テクニカル分析は本当に使えない?NYファンドマネージャーが語る「ホッケースティック相場」の危険性

本記事は、YouTube動画『テクニカル分析は信じない!NYファンドマネージャーが語る本音【堀古英司のウォール街裏話】』の内容を基に構成しています。

半導体関連株を中心に、株価が短期間で急激に上昇する局面が続いています。上昇相場は投資家に大きな利益をもたらす一方、上がるスピードが速すぎる場合には注意も必要です。

動画では、NYでファンドマネージャーとして活動する堀古英司氏が、半導体株指数であるSOX指数の急騰を例に挙げながら、いわゆる「ホッケースティック型」のチャートが示す危険性について解説しています。

さらに、テクニカル分析を基本的に信じていないという堀古氏が、銀行の為替ディーラーとして11年間チャートを研究した経験や、移動平均線を利用した有名な投資手法の問題点についても語っています。

株価が急上昇しているとき、投資家はどのように市場と向き合えばよいのでしょうか。動画の内容を詳しく見ていきます。

目次

半導体株の上昇はバブルなのか

動画の冒頭では、現在の株式市場について「バブルではないか」という話題が取り上げられています。

株価が力強く上昇し、市場全体に活気がある状況は、投資家にとって高揚感のあるものです。かつての日本のバブル期を思わせるような雰囲気もあり、「久しぶりに市場が元気になった」と感じる投資家も少なくありません。

もっとも、堀古氏は、上昇そのものよりも上昇のスピードを問題視しています。

バブルであっても、株価が下落せず、企業価値の成長によって正当化されるのであれば問題はありません。しかし、現在の市場は上昇角度が急であり、さらに上昇する銘柄が一部に偏っているように見えます。

米国市場では半導体関連株への資金集中が目立っており、日本株もその影響を受けています。

SOX指数とは何か

動画の中で中心的に取り上げられているのが、SOX指数です。

SOX指数は、正式にはフィラデルフィア半導体株指数と呼ばれ、米国市場に上場する主要な半導体関連企業で構成されています。半導体メーカーだけでなく、半導体製造装置や関連技術を持つ企業も含まれており、世界の半導体業界の動きを見るうえで重要な指数です。

半導体はスマートフォン、パソコン、自動車、データセンター、AIなど、幅広い産業で使用されています。そのため、SOX指数は半導体業界だけでなく、世界経済やハイテク市場の先行きを判断する材料としても注目されています。

動画によると、SOX指数は3月頃までは比較的許容できる角度で上昇していました。

ところが、3月31日頃を起点に、チャートが突然上方向へ大きく伸び始めました。緩やかな上昇から、一気に急角度の上昇へ変化したのです。

堀古氏は、この形を米国で「ホッケースティック」と呼ぶと説明しています。

ホッケースティック型チャートとは

ホッケースティック型とは、チャートがホッケーのスティックのような形になることです。

最初は横ばいや緩やかな上昇が続き、ある時点から急激に上方向へ伸びます。ホッケースティックの持ち手から先端に向かって急角度で曲がるような形に見えることから、このように呼ばれています。

一見すると、非常に強い上昇トレンドであり、投資家にとって魅力的なチャートに見えます。しかし、堀古氏によると、ホッケースティック型は単純な買いサインではなく、むしろ「要注意サイン」です。

その理由は、株価が上がるか下がるかを予測しにくくなるからです。

急上昇したからといって、すぐに天井をつけるとは限りません。さらに上昇が続き、ホッケースティックの先端部分がより長く伸びる可能性もあります。

一方で、上昇が限界に達し、突然急落する可能性もあります。

つまり、ホッケースティック型が現れた後は、上にも下にも大きく動く可能性があり、プロの投資家であっても売買判断が非常に難しくなるのです。

上昇相場に短期投資家が集まる

ホッケースティック型の相場が難しくなる大きな理由は、市場参加者が変化することです。

株価が通常のペースで上昇している段階では、企業業績や将来性を分析する投資家が中心となります。

しかし、上昇が急激になると、短期間で大きな利益を狙う投資家が世界中から集まってきます。

堀古氏は、こうした投資家について、株式市場に普段から参加していた人だけではなく、それまで暗号資産などを取引していた人も参入してくると説明しています。

短期的な値動きを狙う投資家は、企業の利益や財務状況よりも、価格の勢いや話題性を重視する傾向があります。

その結果、株価は企業価値だけでは説明しにくい動きを始めます。

レバレッジ商品が相場をさらに不安定にする

急騰相場では、現物株だけでなく、レバレッジをかけた金融商品への資金流入も増えます。

レバレッジとは、少ない資金で大きな金額を動かす仕組みです。2倍や3倍の値動きを目指すETFのほか、先物やオプションなども利用されます。

動画では、半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジーが例として挙げられています。同社のティッカーシンボルは「MU」です。

