金融所得が保険料に影響する時代へ
投資家にとって見逃せない制度改正が、すでに成立していたことが話題になっています。
2026年5月29日、「医療保険制度改正法」が成立しました。この改正では、後期高齢者医療制度において、上場株式などの配当や譲渡益といった金融所得を、確定申告の有無にかかわらず、保険料や医療費の窓口負担割合の判定に含める方向性が示されています。
これまで特定口座で投資をしている場合、株式や投資信託の売却益には金融所得税がかかっていました。しかし今後は、それに加えて、増えた分が所得として扱われ、健康保険料や介護保険料に影響する可能性が出てきたということです。
一方で、NISA口座については対象外とされています。つまり、同じ投資であっても、特定口座で運用しているか、NISA口座で運用しているかによって、将来的な負担が変わる可能性があります。
お金はなぜ増えるのか
動画の前半では、そもそも「お金はなぜ増えるのか」という根本的なテーマが取り上げられています。
投資でお金が増えるというと、まるでお金が自動的に増殖しているように見えるかもしれません。しかし実際には、投資された資金を使って企業が商品開発を行い、サービスを広げ、売上や利益を伸ばし、その成果の一部が投資家に返ってくるという仕組みです。
つまり、投資とは「信用」にお金を預ける行為です。
ここでいう信用とは、単に過去の実績が良かったという意味ではありません。将来も価値を生み出し続ける力があるのか、その約束を守れるのかを見極めることです。
たとえば、ある会社が過去に大きく成長したからといって、次も必ず成長するとは限りません。重要なのは、なぜ過去に成功できたのか、その成功要因が今後も再現できるのかを確認することです。
過去の実績だけで投資判断してはいけない
動画では、過去のリターンだけを見て投資を判断する危うさも指摘されています。
たとえば、あるインデックスファンドが過去に大きく上昇していたとしても、それだけで「これからも上がる」と考えるのは危険です。大切なのは、そのファンドの中身です。
どの企業が組み入れられているのか、その企業は今後どのような成長戦略を持っているのか、現在の株価は期待を織り込みすぎていないのか。こうした点を見ずに、過去の成績だけで投資を決めると、思わぬ失敗につながる可能性があります。
動画では、FANG+のような成長株中心の指数についても、過去に伸びたから今後も伸びると考えるのではなく、構成銘柄や企業の事業内容を見ることが重要だと説明されています。
新興国株式は半導体のように成長するのか
次に取り上げられたのは、新興国株式やインド株式に関する質問です。
新興国株式インデックスは、直近で高いリターンを出しているケースがあります。動画では、過去1年間で新興国株式インデックスが大きく上昇している背景として、韓国と台湾の存在が挙げられています。
特に台湾や韓国は、半導体関連企業の比重が大きい地域です。台湾にはTSMC、韓国にはサムスン電子やSKハイニックスといった世界的な半導体企業があります。これらの企業が指数全体を押し上げているため、新興国株式全体が均等に伸びているわけではありません。
ここで重要なのは、「新興国株式」という名前だけで判断しないことです。
新興国と一口に言っても、台湾、韓国、インド、中国、ブラジルなど、国ごとの経済構造は大きく異なります。半導体の成長に期待するのであれば、新興国株式全体ではなく、半導体関連銘柄や半導体比率の高い地域に投資する方が、目的に合っている場合もあります。
インド株と新興国株は同じではない
動画では、インド株についても触れられています。
インドは長期的な人口増加や経済成長が期待される国ですが、直近のリターンだけを見ると、台湾や韓国のような半導体関連国とは異なる値動きをしています。
つまり、「新興国株が伸びているからインドも伸びるはず」と単純に考えるのは危険です。
インドにはインドの成長テーマがあり、台湾や韓国には半導体という別の成長テーマがあります。同じ新興国という分類に入っていても、投資対象としての性質は大きく違うのです。
投資では、名前やカテゴリではなく、中身を見ることが何より重要です。
医療保険制度改正法で何が変わるのか
動画の中心テーマは、医療保険制度改正法による金融所得の扱いです。
今回の改正では、後期高齢者医療制度において、上場株式等の配当や譲渡益といった金融所得を、確定申告の有無にかかわらず、保険料や窓口負担割合の判定に含めるとされています。
対象となるのは、主に75歳以上の後期高齢者医療制度です。そのため、現役世代の会社員にすぐ直接影響する話ではありません。
しかし、将来的に75歳を迎えれば、多くの人がこの制度の対象になります。つまり、今は関係ないように見えても、老後の資産取り崩しや出口戦略を考えるうえでは、無視できない制度変更です。
損失が出たら保険料は下がるのか
動画では、「特定口座で損失が出た場合、社会保険料は下がるのか」という質問にも答えています。
結論として、損失が出たからといって、社会保険料が直接安くなるわけではありません。
株式や投資信託で損失が出た場合、確定申告をすることで、その損失を翌年以降3年間繰り越すことはできます。これにより、翌年以降に利益が出た場合、その利益と過去の損失を相殺できます。
ただし、年金所得や給与所得などから株式の損失を差し引いて、保険料を下げることはできません。
つまり、利益が出れば保険料に影響する可能性がある一方で、損失が出ても保険料が直接下がるわけではないという、投資家にとっては厳しい仕組みになっています。
