金(ゴールド)はなぜ急落しているのか?株安でも売られる理由と今後確認すべきポイン

本記事は、YouTube動画『金(ゴールド)、急落中。なぜ?』の内容を基に構成しています。

目次

金価格が急落、最高値から約23%以上下落

金、いわゆるゴールド価格が大きく下落しています。

動画では、6月8日時点で金価格が一時4300ドルを割り込み、4268ドル台まで下落したことが取り上げられています。今年1月につけたスポット価格の最高値5594ドルから見ると、下落幅は約1326ドル、下落率は約23.7%に達したとされています。

金は一般的に「安全資産」と呼ばれることが多い資産です。株式市場が不安定になったとき、投資家の資金が避難先として金に向かうというイメージを持っている人も多いでしょう。

しかし今回の特徴は、株式市場も下がっているにもかかわらず、金も同時に売られている点です。

動画では、NASDAQが関税ショック以来の大きな下落率を記録し、日経平均も今年5番目の下落となるなど、株式市場が大きく売られた中で、金価格も下落していると説明されています。

普通に考えれば、株が売られる局面では金が買われそうに見えます。しかし実際には、金も売られています。ここに今回の相場の重要なポイントがあります。

金下落のきっかけは強すぎたアメリカ雇用統計

動画で最初に指摘されている大きな要因は、アメリカの雇用統計です。

5月の非農業部門雇用者数が市場予想の約2倍となり、アメリカの雇用が非常に強いことが確認されました。雇用が強いということは、景気が底堅いことを意味します。一見すると良いニュースに見えますが、金融市場にとっては必ずしもプラスとは限りません。

なぜなら、景気が強い状態ではインフレ圧力が残りやすく、FRBが利下げに動きにくくなるからです。

金は利息を生まない資産です。株式であれば企業の利益成長が期待されますし、債券やMMFであれば利息がつきます。しかし金そのものは、保有しているだけでは金利収入を生みません。

そのため、金利が高くなる局面では、投資家は「利息がつかない金より、金利がつく債券やMMFでよいのではないか」と考えやすくなります。

動画では、雇用統計後に市場が織り込む12月利上げ確率が約72%まで上昇したと説明されています。利下げ期待どころか、利上げ観測まで出てくると、金にとってはかなり重い材料になります。

金ETFからの資金流出も下落要因に

もう1つの重要な要因として、金ETFからの資金流出が挙げられています。

動画では、ワールド・ゴールド・カウンシルのデータとして、金ETFの需要が大きく減速していることが紹介されています。前年同期の1月から3月には230トンあった需要が、2026年1月から3月には62トンまで減ったとされています。

さらに5月には、金ETFから2カ月ぶりに資金が流出したとも説明されています。

ここで重要なのは、「金が売られている」といっても、どの金が売られているのかを分けて考えることです。

動画では、今売られているのは主にETFや投資信託、先物などの「金融商品としての金」だと整理されています。これらは短期的な投資家心理や資金移動の影響を受けやすい商品です。

一方で、中央銀行が保有する金や現物の金、長期的な価値保存を目的とした金需要まで完全に崩れているわけではないと説明されています。

つまり、今回の下落を見て「ゴールドは終わった」と決めつけるのは早いということです。短期の投資マネーが金ETFなどから抜けている一方で、長期的な価値保存としての需要は残っている可能性があります。

AI投資と大型IPOが金から資金を奪っている可能性

動画で興味深い視点として語られているのが、AI投資や大型IPOへの資金需要です。

現在、ビッグテック企業によるAI設備投資は非常に大きな規模になっています。動画では、2026年のAI関連設備投資が約7000億ドルに達し、前年費でほぼ倍になると説明されています。

さらに、SpaceXの上場予定に加え、OpenAIやAnthropicなどの巨大IPOも控えているとされています。市場に出てくる浮動株の合計は7000億ドル規模で、その90%がAI関連だという説明もありました。

こうした巨大な資金需要がある局面では、投資家は流動性の高い資産を売って資金を用意することがあります。その対象になりやすいのが、金ETFなどの金融商品です。

金は流動性が高く、売却しやすい資産です。だからこそ、資金を用意したい投資家にとっては「売りやすい資産」でもあります。

この点は、金が悪い資産だから売られているというより、むしろ売りやすい資産だから現金化されていると見ることもできます。

株が下がれば金が必ず上がるわけではない

多くの投資家が誤解しやすいのが、「株が下がれば金は上がる」という考え方です。

動画では、この考え方について「完全に間違いではないが、いつもそうなるわけではない」と説明されています。

金が買われやすいのは、金融システムへの不安、銀行不安、信用不安、通貨不安などが強まる局面です。たとえば、金融機関への信頼が揺らいだり、通貨そのものへの不信が高まったりする局面では、金が避難先として買われることがあります。

