本記事は、YouTube動画『金融所得に社会保険料がかかるスケジュールとNISAを活用した対策』の内容を基に構成しています。
株式の配当金や売却益などの金融所得が、75歳以上の高齢者の医療保険料や病院の窓口負担に反映される制度改正について、具体的なスケジュールが明らかになりました。
厚生労働省が2026年10月16日に示した案によると、2028年の金融所得が2029年8月から保険料や窓口負担に反映される見通しです。
これまで確定申告をしなければ保険料の計算対象にならなかった株式の配当金や売却益が、新制度では原則として計算に含まれるようになります。
影響は決して小さくありません。動画で紹介されたモデルケースでは、年間の医療保険料が約1万5000円から約10万円に増加し、病院での窓口負担も1割から2割になる可能性が示されています。
一方、NISA(少額投資非課税制度)を活用することで、こうした負担の一部を軽減できる可能性があります。ただし、保有する株式を売却してNISA口座で買い直す場合、売却する年によっては逆に保険料が増えてしまうこともあります。
今回は制度改正の内容と実施スケジュール、具体的な負担額の試算、そして2027年までに検討しておきたい対策について詳しく解説します。
金融所得に社会保険料が反映される制度改正とは?
2026年5月29日に成立し、6月5日に公布された改正健康保険法などには、後期高齢者医療制度における金融所得の取り扱いを変更する内容が盛り込まれました。
後期高齢者医療制度とは、原則75歳以上の人が加入する公的医療保険制度です。
従来、この制度では年金収入や給与所得、不動産所得などを基準に保険料が計算されていました。
株式の配当金や売却益については、確定申告を行うかどうかによって扱いが異なっていたのです。
確定申告をしなくても金融所得が把握される
例えば、源泉徴収ありの特定口座で株式を保有している場合、配当金や売却益にかかる税金は証券会社が自動的に徴収します。
この場合、確定申告をしなければ、従来は金融所得が後期高齢者医療保険料の算定対象にならない仕組みでした。
ところが、新制度では金融機関などが金融所得に関する情報を提供し、後期高齢者医療広域連合が保険料などの算定に活用することになります。
つまり、確定申告をしなくても、対象となる金融所得が保険料や窓口負担割合に反映されるようになるのです。
この改正は、確定申告の有無によって医療費の負担が変わる不公平を是正する目的で導入されます。
年金150万円・配当60万円なら保険料が約7倍に
動画では、制度改正の影響を説明するために、架空の人物である佐藤さんの事例が紹介されています。
佐藤さんは2029年に75歳となる東京都在住の単身者で、年間の年金収入は150万円です。
さらに、特定口座で1500万円分の国内高配当株を保有しており、年間4%の配当利回りによって60万円の配当金を受け取っています。
動画では、現在の東京都の保険料基準を利用した試算として、次の数字が示されています。
| 項目 | 改正前 | 金融所得反映後 |
|---|---|---|
| 年間年金収入 | 150万円 | 150万円 |
| 年間配当金 | 60万円 | 60万円 |
| 年間医療保険料 | 1万5200円 | 10万1400円 |
| 医療機関の窓口負担 | 1割 | 2割 |
保険料は年間8万6200円増加し、約6.7倍となる計算です。
増加する理由は、金融所得を含めることで所得に応じた保険料が増えることに加え、低所得者向けの保険料軽減措置も縮小されるためです。
佐藤さんのケースでは、均等割の軽減率が7割から2割へ縮小し、新たに所得割の負担も発生するものとして試算されています。
ただし、これらは動画内の試算条件に基づく金額であり、2029年の実際の保険料が確定したものではありません。
病院の窓口負担も1割から2割へ
保険料だけでなく、医療機関の窓口で支払う金額も増える可能性があります。
後期高齢者医療制度では、一定以上の所得がある人の窓口負担が2割となっています。
現行制度では、単身世帯の場合、住民税の課税所得が28万円以上で、年金収入とその他の合計所得金額が200万円以上という基準が設けられています。
佐藤さんは年金150万円に配当60万円を加えると210万円となり、動画の試算条件では2割負担の対象になります。
仮に毎月3万円分の保険診療を受ける場合、窓口負担額は1割なら3000円、2割なら6000円です。
年間では3万6000円の負担増となり、医療保険料の増加分と合わせると、年間12万2200円の負担増になると説明されています。
なお、実際の負担割合は課税所得など複数の条件で判定され、高額療養費制度による上限もあるため、全員が同じように負担増となるわけではありません。
