東京エレクトロンとレーザーテックはどちらを長期保有すべきか?最新決算とTSMCのEUV戦略から読み解く半導体株の本質

本記事は、YouTube動画『東京エレクトロンとレーザーテック 最新決算を踏まえて今どちらを長期保有すべきか』の内容を基に構成しています。

目次

導入:半導体株は「AI需要」だけで判断してはいけない

半導体関連株は、AIブームの中心にある投資テーマとして、引き続き多くの投資家から注目されています。

特に日本株では、東京エレクトロンとレーザーテックは代表的な半導体製造装置関連銘柄として知られています。どちらも最先端半導体の製造に深く関わる企業であり、長期成長を期待する投資家にとっては非常に魅力的な存在です。

しかし、今回の動画で強調されているのは、単純に「EUVが伸びるからレーザーテックが強い」「半導体需要が伸びるから東京エレクトロンも買い」という単純な話ではありません。

むしろ重要なのは、世界最大級の半導体受託製造企業であるTSMCが、次世代プロセスにおいてどの技術を選び、どの技術を先送りするのかという点です。この判断によって、東京エレクトロンとレーザーテックにはまったく異なる影響が出る可能性があります。

背景説明:TSMCがHigh-NA EUVを当面使わないという衝撃

今回の分析の出発点になっているのは、TSMCが2029年までの技術ロードマップにおいて、次世代のA13、A12プロセスでHigh-NA EUVを当面使わない方針を示したという点です。

High-NA EUVとは、従来のEUVよりもさらに微細な回路を描くための次世代露光装置です。1台あたり約630億円ともいわれる非常に高額な装置で、オランダのASMLが独占的に供給しています。

これまで市場では、「High-NA EUVが普及すれば、それに対応する検査装置を持つレーザーテックが大きく伸びる」という期待がありました。レーザーテックはEUV用フォトマスク検査装置で非常に強い立場にあり、最先端半導体の進化とともに成長する企業と見られてきたためです。

しかし、TSMCがHigh-NA EUVの導入を急がず、既存のLow-NA EUVを使い続ける方針を示したことで、投資家が前提としていた成長シナリオに変化が出てきました。

ここで重要になるのが、東京エレクトロンです。

東京エレクトロンの最新決算から見える強さ

東京エレクトロンの2026年3月期決算では、売上高は約2兆435億円、営業利益は6249億円とされています。売上は前年とほぼ横ばいで、営業利益は前年比で10%を超える減益となりました。

この数字だけを見ると、成長が鈍化しているように見えるかもしれません。

しかし、動画では次の期である2027年3月期上半期予想に注目しています。売上高は1兆5700億円、前年同期比で33%増、営業利益は4310億円、前年同期比で42%増という非常に強い見通しが示されています。

これは単なる回復ではなく、大きな成長再加速を示す数字です。

その背景にあるのが、TSMCによるLow-NA EUV継続方針です。

High-NA EUVを使わずに微細化を進める場合、マルチパターニングという技術が重要になります。これは、1回の露光で描けない微細な回路を、2回、3回と重ねて形成していく方法です。

この回数が増えるほど、東京エレクトロンが強みを持つコータ・デベロッパの需要が増えます。

コータ・デベロッパとは、半導体のウェハにフォトレジストという感光剤を塗り、露光後に現像するための装置です。東京エレクトロンはこの分野で世界シェア約89%を握っているとされ、事実上の独占に近い立場にあります。

つまり、TSMCがHigh-NA EUVを先送りし、Low-NA EUVでマルチパターニングを続けるほど、東京エレクトロンの装置が使われる機会は増えるという構図です。

