「株価はいずれ平均に戻るのだから、最近好調だったインデックス投資は今後大きく下落するのではないか」。
長期投資をしている人であれば、一度はこうした疑問を持ったことがあるかもしれません。
今回の動画では、視聴者から寄せられた質問に答える形で、「平均回帰とインデックス投資」「高齢者と日本国債」「自動車や自宅の購入」という3つのテーマについて解説しています。
特に前半では、S&P500や全世界株式の長期リターンについて語られることの多い「平均回帰」を取り上げ、「平均回帰するなら、これから暴落する」という考え方が本当に正しいのかを掘り下げています。
「平均回帰するからインデックスは暴落する」は正しいのか
最初の質問は、投資関連の無料セミナーで聞いたという「平均回帰」についてです。
質問者は、セミナーで次のような説明を受けたといいます。
株式市場を含め、多くのものには平均回帰という現象があるため、現在大きく上昇しているオルカンなどのインデックスも例外ではなく、今後はインデックス投資以外の対策を考えることが重要だ、という内容です。
一方で、質問者には腑に落ちない部分もありました。
S&P500や全世界株式が長期的には年率6~8%程度の成長に落ち着くのであれば、直近の高いリターンを帳消しにするような大暴落がどこかで必要になるのではないか、という疑問です。
平均回帰とは何か
動画では、まず平均回帰の基本的な考え方を説明しています。
例えばS&P500や全世界株式について、長期間の平均を取ると年率7~8%程度のリターンだった、という説明を目にすることがあります。
この数字を前提に考えると、ある期間に非常に高いリターンが出たとしても、長期的には再び7~8%程度の平均値へ近づいていくのではないか、というのが平均回帰のイメージです。
そこで問題になるのが、直近のリターンです。
仮に最近10年間で年率15%程度の非常に高いリターンが出ているとします。
「長期的には7~8%に戻る」と考えると、
「それなら、どこかで大きく下落しなければ平均に戻らないのではないか」
という発想になりやすくなります。
しかし動画では、ここに注意が必要だと説明しています。
平均回帰は「必ず暴落する」という意味ではない
平均回帰という言葉から、多くの人は「平均より大幅に上にあるなら、今度は大幅に下がる」と考えがちです。
しかし、平均に近づく方法は暴落だけではありません。
例えば、これまで非常に速いペースで上昇していた株価が、その後は緩やかな上昇へ変化するケースも考えられます。
株価そのものが大きく下落しなくても、成長率が徐々に低下すれば、長期間では平均的なリターンに近づいていくことがあります。
また、大きな上昇と下落を何度も繰り返しながら、長期間で平均的なリターンへ近づいていくパターンも考えられます。
したがって、
「平均回帰が起こる」
=
「近いうちに大暴落する」
とは限りません。
平均回帰はあくまで長期間で観察される統計的な傾向であり、具体的な株価の経路まで決めるものではない、というのが動画での重要な指摘です。
「過去10年が良かったから次の10年は悪い」とも限らない
もう1つ重要なのが、時間軸です。
株式市場については、
「過去10年間のリターンが良すぎたため、今後10年間のリターンは低くなる」
という意見がしばしば聞かれます。
S&P500でも全世界株式でも、相場が大きく上昇した後にはこうした議論が出やすくなります。
しかし動画では、「平均回帰が何年間で起きるのかは決まっていない」と指摘しています。
過去10年間が好調だったとしても、次の10年間も好調になる可能性はあります。
さらに、その次の10年間も高いリターンが続き、その後ようやく平均へ近づく可能性も理論上はあります。
平均回帰が起こるとしても、それが5年後なのか、10年後なのか、50年後なのか、あるいは100年単位なのかは分かりません。
つまり、
「過去10年が良かった」
→
「次の10年は悪くなる」
という機械的な関係があるわけではない、ということです。
そもそも「平均値そのもの」が変化している可能性
動画ではさらに興味深い論点として、「平均そのものが時代によって変化しているのではないか」という考え方を取り上げています。
株式市場について、
「歴史的に年率7~8%程度だったのだから、今後もそこへ戻る」
という説明がされることがあります。
しかし、200年前の経済と現代の経済を同じ平均値で考えてよいのでしょうか。
過去200年間には産業革命があり、その後にはIT革命が起こり、現在ではAIを中心とする技術革新が進んでいます。
技術の進歩によって生産性や資本効率が高まっているのであれば、経済成長率や企業の収益性も長期的に変化している可能性があります。
