AIデータセンターバブルの裏で注目されるAIインフラ4銘柄とは?冷却・電力・水処理に資金が向かう理由

本記事は、YouTube動画『AIデータセンターバブルの裏で爆益を狙うAIインフラ4銘柄』の内容を基に構成しています。

目次

AI相場の主役は半導体だけではなくなっている

ここ数年、AI関連株として真っ先に注目されてきたのは、NVIDIAのような半導体メーカーでした。AIの学習や推論には高性能なGPUが欠かせず、その需要拡大が半導体株の急騰を支えてきたためです。

その次に資金が向かったのが、藤倉のような光ファイバーや通信インフラを手掛ける企業です。AIデータセンターでは、膨大なデータを高速でやり取りする必要があるため、通信インフラの重要性も一気に高まりました。

しかし、機関投資家やグローバルヘッジファンドの視線は、すでにその先へ移り始めていると見られます。彼らが注目しているのは、AIサーバーを動かすうえで避けて通れない物理的な制約です。

具体的には、電力不足、発熱、水資源の枯渇という問題です。

AIサーバー、とくに最新世代のGPUは、圧倒的な演算能力を持つ一方で、莫大な電力を消費します。同時に強烈な熱も発生させるため、従来の空冷方式だけでは冷却が追いつかなくなりつつあります。データセンター全体が熱暴走のリスクにさらされる可能性もあるのです。

さらに、サーバーへ電力を送るための変圧機は世界的に供給不足となっており、冷却に使われる大量の水も、各国の環境規制や投資基準の面で大きな制約になっています。

つまり、これからのAI相場では「半導体=AI」という単純な見方だけでは不十分です。AIを実際に動かすための冷却、電力、水処理といったインフラ企業に注目する必要があります。

AIサーバーの冷却を支える日東工器

最初に取り上げるのは、日東工器です。一般的にはあまり聞き慣れない企業かもしれませんが、同社の技術は最先端のAIサーバーを安全に稼働させるうえで重要な役割を担っています。

現在、発熱量の高いGPUやCPUを冷やすために、液体で直接冷却する「液冷方式」の採用が進んでいます。この液冷システムの中で重要になるのが、冷却水を分配する装置です。

その中でも、サーバーやラックのメンテナンス時に冷却液が漏れないことは極めて重要です。もし冷却液が漏れれば、高額なGPU群がショートし、数億円から数十億円規模の損害につながる可能性があります。

日東工器は、こうした冷却システムで使われる迅速流体継手、いわゆるカプラの分野で強みを持っています。とくに「コンパクトゼロスピルカプラ」と呼ばれる製品は、冷却液の漏れを極限まで抑える構造になっています。

この技術は、半導体洗浄装置などで培われた「絶対に漏らさない」高精度な加工技術を応用したものです。データセンター事業者にとって、日東工器のカプラを採用することは、単なる部品調達ではなく、サーバー全損という最悪の事態を避けるための保険に近い意味を持ちます。

一方で、同社の業績は短期的には厳しく見えます。2026年3月期の売上高は273億円、経常利益は前期比42%減の15億円、営業利益は同49%減の12億円となりました。第4四半期だけを見ても、経常利益は前年同期比61%減の1億円に落ち込んでいます。

減益の主な原因は、新工場の稼働に伴う減価償却費の増加や、原材料費・人件費の上昇です。さらに2027年3月期の年間配当予想は1株32円とされ、前期から減配となる見通しです。

この減益・減配だけを見ると、短期目線の個人投資家が売りに動いたとしても不思議ではありません。

しかし、会社側は2027年3月期に売上高292億円、経常利益19億円を見込んでおり、前期比29%増という回復シナリオを示しています。先行投資を終え、今後は収益化の段階に入る可能性があります。

さらに注目されるのが受給面です。2026年6月8日時点の株価は1588円で、PERは20倍程度ですが、PBRはおよそ0.49倍と低水準です。2026年3月期末の現金及び預金は117億円、純資産は609億円に達しており、財務面ではキャッシュリッチな企業といえます。

こうした状況に注目しているのが、シンガポール系の投資会社シンフォニー・ファイナンシャル・パートナーズです。同社は日東工器の保有割合を11%台から12.26%へ引き上げています。

