本記事は、YouTube動画『NISA、勧められたまま放置してない?プロはこうしている、2026年金投資の選び方』の内容を基に構成しています。
新NISAの普及によって、S&P500や全世界株式(オルカン)への投資を始める人が増えています。しかし、株式だけに資産を集中させる運用は、本当に安全なのでしょうか。
インフレの進行や世界情勢の不安定化を背景に、改めて注目されているのが「金(ゴールド)」への投資です。
NewsPicksの番組では、ファイナンシャルプランナーの和泉昭子氏と、ステート・ストリートのアーロン・チャン氏が、金投資の必要性や具体的な投資方法について解説しました。
特に注目したいのは、金を短期的な値上がり益を狙う商品ではなく、長期的に資産を守るための投資対象として位置づけている点です。
今回は、金投資が注目される理由から、NISAを活用したETF投資、為替ヘッジの選び方まで詳しく紹介します。
インフレ時代に金投資が注目される理由
現金を持ち続けることにもリスクがある
近年、日本でも物価上昇が続き、現金の購買力が低下しています。
例えば、以前は1万円で購入できた商品が、現在では同じ金額で購入できなくなっているケースも珍しくありません。
インフレが進むと、銀行預金の額面が変わらなくても、実質的な資産価値は目減りしていきます。
特に高齢者の場合、年金制度に導入されている「マクロ経済スライド」の影響も無視できません。
マクロ経済スライドとは、年金の給付水準を人口構造などの変化に合わせて調整する仕組みです。この制度によって、物価が上昇しても年金額が同じ割合で増えるとは限りません。
そのため、年金生活者ほどインフレによる生活水準の低下に直面する可能性があります。
和泉氏は、若い世代だけでなく、高齢者も含めて中長期的なインフレ対策を資産運用に取り入れる必要があると指摘しています。
そして、その有力な選択肢の1つが金です。
世界の中央銀行も金を購入している
金価格は長期的に上昇してきましたが、近年は特に強い上昇が注目されています。
その背景として挙げられるのが、地政学的リスクの高まりと中央銀行による金の購入です。
金は特定の国家が発行する通貨ではなく、発行国の信用に直接依存しない資産です。そのため、国際情勢が不安定になると、安全資産として需要が高まりやすい特徴があります。
また、世界の中央銀行が金の保有を増やす動きも、市場参加者の関心を集める要因となっています。
ただし、金は常に値上がりするわけではありません。市場環境によっては大きく下落することもあり、購入時期によって投資成果は異なります。
NISAでS&P500とオルカンだけを買うのは問題なのか
2つの投資信託を保有しても十分な分散とは限らない
新NISAでは、S&P500に連動する投資信託や全世界株式型の投資信託が人気を集めています。
どちらも長期的な資産形成に適した選択肢として広く知られていますが、和泉氏は株式への過度な集中を懸念しています。
特に注意したいのが、S&P500と全世界株式の両方を保有していても、投資対象が大きく重複している点です。
全世界株式型の代表的な指数では、米国株式が全体の約6割を占めます。そのため、S&P500とオルカンを同時に購入すると、結果として米国株への投資比率がさらに高くなります。
もちろん、米国株式への集中投資が必ず悪いわけではありません。
しかし、米国株式市場が大きく下落した場合、両方の投資信託が同時に値下がりする可能性があります。
株式とは異なる値動きをする資産を組み合わせる
資産運用では、異なる値動きをする資産を組み合わせることが重要です。
株式市場が好調なときは株式が資産全体の成長を支える一方、株式市場が不安定になったときに、別の資産が損失を緩和する役割を担うことが期待されます。
その候補として金が挙げられます。
金価格は企業業績だけでなく、インフレ、為替、実質金利、地政学的リスクなどの影響を受けます。
株式と価格変動の要因が異なるため、ポートフォリオに組み入れることで分散効果が期待できます。
ただし、金と株式が必ず反対方向に動くわけではありません。金融市場の混乱時には、両方が同時に下落することもあります。
重要なのは、値上がりする資産を予測することではなく、特定の資産だけに依存しない運用を目指すことです。
金投資は資産全体の5%から10%が目安
では、実際に金をどの程度保有すればよいのでしょうか。
和泉氏は、最初から大きな割合を金に投資するのではなく、まず資産全体の5%程度を目標にする方法を提案しています。
その後、インフレへの備えを厚くしたい場合や、自分のリスク許容度に合っていると判断した場合には、10%程度まで増やすことも選択肢になります。
ただし、適切な割合は年齢や収入、投資目的、他の保有資産によって変わります。
