この記事は、YouTube動画「【アフリカ】日本人が知らないアフリカ経済!ソマリアで建設ラッシュが起こっている!」をもとに執筆しています。
目次
結論:ソマリアは“無政府状態の象徴”から“自立経済への一歩”を踏み出した
長らく内戦や海賊、イスラム過激派の象徴とされてきたソマリア。そんな国で、いま6000棟以上の建物が建設される建設ラッシュが進行しています。
この変化は、外部からの援助ではなく、海外で成功したソマリア人実業家の投資によるもの。しかもその中心地である首都モガディシュでは、2024年に住宅5万戸の建設計画も発表されており、アフリカ経済の見え方が大きく変わりつつあります。
ソマリアの暗黒時代:無政府・内戦・海賊国家としての過去
1990年代:内戦とアメリカの撤退
- ソマリアは1990年代初頭から内戦に突入。
- 米軍も介入したが、1993年「ブラックホーク・ダウン事件」で撤退。
- 以後、無政府状態が続き「世界で最も危険な国」と呼ばれる。
2000年代:海賊の台頭
- 沿岸での略奪行為が横行。
- 日本からは自衛隊が派遣され、ソマリア沖での警備活動を実施。
- 現在も海賊行為は完全には根絶していない。
地理的・歴史的背景
- 北部(ソマリランド):元イギリス植民地。現在も「未承認国家」として実効支配。
- 南部(モガディシュなど):元イタリア植民地。
- 人口:約1200万人(そのうちモガディシュに200万人)
建設ラッシュの中心地:首都モガディシュ
数字で見るモガディシュの変化
- 2020年以降の建物建設数:約6000棟
- 2024年予定の住宅建設数:5万戸
- 内戦で破壊された瓦礫の町から、徐々にインフラ都市へと変貌中。
GDPの成長も顕著
年度 | GDP(米ドル) |
---|---|
2010年 | 27億ドル |
2023年 | 117億ドル |
13年間で約4.3倍の成長を遂げており、これはアフリカ内でも注目すべき水準です。
なぜ建設ラッシュが起きたのか?
キーマン:モハムド大統領の自立型政策
- 2012年に選出されたハッサン・シェイク・モハムド大統領が自立路線を強化。
- それ以前の暫定政府(2004年設立)は外国依存が強く、成果は限定的。
海外ソマリア人実業家の帰還・投資
- 主に欧米などで成功した実業家たちを呼び戻し、彼らが資金提供。
- 中国の融資に依存しない戦略を取り、「対中債務リスク」回避に成功。
周辺国との違い
国名 | 中国債務依存度 |
---|---|
ジブチ | 非常に高い |
エチオピア | 高い |
ソマリア | ほぼ無し |
社会的変化:女性の進出と雇用の拡大
- 建設ラッシュによる労働力不足により、女性にも仕事の機会が。
- 建設現場の管理職やインフラ関連の技術職に女性が就く事例も報告。
- 男性優位のイスラム社会において、女性の社会進出の大きな一歩。
懸念点・課題も山積み
地域格差と治安問題
- 治安改善はモガディシュ中心。一方で他地域は依然として危険。
- 特にイスラム過激派の活動や海賊行為は依然として続く。
難民問題と都市部の貧困
- 隣国エチオピアからの難民流入。
- モガディシュのスラム化、貧困問題も未解決。
不動産バブルと立ち退き問題
- 地価高騰でスラム住民が強制退去を強いられるケースも。
- 報道では4万人以上が住まいを失ったとの指摘も。
建設の質と安全性への懸念
- 利益優先の建設業者が塩分を多く含む砂を使用しているという疑惑。
- 耐久性が低下し、地震や劣化への耐性に不安あり。
ソマリアが示す希望と現実
ソマリアの変化は、単なる経済成長ではなく「戦後の再建モデル」として注目に値します。
ポジティブな面
- 海外資本ではなく自国民による投資で経済が回り始めている。
- GDP4倍、建設ブーム、女性の社会進出という明確な成果。
- 中国依存を避けるというアフリカでは稀有な経済運営。
ネガティブな面
- 格差の拡大、治安の偏在、品質問題、スラムの強制移転。
- 国家全体ではなく一都市だけが発展している危うさも。
まとめ:ソマリアはアフリカの“未来の鏡”かもしれない
かつて「無政府国家」「海賊国家」とまで言われたソマリアですが、首都モガディシュを中心に起きている建設ラッシュは、アフリカの中でも珍しい**“自立経済モデル”の成功例**として注目されています。
以下のような観点で今後も注視していく価値があります:
- 自国民主導型の経済回復がどこまで進むのか
- 建設ラッシュによる都市構造と雇用の持続性
- 地方との格差や治安の改善が進むのか
- 女性の経済参画が社会全体に与える影響
日本ではほとんど報道されていないこの変化、アフリカ経済を考える上でソマリアは要注目の国になりつつあります。
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