強気シナリオとしては、欧米を中心としたデータセンターでゼロスピルカプラの採用が広がり、2027年3月期の下半期から業績に反映される展開が考えられます。さらに、投資会社からのプレッシャーによって資本効率の改善が進めば、PBRの見直しも期待されます。

一方で慎重に見るべき点もあります。新工場の減価償却負担や原材料高が想定以上に続けば、利益回復が遅れる可能性があります。また、液冷カプラの採用や認証プロセスが長引けば、期待先行の株価が調整するリスクもあります。

変圧機のスーパーサイクルで注目されるダイヘンと明電舎

次に注目されるのが、電力インフラです。AIサーバーの稼働拡大により、データセンターの電力需要は急激に増えています。発電所から送られる高電圧の電力を、サーバー設備が使える電圧まで下げるためには、変圧機が欠かせません。

しかし現在、変圧機は世界的に供給不足となっています。主要部材である電磁鋼板の調達難などもあり、発注から納品まで数年かかるケースもあるとされています。

この供給制約は、既存の重電メーカーにとって大きな追い風です。

ダイヘンは大型変圧機の増産投資を進める

ダイヘンは、小型変圧機から工場・変電所向けの大型変圧機まで手掛ける企業です。

2026年3月期の売上高は2377億円、営業利益は188億円、経常利益は211億円で、前期比17%増となり過去最高を更新しました。

注目すべきは、同社が大型変圧機の生産能力を引き上げる計画を進めている点です。2025年12月に発表した計画では、拠点に100億円規模を投じ、2026年度に1.2倍、2027年度に1.5倍、2029年度には2倍まで生産能力を高める方針が示されています。

重厚長大型の産業において、生産能力を2倍にする投資は簡単に決断できるものではありません。それだけ数年先まで強い需要が見込まれていることの裏返しとも考えられます。

また、同社は蓄電所事業に蓄電池パッケージを納入するなど、データセンターだけでなく再生可能エネルギーや系統用蓄電の分野でも実績を積み上げています。

株主還元面でも、2026年3月期の年間配当180円に対し、2027年3月期は210円への増配を計画しています。

明電舎は環境対応型の電力設備に強み

明電舎の強みは、環境規制への対応力です。

GoogleやMicrosoftなどの大手IT企業は、データセンター建設において温室効果ガス排出実質ゼロを目指す厳しい方針を掲げています。従来のガス絶縁開閉装置では、絶縁性能を高めるためにSF6ガスが使われてきましたが、このガスは地球温暖化係数が非常に高い物質です。

明電舎は、長年培ってきた真空遮断器の技術を活用し、SF6ガスの代わりに乾燥空気を使う環境対応型製品を開発しています。さらに変圧機の絶縁油にも、石油由来ではなく植物由来のエステル油を採用しています。

これは単なる環境配慮ではありません。欧米では、環境基準を満たさない設備ではデータセンター建設許可が下りにくくなる流れがあります。投資ファンドのESG基準を満たすうえでも、明電舎の環境対応技術は重要な意味を持ちます。

2026年3月期の業績は、売上高3261億円で前期比8%増、営業利益271億円で同26%増と好調でした。一方で2027年3月期の連結純利益は前期比7%減の220億円となる見通しです。ただし、これは前年の特別利益がなくなる影響が大きく、本業の稼ぐ力を示す営業利益ベースでは290億円、前期比7%増が見込まれています。

変圧機関連銘柄の強気シナリオとしては、米国を中心とした電力インフラ投資が想定以上に加速し、海外向けの利益率が高まる展開が考えられます。ダイヘンの能力増強や明電舎の脱SF6技術が評価されれば、さらなる利益成長も期待されます。

一方で、慎重に見るべき材料もあります。銅や電磁鋼板などの原材料価格が上昇した場合、価格転嫁が追いつかず利益率が圧迫される可能性があります。また、変圧機需要には効率規制前の駆け込み需要が含まれている可能性もあり、規制適用後に反動が出るリスクがあります。

さらに、データセンター建設そのものが電力網への接続遅延や住民の反対運動によって停滞すれば、受注消化が遅れる可能性もあります。

AIは水を大量に消費する、栗田工業の本当の実力

3つ目のテーマは水です。

AIデータセンターでは、液冷システムの導入が進んでいますが、データセンター全体から熱を外へ逃がす最終的なプロセスでは、依然として大量の水が使われます。冷却塔では水が蒸発することで熱を逃がすため、AIの稼働拡大は水資源の消費と切り離せない関係になっています。

