本記事は、YouTube動画『韓国で仕組債がすごいことになっている』の内容を基に構成しています。
韓国で、株価に連動する「仕組債」の取引が急増しています。
2026年7月には、韓国で株価連動型の仕組債の取引額が月間3兆5000億ウォン、日本円で約4000億円という高水準に達したことが、韓国の金融投資協会のデータから明らかになりました。
2026年5月には約1兆5000億ウォンだったため、わずか2カ月ほどで取引規模が大きく膨らんだことになります。
中でも注目されているのが、Samsung電子やSKハイニックスなど韓国を代表する大型株の株価に連動する商品です。一部では年利40~50%という非常に高い利率を掲げる仕組債まで登場しているとされています。
しかし、「年利50%ならかなりお得なのではないか」と単純に考えるのは危険です。
仕組債の利率が高いということは、その裏側で投資家が大きなリスクを引き受けている可能性があります。特に今回の韓国市場では、株価のボラティリティが急上昇したことが、仕組債の利率上昇につながっていると考えられます。
では、なぜ株価が激しく動くと仕組債の利率が高くなるのでしょうか。
その仕組みを理解するには、まず「プットオプション」という金融取引について知る必要があります。
韓国で仕組債取引が急増、月間3兆5000億ウォンに
2026年7月、韓国で株価に連動する仕組債の取引額が月間3兆5000億ウォンに達しました。
日本円では約4000億円規模となります。
2026年5月時点では約1兆5000億ウォンだったため、短期間で取引額が急増したことが分かります。
取引されている仕組債の中には、Samsung電子やSKハイニックスといった韓国の代表的な半導体関連企業の株価に連動する商品が多く含まれているといいます。
さらに、一部の商品では年利40~50%という非常に高い利率が設定されていました。
一般的な預金や債券の利回りと比較すると、極端に高い水準です。
ただし、ここで重要なのは「高利回り=魅力的な商品」とは限らないことです。
むしろ金融商品の世界では、基本的にリターンが高い商品ほど、投資家が負担するリスクも大きくなります。
今回の仕組債も、その典型例といえます。
そもそも仕組債とは何か
仕組債とは、通常の債券にデリバティブ取引などを組み合わせた金融商品です。
一般的な債券の場合、投資家がお金を貸し、その見返りとして一定の利息を受け取り、満期になれば元本が返還されるという比較的シンプルな構造になっています。
一方、仕組債では株価や株価指数、為替、金利などの値動きによって、利息や元本の返済条件が変化します。
そのため、表面的には「利率の高い債券」に見えても、実際には複雑なデリバティブ取引が組み込まれている場合があります。
今回韓国で取引が増えている仕組債について、動画では「プットオプションの売り」が組み込まれているケースが説明されています。
仕組債に組み込まれる「プットオプション売り」
一定の条件を満たすと元本が株価に連動するタイプの仕組債では、その内部に対象株の「プットオプション売り」が組み込まれていることがあります。
つまり、仕組債を購入した投資家は、実質的にプットオプションを売っているのと似たリスクを負うことになります。
プットオプションとは何か
プットオプションとは、一定の価格で株などを「売る権利」です。
例えば、ある株式について「20万円で売る権利」を持っているとします。
市場価格が15万円まで下落した場合でも、その権利を使えば20万円で売ることができます。
そのため、株価が大きく下落すると、プットオプションを持っている側にとって有利になります。
逆に、そのプットオプションを売った側は不利になります。
プットオプション売りでなぜ高い利回りを作れるのか
動画では、Samsung関連株を例に仕組みが説明されています。
仮に、ある株が現在25万円程度で取引されているとします。
ここで権利行使価格20万円のプットオプションを売ったとします。
プットオプションを売ると、その時点で「オプション料」を受け取ることができます。
このオプション料が、仕組債の高い利率を生み出す原資の一部になります。
株価が20万円を下回らなければ、プットオプションを購入した側は権利を行使する必要がありません。
例えば市場で25万円で売れる株を、わざわざ20万円で売る意味はないからです。
この場合、プットオプションは使われないまま期限を迎え、オプションを売った側は受け取ったオプション料を利益として確保できます。
これが仕組債の高い利率につながります。
株価が暴落すると大きな損失につながる可能性
問題は、株価が大きく下落した場合です。
先ほどの例で、株価が20万円を下回ったとします。
すると、プットオプションを持っている側は「20万円で売る権利」を行使するメリットが生まれます。
仮に株価が15万円まで下落していたとしても、20万円で売ることができるためです。