例えば、生活費に余裕がない人と、長期的な資産形成を目的とする人では、適切な資産配分は同じではありません。
また、不動産などの実物資産をすでに多く保有している場合は、それらも含めて考える必要があります。
金だけの割合を考えるのではなく、株式、債券、預貯金、不動産などを含めた資産全体のバランスを見直すことが大切です。
金投資は一括購入より積立投資がおすすめ
価格の高値や安値を予測するのは難しい
金価格が急上昇すると、今から購入するのは高すぎるのではないかと考える人もいるでしょう。
一方、価格が下落すると、さらに値下がりするのではないかという不安が生じます。
こうした心理的な問題を軽減する方法として紹介されたのが、積立投資です。
毎月一定額を購入すれば、価格が高いときには購入数量が少なくなり、価格が安いときには購入数量が多くなります。
これは一般的にドルコスト平均法と呼ばれる投資方法です。
ただし、ドルコスト平均法が一括投資より必ず有利になるわけではありません。価格が継続して上昇する局面では、最初に一括購入した方が高いリターンを得られる場合もあります。
積立投資の利点は価格を気にしなくなること
和泉氏が特に強調したのは、積立投資によって日々の価格変動に振り回されにくくなる点です。
一括購入すると、その後の価格変動が気になりやすくなります。
しかし、毎月少しずつ購入していれば、購入価格は時間とともに分散され、特定の購入価格へのこだわりも薄れていきます。
仕事や家庭で忙しい人にとって、毎日の相場を確認せずに資産形成を続けられることは大きな利点です。
和泉氏は、短期的な値動きではなく、5年、10年、15年、さらに長い期間で金と付き合うことの重要性を説明しています。
もっとも、長期保有すれば必ず利益が出るという意味ではありません。購入価格によっては長期間含み損を抱える可能性もあるため、無理のない資金で継続することが重要です。
金投資の4つの方法を比較
番組では、個人投資家が利用できる主な金投資の方法として、現物購入、純金積立、投資信託、ETFの4つが紹介されました。
1. 金の現物購入
金地金や金貨などを直接購入する方法です。
実際に金を所有できるため、金融商品ではなく実物資産として保有したい人に向いています。
一方で、購入時と売却時の価格差や手数料が負担になることがあります。
また、大量の金を保有する場合は、盗難対策や保管場所の確保が必要です。貸金庫などを利用すると、追加の保管費用も発生します。
現物の金はNISAの対象にならず、売却益には保有状況などに応じて課税される場合があります。
2. 純金積立
毎月一定金額で金を購入する方法です。
少額から始められるため、金投資の初心者にも利用しやすい仕組みです。
事業者によっては、積み立てた金を一定数量以上になった段階で現物として受け取れるサービスもあります。
ただし、買付手数料などのコストが比較的高くなる場合があります。
アーロン・チャン氏は、資産運用としての効率性を重視するのであれば、より低コストの金融商品を利用する方法も検討すべきだと説明しています。
3. 金の投資信託
金価格に連動する投資信託を購入する方法です。
証券会社などを通じて購入でき、商品によっては少額からの積立設定も可能です。
金関連の投資信託には、金ETFを投資対象としている商品もあります。
その場合、投資信託自体の運用コストに加えて、投資先ETFの費用も実質的な負担として考える必要があります。
もっとも、すべての金投資信託がETFより高コストとは限りません。投資対象や運用方式、実質的な信託報酬を確認することが重要です。
4. 金ETF
ETFとは、証券取引所に上場している投資信託のことです。
株式と同じように市場で売買でき、取引時間中であれば価格を確認しながら注文できます。
一般的に運用コストが低い商品も多く、売買のしやすさも特徴です。
アーロン・チャン氏は、プロの機関投資家にとってETFは重要な選択肢であり、特にコストと流動性が重視されると説明しています。
流動性とは、希望するタイミングで売買しやすいかどうかを示すものです。
個人投資家にとっても、教育費や住宅購入など、人生のさまざまな場面で必要に応じて資産を売却できることはメリットになります。
ただし、ETFによって売買高や流動性は異なり、希望価格ですぐに売買できるとは限りません。
プロが金ETFを重視する理由とは
金ETFが評価される大きな理由は、コスト、透明性、流動性です。
まず、投資にかかる費用は運用成果に直接影響します。
例えば、100万円を投資した場合、年間コストが0.2%なら2,000円、1%なら1万円です。
わずかな差に見えても、長期間保有すればコストの違いが積み重なっていきます。
また、ETFは投資対象や運用方針、信託報酬などの情報が公開されているため、商品の仕組みを確認しやすい特徴があります。