一方で、株価下落の理由が金利上昇である場合、金も一緒に売られることがあります。

今回のように、雇用統計が強く、利下げ期待が後退し、利上げ観測まで出てくるような局面では、株式も金も同時に下がることがあります。

また、投資家がとにかく現金を欲しがる局面でも、金は売られることがあります。

動画では、2020年3月のコロナショック初期や、2008年のリーマンショック初期にも、金が一時的に売られたことが紹介されています。危機の初期段階では、投資家が損失補填や証拠金確保のために現金を必要とし、流動性の高い金を売ることがあるからです。

つまり、金は危機に強い資産ではありますが、どんな日でも必ず上がる「防弾チョッキ」のような資産ではありません。

この5年では金はS&P500を上回る強さを見せていた

今回の急落だけを見ると、金はもう弱い資産になったように感じるかもしれません。

しかし動画では、2020年以降で見ると、金は非常に強い資産だったと説明されています。

2020年から2025年までの累積リターンをドル建てで見ると、金はプラス172%、S&P500はプラス120%とされており、この期間では金がS&P500を上回っています。

一般的に金は「守りの資産」と見られがちです。しかし、この期間に限れば、金は単なる守りではなく、株式以上のリターンを出した資産でもありました。

では、なぜ金はここまで強かったのでしょうか。

動画では、主な理由として2つ挙げられています。

1つ目は、低金利や利下げ期待、金融緩和です。金利が低いと、金に利息がつかないという弱点が目立ちにくくなります。また、通貨不安が強まると、実物資産である金を持ちたいという心理も高まります。

2つ目は、ウクライナ戦争以降の中央銀行需要です。ロシアの外貨準備凍結をきっかけに、非西側諸国や新興国の中央銀行が、ドル資産だけに依存するリスクを強く意識するようになったと説明されています。

その結果、中央銀行による金購入が増え、金価格を押し上げる要因になってきたというわけです。

金利上昇の世界で金はどうなるのか

金価格を考えるうえで、金利は非常に重要です。

一般論として、利上げは金にとって逆風です。金は利息を生まないため、債券やMMFの利回りが上がると、金を保有する魅力が相対的に下がりやすくなります。

ただし、動画では「利上げイコール金下落」と単純に考えるべきではないとも説明されています。

重要なのは、名目金利ではなく実質金利です。

実質金利とは、金利からインフレ率を差し引いたものです。たとえば、金利が5%でインフレ率も5%であれば、実質金利はほぼ0%です。この場合、金にとって極端に不利とは限りません。

一方、金利が5%でインフレ率が2%であれば、実質金利は3%になります。この場合、利息を生まない金は相対的に不利になりやすくなります。

また、過去には利上げ局面でも金が上がった例があります。動画では、2004年から2007年の利上げ局面で、金のリターンが年率20%超だったことが紹介されています。

これは、金価格が金利だけで決まるわけではないことを示しています。ドル、インフレ期待、地政学リスク、金融不安、中央銀行需要など、複数の要因が重なって金価格は動きます。

中東情勢や原油高でも金が下がる理由

通常であれば、中東情勢の悪化や地政学リスクの高まりは、金にとって買い材料になりやすいと考えられます。

しかし動画では、今回のような局面では、有事にもかかわらず金が下がる理由があると説明されています。

その理由は、原油高によるインフレ懸念です。

中東情勢が不安定になると、原油価格が上昇しやすくなります。原油価格が上がると、インフレ懸念が強まります。インフレ懸念が強まると、FRBが利下げしにくくなり、場合によっては利上げ観測が強まります。

その結果、金利上昇への警戒から金が売られることがあります。

つまり、有事だから必ず金が買われるわけではありません。有事によってインフレ懸念が高まり、金利上昇観測が強まれば、金には逆風になる場合もあります。

今回の下落は、金が安全資産として失格になったというよりも、金利に弱い側面が強く出た局面だと整理できます。

今は仕込み時なのか、それとも様子見なのか

動画の後半では、金価格が下がっている今、投資家が何を考えるべきかが解説されています。

結論として重要なのは、「今が底かどうかを当てること」ではありません。むしろ大事なのは、自分がなぜ金を持つのかを整理することです。

金は安全資産と呼ばれますが、普通に大きく下がる資産でもあります。今回も高値から約23%下落していますし、過去には30%から60%規模の下落を経験したこともあります。

