本記事は、YouTube動画『キオクシアの株価は「NAND価格」いくらを織り込んでいるのか』の内容を基に構成しています。
NANDフラッシュメモリの価格上昇が続くなか、キオクシアの業績も大きく改善しています。
それにもかかわらず、株価は高値から大きく下落しています。
「NAND価格が上昇しているなら、なぜキオクシアの株価は上がり続けないのか」
「現在の株価は、NAND価格がどの程度まで下がることを織り込んでいるのか」
こうした疑問を考えるためには、現在のNAND価格だけを見るのでは不十分です。
重要なのは、現在の高い利益がどこまで続くのか、価格が正常化した後にどれだけ利益が残るのかという点です。
動画では、キオクシアのASP(平均販売単価)、出荷数量、利益、市場予想、PERなどから、現在の株価がどの程度のNAND価格正常化を織り込んでいるのかを逆算しています。
「NANDが1GB何ドルなら適正株価か」は単純には計算できない
最初に押さえておきたいのは、現在の株価から「NANDが1GB何ドルなら適正なのか」という絶対価格を1つ出すことはできないという点です。
キオクシアは、会社全体のNAND平均販売単価をドルベースの絶対額では開示していません。
また、同じNANDを使う製品でも、
エンタープライズSSD、スマートフォン向け、パソコン向けなどでは、販売価格や利益率が異なります。
そのため、NANDのスポット価格とキオクシアの利益を1対1で結びつけることはできません。
一方、前四半期を100としたASPの指数で考えると、価格変化をある程度逆算することができます。
2026年1月~3月のASPを100とすると、4月~6月は会社説明で約70%上昇しているため、指数では170になります。
さらに7月~9月について、会社計画の売上高と想定される出荷数量から逆算すると、条件によってはASP指数が200を超える可能性があります。
つまり、足元のキオクシアの業績には、かなり強いNAND価格上昇が反映されていることになります。
NAND価格上昇にもかかわらず株価は高値から約52%下落
動画では、9月24日時点のキオクシア株価を5万4580円としています。
一方、6月22日には11万2700円まで上昇していました。
高値から見ると、株価は約52%下落したことになります。
ここに大きな違和感があります。
NAND価格は上昇しています。
企業利益も急増しています。
それなのに、株価は高値の半分近くまで下落しています。
この動きから考えられるのは、株式市場が「現在のNAND価格がこのまま長期間続く」とは考えていない可能性です。
つまり市場は、足元の非常に高いNAND価格と利益を評価しつつ、その先では価格が正常化すると見ていると考えられます。
現在と将来を分けて考えることが重要です。
キオクシアの利益急増を支えているのは販売数量ではなく価格
まず、現在の利益がどの程度NAND価格に依存しているのかを確認します。
動画によると、4月~6月の売上収益は1兆7671億円で、前四半期の1兆29億円から約76%増加しました。
Non-GAAP営業利益も5991億円から1兆3262億円へ大幅に増えています。
一方で、記憶容量ベースの出荷量は前四半期比で1桁前半程度の増加にとどまりました。
つまり、売上高が約76%増えた最大の理由は、販売数量が急増したからではありません。
会社が説明しているブレンデッドASPと、同一製品同士で比較したASPはいずれも約70%上昇しました。
売上増加の中心は「数量」ではなく「価格」ということになります。
この違いは非常に重要です。
数量が増えて利益が伸びているのであれば、データセンター需要やSSD搭載容量の拡大などを中心に見ればよいでしょう。
しかし、価格上昇によって利益が増えている場合、NAND価格が数十%動くだけでも利益水準が大きく変わる可能性があります。
NAND業界全体で価格上昇の恩恵が広がっている
今回の利益急増は、キオクシアだけに起きている特殊な現象ではありません。
動画で紹介されているTrendForceの集計では、2026年4月~6月のNAND大手の売上高は前四半期から約77%増え、キオクシアも約80%増となっています。
キオクシアの世界シェアは約14%です。
つまり、キオクシアの利益増加のかなりの部分は、NAND業界全体で起きている供給不足と価格上昇という大きな流れによるものだと考えられます。
もちろん、これはキオクシアにとってプラス材料です。
ただし株価を考える際には、会社独自の競争力による利益成長と、業界全体の価格上昇による利益増加を区別する必要があります。
市況によって増えた利益は、永続的な利益とみなされにくいためです。
売上の約3分の2をSSD&ストレージが占める
4月~6月の売上のうち、SSD&ストレージは1兆1747億円で、全体のおよそ3分の2を占めています。
