本記事は、YouTube動画『5年に1度の買い場。国策で過去最高受注なのに40%暴落の売られすぎ最強銘柄』の内容を基に構成しています。
業績好調なのに株価が大きく下がるIHIの不思議
IHIという企業は、かつては造船や橋梁のイメージが強い会社でした。しかし現在のIHIは、単なる重工業メーカーではありません。
航空機エンジン、防衛関連の推進システム、宇宙ロケット、そして次世代エネルギーとして注目されるアンモニア燃焼技術まで手がける、いわば「燃焼と推進」の技術に特化した企業です。
ところが、そのIHIの株価は、高値から一時40%近く下落しました。しかも、業績は回復し、受注残高は過去最高水準にあります。
普通に考えれば、業績が良く、国策の追い風もあり、将来性もある企業の株価は上がりそうなものです。しかし実際には、株価は大きく売られています。
この背景には、航空エンジン問題、機関投資家の売り、円高リスク、そして市場心理の悪化が複雑に絡み合っています。
IHIとはどんな会社なのか
IHIを一言で表すなら、現在は「エネルギーの形を変える会社」といえます。
飛行機のエンジン、防衛用ミサイルの推進システム、宇宙ロケット、アンモニア燃料を使うガスタービンなど、一見するとバラバラに見える事業を展開しています。
しかし、これらの根底には共通点があります。それは、限られた空間で燃料を燃焼させ、そのエネルギーを推進力や回転力に変える技術です。
つまりIHIの強みは、「燃焼」と「推進」という分野に深く集中している点にあります。
この技術の蓄積があるからこそ、IHIは航空エンジンだけでなく、防衛、宇宙、次世代エネルギー分野でも存在感を高めています。
なぜ業績好調なのに株価は40%近く下落したのか
動画では、IHIの2025年3月期決算について、売上収益が前年から23%増の1兆628億円、営業利益が1435億円まで回復したと説明されています。
さらに受注残高も過去最高水準にあるとされ、数字だけを見ると非常に好調です。
しかし株価は、高値4698円から安値2811円まで下落し、最大で40%近い下げとなりました。
この大きなズレを生んだ要因として、動画では主に3つのポイントが挙げられています。
P&W製エンジン問題への不安
最大の懸念は、P&W製エンジン問題です。
IHIは、エアバスA320neo型機に搭載されるPW1100G-JMエンジンの共同開発パートナーです。このエンジンに金属粉末の製造工程に起因する問題が見つかり、世界的に大規模な追加検査が必要になりました。
IHIはすでに関連損失を計上していますが、市場が恐れているのは「本当にこれで損失が終わるのか」という点です。
さらに、エアバスとP&Wの対立が深まれば、共同開発パートナーであるIHIにも追加負担が発生する可能性があります。
この不確実性が、株価の重しになっています。
機関投資家による売り
2つ目は、機関投資家の売りです。
動画では、米国の大手運用会社キャピタル・リサーチ・アンド・マネージメントがIHIの保有比率を引き下げたことが紹介されています。
大口投資家が売却すると、市場では「プロが売り始めた」と受け止められやすくなります。その結果、他の投資家も不安になり、売りが売りを呼ぶ展開になりやすいのです。
円高リスクへの警戒
3つ目は為替です。
IHIの航空エンジン事業はドル建て取引が多いため、円高が進むと円換算後の利益が減りやすくなります。
そのため、円高が進む局面では「将来の利益が減るのではないか」という見方から株価が売られやすくなります。
ただし動画では、P&W問題に伴う支払いもドル建てであるため、円高になると円ベースの負担が軽くなる面もあると説明されています。
つまり、市場は円高のマイナス面だけを強く見すぎている可能性がある、という見方です。
受給の歪みが株価下落を加速させている
株価は業績だけで動くわけではありません。
誰が売っているのか、誰が買っているのかという「受給」も非常に重要です。
IHIの場合、大口投資家や外国人投資家の売りが株価の下落圧力になっています。一方で、株価が大きく下がったことで、個人投資家が「さすがに安い」と考えて買い向かう動きも出ていると考えられます。
しかし、株価がさらに下がると、個人投資家の買いポジションは含み損を抱えます。その後、株価が少し戻ったところで「やっと元値に近づいたから売ろう」という動きが出やすくなります。
これが、反発を鈍らせる要因になります。
ただし、この「しこり玉」の話は市場心理に基づく推測であり、確定的なデータではありません。動画でも、この点については慎重に説明されています。
IHIの本当の強みは航空・宇宙・防衛にある
IHIの成長を支える柱は、航空宇宙防衛分野です。
特に航空エンジン事業では、エンジン本体を売るだけでなく、その後の整備・修理・オーバーホール、いわゆるMRO事業で継続的に収益を得る構造があります。
これは、カミソリ本体を安く売り、替え刃で継続的に稼ぐビジネスモデルに似ています。
