本記事は、YouTube動画『今日はNTT株が上がらない裏側がやばい』の内容を基に構成しています。
NTT株が上がらない理由は業績不振だけではない
日本を代表する通信インフラ企業であるNTTは、圧倒的な知名度と安定した事業基盤を持つ企業です。連続増配を続けていることもあり、個人投資家からは高配当株、安定株として見られることが多い銘柄です。
しかし、2026年7月時点のNTT株は142円から145円前後で推移しており、52週高値の167円台、さらに2024年初めの190円台と比べると大きく下落した水準にあります。
一見すると、通信業界が成熟していることや業績の伸び悩みが原因のように見えます。しかし、動画ではそれだけでは説明できない、より深い構造的な問題があると指摘されています。
その中心にあるのが、個人投資家による信用買いの積み上がり、0.1円刻みという株価の構造、政府保有株の売却リスク、そしてNTTの将来を左右するIOWN構想です。
株価を押さえつける最大要因は信用買い残
株式市場では、長期的には企業の業績や成長性が重要になります。しかし、短期的な株価を動かすのは、買いたい人と売りたい人の力関係です。これを「需給」と呼びます。
現在のNTT株で大きな問題になっているのが、信用買い残の多さです。
信用買いとは、証券会社から資金を借りて株を買う取引のことです。信用買い残とは、信用取引で買われたまま、まだ売却されていない株数を意味します。
つまり信用買い残は、将来的に売られる可能性が高い株のかたまりです。
動画では、2026年6月26日時点でNTTの信用買い残が約2億4459万株に達していると説明されています。これはソフトバンクの約5042万株、三菱UFJフィナンシャル・グループの約2683万株と比べても非常に大きな水準です。
NTTはソフトバンクの約5倍、三菱UFJの約9倍に相当する潜在的な売り圧力を抱えていることになります。
さらに信用倍率も大きな問題です。信用倍率とは、信用買い残を信用売り残で割った数字です。この数字が高いほど、将来的な売り圧力が大きい状態を示します。
NTTの信用倍率は約28倍とされ、ソフトバンクの約14倍、三菱UFJの約12倍と比べても、買いに偏った状態であることが分かります。
株価が少し上がろうとすると、信用買いをしていた投資家が利益確定や損失縮小のために売りを出します。その結果、株価の上値が重くなります。これが、NTT株が上がりそうで上がらない大きな理由の1つです。
なぜNTT株に信用買いが集まったのか
NTT株にこれほど信用買いが集まった背景には、2023年7月に実施された株式分割があります。
NTTは1株を25株に分割しました。これにより、以前は数10万円単位でなければ買いにくかったNTT株が、数千円単位で購入できるようになりました。
この株式分割によって、NTT株は個人投資家や投資初心者にとって非常に身近な銘柄になりました。新NISAの普及もあり、「少額で買える高配当株」として注目を集めたのです。
さらに、株価が下がるほど配当利回りが高く見えるため、「下がったら買い増し」という動きが広がりました。いわゆるナンピン買いです。
現物で少しずつ買い増すだけならまだしも、信用取引を使って買い下がる投資家が増えたことで、信用買い残が大きく積み上がりました。
しかし信用取引には期限があります。一般的な制度信用取引では、6か月以内に返済しなければなりません。株価が上がらないまま期限を迎えれば、損をしていても売却せざるを得ない場面が出てきます。
また、株価が下がると追加の担保を求められる「追証」が発生することがあります。追証に対応できなければ、強制的に売却されます。
この強制売却が連鎖すると、株価がさらに下がり、また別の投資家に追証が発生するという悪循環が起こります。
NTT株には、こうした信用取引による連鎖的な売り圧力が潜在的に存在しているのです。
0.1円刻みの株価が上値を重くしている
NTT株には、もう1つ市場構造上の特徴があります。それが0.1円刻みの値動きです。
東京証券取引所では、TOPIX100に採用されている大型株で、株価が1000円以下の銘柄について、0.1円刻みで注文を出すことができます。
NTTは25分割によって株価が100円台になったため、この0.1円刻みの対象になりました。