さらに、取引所で売買できるため、市場環境や資金需要に応じて機動的に保有割合を調整できます。
アーロン・チャン氏は、金投資ではできるだけ低コストの手段を選ぶことが合理的だと述べています。
一方、和泉氏は単純に最も安い商品を選ぶのではなく、運用会社の実績や情報開示の透明性も確認すべきだと指摘しています。
新NISAの成長投資枠で金ETFを積み立てる方法
成長投資枠でも積立投資はできる
新NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠があります。
つみたて投資枠は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託などを対象とする制度です。
一方、成長投資枠では、条件を満たした上場株式やETF、投資信託などを購入できます。
番組で紹介された金ETFは、NISAの成長投資枠を利用して投資できる商品です。
ここで重要なのは、成長投資枠でも積立投資が可能だという点です。
積立投資はつみたて投資枠だけで行うものだと思われがちですが、対応している証券会社であれば、成長投資枠でも定期買付を設定できます。
ただし、ETFの自動積立に対応しているかどうかは証券会社や銘柄によって異なります。
NISAを利用するメリット
通常、課税口座で金ETFを売却して利益が出た場合、原則として約20.315%の税金がかかります。
一方、NISA口座で購入した対象商品については、制度の範囲内で売却益が非課税になります。
長期保有によって値上がり益を狙う場合、この非課税メリットは大きなものになります。
ただし、NISAで発生した損失は他の口座の利益と損益通算できないため、税制上の利点だけでなく、リスクも理解して利用する必要があります。
ステート・ストリートの金ETF「447A」と「448A」の違い
番組では、ステート・ストリートが提供する2つの金ETFも紹介されました。
東京証券取引所に上場している「447A」と「448A」です。
両方とも金価格に連動する運用を目指すETFですが、大きな違いは為替ヘッジの有無です。
447A:為替ヘッジなし
447Aは、為替ヘッジを行わない金ETFです。
金の国際価格は主に米ドル建てで取引されているため、円で投資する場合は金価格だけでなく為替相場の影響も受けます。
例えば、米ドル建ての金価格が変わらなくても、円安が進めば円換算した金価格は上昇する方向に働きます。
反対に、円高が進めば円換算価格は下落する方向に働きます。
金の値上がりに加えて、円安による影響も受け入れる投資方法です。
448A:為替ヘッジあり
448Aは、為替変動の影響を抑えることを目指す金ETFです。
円高によって円換算した金価格が下落する影響を軽減できる可能性があります。
ただし、為替ヘッジにはコストが発生し、その水準は日本と海外の金利差などによって変わります。
また、為替変動の影響を完全になくせるわけではありません。
純粋に金価格の変動を重視したい場合には、為替ヘッジありの商品が選択肢になります。
一方、円安への備えも含めて金を保有したい人には、為替ヘッジなしの商品が適している場合があります。
番組では、和泉氏は個人的に為替ヘッジなしを選ぶと説明しています。
ただし、すでに米国株式などの為替変動の影響を受ける資産を多く保有している場合は、ポートフォリオ全体で為替リスクを考える必要があると指摘しています。
金ETFは信託報酬だけで選んではいけない
ステート・ストリートの447Aと448Aは、低コストを特徴とする金ETFです。
2026年の運用会社公表資料では、両商品の実質的な信託報酬は年率0.177%程度(税込)となっています。
こうした低コストを実現できる背景には、世界的な運用規模の大きさがあります。
ステート・ストリートはETF運用に長い実績を持ち、金関連商品でも大規模な資産を取り扱っています。
金の保管や運用に関する費用を多くの投資家で分担できるため、規模の経済が働きやすくなります。
もっとも、金ETFを選ぶ際には信託報酬以外にも、売買手数料、売買価格のスプレッド、純資産総額、売買高、投資対象の仕組みなどを確認する必要があります。
特に、長期保有を前提とする場合は、継続的なコストと運用の安定性が重要になります。
NISA投資家が見直すべき資産配分
番組で取り上げられた問題の1つが、周囲から勧められるまま投資信託を購入し、その内容を十分に理解していない投資家が少なくないことです。
S&P500や全世界株式は幅広く利用されている投資対象ですが、購入すれば必ず資産が増えるわけではありません。
また、全世界株式という名称だけで、株式以外の資産にも分散されていると誤解してはいけません。