NISAの非課税所得は対象外
今回の制度改正で重要なのが、金融所得の種類による違いです。
動画では、特定口座で受け取る配当金や、株式を売却して確定した利益が対象になる一方、保有しているだけの含み益は対象にならないと説明されています。
また、NISA口座で受け取る非課税配当金や非課税の売却益については、今回の金融所得の算定対象には含まれないとされています。
そのため、同じ株式を保有していても、特定口座とNISA口座のどちらを使うかによって、将来の医療保険料に差が生じる可能性があります。
金融所得の反映は2029年8月から!重要なのは2027年までの売却
制度改正による金融所得の反映について、厚生労働省は2026年10月16日の社会保障審議会医療保険部会で具体的なスケジュール案を提示しました。
その内容によると、最初に金融所得が反映されるのは2029年8月です。
ただし、ここで重要なのは、2029年に発生した所得ではなく、2028年1月から12月までの所得が最初の算定対象になるという点です。
厚生労働省が示したスケジュール案
- 2026~2027年:金融所得を反映する仕組みの整備期間
- 2028年1~12月:初回の保険料算定に使われる金融所得の対象期間
- 2029年1月末:2028年分の年次法定調書の提出期限
- 2029年8月:対象となる金融所得を保険料・窓口負担へ初めて反映
- 2030年8月以降:すべての対象法定調書による金融所得の反映へ拡大
出典:厚生労働省、2026年10月16日公表資料。日程は案であり、変更される可能性があります。
この日程によれば、2027年に特定口座の株式を売却して確定した利益は、2029年8月に始まる新たな情報反映の対象期間には含まれません。
一方、2028年に売却して確定した利益は、2029年8月からの保険料や窓口負担に影響する可能性があります。
そのため、動画では2027年が資産の保有方法を見直す重要な年になると指摘しています。
なお、これは2027年までの金融所得があらゆる保険料計算で無視されるという意味ではありません。確定申告した所得は現行制度でも影響する場合があります。
NISAへの買い直しが逆効果になる場合も
佐藤さんが特定口座で保有している高配当株1500万円のうち、300万円分をNISA口座で買い直すケースを考えます。
NISAの成長投資枠は年間240万円です。
そのため、300万円分を移すには少なくとも2年分の投資枠が必要になります。
問題は、どの2年間を使うかです。
例えば2027年に60万円分、2028年に240万円分を売却してNISA口座で買い直すとします。
このとき、2028年の売却で100万円の利益が確定した場合、その100万円は2028年の金融所得に含まれます。
さらに、特定口座に残る株式1200万円から年間48万円の配当金が発生すると仮定すると、計算対象となる金融所得は合計148万円です。
動画では、この場合の翌年の保険料が20万1500円となり、医療機関の窓口負担も2割になると試算されています。
一方、買い直しを1年早め、2026年に60万円分、2027年に240万円分を売却した場合はどうでしょうか。
2028年に売却益を発生させなければ、動画の前提では特定口座に残る株式からの年間配当48万円だけが計算対象になります。
この場合、保険料は7万2900円となり、窓口負担も1割のままと試算されています。
| 買い直し時期 | 2026~2027年 | 2027~2028年 |
|---|---|---|
| NISA移行額 | 300万円 | 300万円 |
| 2028年の売却益 | 0円 | 100万円 |
| 2028年の配当所得 | 48万円 | 48万円 |
| 試算上の年間保険料 | 7万2900円 | 20万1500円 |
| 窓口負担 | 1割 | 2割 |
動画によると、保険料と医療費の窓口負担を合わせて、約16万5000円の差が発生する計算です。
NISAへの移行は長期的には有利になる可能性がありますが、売却時期によっては一時的に社会保険料が増えることもあるため、注意が必要です。
NISAの活用で15年間に約97万円の負担差が生まれる可能性
今回の制度改正による影響は、1年間だけの問題ではありません。
特定口座で高配当株を長期間保有している場合、毎年の配当収入が継続的に保険料へ反映される可能性があるためです。
佐藤さんのケースでは、年間12万2200円の負担増が15年間続くと、合計で約183万円になります。
つまり、75歳から90歳までの15年間で、約180万円もの追加負担が発生する計算です。
300万円をNISAに移すとどう変わるのか
そこで、1500万円の高配当株のうち300万円分をNISA口座で保有した場合を考えます。
