本記事は、YouTube動画『【米イラン戦争が長期化】過去最大級の供給途絶へ?原油価格の今後と投資戦略をデータ解説』の内容を基に構成しています。
米国とイランの対立が長期化するなか、原油市場では過去最大級ともいえる供給途絶への警戒が高まっています。
特に重要なのが、中東から世界へ原油を送り出す主要ルートであるホルムズ海峡の状況です。海峡を通過するタンカーが大幅に減少すれば、原油そのものが不足するだけでなく、輸送費や保険料も上昇し、世界のエネルギー価格に大きな影響を与えます。
一方で、原油価格が上昇すれば需要が減少し、米国のシェールオイルなどの供給が増える可能性もあります。そのため、「戦争が続けば原油価格は際限なく上がる」と単純に考えることもできません。
動画では、現在の原油市場を供給、需要、在庫、生産能力の4つの側面から整理し、今後想定される原油価格の3つのシナリオと投資戦略について解説しています。
米イラン戦争で原油市場は過去最大級の供給途絶へ
現在の原油市場を理解するうえで最も重要なのが、「供給がどれだけ失われているのか」という点です。
動画では、米国とイランの軍事的な対立によってホルムズ海峡の通航が大きく制限され、累計で約26億バレルの原油供給が失われたと説明しています。
これは世界の石油需要に換算すると、およそ25日分に相当します。
つまり、世界全体で使用する原油約1か月分が市場から失われた計算になります。
さらに現在も1日あたり約500万バレル規模の供給不足が発生しているとされており、その不足分を各国の戦略備蓄や民間在庫から取り崩すことで補っている状況です。
原油市場では需要の増減も重要ですが、短期間の価格変動では供給の変化が極めて大きな影響を与えます。
油田や輸送ルートが止まれば、需要が同じでも市場に出てくる原油そのものが減少します。そのため、供給障害が長期化すれば価格が上昇しやすくなります。
各国の戦略石油備蓄が減少している
供給不足を補っているのが、各国が保有する戦略石油備蓄です。
国際エネルギー機関(IEA)加盟国では、すでに大規模な備蓄放出が行われています。
動画によると、3月には約4億バレルの備蓄が放出され、実際に追加放出できる政府備蓄は約9億バレル程度まで減少しているとされています。
さらに米国の戦略石油備蓄についても、かなり厳しい状況にあると説明されています。
米国の備蓄量は1983年以来の低水準にあり、施設の老朽化によって約1億バレルは実際には利用できない可能性があるとされています。
そのため、実質的に利用できる備蓄は約2億バレル程度しかなく、現在の供給不足を基準にすると約40日分に相当するとの見方もあります。
備蓄は供給不足を一時的に補うことはできますが、永続的に使えるわけではありません。
しかも、放出した備蓄はいずれ補充する必要があります。しかし原油供給が不足している状況では、その補充も容易ではありません。
そのため、供給障害が長引くほど各国の政策余力は小さくなっていきます。
ディーゼルや航空燃料の在庫も低水準
問題は原油そのものだけではありません。
原油を精製して作られるディーゼル燃料や航空燃料の在庫も減少しています。
動画では、中東やロシアの製油所が攻撃や設備被害によって停止していることに加え、ディーゼルや航空燃料の在庫が過去5年間で最低水準に近づいていると指摘しています。
特にディーゼル燃料は物流や産業活動に欠かせません。
トラック輸送、建設機械、農業機械など幅広い用途で使われるため、ディーゼル価格が上昇すると企業の物流コストや生産コストにも波及します。
結果として、エネルギー価格の上昇がインフレを再び押し上げる可能性もあります。
中国や日本にも備蓄はあるが実態は不透明
中国や日本などのアジア諸国も大量の石油備蓄を保有しています。
動画では、中国などを含めて10億~17億バレル程度の備蓄がある可能性があり、輸入量の約1年分に相当する可能性もあると説明しています。
ただし、これらの在庫については正確な統計が公表されていないケースもあり、実際にどれだけ市場に供給できるのかは不透明です。
