本記事は、YouTube動画『【JX金属逃した人】この銘柄絶対見ろ』の内容を基に構成しています。
JX金属上場が変えた日本素材株への見方
2025年3月19日、JX金属が東証プライム市場に上場しました。公開価格820円に対して初値は843円となり、上昇率はおよそ3%でした。
この上場は、単なる大型IPOとして注目されたわけではありません。重要なのは、これまでENEOSホールディングスという大きな企業グループの中に埋もれていた素材事業が、独立した企業として市場から直接評価されるようになった点です。
JX金属は、半導体用ターゲット材で世界シェアおよそ60%から65%、スマートフォン向け圧延銅箔で世界シェアおよそ80%という高い技術力を持つ企業です。こうした企業がグループから切り出されることで、市場は「日本にはまだ大企業の中に埋もれた高付加価値素材企業があるのではないか」と考えるようになりました。
今回の動画では、その視点からJX金属と似た再評価の可能性を持つ4つの企業として、レゾナック・ホールディングス、三井金属、DOWAホールディングス、フルヤ金属が取り上げられています。
レゾナック・ホールディングス|半導体材料に集中する再編銘柄
最初に紹介されたのは、レゾナック・ホールディングスです。
レゾナックは、旧昭和電工と旧日立化成が統合して誕生した企業で、半導体パッケージ材料の分野で世界トップクラスの製品を複数抱えています。動画では、銅張積層板、感光性絶縁材料、感光性ドライフィルム、ダイシングフィルム、CMPスラリーなどが挙げられていました。
半導体は、回路を非常に細かく、さらに多層構造で作る必要があります。その工程では、高精度な材料技術が欠かせません。レゾナックの強みは、まさにその精密な材料を提供できる点にあります。
特にダイシングフィルムは、メモリーチップを何層にも積み上げる工程で重要な役割を果たします。AIサーバー向けの高性能メモリー需要が伸びるほど、同社の材料需要も伸びやすい構造です。
石油化学事業の切り離しが再評価のカギ
レゾナックがJX金属型の再評価銘柄として注目される理由は、石油化学事業の切り離しを進めている点です。
同社は2024年2月、収益が市況に左右されやすい石油化学事業を切り離す方針を発表しました。さらに2025年1月には、その事業を引き継ぐ会社としてクラサスケミカル株式会社が営業を開始しています。
これは、コモディティ色の強い事業を切り離し、成長分野である半導体材料へ経営資源を集中させる動きです。JX金属がグループから独立して評価された流れと似た構造を持っています。
ただし、クラサスケミカルの完全分離については、規制上の手続きなどもあり、時期が確定していない点には注意が必要です。動画では、この不確実性が株価に残る割引要因であり、同時に再評価余地でもあると説明されています。
業績面では、2026年12月期第1四半期の営業利益が336億円となり、前年同期比でおよそ126%増益と強い数字を出しました。これを受け、2026年5月14日には上期業績予想を上方修正し、売上高は6150億円から6600億円、営業利益は350億円から570億円へ引き上げられています。
2026年6月19日時点の株価は1万8390円とされ、安値6635円から5月高値2万495円までおよそ3倍に上昇した経緯があります。すでに好材料はある程度織り込まれていますが、石化事業の分離完了という最後のイベントが残っている点が注目材料です。
三井金属|マイクロシンと全固体電池で成長株評価へ
次に取り上げられたのが、三井金属です。
三井金属は、2025年10月に三井金属鉱業株式会社から三井金属株式会社へ社名変更したとされています。これは単なる名称変更ではなく、鉱山事業中心の企業から、高付加価値な先端材料メーカーへ変わる意思表示として紹介されています。
同社の代表的な技術が、キャリア付き極薄銅箔「マイクロシン」です。動画では、世界シェア95%以上と説明されています。
マイクロシンは、スマートフォンのマザーボードやAIサーバー向け半導体パッケージ基板に使われる重要素材です。厚さわずか数マイクロメートルの銅箔を、幅1メートル以上、長さ数千メートルという巨大なロールで均一に作り続ける技術は、他社が簡単に真似できるものではありません。
さらに、2026年5月13日には、全固体電池向け固体電解質について、大手自動車メーカーなど主要顧客への提供が正式に決定したという発表もあったと説明されています。
保守的な業績予想と急落後の反発