そのため、AIデータセンター向け大容量SSD需要は、一部事業の成長材料というだけではありません。
会社全体の業績を大きく左右する規模まで拡大しています。
今後のキオクシアを考える際には、単純なNAND価格だけではなく、エンタープライズSSDの需要や構成比を見る必要があります。
7月~9月の会社計画からASPを逆算すると200を超える可能性
続いて、7月~9月の計画を見ていきます。
動画では会社の上期計画から逆算し、第2四半期の売上高を約2兆3900億円、Non-GAAP営業利益を約1兆9000億円としています。
第1四半期から売上高は約35%増える計画です。
会社はこの増収について、最大の要因がASP上昇であり、記憶容量ベースの出荷量も増えると説明しています。
為替前提は1ドル160円~162円です。
ただし会社は、第2四半期の数量増加率を具体的には示していません。
そこで動画では、あくまで感度分析としてASPを逆算しています。
例えば、売上高が約35%増え、為替が160円から162円へ動いたとします。
このとき数量が3%増えるだけなら、ASPには約30%の上昇が必要になります。
数量が5%増なら、ASPは約27%上昇。
数量が10%増えても、ASPは約21%上昇する必要があります。
2026年1月~3月のASPを100とすれば、4月~6月は170です。
そこからさらに21~30%上昇すると仮定すると、ASP指数はおよそ206~221になります。
これはキオクシアが公表している絶対的なNAND価格ではなく、あくまで売上計画と数量仮定から逆算した数値です。
ただし、第2四半期の業績計画には、かなり強い価格上昇が前提として含まれていることが分かります。
10月~12月もNAND価格上昇予想が続いている
足元の外部予測でも、NAND価格には上昇圧力が残っています。
動画によると、TrendForceは2026年10月~12月のNANDフラッシュ全体の契約価格について、前四半期比15~20%上昇すると予想しています。
特にエンタープライズSSDについては、23~28%の上昇予想です。
7月時点では第3四半期のNAND全体を10~15%上昇と見ていました。
北米のクラウド事業者が企業向けSSDの発注を増やし、とくにQLCを使った大容量SSDの需要が強まっていることが背景にあるとされています。
つまり、少なくとも足元の市場環境を見る限り、「NAND価格はすでに天井を打って下落し始めている」という状況ではありません。
企業向けでは、依然として価格上昇圧力が残っています。
NAND契約価格は数四半期で約27~38%上昇する可能性
外部予測を単純につなげると、価格上昇の大きさがより分かりやすくなります。
例えば、第3四半期に10~15%、第4四半期に15~20%上昇するとすると、第2四半期から第4四半期までのNAND契約価格は累計で約27~38%上昇する計算になります。
もちろん、これはNAND市場全体の予測であり、キオクシアの実際のASPと一致するとは限りません。
ただし、市場予測自体は「数か月以内に価格が急落する」という前提にはなっていません。
さらに企業向けSSDについては、第4四半期だけでも23~28%上昇する予想です。
キオクシアの売上の約3分の2がSSD&ストレージであることを考えると、消費者向けNANDの弱さと企業向けSSDの強さを単純に平均して見るだけでは、実態を捉えにくくなります。
NAND価格が強いのに、なぜ株価は高値に戻らないのか
ここまでの数字だけを見ると、キオクシアの株価は高値を更新していても不思議ではないように見えます。
しかし実際には、6月22日の11万2700円から、9月24日には5万4580円まで下落しています。
動画では、この時系列にも注目しています。
6月22日の高値は、第1四半期決算が発表された7月31日より1か月以上前でした。
つまり株式市場は、ASP約70%上昇や大幅な営業利益増加が正式に確認される前から、NAND市況の改善をかなり先回りして評価していたことになります。
その後、実際に強い数字が確認されても株価は高値に戻っていません。
このことから、市場の注目点は「今期の決算が良いかどうか」から、「この利益がどこまで続くのか」へ移っている可能性があります。
今期予想PERは約5.2倍
動画では、9月24日時点の市場予想として、2027年3月期の売上高が約10兆円、純利益が約5兆6100億円、1株利益が約1万432円としています。
株価5万4580円をこの1株利益で割ると、今期予想利益に対するPERは約5.2倍となります。
一見すると非常に低い水準です。
しかし重要なのは、市場予想自体も「下期にNAND価格がすぐ崩れる」という前提にはなっていないことです。
会社が示している上期売上計画は約4兆1571億円です。