そのため、「世界にはまだ大量の在庫があるから問題ない」と単純に判断することは難しい状況です。
原油需要はむしろ減少する可能性
一方、原油価格を押し下げる材料もあります。
それが世界の石油需要の減少です。
動画では、国際エネルギー機関(IEA)の2026年8月時点の見通しとして、世界の石油需要が前年比で1日あたり約160万バレル減少する可能性があると紹介しています。
さらに、第2四半期では約490万バレル、第3四半期では約280万バレル減少する見通しが示されていると説明しています。
世界の石油需要は通常、経済成長や人口増加によって毎年増加する傾向があります。
大幅に需要が減少した代表的なケースは、2008年のリーマン・ショックや2020年の新型コロナウイルス危機などです。
そのため、需要減少の予測が出ていること自体が原油市場にとっては大きな変化です。
OPECも石油需要の増加予測を複数回下方修正しており、「今後も世界の石油需要が増え続けるのか」という疑問が強まっています。
原油価格が上がると需要が減る
原油市場には価格上昇を抑える仕組みもあります。
原油価格が上昇するとガソリンやディーゼルの価格も上昇します。
すると消費者や企業はエネルギー使用を減らそうとします。
例えばガソリン価格が大幅に上昇すれば、自動車での旅行を控えたり、公共交通機関を利用したりする人が増える可能性があります。
物流企業も燃料コストを抑えるため、配送効率を改善したり輸送量を減らしたりするでしょう。
このように価格上昇によって需要が減少する現象は「需要破壊」と呼ばれることがあります。
需要が減れば原油の需給バランスが改善し、価格上昇が抑えられる可能性があります。
そのため、供給不足が起きているからといって原油価格が永遠に上昇するわけではありません。
米国シェールオイルは供給を増やせるのか
もう1つの重要な要素が米国のシェールオイルです。
米国では約10数年前からシェール革命が進み、現在では世界最大級の産油国となっています。
原油価格が1バレル80~90ドル程度まで上昇すると、多くのシェール企業の採算性が改善します。
利益が増えれば、新しい油井を掘削したり設備投資を増やしたりすることで生産量を増加させることができます。
つまり、原油価格が上昇すると新たな供給が増え、価格上昇を抑える可能性があります。
ただし、動画では米国のシェールオイル生産にも限界が見え始めていると指摘しています。
優良な油田はすでに多く開発されており、生産量をこれまでのように急速に増やすことが難しくなっている可能性があります。
そのため、「原油価格が上がれば米国がすぐに増産して解決する」と考えるのも楽観的すぎる可能性があります。
原油価格を左右する4つの重要材料
現在の原油市場では、上昇材料と下落材料が同時に存在しています。
特に重要なのは、供給リスク、需要見通し、在庫、生産能力です。
供給面では、ホルムズ海峡の通航状況やイランの生産能力低下が原油価格の上昇要因になります。
一方、世界の需要減少や米国シェールオイルの増産は価格の下落要因になります。
OPECプラスにも増産余力があるとされていますが、実際にどこまで生産を増やせるのかについては不透明な部分があります。
こうした複数の要因を同時に判断する必要があるため、現在の原油市場は非常に予測が難しい状況になっています。
最重要ポイントはホルムズ海峡
動画で最も重要なポイントとして挙げられているのがホルムズ海峡です。
ホルムズ海峡はペルシャ湾とインド洋を結ぶ重要な海上輸送ルートで、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、UAEなどの原油輸出に利用されています。
そのため、ここを通過するタンカーが減少すると世界の原油供給に直接影響します。
現在は完全にすべての船舶が通れない状態ではないものの、通航量は通常より大幅に少ないとされています。
さらにタンカー会社にとっては軍事衝突のリスクがあるため、保険料や輸送費も上昇します。
つまり、原油そのものが不足するだけでなく、「原油を運ぶコスト」も上昇することになります。