配当利回りが4%で変わらないと仮定すると、特定口座に残る1200万円から受け取る配当金は年間48万円になります。
年金150万円と合わせると198万円となり、動画の試算条件では窓口負担2割の判定基準を下回ります。
その結果、医療保険料は10万1400円から7万2900円に減少し、窓口負担も2割から1割に戻る計算です。
保険料の差額は年間2万8500円です。
これに、動画で想定した医療費の窓口負担差額3万6000円を加えると、年間6万4500円の負担軽減になります。
この状態が15年間続けば、合計96万7500円、約97万円の差となります。
さらに、NISA口座に移した株式の配当金は非課税となるため、所得税や住民税が軽減されるメリットも期待できます。
ただし、実際には株価や配当金、年金額、保険料率などが変動するため、この試算額が将来そのまま実現するわけではありません。
保有資産によってNISAの効果が大きく異なる
動画では、高配当株の保有額によってNISAへの移行効果が異なることも紹介されています。
年金収入が同じ150万円でも、高配当株を600万円保有しているケースでは、200万円分をNISA口座で保有することで、15年間に約40万円の負担差が生まれるとされています。
一方、高配当株の保有額が200万円の場合は、全額をNISA口座で保有しても15年間の保険料の差は約3万7500円にとどまるという試算です。
なぜ、これほど違いが生じるのでしょうか。
理由は、後期高齢者医療制度の保険料や窓口負担には、所得に応じて段階的に負担が変わる仕組みがあるためです。
特に、所得の判定基準をわずかに超えている人は、NISAへの移行によって基準を下回ることで、負担が大きく減る可能性があります。
反対に、もともと軽減措置の対象となっている人は、金融所得を減らしても負担額があまり変わらない場合があります。
つまり、NISAへの移行を検討する際には、保有株式の金額だけではなく、自分の所得が保険料や窓口負担の判定基準に対してどの位置にあるのかを確認することが重要になります。
2027年までに確認しておきたい3つの対策
今回のスケジュール案を踏まえると、75歳以上で株式を保有している人や、将来の老後資金を準備している人にとって、2027年までの期間が資産の保有方法を見直す機会になります。
動画では、具体的に3つの確認事項が紹介されています。
1. 年金収入と配当金の合計を確認する
最初に行いたいのは、現在の年金収入と特定口座で受け取っている年間配当金を把握することです。
佐藤さんの場合、年金150万円と配当60万円を合わせて210万円でした。
ここから、どれくらいの株式をNISA口座へ移せば、保険料や窓口負担が変わる可能性があるのかを検討します。
ただし、実際の判定では年金所得控除や各種所得控除、世帯構成なども関係するため、単純に年金と配当金を合計しただけでは正確な負担額は分かりません。
必要に応じて、加入している後期高齢者医療広域連合や自治体に確認することが重要です。
2. NISAの年間投資枠と残り枠を確認する
次に確認したいのが、NISAの利用可能枠です。
新NISAの成長投資枠は年間240万円で、非課税保有限度額はつみたて投資枠と合わせて1800万円、そのうち成長投資枠は1200万円までとなっています。
また、年間投資枠は翌年に繰り越せません。
そのため、300万円分の株式をNISA口座で買い直す場合、2026年に60万円、2027年に240万円というように、複数年の枠を計画的に使う方法が考えられます。
すでにNISAを利用している人は、残っている年間投資枠だけでなく、生涯の非課税保有限度額も確認する必要があります。
親がNISA口座を開設していない場合は、口座開設の手続きにも時間がかかることを考慮しておきたいところです。
3. 特定口座の売却益にかかる税金を確認する
NISAへの移行を考える際に、忘れてはいけないのが株式の売却時に発生する税金です。
特定口座で保有している株式をNISA口座へ直接移管することはできません。
原則として、いったん特定口座で売却し、その資金を使ってNISA口座で買い直す必要があります。
国内上場株式の売却益に対する税率は、原則20.315%です。
例えば、300万円分の株式を売却した際に100万円の利益が確定した場合、税額は約20万3150円になります。
つまり、売却で得た資金の全額をそのまま再投資できるわけではありません。
さらに、株価が上昇している局面で買い直せば取得できる株数が減る可能性もあります。
したがって、NISAへの移行によって毎年減少すると期待される保険料や税金と、売却時に発生する税金を比較して判断することが重要です。
なお、売却時期を決める場合は、証券会社ごとの年内受渡日にも注意が必要です。