そこで重要になるのが、冷却水の管理です。冷却水では、スケール、スライム、腐食という3つの障害が発生します。

水の中の成分が蒸発によって濃縮されると、熱交換器の表面にスケールと呼ばれる固着物が付着します。これにより冷却効率が低下し、エネルギー消費が増えます。放置すれば、コンプレッサーや冷凍機が異常停止し、データセンター全体がダウンする恐れもあります。

栗田工業は、こうした冷却水向けの水処理薬品を提供しています。重要なのは、単に薬品を売るだけではなく、IoTを活用した遠隔監視サービスによって、サブスクリプション型のビジネスへ転換している点です。

現場に行かなくても、補給水量、電気伝導率、pHなどのセンサーデータをリアルタイムで監視し、薬品の注入量を自動制御する仕組みです。これにより、スケールの発生を防ぎながら補給水量を抑え、冷却水の再利用も可能になります。

水資源が限られる地域にデータセンターを建設する事業者にとって、栗田工業のシステムは、安定稼働と水資源保護を両立するための重要な仕組みです。

一方、2026年3月期の決算だけを見ると、同社は厳しい数字に見えます。売上高は4029億円でしたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比22%減の160億円に落ち込みました。ROEも6%から5%へ悪化し、第4四半期単体では114億円の最終赤字を計上しています。

しかし、この赤字の主因は、米国子会社におけるのれんを含む固定資産の減損損失199億円を一括計上したことです。これは一時的で、キャッシュ流出を伴わない要因です。いわば、悪材料を一気に処理する「膿出し」の決算だったとも見られます。

本業の稼ぐ力を示す営業利益は、販管費の抑制や継続契約型サービスの好調により、前期比86%増の583億円と大きく伸びています。営業キャッシュフローも555億円のプラスを維持しています。

受給面でも注目点があります。2026年6月時点で、外国人持ち株比率は49%から52%程度と非常に高い水準です。ステート・ストリート、ノーザン・トラスト、バンガードといったグローバル運用資金に加え、水資源保護をテーマにした欧米ファンドの資金が入っている可能性があります。

水処理関連では、野村マイクロ・サイエンスやオルガノなども比較対象になります。野村マイクロ・サイエンスは超純水装置を手掛ける企業ですが、半導体工場の設備投資サイクルに影響されやすい面があります。

一方、栗田工業はAIデータセンターや工場の稼働に伴って継続的に消費される冷却水処理のサービスへ軸足を移しつつあります。このビジネスモデルの違いが、営業利益の伸びに表れている可能性があります。

強気シナリオとしては、減損処理が一時的なものとして市場に認識され、営業利益率の改善が評価される展開です。IoTを使ったデータセンター向け水処理ビジネスが米国や台湾などで伸びれば、株価の再評価につながる可能性があります。

一方で、同社自身が説明しているように、欧米や中国でのプラント工事の進捗が想定を下回っている点には注意が必要です。地政学リスク、建設遅延、原料調達コストの上昇、外国人投資家の資金引き上げなどもリスク要因です。

空気の流れを設計する高砂熱学工業

液冷や水処理に加えて、データセンター全体の空調効率を高める技術も欠かせません。そこで注目されるのが、高砂熱学工業です。

同社の「IDC-SFLOW」というシステムは、データセンター内の空気の流れを効率化する技術です。

従来のデータセンターでは、床下から冷気を吹き出す方式が主流でした。しかしこの方式は送風動力が大きく、熱だまりが発生しやすいという課題があります。

高砂熱学工業のシステムは、空調機械室との間仕切り壁から直接サーバー室へ冷気を供給する壁吹き出し方式を採用しています。空気の流れを整えることで、ラックの吸い込み面まで冷気を安定して届けることができます。

これにより、送風動力を従来の床吹き出し方式に比べて大きく削減できるとされています。外気冷却と組み合わせれば、データセンターのエネルギー効率を示す指標も改善できます。