人気銘柄になると、通常の株式だけでなく、その株価の値動きを数倍に増幅させる商品も登場します。

こうしたレバレッジ商品に資金が集中すると、上昇局面では買いが買いを呼び、株価がさらに上昇します。

一方、下落局面では損失を抑えるための売りが一斉に出やすくなり、株価が急落する可能性があります。

企業業績とは関係なく、投資家の資金状況や強制的な売買によって価格が動くようになるため、市場の予測は一段と難しくなります。

業績が良くても株価が下がる理由

一般的な投資判断では、企業業績が良ければ株価は上昇し、業績が悪ければ株価は下落すると考えられています。

しかし、短期資金やレバレッジ取引が集中した市場では、この関係が崩れることがあります。

堀古氏は、企業価値を考えれば「これ以上は下がりにくい」と思える場面でも、売りが続くことがあると説明しています。

その理由は、すべての市場参加者が企業業績を見て売買しているわけではないからです。

レバレッジをかけている投資家は、損失が膨らむと証拠金を維持できなくなります。その場合、企業の将来性とは関係なく、保有株を売却しなければなりません。

また、生活資金に余裕がない投資家が売却する場合もあります。

こうした売りが重なると、理論上の企業価値よりも株価が大幅に下落することがあります。

インデックス投資とレバレッジが市場を非効率にする

堀古氏は、市場を非効率にする要因として、インデックス投資とレバレッジ商品を挙げています。

インデックス投資では、個別企業の業績を詳しく分析せず、指数に連動する商品を機械的に購入します。

指数に含まれる企業であれば、株価が割高であっても資金が流入する可能性があります。

さらにレバレッジ商品が加わると、値動きが増幅されます。

その結果、株価が企業価値から一時的に大きく離れることがあります。

市場が常に合理的に動くのであれば、株価は企業の利益や将来性を正確に反映するはずです。しかし、実際には投資家心理や資金流入、レバレッジ取引などによって、価格は大きく歪むことがあります。

アクティブ投資家は、こうした市場の非効率性を利用して利益を得ようとします。

バリュー投資家は簡単に買ってはいけない

株価が下落し、割安に見える場面では、バリュー投資家が買いを検討します。

しかし、堀古氏は、ホッケースティック型の相場では、通常なら買えると判断する水準でもすぐに買ってはいけないと説明しています。

急騰後の下落では、企業価値から見て割安になったとしても、レバレッジ取引の解消や短期投資家の売却によって、さらに下落する可能性があるからです。

そのため、バリュー投資家には「もっと待つ」姿勢が必要になります。

本当に大きな投資機会が訪れるとき、バリュー投資家は目立つ場所にはいません。市場が熱狂し、多くの投資家が集まっている時期には身を潜め、価格が十分に下がるのを待ちます。