この場合、プットオプションを売っている側は20万円で株を引き取ることになります。
市場価格が15万円なのに20万円で買うことになるため、大きな損失が発生します。
仕組債の場合、この仕組みが商品内部に組み込まれているため、一定の条件を満たすと元本が大幅に減少する可能性があります。
つまり、高い利息を受け取る代わりに、大きな株価下落リスクを引き受けている商品なのです。
オプション価格を左右する3つの重要な要素
では、プットオプションの価格は何によって決まるのでしょうか。
主な要因として、動画では以下の3つが挙げられています。
- 権利行使価格
- 権利行使までの期間
- 株価のボラティリティ
例えば現在20万円で取引されている株について、「20万円で売る権利」と「10万円で売る権利」があれば、当然20万円で売る権利の方が価値は高くなります。
また、権利行使までの期間も重要です。
期限まで長い時間が残されているほど、その間に株価が大きく下落して権利行使できる状況になる可能性が高まります。そのため、一般的にオプション価格も高くなります。
そして今回特に重要なのが「ボラティリティ」です。
ボラティリティが高いほど仕組債の利率も高くなりやすい
ボラティリティとは、価格の変動の大きさを示す言葉です。
株価がほとんど動かない状態ではボラティリティは低く、1日に何十%も上下するような市場ではボラティリティが高いと表現します。
オプション取引では、ボラティリティが高いほどオプション価格が上昇する傾向があります。
なぜなら、株価が大きく動けば、期限までに権利行使価格を超えたり下回ったりする可能性が高くなるからです。
2026年7月の韓国市場では、Samsung電子やSKハイニックスなどの株価が大きく変動しました。
こうした状況になると、これらの株式を対象としたプットオプションの価格も上昇します。
そして仕組債の中に高額なオプションが組み込まれることで、仕組債そのものの利率も高くなります。
これが、年利40~50%といった非常に高い利率の商品が登場した背景です。
年利40~50%は「お得」ではなくリスク上昇のサイン
ここで最も重要なのは、高利回りをどのように理解するかです。
年利40%や50%という数字を見ると、「非常に魅力的な商品」と感じる人もいるかもしれません。
しかし実際には、利率が急上昇している背景には、対象株のボラティリティ上昇があります。
つまり、
「利率が高くなったから魅力が増した」
というより、
「株価が大きく動くようになり、元本割れリスクが高まったため利率も高くなった」
と考えた方が実態に近いといえます。
金融市場では、特別な理由もなく極端に高い利回りを得られる商品は基本的にありません。
高いリターンが提示されているのであれば、その裏側には何らかの大きなリスクが存在すると考える必要があります。
韓国ではシングルストックETFの規制も強化
韓国では、個別株に連動する高リスク商品の取引も活発になっています。
特にSamsung電子やSKハイニックスなどの株価に連動し、さらにレバレッジをかけた「シングルストックETF」が人気を集めていました。
シングルストックETFとは、特定の1銘柄の値動きに連動するETFです。
中には対象株の値動きの2倍などを目指すレバレッジ型の商品もあります。
しかし、株価が大きく変動する局面では、短期間で巨額の損失が発生する危険があります。
そのため韓国では2026年7月31日から、こうした商品の取引規制が強化されました。
証拠金の引き上げや、模擬取引などによる投資学習が求められるようになったとされています。
その影響もあり、シングルストックETFの残高は減少傾向にあります。
一方で仕組債の取引は高水準となっており、韓国の個人投資家のリスク志向の強さがうかがえます。
同時に、証券業界側もリスクの高い金融商品を積極的に販売している状況が見えてきます。
日本では仕組債販売が下火になった理由
日本では現在、以前ほど仕組債が積極的に販売されている状況ではありません。
その背景には、過去に発生した販売トラブルがあります。
特に2023年前後には、地方銀行などを中心に仕組債の販売方法が問題視されました。
複雑な商品構造や元本割れリスクが十分に理解されないまま販売されたケースなどが問題となり、金融庁から処分を受けた金融機関もありました。
こうした出来事によって「仕組債は危険な金融商品」というイメージが広がり、現在では金融機関も以前ほど積極的に販売しにくくなっています。
しかし、仕組債を巡る問題はこれが初めてではありません。
リーマン・ショックでも仕組債による損失が問題に
日本では2008年のリーマン・ショックの際にも、仕組債で大きな損失を抱えた投資家が少なくありませんでした。
当時は現在ほどSNSが普及していなかったため、問題が広く共有されにくい時代でしたが、大きな損失を抱えた個人投資家は存在していました。