そのため、100年以上前の株式市場の平均リターンをそのまま現代へ当てはめること自体に疑問がある、という考え方です。
1830年から2025年までの「50年ローリングリターン」
動画では、この考え方を検討するため、1830年から2025年まで約200年間のデータを使い、「50年ローリングリターン」を計算したとしています。
ローリングリターンとは、一定期間のリターンを開始時点をずらしながら計算する方法です。
例えば50年ローリングリターンなら、
1830年~1879年
1831年~1880年
1832年~1881年
というように、1年ずつ期間をずらしながら50年間のリターンを計算します。
当然ながら、それぞれの50年間には好景気や不況、金融危機など異なる環境が含まれるため、結果にはばらつきがあります。
好景気の期間を多く含めばリターンは高くなり、大恐慌のような深刻な不況を含む期間ではリターンが低くなることがあります。
それでも動画では、これらのデータと時代との関係を調べたところ、相関係数が0.72になったと説明しています。
相関係数は一般に1に近いほど2つのデータが同じ方向へ動く傾向が強く、0に近いほど関係が弱いことを示します。
0.72という数値から動画では、
「時代が新しくなるほど、50年間のリターンが高くなる傾向が見られた」
と説明しています。
ただし、これは動画内で紹介された計算結果であり、将来の株式リターンが必ず高くなることを意味するものではありません。
あくまで過去データから観察された傾向の1つとして捉える必要があります。
平均回帰を理由に「インデックス以外が必要」とする主張には注意
ここまでの話を整理すると、動画では平均回帰そのものを否定しているわけではありません。
ポイントは3つあります。
1つ目は、平均回帰が起きるとしても、必ず暴落によって調整されるわけではないことです。
2つ目は、平均回帰がいつ起こるかは決まっていないことです。
3つ目は、長期的な平均値そのものが時代によって変化している可能性があることです。
そのため動画では、無料セミナーで
「インデックスは平均回帰するから危険だ」
「だからインデックス以外の投資手法が必要だ」
という流れで説明されたのであれば、商品や投資手法へ誘導するための「ポジショントーク」である可能性も考えた方がよい、と指摘しています。
少なくとも、「平均回帰するから近いうちにインデックスが暴落する」と単純化するのは適切ではない、というのが動画の結論です。
高齢者は日本国債と国債投資信託のどちらを選ぶべきか
2つ目の質問は、高齢者の資産運用についてです。
質問者は、高齢者には国債がよいと言われる一方で、あと何年生きるか分からないため、満期まで保有できるとは限らず、国債の投資信託も検討しているといいます。
これに対して動画では、まず「何歳まで生きるか分からない」という考え方だけで判断しようとすると、あらゆるお金の決定ができなくなると説明しています。
何歳まで生きるか分からない。
将来何が起きるか分からない。
そう考え続けると、
「投資してよい金額はいくらなのか」
「どれだけお金を使ってよいのか」
「株式を持つべきなのか」
「国債だけにするべきなのか」
といった判断がすべてできなくなります。
最終的には、
「何が起こるか分からないのだから、お金は使わず全部残しておこう」
という結論になりかねません。
しかし、資産形成の目的は単に可能な限り長く資産を残すことだけではありません。
生活や経験のためにお金を使うことも含めて考える必要があります。
「平均寿命」ではなく「平均余命」を使って考える
では、何歳まで生きると想定すればよいのでしょうか。
動画で紹介されているのが「平均余命」です。
平均寿命と平均余命は似ていますが意味が異なります。
平均寿命は、0歳の人が平均的にあと何年生きるかを示す指標です。
一方、平均余命は「現在その年齢まで生きている人が、そこからさらに何年生きるか」を示します。
例えば動画では、50歳男性なら「あと約32年」、70歳男性なら「あと約15年」、80歳男性なら「あと約9年」といったイメージで説明しています。
すでに50歳や70歳まで生きている人の場合、若くして亡くなった人の影響が除かれるため、平均寿命を単純に差し引いた数字とは異なります。
動画では例として、60歳女性の場合、平均余命がおよそ29.07年になるとしています。
もちろん実際に何歳まで生きるかを正確に予測することはできません。
それでも、
「ひとまずこの年齢まで生きるものとして計画する」
という仮定を置くことで、必要な資産額や投資額、使えるお金について具体的に考えられるようになります。