東京エレクトロンのリスクは中国依存と高バリュエーション

一方で、東京エレクトロンにも大きなリスクがあります。

動画で特に指摘されているのは、中国向け売上の比率です。東京エレクトロンの売上のうち、約35%から40%が中国向けとされています。

もし米国による対中半導体製造装置の輸出規制がさらに強化されれば、東京エレクトロンの売上に大きな影響が出る可能性があります。

また、株価面でも注意が必要です。決算発表前の段階で、東京エレクトロンの株価は高値圏まで買われており、予想PERは32倍を超えていたとされています。

業績見通しが強いことと、今の株価で買って報われるかどうかは別問題です。好決算でも、すでに期待が株価に織り込まれていれば、機関投資家による「事実売り」が出る可能性があります。

そのため、東京エレクトロンは事業基盤の強さがある一方で、買うタイミングには慎重さが求められる銘柄だといえます。

レーザーテックの最新決算は一見堅調でも中身に注意

次にレーザーテックです。

レーザーテックの2026年6月期第3四半期累計決算では、売上高は1695億円、前年同期比で0.4%増、営業利益は781億円、前年同期比で1.4%減とされています。

数字だけを見ると、大きく崩れているわけではありません。

しかし、動画では利益率の低下に注目しています。かつて62%を超えていた粗利率が、今期第3四半期単体では55%まで低下しているとされています。

これは、製品構成が悪化している可能性を示します。

特に利益率の高い新規の半導体検査装置の売上が減少し、その一方で既存装置のメンテナンスや修理などのサービス売上が伸びている構図です。

サービス売上が伸びること自体は悪いことではありません。安定収益につながるからです。

しかし、新規装置の販売が伸びず、相対的に利益率の低いサービスで補っている状態であれば、企業全体の収益性は下がりやすくなります。

レーザーテック最大の注目点は1195億円の仕掛け品

今回の動画で最も重要なポイントとして取り上げられていたのが、レーザーテックの棚卸資産です。

2026年3月末時点で、レーザーテックの棚卸資産は合計1644億円。そのうち、仕掛け品が1195億円に膨らんでいるとされています。

仕掛け品とは、製造途中でまだ売上として計上されていない製品のことです。

レーザーテックの装置は非常に高額であり、顧客の工場に搬入され、検収が完了して初めて売上として計上されます。つまり、製品が完成していても、顧客側で検収が終わらなければ売上にはなりません。

この仕掛け品が増えること自体は、必ずしも異常ではありません。

ただし問題は、TSMCがHigh-NA EUVの導入を急がない方針を示したことです。もし顧客側の投資計画が遅れたり、技術ロードマップが変更されたりすれば、検収が半年、あるいは1年単位で遅れる可能性があります。

そうなると、1195億円もの仕掛け品がキャッシュフローを圧迫するリスクがあります。

企業は黒字でも、現金回収が遅れれば資金繰りが苦しくなります。動画では、今後レーザーテックを見るうえで、棚卸資産の動向が最重要KPIになると指摘されています。

レーザーテックの反撃材料はA200 HIT

ただし、レーザーテックにも反撃材料があります。

それが、ACTIS A200 HITシリーズです。

A200 HITは、従来機と比較して検査スループット、つまり処理速度が大きく向上した製品とされています。特に量産ラインでの受け入れ検査や品質保証に向いている装置です。

TSMCがHigh-NA EUVを使わず、Low-NA EUVでマルチパターニングを続ける場合、同じマスクを何度も使うことになります。

マスクの使用回数が増えれば、微細なホコリや欠陥がチップ不良につながるリスクも高まります。そのため、量産現場では高速かつ高感度なマスク検査装置の需要が高まりやすくなります。