一見すると、細かく売買できることは良いことのように見えます。しかし、株価が1円上がるためには、142.1円、142.2円、142.3円というように、10段階の売り注文をすべて消化しなければなりません。
そのため、板が非常に細かく厚くなり、株価が動きにくくなります。
この環境は、高頻度取引を行うアルゴリズムにとっては有利です。0.1円や0.2円の小さな値幅を高速で取りに行く取引がしやすいからです。
一方で、数円から数10円の値上がりを期待して信用取引で保有している個人投資家にとっては、株価が動かない間にも金利コストが発生します。
信用取引の金利が年率3%前後だとすると、配当利回りの多くが金利で相殺されてしまう可能性もあります。
つまり、NTT株は構造的に個人投資家が不利になりやすい状態にあると言えます。
業績面ではドコモ事業の収益悪化が懸念材料
NTTの業績そのものを見ると、売上規模は非常に大きく、日本を代表する企業であることに変わりはありません。
動画では、2026年3月期の営業収益が15兆600億円規模と見込まれていると説明されています。売上だけを見ると、NTTの事業基盤は依然として巨大です。
一方で、市場が警戒しているのは利益面です。
特に注目されているのが、NTTドコモのコンシューマー事業です。スマートフォンなど一般消費者向けの通信事業において、EBITDAが大きく落ち込んだことが指摘されています。
背景には、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルとの価格競争があります。携帯料金の引き下げ競争が続くなかで、1人当たりの売上が伸びにくくなっています。
さらに、5G以降の次世代通信ネットワークへの設備投資も重くのしかかっています。通信事業は巨大なインフラを維持・更新する必要があり、成長投資には多額のコストがかかります。
そのため、売上は大きくても利益が伸びにくい構造になっています。
市場から見ると、NTTは安定企業ではあるものの、高成長企業として積極的に買う理由が見えにくい状態です。
政府保有株の売却リスクが株価の上値を抑えている
NTT株の大きな特徴として、日本政府が大株主である点があります。
動画では、財務大臣がNTTの発行済み株式のおよそ3分の1を保有しており、時価にして約5兆円規模に相当すると説明されています。
この政府保有株について、将来的な売却が議論されています。背景にあるのは、防衛費増額の財源確保です。
政府が大量のNTT株を売却する可能性があるなら、投資家は積極的に買いにくくなります。なぜなら、大量の株式が市場に出てくれば、株価が下がる可能性があるからです。
このような「将来的に大きな売りが出るかもしれない」という懸念を、株式市場ではオーバーハングと呼びます。
投資家からすれば、政府売却が正式に決まり、売り出し価格がディスカウントされるなら、その時に買えばよいという判断になります。
そのため、現時点ではNTT株を積極的に買う理由が弱くなっているのです。
特に外国人投資家は、政府保有株の売却方法や時期が不透明な銘柄を嫌う傾向があります。この不透明感が、NTT株の上値を抑えている大きな要因の1つになっています。
Dポイント株主優待には誤解もある
NTT株は配当だけでなく、Dポイントの株主優待でも注目されています。
NTTの株主優待は、100株以上を保有する株主に対してDポイントを付与する制度です。保有期間が2年以上3年未満で1500ポイント、5年以上6年未満で3000ポイントが付与され、合計で最大4500ポイントを受け取れる仕組みです。
ただし、ここで注意すべき点があります。
この優待は毎年もらえるものではありません。特定の保有期間に達したタイミングで1回だけ付与されるマイルストーン型の優待です。
2年で1500ポイント、5年で3000ポイントが1回ずつ付与されるだけで、6年以上保有しても追加のポイントはありません。
また、ポイントは自動的に付与されるわけではなく、株主自身が専用サイトから申請する必要があります。申請を忘れると、権利を失う可能性があります。
もし「毎年Dポイントがもらえる」と誤解して買っていた投資家が多い場合、その認識が修正された時に失望売りが出る可能性もあります。
高配当や優待を目的に投資する場合でも、制度の中身を正確に理解することが重要です。
NTTの未来を左右するIOWN構想