冷却部品を担う日東工器、水処理を担う栗田工業と並び、高砂熱学工業は空気と空間設計の面からAIデータセンターを支える重要な企業といえます。

AI関連資金は冷却・電力・水へローテーションしている

ここまでの内容を整理すると、日本株市場ではAI関連資金の循環が起きていることが見えてきます。

第1波は、半導体や製造装置でした。NVIDIAのような企業や、半導体製造装置関連に資金が集中しました。

第2波は、藤倉のような通信インフラです。光ファイバー需要の拡大により、関連銘柄が急騰しました。

そして第3波として注目されているのが、冷却、電力、水という物理的制約を解決するインフラ企業です。

これらの企業に共通しているのは、重厚長大産業であり、ソフトウェアのように一気に増産できない点です。変圧機に必要な電磁鋼板の確保、液冷カプラの安全認証、水処理サービスの現場導入などは、短期間で模倣できるものではありません。

だからこそ、一度採用されれば長期的な取引関係が続きやすく、競争優位も維持されやすいのです。

また、こうした企業は長らく成熟したバリュー株として見られてきました。しかし、AIデータセンター需要という新しい成長テーマが加わったことで、海外投資家や機関投資家が静かに保有を増やしている可能性があります。

半導体のような派手さはありませんが、AIの恩恵を取りこぼさないための分散先として、日本の地に足のついたインフラ企業が見直されていると考えられます。

投資戦略は強み・弱み・機会・脅威で整理する

最後に、今回取り上げた銘柄群を投資戦略の観点から整理します。

まず強みです。日東工器は、液冷カプラという代替が難しい技術を持っています。ダイヘンと明電舎は、数年分の受注残を背景にした安定した収益基盤を持っています。栗田工業は、薬品の売り切りからサブスクリプション型サービスへ転換し、安定収益を確立しつつあります。高砂熱学工業は、データセンターの空調効率を改善する技術で存在感を持っています。

次に弱みです。日東工器は先行投資による一時的な減益と減配が短期的な株価の重しになっています。ダイヘンと明電舎は、銅や電磁鋼板などの原材料価格に利益率が左右されやすい構造があります。栗田工業は、海外のプラント工事に遅延が出ている点が課題です。

機会としては、AIデータセンターの建設が世界的に続く限り、冷却、電力、水処理への需要は構造的に増えていく可能性があります。とくに環境規制への対応力が高い企業は、欧米の厳しい投資基準をクリアできる企業として優位に立ちやすいでしょう。

一方で脅威もあります。変圧機需要には規制前の駆け込み需要が含まれている可能性があり、2026年度以降に反動が出るリスクがあります。急激な円高が進めば、輸出採算が悪化する可能性もあります。データセンター建設そのものが、電力網への接続遅延や地域住民の反対によって停滞するリスクもあります。

まとめ

AI関連株というと、どうしても半導体やGPU、光ファイバーといった分かりやすいテーマに注目が集まりがちです。しかし、AIデータセンターを実際に動かすためには、冷却、電力、水処理、空調といった物理インフラが欠かせません。

今回取り上げた日東工器、ダイヘン、明電舎、栗田工業、高砂熱学工業は、いずれもAIを裏側から支える企業です。派手な成長株とは違い、事業内容は地味に見えるかもしれません。しかし、簡単に模倣できない技術や長期的な顧客関係を持つ点で、AIインフラ時代の重要な銘柄群といえます。

ただし、AIという大きなテーマに乗っているからといって、無条件に株価が上がり続けるわけではありません。原材料価格、規制の節目、海外工事の進捗、外国人投資家の動きなど、株価に影響する要因は複雑に絡み合っています。

大切なのは、株価が上がるか下がるかを単純に予想することではなく、どの条件がそろえば強気シナリオが進みやすいのか、逆にどの条件が崩れれば慎重に見るべきなのかを整理しておくことです。

目先の決算数字だけに反応するのではなく、その背景にある受注の大きさ、サブスクリプション型ビジネスへの転換、環境規制への対応力、データセンター需要の持続性を継続的に確認していく姿勢が重要です。

AIデータセンターバブルの裏側では、半導体だけではなく、冷却、電力、水処理という現実的なインフラに資金が向かい始めています。こうした視点を持つことが、表面的なニュースに振り回されない投資判断につながるのではないでしょうか。

なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。

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