証券会社のミーティングにおいてレバレッジ商品に関する議論が行われた内容を元に、レバレッジ型の投資信託(特にナスダック100レバレッジ投資)について詳しく解説します。
今回は、レバレッジ商品がどのように運用され、どのようなリスクと利点があるのかを、投資の実務者の視点から紹介します。さらに、なぜプロの運用者がレバレッジ積立を避けるのかについても考察します。
レバレッジ積立の仕組みとリスク
まず、レバレッジ型の投資とは、通常の現物投資に加えて、資産の何倍もの規模で投資できる仕組みです。
例えば、2倍のレバレッジをかけると、100万円の投資で200万円分の資産を運用することが可能です。これにより、市場が上昇すれば2倍の利益を得ることができる反面、下落時には2倍の損失を被るリスクがあります。
実際、レバレッジをかけた積立投資が魅力的に見える理由は、特定の期間での市場の上昇が際立っているためです。
たとえば、ナスダック100の過去の動きを見ると、2017年以降の市場は比較的強く成長しており、レバレッジをかけた場合には非常に高いリターンが得られることが多いです。
しかし、ITバブル崩壊や2022年初頭のような市場の急落時には、レバレッジをかけた資産が急激に目減りする危険性があります。
具体的な例: ITバブル崩壊とレバレッジ投資
ITバブル崩壊を例にとると、もしバブル崩壊前にレバレッジ2倍でナスダック100に1000万円を投資していた場合、バブルの最盛期には4000万円まで増加するかもしれませんが、崩壊後にはわずか92万円まで減少してしまいます。
これは、元本の10分の1以下にまで資産が減少することを意味します。さらに、ピーク時に投資を始めた場合、資産はマイナス98%となり、20万円にまで減ってしまうリスクがあるのです。
このように、市場が急上昇している期間にレバレッジをかけることは非常に魅力的に映りますが、急落時の損失は非常に大きく、積立方式でこれを行うことには大きなリスクが伴います。
運用者の視点から見たレバレッジファンドの実態
レバレッジ商品は、投資家から預かった資金を元に、その資金の何倍もの資産を運用します。
たとえば、1000万円を預かった場合、レバレッジ2倍のファンドでは、2000万円分の先物取引を行います。この時、先物取引は現物取引に比べて少ない現金で取引できるため、運用者は資金を効率的に使うことができます。
もし、相場が5%上昇した場合、2000万円の先物は2100万円となり、投資家には100万円の利益が発生します。逆に、5%下落した場合は1900万円となり、投資家は100万円の損失を被ることになります。
このように、レバレッジをかけたファンドは上昇時には大きなリターンを得られる一方で、下落時の損失も拡大するのです。
レバレッジ積立の課題
レバレッジ積立投資の最大の課題は、相場が上昇し続ける必要があるという点です。
特に、相場が横ばいの状態では、少しずつ資産が目減りしていくリスクがあります。
なぜなら、レバレッジ商品の性質上、相場が下落するたびに資産を売却しなければならないからです。このため、レバレッジをかけた積立投資は、非常に市場の上昇が続く期間にしか有効ではないのです。
例えば、2019年からのナスダック100の上昇期間では、上昇日数が全体の58%を占め、レバレッジ商品は非常に好調でした。
しかし、2022年には上昇日数が47%に低下し、レバレッジをかけた投資家は大きな損失を被っています。市場が下落し続けると、レバレッジ商品は急速に価値を失い、特に長期的な積立投資においては大きなリスクとなります。
結論: レバレッジ積立投資のリスクと利点
レバレッジ積立投資は、市場が長期にわたって上昇し続ける場合には大きな利益をもたらします。
しかし、下落局面では資産が急速に目減りし、大きな損失を被るリスクがあるため、運用者の多くは長期的な積立投資としてレバレッジ商品を使用することは避けています。
特に、老後資金を積み立てる目的でレバレッジをかけることは非常に危険であり、相場の下落に耐えられるかどうかが成功の鍵となります。
したがって、レバレッジ積立投資は短期的な市場上昇を狙ったものとして考えるべきであり、長期的な資産運用には適さないと言えるでしょう。
今後、証券会社や投資家がどのような運用商品を選ぶかは、それぞれのリスク許容度や市場の動向によりますが、レバレッジ商品に投資する際は、相場の動きに十分注意し、長期的な視野を持つことが重要です。

知っておきたい専門用語集
- レバレッジ:借り入れを利用して、自己資本よりも大きな資金を運用すること。リターンが増大する一方、リスクも高まる。
- 先物取引:特定の商品や資産を将来の決められた日に、あらかじめ決めた価格で売買する契約のこと。株式や通貨、商品などの取引で利用される。
- ナスダック100:アメリカのNASDAQ市場に上場している、ハイテク企業を中心とした100銘柄で構成される株価指数。
- ITバブル崩壊:2000年代初頭に発生した、インターネット関連企業の株価急騰とその後の急落。多くの投資家が大きな損失を被った。
- 現物投資:レバレッジをかけずに、実際に所有する資金の範囲内で株式や資産を購入する投資方法。
- 積立投資:一定期間ごとに決まった額を投資していく手法。リスク分散を目的としている。
- 平均取得単価:投資家が購入した資産の平均購入価格。購入時期が異なると、価格も変わるため、平均的な取得コストを算出するために使われる。
- インバースファンド:対象とする指数や資産が下落したときに、逆に利益が出るよう設計されたファンド。
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