米国とイランの主張は大きく食い違っている
原油市場の先行きを不透明にしているのが、米国とイランの政治的な対立です。
動画では、米国側がホルムズ海峡の管理や経済制裁、賠償問題などについて強硬な姿勢を示している一方、イラン側も反発していると説明しています。
米国にとって原油価格上昇は望ましい状況ではありません。
原油価格が上がればガソリン価格も上昇し、米国の消費者負担が増えます。
さらにインフレ率が上昇すれば、金融政策にも影響を与える可能性があります。
そのため米政権としては原油価格を安定させたいという動機がありますが、外交交渉が進まなければ結果として供給不安が続き、原油価格が高止まりする可能性があります。
政治家の発言より実際の供給データを見る
原油市場を見るうえでは、政治家の発言だけを材料に判断しないことも重要です。
動画では、トランプ大統領などの発言よりも「実際にどれだけ原油が供給されているのか」を確認することが重要だと指摘しています。
例えばホルムズ海峡を通過するタンカーの数、各国の原油生産量、輸出量などを確認することで実際の供給状況が分かります。
需要面では、米エネルギー情報局(EIA)が毎週発表している原油在庫統計などが参考になります。
在庫が急激に減少している場合は供給不足の可能性があります。
逆に在庫が増加していれば、需要が弱くなっている可能性もあります。
現在の原油価格は80ドル台
動画では、ブレント原油とWTI原油が80ドル台で推移している状況についても解説しています。
一時的にはブレント原油が1バレル118ドル付近まで上昇したものの、その後は80ドル台まで下落しています。
これは決して安い価格ではありませんが、深刻な供給危機を完全に織り込んだ価格とも言いにくい水準です。
もし市場が「中東からの原油供給が完全に止まる」と判断しているのであれば、原油価格は100ドルを大きく上回っている可能性があります。
つまり現在の市場は、「供給は減っているが、備蓄や代替ルートなどで何とか対応できる」と考えている可能性があります。
ただし動画では、この見方についてはやや楽観的ではないかと指摘しています。
ホルムズ海峡が止まっても世界の原油供給がゼロになるわけではない
ホルムズ海峡が封鎖されたとしても、世界の原油供給が完全に停止するわけではありません。
一部の産油国ではパイプラインなどを利用して別ルートから原油を輸出することができます。
例えば紅海側や地中海側へ原油を輸送するルートなどが利用される可能性があります。
しかし、ホルムズ海峡を通る原油の量は非常に大きいため、完全な代替は難しいと考えられます。
そのため、海峡の通航が制限されている間は原油供給が減少し、価格も下がりにくい状態が続く可能性があります。
原油価格の今後を3つのシナリオで考える
動画では、今後の原油価格について3つのシナリオを想定しています。
シナリオA:外交合意で70ドル台へ
1つ目は、米国とイランが何らかの外交合意に達するケースです。
停戦や通航再開が進めば、中東からの原油供給が回復します。
その場合、地政学リスクによって上乗せされていた価格が低下し、原油価格が70ドル台まで下落する可能性があります。
ただし動画では、このシナリオについては「希望的観測に近い」としています。
両国の主張が大きく食い違っているため、簡単に問題が解決するとは考えにくいからです。
シナリオB:緊張長期化で80~100ドル
動画で最も現実的と考えられているのが、緊張状態が長期化するシナリオです。
ホルムズ海峡が完全封鎖されるわけではないものの、タンカーの通航量が少ない状態が続きます。
さらに輸送保険料や運賃が上昇し、各国の石油在庫も減少します。
この場合、原油価格は80~100ドル程度の高値圏で推移する可能性があります。
動画では、このシナリオの可能性が最も高いとしています。
シナリオC:ホルムズ海峡完全封鎖で120ドル超も
最も深刻なのがホルムズ海峡の完全封鎖です。
この場合、原油だけでなくLNGなどのエネルギー輸送にも大きな影響が出ます。