全世界株式型の投資信託は、基本的に株式という資産クラスの中で地域を分散している商品です。
株式市場全体が下落する場合には、その影響を受けます。
和泉氏は、投資初心者ほど相場の下落に耐えられず、安いところで売却してしまう可能性があると指摘しています。
そのため、長期投資を続けるには、資産の値動きだけでなく、自分自身の心理面も考慮する必要があります。
金などの異なる資産を組み合わせることで、価格変動による心理的負担を軽減できる場合があります。
金と株式を保有していても現金は必要
金を保有するからといって、現金を極端に減らすことが合理的とは限りません。
番組では、株式と金のうち価格が上昇している資産を売却し、必要な生活資金に充てるという考え方も紹介されました。
しかし、株式と金は必ず反対方向に動くわけではありません。
さらに、為替ヘッジなしの金ETFと米国株式を組み合わせている場合、円高によって両方の円換算価格が下落する可能性があります。
また、景気悪化によって勤務先の業績が悪化し、収入やボーナスが減少したときに、同時に投資資産も値下がりすることが考えられます。
こうした状況で生活費を確保するために資産を売却すると、損失が確定してしまう可能性があります。
そのため、和泉氏は一定額の預貯金や現金を確保しておくことの重要性も説明しています。
インフレ対策として投資を行うことと、日常生活に必要な現金を確保することは、両立させるべきものです。
金の長期保有が重要とされる理由
アーロン・チャン氏は、金を長期的な視点で保有することが重要だと説明しています。
その理由として挙げたのが、政府債務の拡大と通貨価値の低下です。
政府の財政赤字が拡大し、長期的に貨幣の購買力が低下する環境では、供給量に制約のある金の価値が注目されやすくなります。
また、同氏は過去約55年間のデータを踏まえ、金価格が世界経済の拡大とともに長期的に上昇してきた点にも言及しています。
ただし、過去の傾向が今後も続くとは限りません。金価格は金融政策や投資需要などにも影響されるため、将来の値上がりを保証するものではありません。
金は誰かの負債ではない資産
金が持つ重要な特徴として、和泉氏は「誰かの借金ではない」という点を強調しています。
銀行預金は銀行に対する債権であり、国債は国に対する債権です。
株式も企業の価値や収益に依存しています。
一方、金の現物そのものは、特定の企業や国家が返済を約束する金融債権ではありません。
金には発行体の信用リスクがないという特徴があります。
ただし、金ETFなどの金融商品を通じて保有する場合は、現物の金とは異なり、商品構造や保管、運営などに関するリスクも確認する必要があります。
金は資産を増やすだけでなく守るためのもの
和泉氏は、金を単なる値上がり益を狙う商品ではなく、資産を守るための存在として位置づけています。
金は株式のような配当金を生まず、債券のような利息もありません。
保有するだけで定期的な収入が得られる資産ではないため、資産全体を金に集中させることが合理的とは限りません。
一方、インフレや通貨価値の低下、金融市場の不安定化などに備える手段として、一定割合を保有する意味があります。
短期間で利益を狙うのではなく、人生の長い期間を通じて保有するという考え方が、番組全体を通じた重要なメッセージとなっています。
まとめ:2026年の金投資は低コストETFと長期分散がポイント
新NISAの普及によって、S&P500や全世界株式を中心とする資産形成が一般的になりました。
しかし、株式中心の投資だけでは、インフレや市場の急落に十分対応できない可能性があります。
今回の動画では、金を資産全体の一部に組み入れることで、リスクを分散する考え方が紹介されました。
金の保有割合については、まず5%程度を目指し、必要に応じて10%程度まで増やすという方法が提案されています。
また、金投資には現物購入、純金積立、投資信託、ETFなどの方法がありますが、投資効率を重視する場合は、低コストで売買しやすいETFが有力な選択肢になります。
NISAの成長投資枠を活用すれば、対象となる金ETFを非課税で保有することも可能です。
ただし、為替ヘッジの有無や運用コスト、他の保有資産との関係まで確認することが重要です。
そして、何より大切なのは、金価格の短期的な上昇に飛びつくのではなく、無理のない金額で長期的に保有することです。
金は万能な投資対象ではありませんが、株式や預貯金と組み合わせることで、資産全体の安定性を高める役割が期待できます。
これからの資産運用では、何に投資すれば最も儲かるかだけでなく、どのような経済環境でも投資を続けられる資産配分を考えることが重要になりそうです。


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