NISA口座の重要性がさらに高まる
今回の制度改正を踏まえると、NISA口座の重要性はますます高まります。
NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。さらに今回の改正では、NISA口座の金融所得は対象外とされています。
そのため、NISA枠が余っている人は、特定口座で運用している資産を売却し、NISA口座に移すことが有力な対策になります。
もちろん、特定口座で含み益がある場合、売却すれば税金が発生します。しかし、今少し税金を払ってNISAに移すのか、それとも将来さらに利益が大きくなった段階で税金や保険料負担が増える可能性を受け入れるのか、比較して考える必要があります。
動画では、NISA枠が余っているなら、特定口座からNISAへの移行を前向きに検討すべきだと説明されています。
家族全体でNISAを活用する考え方
自分のNISA枠をすでに使い切る予定の人にとっては、特定口座で運用を続けるしかない場面もあります。
その場合、考え方の1つとして、家族全体でNISA枠を活用する方法があります。
自分だけでなく、配偶者や子どものNISA枠も含めて、世帯全体で資産形成を考えるという発想です。もちろん、家族間で資金を移す場合には贈与税などの問題もあるため、慎重な確認が必要です。
それでも、長期的に見れば、家族単位で非課税枠を活用することは、資産を守るうえで重要な選択肢になります。
制度開始前に特定口座を一度売却すべきか
動画では、特定口座で大きな含み益が出ている場合、制度開始前に一度売却して利益を確定させるべきかというテーマも扱われています。
一見すると、一度売却して税金を払い、取得価格をリセットした方が有利に見えます。取得価格が上がれば、将来の売却益が小さくなり、保険料への影響も抑えられる可能性があるからです。
しかし、実際にシミュレーションしてみると、結果はケースバイケースになります。
動画では、1000万円が2000万円に増えたケースを例にしています。1つ目はそのまま20年間定期売却するパターン、2つ目は一度2000万円を売却して税金を払い、残った1800万円を再投資して20年間取り崩すパターンです。
年利5%で運用する前提では、一度売却してリセットした方が手取りが増える結果になりました。一方、年利8%で運用する前提では、売却せずにそのまま運用を続けた方が手取りが多くなる結果になったと説明されています。
このように、利回り、居住地、保険料率、取り崩し方、年金収入などによって最適解は変わります。単純に「一度売った方が得」とは言えません。
投資の出口戦略はさらに難しくなる
今回の制度改正によって、投資の出口戦略はこれまで以上に難しくなります。
資産形成では、若い頃から積立投資を続けることがよく勧められます。しかし、老後にその資産をどう取り崩すかは、実は非常に重要です。
利益が出ている資産を売却すれば、税金だけでなく、今後は保険料や医療費負担割合にも影響する可能性があります。つまり、単に資産を増やすだけでなく、どの口座で保有するか、いつ売却するか、どの順番で取り崩すかまで考える必要があります。
特に特定口座で大きな含み益を抱えている人にとっては、老後の取り崩し設計がより重要になります。
追加解説:投資で大切なのは「中身を見る力」
今回の動画全体を通じて共通しているテーマは、「中身を見ること」です。
お金が増える仕組みも、企業やファンドの中身を見なければ理解できません。新興国株式が伸びている理由も、台湾や韓国、半導体関連企業の比率を見なければ正しく判断できません。医療保険制度改正法への対策も、特定口座とNISA口座の違いを理解しなければ判断できません。
投資では、表面的な言葉に流されやすい場面が多くあります。
「新興国株が伸びている」
「過去リターンが高い」
「長期投資なら大丈夫」
「NISAは非課税」
こうした言葉自体は間違っていなくても、具体的な中身を見ないまま判断すると、自分の状況に合わない選択をしてしまう可能性があります。
だからこそ、投資家には、制度、税金、保険料、ファンドの構成、企業の事業内容を丁寧に確認する姿勢が求められます。
まとめ
今回の動画では、投資の基本的な考え方から、新興国株式の見方、そして医療保険制度改正法による金融所得の扱いまで、幅広いテーマが解説されました。
特に重要なのは、2026年5月29日に成立した医療保険制度改正法により、後期高齢者医療制度では、将来的に金融所得が保険料や窓口負担割合の判定に含まれる可能性があるという点です。
現役世代にすぐ直接関係する話ではありませんが、75歳以降の資産取り崩しには大きく関わります。特定口座で大きな含み益を持っている人ほど、NISA口座の活用や出口戦略を早めに考える必要があります。
また、投資でお金が増えるのは、単に市場が上がるからではありません。企業やファンドの中身が価値を生み出し、その成果が投資家に返ってくるからです。
新興国株式についても、名前だけで判断するのではなく、台湾や韓国、インド、中国など、それぞれの国や構成銘柄を確認することが大切です。
今後の資産形成では、「どの商品を買うか」だけでなく、「どの口座で持つか」「いつ売るか」「老後にどう取り崩すか」まで含めて考えることが、ますます重要になっていきます。


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