親が75歳以上なら年金と証券口座の資料を確認
今回の制度改正は、本人だけでなく、高齢の親を持つ家族にも関係する問題です。
例えば、75歳以上の親が退職後の資産運用として高配当株や投資信託を保有し、配当金や分配金を生活費に充てているケースも考えられます。
そうした場合、現在は比較的低く抑えられている医療保険料が、今後大きく変化する可能性があります。
動画では、親の家計を確認する際には、年金の源泉徴収票と証券会社の年間取引報告書を確認することが勧められています。
これらの資料から、年金収入と金融所得の状況を把握できます。
特定口座でどれくらいの配当金を受け取っているのか、売却益が発生しているのかを確認することで、制度改正による影響を検討するための出発点になります。
また、本人が高齢で複雑な金融手続きを行うことが難しい場合には、家族と相談しながら今後の資産管理について考えておくことも重要でしょう。
制度改正を通じて考える親世代の暮らしと負担
動画の最後には、投稿者が自身の父親との思い出を振り返る場面が設けられています。
会社員として働いていた頃、人事制度の変更に納得できず、帰宅後に玄関に座り込んだ経験から、子どもの頃の父親の姿を思い出したという話です。
父親も仕事から帰宅した際、時々玄関でしばらく座り込んでいました。
当時はその理由を理解できなかったものの、自分が同じ立場になって初めて、父親も仕事で経験した苦労や悔しさを抱えていたのではないかと感じたといいます。
そして、かつて大きかった父親の手が、年月を経て小さく細くなっていたことにも気づいたそうです。
今回の金融所得と医療保険料の制度改正は、数字の問題であると同時に、長年働いてきた高齢者の生活にも関わる問題です。
家族の資産管理や医療費について、親世代と話し合うきっかけにもなるかもしれません。
【追加解説】金融所得への社会保険料反映は今後75歳未満にも広がるのか?
今回の制度改正は、まず後期高齢者医療制度を対象としています。
しかし、金融所得と社会保険料の関係は、75歳以上だけに限った問題ではありません。
厚生労働省の審議会資料でも、国民健康保険制度や介護保険制度などにおける金融所得の取り扱いについて検討を求める意見が紹介されています。
今後、対象が拡大するかどうかは現時点で確定していませんが、資産運用をしている現役世代にとっても注目すべきテーマといえます。
特に退職後に配当金や株式の売却益を生活費に充てる予定がある人は、将来の医療保険料や介護保険料の変化も考慮する必要が出てくるかもしれません。
また、今回の制度変更に関連して、金融所得に対する税金と医療保険料は別の仕組みであることも理解しておきたいところです。
金融所得に社会保険料が反映されることは、株式の売却益などにかかる所得税率が直接引き上げられることを意味するものではありません。
あくまで、公的医療保険の負担を算定する際に、金融所得を新たに反映するという制度変更です。
このため、資産運用の利益にかかる税金だけではなく、医療保険料や窓口負担も含めて、老後の手取り収入を考えることが重要になります。
まとめ|2029年の金融所得反映を見据えて2027年までに資産を点検
後期高齢者医療制度における金融所得の反映について、具体的なスケジュール案が示されました。
2026年10月16日に厚生労働省が公表した資料によれば、2028年の金融所得を2029年8月から医療保険料や窓口負担に反映する方向で準備が進められています。
これまで確定申告をせずに特定口座で受け取っていた配当金や売却益も、今後は医療保険料の計算に影響する可能性があります。
動画の試算では、年金収入150万円、配当収入60万円の高齢者の場合、年間の医療保険料が約7倍となり、窓口負担も1割から2割になるケースが紹介されました。
一方、NISAを活用して金融所得の一部を非課税口座に移すことで、15年間に約97万円の負担差が生まれる可能性も示されています。
ただし、特定口座の株式をNISA口座で買い直す際には、売却益への課税や売却時期による保険料への影響を慎重に検討する必要があります。
重要なのは、制度の開始時期だけでなく、どの年の金融所得が保険料の計算対象になるのかを理解することです。
2027年までの間に年金収入や金融所得、NISAの利用状況を確認し、必要に応じて資産の保有方法を見直すことが、将来の負担増に備えるための選択肢となるでしょう。
なお、実施スケジュールは現時点で厚生労働省が示した案であり、保険料の試算額も将来の負担を保証するものではありません。実際に資産を売却する際は、最新の制度や個別の課税関係を確認することが大切です。


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