通期市場予想の約10兆円から引くと、10月~3月の下期には約5兆9600億円の売上が必要になります。
単純に2四半期で割ると、1四半期あたり約3兆円です。
第1四半期の1兆7671億円、第2四半期計画の約2兆3900億円より、さらに高い売上を市場予想は下期に置いていることになります。
つまり株価が高値から半分近くになったからといって、市場が「今期中にNAND価格が急落する」と見ているとは限りません。
むしろ今期の業績予想は非常に強いままです。
市場が警戒しているのは2027年以降の利益か
今期利益が強いにもかかわらずPERが約5.2倍にとどまっていることから、動画では、市場が警戒しているのは今期そのものではなく「その次」ではないかと分析しています。
今期利益があまりにも大きいため、市場は2027年以降に利益がどこまで落ちるのかを先回りして評価しているという考え方です。
メモリ業界は、需給によって価格と利益が大きく動く典型的なシクリカル産業です。
そのため、利益がピークに近いと判断される局面では、PERが低く見えることがあります。
「PERが低いから自動的に割安」というわけではない点には注意が必要です。
PERが低い一方でPBRは高いという特徴
動画では、PERが約5.2倍と低い一方、PBRは約12倍と高い点にも触れています。
今期利益に対しては株価が安く見えるのに、現在の純資産に対しては高く評価されているという状態です。
一見矛盾しているようですが、メモリ株では十分に起こり得ます。
市場は今期の大きな利益が何年もそのまま続くとは見ていません。
一方で、AIデータセンター向けSSDの構造的な成長や、以前のメモリサイクルより利益の底が高くなる可能性には価値をつけていると考えられます。
その結果、「低PER・高PBR」という組み合わせが発生する可能性があります。
現在の株価から将来の正常化利益を逆算する
ここから動画では、現在の株価から将来のNAND価格正常化を逆算しています。
ただし、これは市場が公表している答えではなく、一定の前提を置いた感度分析です。
まず、時価総額を約29兆9000億円とします。
そして現在の非常に大きな利益ではなく、将来的に正常化した利益に対して市場がPER10倍、12倍、15倍のいずれかをつけると仮定します。
PER10倍なら、時価総額29兆9000億円を支える年間純利益は約3兆円です。
PER12倍なら約2兆5000億円。
PER15倍なら約2兆円となります。
つまり、現在の時価総額を維持するために必要な「平常時の利益」がどの程度なのかを最初に求めています。
ASP指数は100~140程度まで正常化する想定でも説明できる
次に、直近四半期の売上高とNon-GAAP営業利益の関係から、必要な四半期売上高を大まかに逆算します。
さらに将来の出荷数量が2026年1月~3月より5~10%増え、為替が1ドル160円前後だと仮定します。
2026年1月~3月のASPを100とした場合、動画の逆算では次のようになります。
PER10倍の場合は、正常化ASPがおよそ135~142。
PER12倍の場合は、およそ118~124。
PER15倍の場合は、およそ101~106です。
つまり、現在の株価5万4580円は、足元で200を超える可能性があるASP指数が永久に維持されることを前提にしているわけではありません。
むしろ長期的には、ASPが2026年1月~3月比でほぼ同水準から4割高程度まで正常化しても、AI向けSSDなどによって以前より高い利益水準を維持できるという想定の方が、現在の時価総額とは整合しやすいという分析です。
「NAND価格はいくらになるのか」と考えるだけでは不十分
ただし、ここから「市場はNAND価格がいくらまで下がると考えているのか」と単純に置き換えることはできません。
理由は、キオクシアのASPとNANDのスポット価格が同じものではないからです。
キオクシアが販売しているのは、生のNANDチップだけではありません。
企業向けSSDには、コントローラー、ファームウェア、容量、性能、製品構成、契約期間などさまざまな要素が価格に反映されます。
同じ容量でも、スマートフォン向けNANDとAIデータセンター向けSSDでは経済価値が異なります。
そのため、「NANDが1GBいくら」という1本の価格だけでキオクシアの収益力を判断すると、実態から離れてしまう可能性があります。
消費者向けと企業向けでNAND市場が二極化
足元では、消費者向けと企業向けで状況が分かれています。
パソコンやスマートフォン向けでは、メモリ価格の上昇によって買い手側の抵抗が強まり、スポット市場に弱さが見られています。
一方、米国のクラウド事業者はAI用途で大容量SSDの発注を増やしています。