短期の値上がりだけを狙って金を買っている人にとって、今回の下落はかなり厳しい局面です。

一方で、インフレヘッジ、通貨不安への備え、株式とは異なる値動きへの期待、金融システムの外側にある実物資産としての役割を重視して金を保有している人にとっては、短期的な下落だけで保有理由が消えたとは限りません。

ここで問われているのは、金そのものの良し悪しというより、自分の投資方針です。

金を持つなら保有比率が重要

動画では、金は魅力的な資産ではあるものの、ポートフォリオの主役ではないと説明されています。

主役はあくまで株式などの成長資産であり、金は守りのカードとして考えるべきだという見方です。

ここで重要になるのが保有比率です。

たとえば、資産全体の30%を金で持っていた場合、金価格が20%下落すると、資産全体への影響は6%になります。一方、金の保有比率が5%であれば、同じく金が20%下落しても、資産全体への影響は1%にとどまります。

同じ下落でも、持ちすぎているかどうかで精神的な負担は大きく変わります。

大事なのは、自分が持ち続けられる比率にすることです。金の値動きに振り回されて不安になるほど多く持っているなら、それは自分にとって適切な配分ではない可能性があります。

ペーパーゴールドと現物ゴールドの違い

金には、ETFや投資信託のようなペーパーゴールドと、実際の金地金やコインのような現物ゴールドがあります。

ペーパーゴールドは少額から積み立てしやすく、管理も簡単です。証券口座で売買できるため、資産配分に組み込みやすいというメリットがあります。NISAで投資できる商品もあります。

一方、現物ゴールドには、誰の負債でもない実物資産という特徴があります。金融システムの外側に置くことができる点は、現物ならではの強みです。

ただし、現物には保管や盗難のリスクがあります。また、NISAのような非課税制度を使いにくいという面もあります。

どちらが正解という話ではありません。重要なのは、自分が金に何を求めるのかです。

資産配分の一部として機動的に持ちたいならペーパーゴールドが使いやすく、金融システム外の実物資産として持ちたいなら現物ゴールドの意味が出てきます。

今後確認すべき3つのポイント

動画では、今後の金価格を見るうえで確認すべきポイントとして、主に3つが挙げられています。

  • 米国の利上げ観測がさらに強まるのか
  • 金ETFからの資金流出が続くのか
  • 中央銀行や現物需要が下値を支え続けるのか

短期的には、利上げ観測やETFからの資金流出が続けば、金価格はさらに調整してもおかしくありません。

一方で、中央銀行の購入や現物需要が続いているなら、長期的な価値保存としての需要はまだ残っていると考えることもできます。

つまり、短期の投資マネーは逃げている一方で、長期の価値保存需要は残っている可能性があります。この2つを分けて見ることが重要です。

まとめ

金価格は最高値から約23%以上下落し、株式市場の下落と同時に売られる展開となっています。

今回の下落の背景には、強すぎたアメリカ雇用統計、利下げ期待の後退、利上げ観測の高まり、金ETFからの資金流出、AI投資や大型IPOへの資金需要など、複数の要因があります。

金は安全資産と呼ばれますが、株が下がれば必ず上がる資産ではありません。株安の理由が金融不安であれば金が買われやすい一方、金利上昇が理由で株が下がる場合には、金も同時に売られることがあります。

また、投資家が現金を必要とする局面では、流動性の高い金が売られることもあります。

一方で、今回売られているのは主にETFや先物などの金融商品としての金であり、中央銀行や現物需要など、価値保存としての金需要まで完全に崩れたとは限りません。

金を保有するうえで大切なのは、「今が底かどうか」を当てることではなく、「なぜ金を持つのか」「何%持つのか」「どの形で持つのか」「どこまで下がっても持ち続けられるのか」を整理することです。

金は長期的にはインフレ、通貨不安、地政学リスク、金融システム不安への備えとして機能する可能性があります。しかし同時に、大きく下落することもある資産です。

だからこそ、金をポートフォリオの主役にするのではなく、守りのカードとして適切な比率で持つことが重要です。

今回の急落は、金を持つ意味や保有比率を改めて点検する良い機会だといえるでしょう。

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