その後、10年以上が経過し、過去のトラブルが忘れられた頃になると、再び金融機関が仕組債を販売するようになりました。
そして再び問題が発生するというサイクルが繰り返されています。
動画では、日本でも現在は仕組債販売が下火になっているものの、いずれ再び積極的に販売される可能性があると指摘しています。
金融商品の世界では、過去に問題となった商品でも、市場環境や世代が変わると再び販売が拡大するケースがあります。
韓国では仕組債問題のサイクルがさらに速い
韓国でも、仕組債を巡る問題は今回が初めてではありません。
2021~2022年頃には、中国株が大きく下落した際、中国株関連の仕組債についてリスク説明が不十分だったとして、韓国の金融当局が大手証券会社の勧誘行為を問題視したことがあります。
さらに過去を振り返ると、2020年の新型コロナウイルスによる市場急落や、2016年の英国によるEU離脱を問う国民投票、いわゆるBrexitの際にも、韓国の投資家が仕組債で大きな損失を出したとされています。
つまり韓国では、仕組債による損失が問題になるたびに取引が縮小し、市場が落ち着くと再び投資家がリスク商品に戻るというサイクルが繰り返されています。
しかも、そのサイクルは日本よりも速い可能性があります。
韓国の個人投資家は株式やレバレッジ商品などへの投資意欲が強いことで知られており、その特徴が仕組債市場にも表れていると考えられます。
仕組債でトラブルが起こりやすい理由
仕組債が金融トラブルにつながりやすい最大の理由は、その構造が非常に分かりにくいことです。
表面的には「年利○%の債券」のように見えても、実際にはオプション取引などが組み込まれています。
投資家自身が、
「自分は実質的にプットオプションを売っている」
と理解して購入しているケースは、それほど多くないかもしれません。
そのため相場が平穏なときには高い利息を受け取ることができても、株価が急落すると突然大きな元本割れが発生します。
その段階になって初めて、
「こんなに損をする商品だとは聞いていなかった」
というトラブルにつながりやすくなります。
複雑な金融商品を購入するときには、単に利率だけを見るのではなく、「どのような条件になると損失が発生するのか」を理解しておくことが重要です。
高利回り商品を見るときは「なぜ高いのか」を考える
今回の韓国の事例から得られる重要な教訓は、高い利回りには必ず理由があるということです。
仕組債の場合、利率が高くなっている理由の1つは、オプション価格の上昇です。
そしてオプション価格が高くなっている背景には、株価のボラティリティ上昇があります。
つまり市場が不安定になり、損失リスクが高まっているからこそ、高い利回りを提示できるわけです。
年利40%や50%という数字だけを見ると非常に魅力的ですが、その利回りは投資家が大きなリスクを引き受ける対価でもあります。
金融商品を見る際には、
「利回りはいくらか」
だけではなく、
「なぜ、その利回りを支払うことができるのか」
という視点を持つことが重要です。
まとめ
韓国では2026年7月、株価連動型の仕組債取引が月間3兆5000億ウォン、日本円で約4000億円という高水準に達しました。
Samsung電子やSKハイニックスなどの株価に連動する商品が人気を集め、中には年利40~50%という非常に高い利率を提示する仕組債も登場しています。
しかし、この高い利率は単純な「お得さ」を意味するものではありません。
仕組債にはプットオプション売りなどのデリバティブ取引が組み込まれており、対象となる株価のボラティリティが高まればオプション価格も上昇します。その結果として仕組債の利率が高くなる一方、元本割れのリスクも大きくなります。
韓国では過去にも、2016年のBrexit、2020年のコロナショック、2021~2022年頃の中国株下落などの局面で、仕組債を巡る損失や販売上の問題が発生してきました。
日本でもリーマン・ショック時や2023年前後に仕組債が問題となっており、決して他国だけの話ではありません。
現在の日本では仕組債販売は以前ほど積極的ではありませんが、金融市場が落ち着き、過去の問題が忘れられれば、再び販売が拡大する可能性もあります。
そのとき重要になるのは、「高利回りだから買う」という考え方を避けることです。
高い利率が提示されているのであれば、なぜそれほど高い利率を実現できるのか、その裏側にどのようなリスクが存在するのかを確認する必要があります。
仕組債に限らず、金融商品の世界では「高いリターン」と「高いリスク」は表裏一体です。
韓国で起きている仕組債取引の急増は、その基本原則を改めて理解するうえで参考になる事例といえるでしょう。


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