ここまで見ると、NTT株には重い材料が多いように感じられます。しかし、動画ではNTTの大きな可能性としてIOWN構想が取り上げられています。
IOWNとは、NTTが進める次世代の通信・コンピューティング構想です。簡単に言えば、電気ではなく光を使って、通信や情報処理をより高速かつ低消費電力で行うことを目指す技術です。
現在、世界中で生成AIの利用が急拡大しています。その結果、データセンターの電力消費が大きな問題になっています。
AIを動かすには膨大な計算処理が必要であり、そのためには大量の電力が必要です。電気代の上昇や環境負荷の増大は、世界的な課題になっています。
IOWNは、この問題を解決する可能性を持つ技術として期待されています。
光を使って情報を伝送・処理することで、消費電力を大幅に削減しながら、通信容量を大きく増やすことができるとされています。
動画では、IOWNが実現すれば消費電力を大幅に抑え、伝送容量を125倍にできる可能性があると説明されています。
これは単なる通信速度の向上ではありません。世界のコンピューティング基盤そのものを変える可能性がある技術です。
IOWNが実用化すればNTTの評価は変わる可能性がある
IOWNが本格的に社会実装され、AIデータセンターやグローバルテック企業に採用されるようになれば、NTTの評価は大きく変わる可能性があります。
現在のNTTは、通信キャリアとして評価されています。通信株は一般的に安定配当株として見られる一方、成長性の評価は高くなりにくい傾向があります。
しかし、IOWNが世界標準の技術になれば、NTTは単なる通信会社ではなく、AIインフラを支えるテクノロジー企業として見られる可能性があります。
そうなれば、株価収益率であるPERの評価も変わるかもしれません。
現在は成熟した通信株として低めに評価されていても、将来の成長企業として再評価されれば、株価の上昇余地は大きくなります。
ただし、IOWNには不確実性もあります。
社会実装には巨額の研究開発費、設備投資、人材投資が必要です。短期的には利益を圧迫する可能性があります。
また、IOWNが世界の標準技術になる保証はありません。どれほど優れた技術でも、商用化や普及に成功しなければ企業価値には十分反映されません。
つまりIOWNは、NTT株にとって大きな夢である一方、現時点ではまだ不確実性の高い材料でもあります。
金利上昇も高配当株には逆風になる
NTT株を考えるうえで、国内金利の動向も重要です。
日本では長年にわたり低金利が続いてきました。そのため、銀行預金や国債では十分な利回りが得られず、配当利回りの高い株式に資金が流れやすい環境がありました。
NTTのような高配当株は、こうした低金利環境の恩恵を受けてきた銘柄の1つです。
しかし、日銀が金融政策の正常化を進め、金利が上昇していくと状況は変わります。
預金や国債でも一定の利回りが得られるようになれば、リスクを取って株式を保有する必要性は下がります。
また、金利上昇局面では銀行株や保険株のように金利上昇の恩恵を受けやすい業種に資金が移りやすくなります。
その結果、通信株や高配当株から資金が流出する可能性があります。
NTT株にとって、金利上昇は静かな逆風と言えます。
NTT株の強みと弱みを整理する
NTT株の強みは、まず国内通信インフラにおける圧倒的な地位です。日本の通信基盤を支える企業であり、売上規模も非常に大きく、安定した収益基盤を持っています。
また、連続増配を続けている点も、株主還元を重視する姿勢として評価できます。
さらに、IOWNという次世代技術の可能性を持っていることも大きな強みです。これが成功すれば、NTTの企業価値は大きく変わる可能性があります。
一方で、弱みも明確です。
ドコモのコンシューマー事業は価格競争の影響を受けており、利益面で苦戦しています。固定電話などのレガシー事業も、成長を押し上げる材料にはなりにくい状況です。
さらに、巨大な信用買い残、0.1円刻みの板構造、政府保有株の売却リスクが、株価の上値を重くしています。
つまりNTT株は、企業としての安定感と将来技術への期待を持ちながらも、株価面では需給と政策リスクに強く縛られている銘柄だと言えます。
2026年以降の下落シナリオ
NTT株の下落シナリオとして考えられるのは、複数の悪材料が同時に重なるケースです。