つまり、High-NA EUV対応装置の需要が遅れても、Low-NA EUV環境での量産向け検査需要をA200 HITで取りに行ける可能性があるということです。

ここがレーザーテックの防御戦略であり、今後の成長シナリオの鍵になります。

東京エレクトロンとレーザーテックの本質的な違い

東京エレクトロンとレーザーテックは、どちらも半導体製造装置関連株ですが、投資対象としての性格は大きく異なります。

東京エレクトロンは、半導体製造工程のインフラを押さえる企業です。半導体がどれだけ進化しても、ウェハに材料を塗り、露光し、現像するという基本工程はなくなりません。

その中でもコータ・デベロッパで世界シェア約89%という圧倒的な地位を持っていることは、長期投資家にとって大きな安心材料です。

一方、レーザーテックは最先端技術に特化した企業です。High-NA EUVが本格普及すれば、同社の検査装置需要が大きく伸びる可能性があります。

しかし、そのタイミングが遅れる場合、期待先行で買われていた分だけ株価が不安定になりやすいというリスクがあります。

つまり、東京エレクトロンは「製造工程の王者」、レーザーテックは「最先端技術の先鋒」と表現できます。

長期投資家はどちらを見るべきか

長期投資家として考える場合、東京エレクトロンは比較的安定した事業基盤を持つ一方で、中国向け売上比率とバリュエーションの高さに注意が必要です。

業績の回復見通しは強いものの、すでに株価に織り込まれている部分もあるため、高値で飛びつくと短期的な調整に巻き込まれる可能性があります。

一方、レーザーテックは上昇余地も大きい反面、リスクも大きい銘柄です。

A200 HITの受注拡大や仕掛け品の検収完了が進めば、業績が一気に改善し、株価が大きく反発する可能性があります。

しかし、High-NA EUV関連需要の立ち上がりが遅れ、仕掛け品が積み上がったままになれば、キャッシュフローや利益率への懸念が強まる可能性があります。

そのため、レーザーテックについては、今すぐ強気で判断するというより、四半期ごとに棚卸資産、仕掛け品、受注、粗利率を確認しながら慎重に見ていく必要があります。

追加解説:AI半導体ブームの裏側を見る重要性

AI需要が拡大していること自体は、半導体業界にとって大きな追い風です。

しかし、投資で重要なのは「半導体全体が伸びる」という大きなストーリーだけではありません。

どの工程が伸びるのか、どの装置が必要になるのか、どの企業に利益が流れるのかを見極める必要があります。

今回のTSMCの判断は、その典型例です。

一見すると、High-NA EUVの導入先送りは、半導体装置業界全体にとってネガティブに見えます。しかし実際には、Low-NA EUVでマルチパターニングを続けることで、東京エレクトロンには追い風になる可能性があります。

一方で、High-NA EUV本格普及を前提に期待されていたレーザーテックには、タイミングの遅れという逆風が生じます。

同じ半導体関連株でも、技術ロードマップの変化によって、受ける影響はまったく違うのです。

まとめ:東京エレクトロンは安定感、レーザーテックは確認待ちの局面

今回の動画で最も重要なポイントは、TSMCのHigh-NA EUV見送りが、東京エレクトロンとレーザーテックに正反対の影響を与える可能性があるという点です。

東京エレクトロンは、Low-NA EUVによるマルチパターニング継続によって、コータ・デベロッパ需要の増加が期待されます。世界シェア約89%という強力な事業基盤もあり、長期的には非常に強い企業といえます。

ただし、中国向け売上比率の高さと、株価バリュエーションの高さには注意が必要です。

一方、レーザーテックは、EUVマスク検査という独占的な技術を持つ魅力的な企業です。しかし、High-NA EUV需要の立ち上がりが遅れる可能性があり、1195億円の仕掛け品が今後の大きな注目点になります。

今後は、A200 HITの受注状況、仕掛け品の検収進捗、粗利率の改善、営業キャッシュフローの推移を丁寧に確認する必要があります。

結論として、安定した事業基盤を重視するなら東京エレクトロン、技術革新による大きな成長余地を狙うならレーザーテックという見方ができます。

ただし、どちらも半導体サイクルや規制リスクの影響を受けやすい銘柄です。長期保有を考える場合は、単なる話題性やAIブームだけで判断せず、それぞれのリスク構造を理解したうえで向き合うことが重要です。

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