そのうえで日本国債にするのか、国債投資信託にするのか、株式などを組み合わせるのかを検討していくべきだ、という考え方です。
車や自宅を買うことは資産形成では「悪」なのか
3つ目の質問は、自動車や自宅の購入についてです。
質問者は30代半ばで、夫婦と子どもがいる家庭です。
資産額はアッパーマス層程度まで増えているものの、資産形成の世界では、
「車を買うのは無駄」
「自宅を買うのは資産形成に不利」
と言われることが多く、どう判断すればよいか迷っているといいます。
一方で、どうしても乗りたい車があり、子どもとの生活を最大限楽しむために自宅も購入したいという希望があります。
これに対する動画の回答は非常にシンプルです。
「本当に欲しいのであれば、買えばよい」
という考え方です。
お金を増やすこと自体が人生の目的ではない
動画では、「そもそも何のためにお金を増やしてきたのか」を考えるべきだとしています。
資産額そのものを増やすことや、お金を持っていること自体が趣味であれば、使わずに持ち続ける選択もあります。
しかし、多くの人にとって資産形成は人生そのものの目的ではありません。
どうしても乗りたい車がある。
子どもと過ごす時間を充実させたい。
そのために家が必要だ。
そう考えているのであれば、
「そこにお金を使わず、何のために資産形成しているのか」
という視点も必要になります。
老後資金については10年後から準備を増やすこともできます。
しかし、子どもが現在の年齢である時間を10年後に取り戻すことはできません。
お金は後から増やせる可能性がありますが、時間は後から買い戻すことができません。
この違いは、資産形成を考えるうえで非常に重要です。
「損か得か」だけではなく「目的に合っているか」で判断する
資産形成では、どうしても損得が重視されがちです。
しかし動画では、判断基準を「損か得か」ではなく、「目的と手段が一致しているか」に置くことを勧めています。
どれほど経済的に得な選択肢でも、自分の人生の目的から外れているのであれば、選ばない。
反対に、多少経済的には不利であっても、目的を達成するために必要で、他に適切な選択肢がないのであれば選ぶ。
こうした考え方です。
もちろん、家を購入することだけが子どもとの生活を充実させる方法とは限りません。
例えば希望する条件を満たす賃貸住宅があるのであれば、賃貸という選択肢も比較できます。
庭付き住宅など、希望に近い賃貸物件を探すことも考えられます。
重要なのは、
「家を買うこと」
そのものを目的にするのではなく、
「家族との生活をどうしたいのか」
という本来の目的から考えることです。
他人の価値観で自分の人生を決めない
動画の最後では、
「資産形成のためには車を買ってはいけない」
「自宅は買わない方が得だ」
といった周囲の意見に、必要以上に振り回されないことも強調されています。
仮に車や住宅を購入した結果、資産が減ったとしても、その後また資産形成を続けることはできます。
一方で、その時期にしか経験できないこともあります。
だからこそ、資産額を最大化することだけではなく、
「自分が納得できるお金の使い方になっているか」
という視点が重要になります。
まとめ
今回の動画では、投資とお金に関する3つの質問を通じて、数字だけでは判断できない資産形成の考え方が解説されました。
まずインデックス投資の平均回帰については、「平均回帰するから近いうちに暴落する」という単純な話ではありません。
平均へ戻る方法には、暴落だけでなく、成長率が徐々に低下するケースや、上昇と下落を繰り返しながら長期間で平均に近づくケースも考えられます。
また、平均回帰が5年後なのか50年後なのかは分かりません。
さらに、経済や技術が発展している以上、そもそも長期的な平均リターンそのものが時代とともに変化している可能性もあります。
次に高齢者の資産運用では、「何歳まで生きるか分からない」という不確実性だけで考えるのではなく、平均余命などを参考に1つの前提を置き、そのうえで必要資金や投資方法を考えることが重要だとされています。
そして自動車や住宅については、「資産形成上得か損か」という数字だけではなく、自分や家族が何を実現したいのかという目的から考えることが大切です。
資産形成は、お金を可能な限り多く残すためだけに行うものではありません。
将来への備えと、現在の生活や経験。その両方をどのようにバランスさせるのか。
今回の動画は、「平均回帰」「国債」「住宅購入」という異なるテーマを扱いながら、最終的には「他人の基準ではなく、自分の目的に合わせてお金を使い、運用する」という共通した考え方につながる内容となっています。


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