簡単に手を出さないことも、投資判断の重要な一部です。

業績重視の投資家は急騰前に買っている

動画では、企業業績を分析するアクティブ投資家は、チャートがホッケースティック型になる前から投資しているという話も出ています。

企業の利益成長や事業環境を分析し、将来の株価上昇を予測している投資家は、市場全体が注目する前に株式を購入します。

株価が急騰し、一般投資家や短期投資家が集まり始めた段階では、すでに大きな含み益を持っている可能性があります。

その意味では、急騰した後に買う投資家と、急騰する前に買った投資家では、同じ株式を保有していてもリスクが大きく異なります。

急騰前に買っている投資家は、株価がある程度下落しても利益を維持できます。

一方、急騰後に買った投資家は、少しの下落でも大きな損失を抱える可能性があります。

急騰した株を利益確定できない理由

急騰前から株式を保有しているのであれば、株価が上がった段階で利益確定すればよいと考える人もいるでしょう。

しかし、堀古氏は、簡単には利益確定できないと語っています。

株価が急騰していても、その後さらに上昇する可能性があります。売却した直後に株価が大きく上昇すれば、利益を取り逃すことになります。

一方、保有を続ければ急落に巻き込まれる可能性もあります。

このように、ホッケースティック型の相場では、買う判断だけでなく、売る判断も難しくなります。

堀古氏は、現在の相場について「普通の相場ではない」と表現しています。

堀古英司氏がテクニカル分析を信じない理由

動画の後半では、テクニカル分析について議論が進みます。

テクニカル分析とは、株価や出来高などの過去のデータをチャートで分析し、将来の値動きを予測する方法です。

代表的な手法には、移動平均線、RSI、MACD、ボリンジャーバンドなどがあります。

しかし、堀古氏は、基本的にテクニカル分析を信じていないと語っています。

これはチャート分析を知らないからではありません。

堀古氏は、銀行で11年間にわたり為替ディーラーを務めていました。当時はファンダメンタルズ分析だけでなく、毎日チャートを確認し、さまざまな売買シグナルを研究していたといいます。

朝から晩までチャートを見続け、どのサインが有効なのかを検証しました。

その結果、ほとんどのテクニカルシグナルは当たらなかったという結論に至りました。

テクニカル分析が外れても学びが残らない

堀古氏がテクニカル分析に否定的な理由の1つは、シグナルが外れたときに学びが残りにくいことです。

例えば、あるチャートパターンを信じて株を買い、その後株価が下落したとします。

この場合、投資家に残るのは「サインが外れた」という結果だけです。

なぜ外れたのか、企業業績にどのような変化があったのか、業界環境がどう変わったのかを理解していなければ、次の投資に生かすことができません。

一方、企業業績や需要、供給、競争環境を分析して投資した場合は、予想が外れても原因を検証できます。

売上が予想より伸びなかったのか、利益率が低下したのか、新たな競合が登場したのかなど、失敗の理由を確認できます。

その検証を次の投資判断に生かせる点が、ファンダメンタルズ分析の利点です。

すべてのテクニカル分析を否定しているわけではない

堀古氏は、テクニカル分析のすべてが無意味だと断定しているわけではありません。

長年の経験の中で、現在でも使えると考えているものが一部あると述べています。

ただし、一般的に使われているテクニカル手法の大部分については、実用性が低いと考えています。

動画では、「9割5分は使いものにならない」という趣旨の発言もあります。

チャート分析には多くの時間がかかります。堀古氏は、投資家に同じような11年間を無駄にしてほしくないという思いから、テクニカル分析に対して厳しい見方を示しています。