供給不足が急激に深刻化するため、原油価格が100ドルを突破し、120ドル、場合によってはそれ以上まで上昇する可能性もあると動画では指摘しています。
このシナリオは世界経済にも大きな影響を与える可能性があります。
エネルギー価格上昇によってインフレが加速し、企業収益や個人消費にも悪影響が出るためです。
原油投資で確認すべき指標
原油市場を判断する際には、いくつかの重要な指標があります。
特に動画で挙げられているのが、ホルムズ海峡の船舶通航量、米国の原油在庫、OPECプラスの生産量、ブレント原油とWTI原油の価格差です。
世界の原油価格の代表的なベンチマークはブレント原油です。
そのため、ブレント原油価格がWTI以上に急上昇している場合、中東や欧州を中心とした供給不安が強まっている可能性があります。
また、原油先物の価格構造も重要です。
将来の原油価格よりも直近の原油価格が高い「バックワーデーション」が強くなる場合、現物原油への需要が高まり、短期的な供給不足が発生している可能性があります。
原油投資は「買って放置」ではなく短期対応
現在の原油市場では価格変動が非常に大きいため、動画では極端な買いポジションを長期間保有することには慎重な姿勢を示しています。
原油価格は供給不安によって上昇する可能性がありますが、停戦や外交合意が発表されれば短期間で急落する可能性もあります。
そのため、現在のような環境では「原油は必ず上がる」と考えて大量に購入し、そのまま放置する戦略はリスクが高いとしています。
むしろ価格が下落した場面で買い、反発したところで利益を確定するなど、短期的な取引の方が適している可能性があります。
ゴールドや防衛株との分散も重要
原油だけに投資資金を集中させるのではなく、他の資産に分散することも重要です。
動画では、ゴールドや防衛関連株などとの分散を検討する方法が紹介されています。
地政学リスクが高まる局面では、原油、金、防衛関連株などが上昇することがあります。
ただし、それぞれ値動きの要因は異なります。
複数の資産に分散することで、特定の市場が急落した場合のリスクを抑えやすくなります。
原油市場で最も重要なのは需要より供給
動画の最後で強調されているのが、「原油市場では需要よりも供給を見る」という考え方です。
原油の需要は通常、短期間では大きく変化しません。
しかし供給は戦争、制裁、油田事故、パイプライン停止などによって突然減少することがあります。
動画ではこれを「蛇口」に例えています。
供給の蛇口が開いていれば市場には原油が流れ続けますが、蛇口が閉じれば突然原油が不足します。
そのため原油市場を分析するときは、ホルムズ海峡、OPECの生産量、米国シェールオイル、各国の備蓄など、供給サイドのニュースを特に重視する必要があります。
まとめ
米国とイランの対立が長期化するなか、世界の原油市場では供給不足への警戒が高まっています。
特に重要なのはホルムズ海峡の状況です。
現在は完全に原油輸送が停止しているわけではありませんが、タンカーの通航量が大幅に減少しており、各国は戦略石油備蓄を取り崩して不足分を補っています。
一方で、原油価格上昇による需要減少や、米国シェールオイル、OPECプラスの増産など、価格を押し下げる要因もあります。
今後の原油価格について動画では、外交合意なら70ドル台、緊張長期化なら80~100ドル、ホルムズ海峡の完全封鎖なら120ドル超という3つのシナリオを想定しています。
そのなかでも最も現実的と見られているのが、緊張が長期化して原油価格が高止まりするシナリオです。
投資家にとって重要なのは、政治家の発言だけを見るのではなく、実際の原油供給量、タンカーの通航量、米国原油在庫、OPECプラスの生産量などのデータを確認することです。
現在の原油市場は地政学リスクによって価格変動が非常に大きくなっています。そのため、原油を大量に買って長期間放置するのではなく、押し目を利用した短期的な投資や、ゴールド、防衛関連株などとの分散を意識することが重要だと考えられます。


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