このため、キオクシアを見る際にはNAND全体の平均価格だけではなく、高採算のエンタープライズSSDがどれだけ売上を占めているのか、そしてその契約価格がどう動いているのかが重要になります。
2027年まで需給が引き締まる可能性
動画では、キオクシアが6月の投資家向け説明で、AIデータセンター需要と供給制約によって2027年中も需給がタイトな状態が続くという外部調査を示したとしています。
また、8月27日にはサンディスクと日本国内で約5兆円を投資する計画も発表したとしています。
ただし、大規模投資があるからといって、すぐに供給過剰になるとは限りません。
この投資は2032年までを見据えた長期的な計画であり、新しい製造能力がすぐ市場へ供給されるわけではないためです。
逆に考えれば、それだけ大規模な投資が必要になるほど、長期的な需要拡大が見込まれているという見方もできます。
中国メーカーのNAND参入は中長期的な供給リスク
一方、供給側には長期的な変化も出ています。
動画では、9月18日に中国DRAM大手CXMTがNANDへの参入準備を進めていると報じられたことに触れています。
現時点では北京で研究開発用の生産ラインを計画している段階であり、すぐに大量供給されるわけではありません。
ただし2027年以降を考えれば、既存メーカーの増産だけではなく、新規メーカーの参入も供給増加要因になる可能性があります。
ここには時間軸の違いがあります。
短期的には企業向けSSD不足によって価格上昇が続く可能性があります。
一方、数年先にはキオクシア自身の大型投資や中国メーカーなどの供給拡大が需給を緩和する可能性があります。
株式市場は現在の供給不足だけでなく、「その不足がいつまで続くのか」まで先回りして評価します。
株価を動かすのは価格だけではなく「高値が何四半期続くか」
したがって、今後の株価を考える際に重要なのは、NAND価格が単純に上がるか下がるかではありません。
重要なのは、高い価格が何四半期続くのかという点です。
さらに、その間にエンタープライズSSDの売上比率がどこまで上昇するのか。
次の価格調整局面が訪れた際に、どれだけ利益を維持できるのか。
こうした要素が、キオクシアの長期的な企業価値を左右します。
信用取引と自己株買いも株価に影響する
株価とNAND価格を混同しないためには、株式市場の需給も確認する必要があります。
動画では、9月11日時点の信用買い残が1394万株、売り残が約70万株で、信用倍率は19.97倍としています。
8月28日時点では信用買い残1617万株、信用倍率35.37倍でした。
買い残は減少したものの、依然として買い方の残高が大きい状態です。
信用買い残が多ければ、株価が戻った局面で売り圧力になる可能性があります。
一方、会社は8月10日までに1610万株の自己株式を平均4万9586円で取得しています。
これは発行済み株式の約3%に相当します。
9月24日時点の株価5万4580円は、会社自身の平均取得価格より約10%高い水準です。
自己株買いは市場から株式を吸収するため、需給面では株価を支える方向に働きます。
このように、現在の株価をすべてNAND価格だけで説明することはできません。
今期業績がさらに上振れる可能性もある
市場予想の今期純利益約5兆6100億円自体、すでに非常に高いNAND価格を前提としています。
しかし、10月~12月のエンタープライズSSD価格が23~28%上昇するという予測が実際のキオクシアのASPに強く反映され、数量も維持されるのであれば、今期利益がさらに強くなる可能性があります。
一方、パソコンやスマートフォン向けでは、価格上昇によって需要が減少する可能性があります。
全体のASPが上昇しても、出荷数量が大きく減れば売上高や利益の伸びが鈍る可能性があります。
したがって、ASPだけを見るのではなく、数量とセットで確認する必要があります。
最大の焦点は2027年
今後を考える上で最も重要なのが2027年です。
企業向けSSDの供給不足が長期間続くのであれば、先ほど逆算した正常化ASP指数100~140というレンジ自体が低すぎる可能性があります。
反対に、新工場の立ち上がり、中国企業の供給拡大、クラウド事業者の在庫調整などが重なれば、価格正常化が市場予想より早く進む可能性もあります。
つまり、現在の株価が評価しているのは「今日のNAND価格」そのものではありません。
この非常に高い利益水準が何年続くのかを評価しています。
短期的にNAND価格がさらに上昇しても、その状態が短期間で終わると市場が判断すれば、PERは上昇しにくいでしょう。
反対に価格上昇率が鈍化しても、エンタープライズSSDの長期契約が増え、利益の底が従来より高くなると確認されれば、市場が正常化利益に付ける評価倍率が上昇する可能性があります。
次の決算で確認すべき3つのポイント
この考え方をすると、決算を見るポイントも変わってきます。