一度エンジンを納入すれば、そのエンジンのライフサイクル全体を通じて整備需要が発生します。そのため、エンジンが普及すればするほど、将来の安定収益が積み上がっていくのです。
動画では、IHIが民間エンジン整備事業で2030年代に売上6000億円を目指していることも紹介されています。
防衛費増額という国策の追い風
IHIには、防衛分野でも大きな追い風があります。
日本政府は防衛費をGDP比2%程度まで増やす方針を進めています。防衛関連の支出が増えれば、ミサイル、戦闘機、エンジン、宇宙関連技術を持つ企業には受注機会が広がります。
IHIは、日本・英国・イタリアの3カ国による次期戦闘機開発計画「GCAP」において、エンジン開発を主導する企業の1つとされています。
戦闘機のエンジンは、開発して終わりではありません。配備後も整備や交換が長期間続くため、一度受注すれば数十年単位の収益につながる可能性があります。
この点は、IHIの長期的な収益基盤として非常に重要です。
アンモニア燃焼技術という次世代の成長エンジン
動画で特に強調されているのが、IHIのアンモニア燃焼技術です。
脱炭素の流れの中で、水素が注目されています。しかし水素は軽く、取り扱いや輸送が難しいという課題があります。
一方、アンモニアは水素と窒素で構成され、燃焼してもCO2を出しません。また、比較的貯蔵や輸送がしやすいという特徴があります。
そのため、既存の火力発電所を脱炭素化する燃料として期待されています。
ただし、アンモニアは燃えにくく、燃焼時に温室効果の高い亜酸化窒素が発生する問題がありました。
IHIはこの難題に取り組み、アンモニア100%燃焼や、亜酸化窒素の排出を抑える技術の実証に成功していると動画では説明されています。
この技術は、IHIが長年積み上げてきた航空エンジンの燃焼制御技術があるからこそ実現できたものです。
IHIに投資するうえで注意すべきリスク
一方で、IHIには明確なリスクもあります。
最大のリスクは、P&W製エンジン問題の長期化です。もし追加負担が発生すれば、現在の業績見通しに悪影響を与える可能性があります。
また、円高が急速に進めば、航空エンジン事業の収益にマイナスとなる可能性があります。
さらに、GCAPのような国際共同開発プロジェクトは、各国の政治状況や財政事情によって遅延するリスクもあります。
アンモニア技術についても、実証段階から本格的な商用化へ進めるかどうかは、今後の重要な確認ポイントです。
IHIの強み・弱み・機会・脅威を整理する
IHIの強みは、燃焼と推進に特化した技術力です。航空エンジン、防衛、宇宙、アンモニア燃焼という複数の成長分野に展開できる点は大きな魅力です。
一方で弱みは、P&W問題の不確実性と為替影響の大きさです。また、配当利回りが高いタイプの銘柄ではないため、配当を受け取りながら長く待つという投資スタイルにはやや向きにくい面もあります。
機会としては、防衛費増額、MRO事業の拡大、アンモニア燃焼の商用化、GCAPの進展があります。
脅威としては、エンジン問題の追加損失、円高、国際プロジェクトの遅延、三菱重工業や川崎重工業など競合の追い上げが挙げられます。
今後の株価シナリオ
動画では、IHIには上昇シナリオと下落シナリオの両方があると説明されています。
上昇シナリオとしては、アンモニア燃焼プラントの初受注、MRO売上の本格回復、増配や自社株買いの発表などが考えられます。
これらが実現すれば、市場はIHIを単なる重工業株ではなく、防衛・宇宙・次世代エネルギーを担う成長企業として再評価する可能性があります。
一方で、P&W問題の新たな悪材料や急激な円高が重なれば、株価がさらに下落する可能性もあります。
そのため、投資する場合は一度に大きな資金を入れるのではなく、複数回に分けて様子を見ながら投資する方法が合理的だと考えられます。
まとめ:IHIは過去の不安と未来の成長が交差する銘柄
IHIは、業績が回復し、受注も好調でありながら、株価は大きく下落しています。
その背景には、P&W製エンジン問題、機関投資家の売り、円高リスク、受給の悪化といった複数の要因があります。
しかし一方で、IHIには航空エンジンのMRO、防衛費増額、GCAP、宇宙分野、アンモニア燃焼技術といった長期的な成長材料もあります。
現在のIHIは、過去の不安によって売られている一方で、未来の成長可能性がまだ十分に株価へ反映されていない可能性があります。
ただし、投資において重要なのは「安そうに見えるから買う」ことではありません。どのリスクを許容できるのか、どの期間で投資するのか、どのタイミングで資金を入れるのかを冷静に考えることです。
IHIは、単なる重工業株ではなく、日本の空、宇宙、防衛、次世代エネルギーを支える重要企業です。
だからこそ、表面的な株価下落だけを見るのではなく、その裏にある事業構造とリスクを丁寧に見極めることが大切です。


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