三井金属の値動きは非常に大きなものでした。
2026年5月12日に発表された2026年3月期決算では、売上高7585億円、営業利益1309億円となり、前期比75%増という大幅増益を記録しました。
しかし翌日に発表された2027年3月期の業績予想では、営業利益910億円、当期純利益750億円と、前期比で減益となる保守的な見通しが示されました。
この発表を受け、市場は売りで反応します。株価は2026年5月27日の年初来高値5万7700円から、6月11日には3万7330円まで下落し、およそ35%の急落となりました。
ところが6月12日には、株価が前日比でおよそ18%反発しました。背景には、全固体電池向け材料への期待や、マイクロシンの月次売上が底堅かったことがあると見られています。
また、貸借取引データでは株不足の状態が示されていたとされ、空売り勢の買い戻しが急反発を後押しした可能性も指摘されています。
2026年6月19日時点の株価は4万820円まで回復しているとされます。PBRはおよそ6倍台、PERはおよそ31倍から37倍と、従来の工業株としては高い水準です。市場は三井金属を、もはや単なる工業株ではなく、AI半導体素材と全固体電池関連の成長株として評価し始めていると考えられます。
ただし、バリュエーションが高い分、今後はマイクロシンの受注拡大や全固体電池の量産進展が本当に数字として出てくるかを確認する必要があります。
DOWAホールディングス|資源・リサイクル・高機能材料を循環させる安定株
3社目は、DOWAホールディングスです。
DOWAホールディングスの特徴は、鉱山経営という動脈の事業、リサイクルという静脈の事業、そして高機能な半導体材料事業を自社内で循環させている点です。
技術面で注目されるのが、高純度のガリウムとインジウムです。これらは化合物半導体、パワー半導体、次世代電池などに欠かせない重要元素です。地政学的にも重要なサプライチェーンに関わる素材であり、今後の需要拡大が期待されます。
また、データを長期保存するための磁気テープ用材料でも、世界トップクラスのシェアを持っていると紹介されています。
業績面では、2026年3月期の通期決算で売上高7454億円、営業利益341億円、純利益624億円となり、純利益は前期比130%増と大きく伸びました。
さらに2027年3月期の通期予想では、売上高9410億円、営業利益530億円という強気の見通しが示されています。
配当利回りと資源価格の両面を見る必要がある
DOWAホールディングスは、4銘柄の中では比較的安定感がある銘柄として紹介されています。
2026年6月19日時点の株価は9480円で、予想PERはおよそ10倍、PBRはおよそ1.3倍とされ、他の成長素材株と比べると控えめな評価にとどまっています。
これは、資源価格の変動リスクを市場が警戒しているためだと考えられます。
一方で、配当面では魅力があります。2026年3月期は普通配当に特別配当を上乗せし、前期から大幅な増配を行ったと説明されています。2027年3月期も338円の配当を予想しており、現在の株価に対しておよそ3%台半ばの利回りに相当します。
ただし、信用倍率は2026年6月12日時点でおよそ11.85倍とされ、信用買いがある程度多い状態です。そのため、短期的な需給リスクがまったくないとは言えません。
長期投資家としては、ガリウムやインジウムなど戦略資源の価格動向と、配当利回りの安定性をあわせて確認する必要があります。
フルヤ金属|半導体製造装置向け材料で急成長する一方、信用倍率に注意
最後に紹介されたのが、フルヤ金属です。
フルヤ金属は、プラチナ、イリジウム、ルテニウムといったプラチナグループメタルに特化し、結晶成長から生成加工、リサイクルまでを一貫して手がける企業です。
特に注目されるのが、半導体製造装置に使われる極限温度センサーである熱電対の分野です。CVD装置や拡散炉など、最先端半導体の前工程では、非常に高温の環境で精密な温度管理が必要になります。
フルヤ金属は、このような厳しい環境で使われる部材に強みを持っており、半導体製造装置市場の拡大が追い風になる可能性があります。
動画では、日本半導体製造装置協会の2026年1月発表資料に基づき、2026年度の日本製半導体製造装置の販売額が前年比12%増の約5兆54億円になる見通しだと紹介されています。最先端ロジック半導体や高性能メモリー向けの投資が増えれば、フルヤ金属にも恩恵が及ぶ可能性があります。