単純に売上高や営業利益が市場予想を上回ったかどうかだけでは不十分です。
次の第2四半期決算では、特に3つの点が重要になります。
第1に、第1四半期からASPが実際に何%上昇したのか。
第2に、記憶容量ベースの出荷数量がどの程度増加したのか。
第3に、SSD&ストレージ事業の中でデータセンター・エンタープライズ向けの数量と採算性がどのように変化したのかです。
この組み合わせを見ることで、単純な価格上昇によって利益が増えただけなのか、それとも高単価な企業向けSSDが数量面でも成長しているのかを区別できます。
さらに会社が第3四半期以降の価格と数量についてどのような見通しを示すのかも重要です。
市場が正常化利益に何倍のPERを付けるかが最後の変数
現在の株価が足元の高いNAND価格を永久に維持する前提ではないことは、ここまでの分析から見えてきます。
ただし、ASPの正常化レンジを決めるうえで、もう1つ大きな変数があります。
それが「正常化した利益に対して市場が何倍のPERを付けるのか」です。
この倍率を決めるのは、NAND価格の高さだけではありません。
利益の安定性や再現性が重要になります。
キオクシアは、従来の1年契約から複数年契約への移行を進め、売上高の見通しを安定させる方針を示しています。
もしエンタープライズSSDの契約期間が長期化し、データセンター向け比率が上昇し、価格が下落する局面でも営業利益率が過去より高く維持されることが確認できれば、メモリ株に対する評価そのものが変化する可能性があります。
「ピーク利益だから低PERで当然」という見方が弱くなるためです。
NAND価格上昇が終わった後に年間2~3兆円の利益を残せるか
動画で逆算したASP指数100~140というレンジは、NAND価格そのものを予想した数値ではありません。
現在の時価総額を支える正常化利益から逆算したものです。
そのため、今後このモデルを更新する最大の材料は「NAND価格がさらに10%、20%上がるか」だけではありません。
価格上昇が止まった後でも、年間2兆~3兆円規模の純利益を維持できる構造へ変わったのかどうかが重要です。
仮に次の価格調整局面でも、エンタープライズSSDの数量、長期契約、営業利益率が高水準を維持できるのであれば、正常化利益は現在の想定より上振れることになります。
その場合、現在の株価を支えるために必要なNAND価格は、それほど高くなくても成立します。
反対に、価格下落と同時に販売数量まで落ち、利益率も過去のメモリサイクルと同じ水準へ戻るのであれば、現在の株価を正当化するにはより高い価格が必要になります。
10月1日の1対3株式分割でも企業価値は変わらない
動画では、10月1日に1対3の株式分割が効力を持つ予定であることにも触れています。
株式分割後は、株価表示が機械的に約3分の1になります。
ただし、企業価値そのものが3分の1になるわけではありません。
今回分析したNAND価格や正常化利益の折り込みも変化しません。
株式分割後も、確認すべき内容は同じです。
ASP、出荷数量、企業向けSSDの伸び、そしてその先の価格見通しを見ることになります。
まとめ
キオクシアの現在の株価から、「NAND価格が1GB何ドルなら適正なのか」という答えを1つ出すことはできません。
製品構成や契約条件、エンタープライズSSDの比率、数量、為替などによって、キオクシアのASPは大きく変わるためです。
一方、2026年1月~3月のASPを100として考えると、4月~6月は約170まで上昇し、7月~9月は会社計画から逆算すると200を超える可能性があります。
足元では非常に強い価格環境が続いていることになります。
それでも株価は高値から約52%下落しています。
ここから分かるのは、株式市場が現在の非常に高いNAND価格と利益を永久に続くものとは見ていない可能性です。
動画の逆算では、将来の正常化利益にPER10~15倍を適用した場合、長期的なASPは2026年1月~3月を100として、およそ100~140程度でも現在の時価総額と整合する可能性があります。
ただし本当に重要なのは、NAND価格そのものではありません。
価格上昇が終わった後でも、AIデータセンター向けSSD、長期契約、高付加価値製品などによって、年間2兆~3兆円規模の利益を維持できる企業へ変わったのかどうかです。
今後の決算では、売上高や利益だけを見るのではなく、ASP、出荷数量、エンタープライズSSDの構成比と採算性をセットで確認する必要があります。
現在のキオクシア株を評価するうえで最大の論点は、「NAND価格がさらに上がるか」ではなく、「現在の高い利益が終わった後に、どれだけ利益が残るのか」という点だと言えるでしょう。


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