200日移動平均線を使った有名な投資戦略

動画では、テクニカル分析の具体例として、200日移動平均線を利用した投資戦略が紹介されています。

200日移動平均線は、過去200営業日の株価終値を平均した線です。長期的な相場の方向を判断する指標として、多くの投資家に利用されています。

紹介された戦略は、株価指数が200日移動平均線を上回っている間は、レバレッジをかけてインデックスを買うというものです。

一方、指数が200日移動平均線を下回った場合は、株式を売却し、現金や債券に移します。

過去のデータを使って検証すると、この手法によって高いリターンが得られたという論文が約10年前に発表されました。

論文は高く評価され、投資家の間で広く知られるようになりました。

有名な投資手法は市場の動きを変える

優れた投資手法が公開されると、多くの投資家が同じ方法を使い始めます。

200日移動平均線を上回ったら買うという戦略が広まれば、指数が移動平均線を上回った瞬間に大量の買い注文が入ります。

さらに2倍のレバレッジをかける投資家が多ければ、買いの勢いは一段と強くなります。

堀古氏によると、近年ではS&P500などの指数が200日移動平均線を上回った直後に、価格が大きく上昇する場面が見られたといいます。

これは、移動平均線が将来の株価を予測したというより、多くの投資家が同じルールで一斉に買ったために価格が上がった可能性があります。

つまり、テクニカル指標が当たったのではなく、指標を信じる人々の行動によって値動きが発生したとも考えられます。

みんなが使い始めると優位性は薄れる

投資戦略は、多くの人に知られていない段階では有効に機能することがあります。

しかし、同じ手法を利用する投資家が増えると、その優位性は次第に薄れていきます。

買いサインが出る前に先回りして買う投資家が現れたり、サインが出た直後の価格が急騰したりするためです。

結果として、本来期待されていた価格で取引できなくなります。

堀古氏は、みんなが同じ手法を使い始めれば、その手法の効果は弱まっていくと指摘しています。

市場には、知られていない情報や少数の投資家しか実行していない戦略に利益機会があります。

広く知られ、誰もが同じように取引するようになれば、その利益機会は失われていきます。

アクティブ投資家は市場の非効率性を見る

アクティブ投資家は、市場の非効率な部分を探して利益を得ようとします。

株価が企業価値より安く放置されている場面や、投資家心理によって過剰に売られている場面などが代表例です。

そのためには、企業業績だけでなく、市場参加者がどのような行動を取っているのかを見る必要があります。

多くの投資家が同じテクニカル指標を信じて一斉に買っているのであれば、その行動自体が市場の歪みを生み出します。

レバレッジ商品やインデックス投資への資金流入も、株価を企業価値から大きく乖離させる要因になります。

堀古氏は、アクティブ運用では、こうした非効率な行動を見逃さないことが重要だと説明しています。

AI投資と企業のROE

動画の冒頭では、企業のROEについても触れられています。

ROEとは自己資本利益率のことで、企業が株主から預かった資本を使い、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す指標です。

計算式は、当期純利益を自己資本で割って求めます。

ROEが高い企業は、少ない自己資本で大きな利益を生み出していると評価されます。

動画では、米国の大手企業がAI分野に巨額の投資を行っている点について、それだけの投資を行う背景には、高い収益率を実現できるという自信があるのではないかという見方が示されています。

仮に企業が約30%の収益率を見込んでいるのであれば、AI投資は長期的に企業価値を高める可能性があります。

その意味では、半導体やAI関連株の長期的な成長期待には一定の根拠があります。

ただし、長期的な成長性があることと、現在の株価が割安であることは別問題です。

優れた企業であっても、株価が将来の成長を過度に織り込んでいれば、短期的には大きく下落する可能性があります。

ホッケースティック相場で投資家が注意すべきこと

ホッケースティック型のチャートが出たからといって、必ず株価が暴落するわけではありません。

急上昇後も企業業績が成長を続け、株価がさらに上昇する可能性はあります。

一方、短期投資家やレバレッジ資金が集中している場合は、何らかのきっかけで流れが反転し、急落する危険性があります。

このような局面で重要なのは、上昇しているという理由だけで飛び乗らないことです。

企業の売上や利益、成長率、競争力を確認し、現在の株価が将来の成長をどこまで織り込んでいるかを考える必要があります。

また、すでに保有している場合は、株価が下落したときにどこまで耐えられるのかを事前に考えておくことも重要です。

短期的な値動きを正確に予測することは難しいため、ポジションを大きくしすぎないこともリスク管理につながります。

テクニカル分析は本当に使えないのか

動画ではテクニカル分析に対して厳しい意見が示されていますが、これはすべての投資家にとってテクニカル分析が不要という意味ではありません。

テクニカル分析は、売買のタイミングや損切り位置を決める補助的な手段として利用できます。

ただし、チャートの形だけを根拠に、将来の値動きを確実に予測できると考えるのは危険です。

テクニカル指標は過去の価格データから計算されています。そのため、企業業績の急変や金融政策、地政学的リスクなど、突発的な出来事を事前に反映することはできません。

また、多くの投資家が同じ指標を見ている場合、その指標を利用した売買が価格を大きく動かすこともあります。

テクニカル分析を使う場合でも、企業業績や市場環境、投資家心理と組み合わせて考えることが重要です。

まとめ

動画では、SOX指数の急上昇を例に、ホッケースティック型のチャートが現れた相場の危険性が解説されました。

ホッケースティック型は、横ばいや緩やかな上昇の後に、株価が急角度で上昇する形です。

強い上昇トレンドに見えますが、その後さらに上昇するのか、突然下落するのかを判断することが難しく、プロの投資家にとっても売買しにくい相場になります。

急騰相場には、短期投資家やレバレッジ資金が集まりやすくなります。その結果、企業業績とは関係なく価格が大きく動き、市場の効率性が低下することがあります。

また、堀古英司氏は、銀行で11年間為替ディーラーとしてチャートを研究した経験から、多くのテクニカル分析は実用性が低いと語っています。

特に、有名な投資手法は多くの人が使い始めることで、市場の動きそのものを変えてしまいます。200日移動平均線を使った戦略も、広く知られたことで、サインが出た直後に大量の買いが入るようになりました。

投資で重要なのは、単にチャートの形を追うことではありません。

企業業績、需要と供給、市場参加者の行動、レバレッジ資金の動きなどを総合的に考える必要があります。

特に、株価が急騰して市場が熱狂しているときほど、簡単に飛び乗らず、冷静に判断する姿勢が求められます。

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