長期的にインフレに対抗できる可能性があります。もちろん確実ではありませんが、現金だけに偏るよりも、資産の一部を投資に振り向けることは、長期の資産防衛として意味を持ちます。
今回の調査で有価証券比率が上がっていることは、日本の家計が少しずつその方向に動き始めていることを示しているのかもしれません。
65歳以上でも資産格差は大きい
65歳以上の世帯を見ると、平均貯蓄額は2564万円、中央値は1777万円です。
この数字だけを見ると、老後世帯はかなり余裕があるように見えるかもしれません。しかし、分布を見ると実態は大きく異なります。
65歳以上世帯では、4000万円以上の貯蓄を持つ世帯が21.2%あります。3000万円以上で見ると、約3割の世帯が該当します。つまり、老後にかなり大きな資産を持っている世帯が一定数存在しているということです。
一方で、100万円未満の世帯も7%あります。100万円から200万円未満の世帯も3.7%あり、200万円未満で見ると10%を超えます。さらに300万円未満まで広げると、約15%に達します。
つまり、65歳以上でも、十分な資産を持っている世帯と、老後資金がかなり少ない世帯が共存しているのです。
平均値の2564万円を超えている世帯は、おおよそ3分の1程度です。逆に言えば、3分の2程度の世帯は平均値に届いていません。ここでも、平均値だけを見て「老後世帯はみんな2500万円以上持っている」と考えるのは危険です。
平均貯蓄額に届かなくても焦りすぎる必要はない
今回のデータを見て、「自分の家計は平均より少ない」と不安になる人もいるかもしれません。
しかし、平均値は一部の高資産世帯によって押し上げられています。実際には、平均値に届いていない世帯の方が多数派です。そのため、平均貯蓄2059万円という数字だけを見て、自分の家計を過度に悲観する必要はありません。
大切なのは、自分と似た世帯条件で比べることです。年齢、世帯人数、住宅ローンの有無、子どもの有無、収入、住んでいる地域によって、家計の状況は大きく変わります。
30代で住宅ローンを組んだばかりの世帯と、70代で住宅ローンを完済し、退職金も受け取った世帯を同じ土俵で比べても意味がありません。
見るべきなのは、今の自分の家計が、将来に向けて改善しているかどうかです。毎月少しでも貯蓄できているか。無理のない範囲で投資を始めているか。住宅ローンや固定費が重すぎないか。生活防衛資金を確保できているか。こうした点の方が、平均値よりもはるかに重要です。
家計が今から意識すべきこと
今回の調査から分かるのは、日本の家計が少しずつ変化しているということです。預金中心の家計はまだ多いものの、有価証券の比率は確実に上がっています。特に現役世代では、2020年から2025年にかけて有価証券比率が大きく伸びました。
今後もインフレや賃上げ、NISA制度の普及、株式市場の動向によって、投資をする家計としない家計の差は広がる可能性があります。
ただし、投資を始める前に、まずは家計の土台を整えることが大切です。生活費の数か月分の現金を確保し、住宅ローンや保険料、通信費、車関連費などの固定費を見直し、そのうえで余裕資金を長期投資に回すのが現実的です。
投資は一気に大きく増やすものではなく、時間を味方につけるものです。毎月1万円でも2万円でも、長期で積み立てることで、将来の資産形成に大きな差が生まれる可能性があります。
まとめ
今回の総務省統計局のデータでは、2025年の2人以上世帯の平均貯蓄額が2059万円となり、2000万円を超えたことが示されました。しかし、中央値は1264万円であり、平均値と中央値には大きな差があります。
この差は、一部の高資産世帯が平均値を押し上げていることを意味します。実際、4000万円以上の貯蓄を持つ世帯が15.2%ある一方で、100万円未満の世帯も10.1%存在しており、日本の家計には資産の二極化が見られます。
また、貯蓄の中身を見ると、有価証券の割合が上昇しており、特に現役世代では2020年から2025年にかけて有価証券比率が大きく伸びています。これは、新NISAの普及や株高の影響もあり、日本でも少しずつ「貯蓄から投資へ」の流れが進んでいることを示しています。
一方で、住宅ローンを抱える世帯では、40代までは純資産がマイナスになりやすい傾向もあります。貯蓄額だけを見るのではなく、負債や年齢、収入、家族構成も含めて家計全体を見ることが大切です。
今回のデータから読み取れる最も重要な点は、平均値に一喜一憂するのではなく、自分の家計の現在地を冷静に把握することです。そして、無理のない範囲で貯蓄と投資を続け、将来に向けて資産形成のサイクルを作っていくことが、これからの時代にはますます重要になるといえるでしょう。


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