たとえば、米国経済の急減速や日銀の想定以上の利上げによって株式市場全体が下落した場合、信用買いをしている個人投資家に追証が発生する可能性があります。
その結果、強制売却が増え、株価がさらに下落する連鎖が起こるかもしれません。
そこに政府保有株の大規模売却が正式に発表されれば、売り圧力はさらに強まります。
また、Dポイント優待への誤解が解け、期待していたほどの優待メリットがないと気づいた個人投資家が売りに回る可能性もあります。
こうした材料が重なると、140円台から120円台前半へ下落するシナリオも完全には否定できません。
2026年以降の上昇シナリオ
一方で、NTT株には上昇シナリオもあります。
まず重要なのは、信用買い残の整理です。信用取引には期限があるため、時間の経過とともに高値で買った信用買いの玉が整理されていきます。
信用買い残が大きく減少すれば、株価の上値を抑えていた売り圧力が軽くなります。
さらに、政府保有株の売却について、自社株買いと組み合わせた形で処理されるような発表があれば、需給悪化への懸念が和らぐ可能性があります。
自社株買いによって発行済み株式数が減れば、1株当たり利益の改善にもつながります。
そして最大の上昇材料は、IOWNの具体的な収益化です。
グローバル企業との大型提携や商用契約が発表されれば、市場はNTTを単なる通信株ではなく、AIインフラ関連のテクノロジー企業として評価し始める可能性があります。
その場合、160円、180円、200円といった水準も視野に入るかもしれません。
長期投資家は何を見ればよいのか
NTT株に投資するうえで、まず確認すべきなのは自分の保有方法です。
信用取引で保有している場合、金利コストが発生していることを忘れてはいけません。配当利回りが高く見えても、信用金利で相殺されてしまえば、長期保有のメリットは小さくなります。
特に株価が横ばいの状態が続くと、時間の経過そのものがコストになります。
現物で保有している場合は、短期的な値動きに一喜一憂するよりも、信用買い残の推移、政府保有株の売却方針、IOWNの進捗を継続的に確認することが重要です。
信用買い残が明確に減少し始めれば、需給改善のサインになる可能性があります。
政府保有株の売却についても、いつ、どの程度の規模で、どのような方法で行われるのかが明らかになれば、不透明感が薄れる可能性があります。
また、IOWNについては、実証実験ではなく、実際の商用契約や収益貢献に関するニュースが重要になります。
技術が優れていることと、株価が上がることは同じではありません。投資家が見るべきなのは、その技術がどのように売上や利益につながるかです。
まとめ
NTT株が上がらない理由は、単純に業績が悪いからではありません。
もちろん、ドコモ事業の収益悪化や通信業界の成熟といった課題はあります。しかし、それ以上に大きいのは、信用買い残の積み上がり、0.1円刻みの板構造、政府保有株の売却リスクという需給面・制度面の重さです。
特に信用買い残は、将来的な売り圧力として株価の上値を抑えています。株価が少し上がるたびに売りが出やすく、下がれば追証や強制売却のリスクも高まります。
また、Dポイント優待についても、毎年もらえるものではないという点を正しく理解する必要があります。優待や配当だけを理由に安易に買い下がると、思わぬリスクを抱える可能性があります。
一方で、NTTにはIOWNという大きな将来性もあります。もしIOWNが世界のAIインフラやデータセンターの標準技術として採用されるようになれば、NTTの評価は通信株からテクノロジー株へと変わる可能性があります。
NTT株の本当の転換点は、信用買い残の大幅な減少、政府保有株売却の不透明感解消、そしてIOWNの収益化が見え始めたタイミングになると考えられます。
現時点では、割安だからすぐに上がると考えるのは危険です。株価が安く見える銘柄ほど、なぜ安く放置されているのかを冷静に見る必要があります。
NTT株は、安定企業としての魅力と、需給悪化による重さ、そしてIOWNという未来への期待が同居する銘柄です。長期投資家にとって大切なのは、焦って判断することではなく、データを確認しながら転換点を見極める姿勢です。


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