業績面では、2026年5月13日発表の2026年6月期第3四半期決算で、営業利益が173億円と前年同期比およそ2.1倍に急増しました。さらに通期営業利益予想も165億円から225億円へ上方修正され、前期比およそ2.4倍という大幅増益見通しとなっています。
業績は強いが信用買い残の多さがリスク
2026年6月19日時点の株価は9090円、実績PBRはおよそ3倍、予想PERはおよそ15倍とされています。営業利益がおよそ2.4倍に伸びる見通しを考えると、単純な指標面では極端に割高とは言えない水準です。
しかし、動画で強調されていたのが信用取引のリスクです。
2026年6月12日時点で、信用売り残はおよそ2万3000株に対し、信用買い残はおよそ108万株、信用倍率は46倍という非常に偏った状態だったと説明されています。
信用倍率が高いということは、必ずしも株価上昇の燃料になるわけではありません。むしろ、信用買いをしている投資家が多いということは、株価が下落した際に損失回避の売りが連鎖しやすいことを意味します。
そのため、フルヤ金属は業績成長という強い追い風を持ちながらも、需給面では最も注意が必要な銘柄だといえます。
長期投資家としては、決算の数字だけでなく、信用倍率が低下しているか、需給が整理されているかを定期的に確認することが重要です。
4銘柄の強みと弱みを整理する
今回取り上げられた4銘柄には、共通点があります。
いずれも世界シェアの高い独自技術を持ち、AI半導体、データセンター、全固体電池、戦略資源、半導体製造装置といった成長分野に関わっています。これは、簡単に他社が追いつけない大きな強みです。
一方で、それぞれ異なるリスクも抱えています。
レゾナックは、石化事業分離の不確実性が残っています。三井金属は、成長期待が大きい一方で、会社側が来期減益を見込んでおり、株価指標も高くなっています。DOWAホールディングスは安定感があるものの、資源価格や為替の影響を受けやすい事業構造です。フルヤ金属は業績の急成長が魅力ですが、信用倍率の高さによる需給リスクがあります。
つまり、どの銘柄も「強みだけを見て買えばよい」という単純な話ではありません。強みの裏側には必ずリスクがあり、その両面を確認する必要があります。
長期投資家が見るべきポイント
今回の4銘柄を見るうえで重要なのは、株価が上がるか下がるかを短期的に予想することではありません。
大切なのは、それぞれの銘柄にどのようなシナリオがあるのかを理解することです。
レゾナックであれば、クラサスケミカルの分離が完了すれば再評価材料になります。一方で、分離が遅れたり、法的・規制上の問題が出たりすれば、バリュエーションの高さが意識される可能性があります。
三井金属であれば、マイクロシンの受注拡大や全固体電池向け材料の量産化が進めば、高い評価を正当化できる可能性があります。しかし、期待先行のまま数字がついてこなければ、株価調整のリスクがあります。
DOWAホールディングスは、戦略資源価格と配当の安定性がポイントです。ガリウムやインジウムの需要が高まれば収益拡大が期待できますが、資源価格が下落すれば業績に影響します。
フルヤ金属は、半導体製造装置市場の拡大という追い風がある一方で、信用買い残の多さが大きなリスクです。需給が整理されるかどうかを見極める必要があります。
まとめ
JX金属の上場は、日本の素材株を見るうえで大きな転換点となりました。
これまで大企業グループや古い産業イメージの中に埋もれていた企業が、半導体、AI、全固体電池、戦略資源といった成長テーマの中で再評価される流れが生まれています。
今回取り上げられたレゾナック・ホールディングス、三井金属、DOWAホールディングス、フルヤ金属はいずれも、世界的な技術力を持つ一方で、それぞれ異なるリスクを抱えています。
投資で重要なのは、話題になった銘柄を慌てて追いかけることではありません。決算で示される数字、市場がすでに織り込んでいる期待、信用取引の需給、事業再編の進捗などを冷静に確認することです。
表面的なニュースだけで判断するのではなく、企業の構造や市場の評価軸まで見ていくことが、長期投資家にとって重要な姿勢だといえるでしょう。
なお、本記事は動画内容を基にした情報整理であり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断は、最新の決算資料や公式発表を確認したうえで、ご自身の責任で行う必要があります。


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