本記事は、YouTube動画『全世界株式、止まらない進化!』の内容を基に構成しています。
全世界株式に投資する代表的な商品として人気を集めている「オルカン」ことeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)。
長期投資では「買ったら放置しておけばいい」と説明されることも多い商品ですが、実際には投資家が何もしなくても、その中身は世界の株式市場に合わせて大きく変化し続けています。
動画では、2025年3月末に64.5%だった米国株の構成比率が、2026年3月末には63.2%まで低下した一方、新興国株の比率は10.3%から11.4%へ上昇したことが紹介されています。
一見すると「米国株の勢いが落ちてきたのではないか」「新興国株へ乗り換えたほうがいいのではないか」と考えてしまいそうです。
しかし動画では、むしろこの変化こそが、全世界株式インデックスの大きな強みだと説明されています。
なぜならオルカンは、単に世界中の株を一度買って永久に保有する商品ではないからです。世界経済や企業価値の変化に合わせて、銘柄や国別構成が継続的に更新されています。
今回は、オルカンの中で実際に何が起きているのか、その仕組みを詳しく見ていきます。
オルカンは買った瞬間の銘柄を永久に持つ商品ではない
オルカンについて、意外と誤解されやすいポイントがあります。
例えば2023年に100万円分のオルカンを購入し、その後は1円も追加投資しなかったとします。
この場合、「2023年当時に入っていた企業を100万円分そのまま保有し続けている」と考える人もいるかもしれません。
しかし実際にはそうではありません。
投資家が保有しているのは、2023年当時の銘柄を詰め合わせた専用の箱ではなく、「現在のオルカンというファンドに対する持ち分」です。
そのため、ファンド全体の構成銘柄や組み入れ比率が変われば、2023年に買った人も、2024年に買った人も、2026年に買った人も、保有している中身が同じように変化していきます。
つまり、一度オルカンを買っただけでも、その中身はその後の世界経済に合わせて更新され続けるということです。
NVIDIAの比率は約3倍まで拡大した
動画では、その代表例としてNVIDIAの組み入れ比率が紹介されています。
NVIDIAのオルカンに占める比率は、2024年1月ごろには約1.6%でした。
その後、2024年3月末には約3.0%、2025年3月末には約3.5%、2025年8月末には一時約4.9%まで上昇し、2026年3月末時点では約4.5%となっています。
投資家自身がNVIDIAを買い増したわけではありません。
それでもNVIDIAの株価上昇によって世界の株式市場における時価総額が拡大すれば、オルカンの中でも自動的に存在感が大きくなっていきます。
これは、オルカンが基本的に時価総額加重型の指数に連動しているためです。
時価総額加重とは何か
時価総額加重とは、企業の市場価値が大きいほど、指数の中で大きな割合を占める仕組みです。
単純化すると、株価が上がり、市場から高く評価されるようになった企業ほど指数内での比率も大きくなります。
反対に、株価が下落して市場での存在感が小さくなった企業は、指数内の比率も自然に低下します。
動画ではこの仕組みについて、「勝者を事前に当てなくても、勝者になった企業が自分の資産の中で勝手に大きくなっていく」と説明しています。
これはインデックス投資の非常に重要な特徴です。
投資家自身が「次はNVIDIAが上がる」「次はこの企業が成長する」と予想する必要はありません。
市場で実際に評価された企業が、その結果として自動的にポートフォリオの中で大きくなっていきます。
オルカンの中では実際に銘柄の入れ替えも行われている
オルカンの中で起きている変化は、株価の上昇や下落による比率変化だけではありません。
実際に企業を売却したり、新しい企業を買ったりする銘柄の入れ替えも行われています。
オルカンが連動を目指している代表的な指数が「MSCI ACWI」です。
MSCI ACWIでは、世界各国の株式市場から一定の条件を満たした企業が指数に採用されています。
採用されるためには、企業規模だけでなく、実際に市場で取引できる株式が十分に存在するか、売買が活発に行われているか、外国人投資家が投資可能かなど、さまざまな条件があります。
そして各市場の投資可能な株式時価総額のおよそ85%をカバーするように設計されています。
MSCIが決めるのは「ルール」であり企業の将来性ではない
ここで重要なのは、MSCIが「今年はNVIDIAを5%にしよう」「韓国株を増やそう」といった判断をしているわけではない点です。
MSCIが決めているのは、あくまで指数に採用するためのルールです。
企業の将来性を予想し、会議で組み入れ比率を決定しているわけではありません。
どの企業が指数に参加できるのかは一定の基準によって決められます。
そして実際に何%の比率になるのかは、市場が決めます。
企業の株価、発行済み株式数、一般投資家が実際に売買できる株式の割合などを反映した「浮動株調整後時価総額」によって構成比率が決まります。
つまり、米国株を63.2%にしようと誰かが決めているわけではありません。
世界中の企業を一定のルールで並べた結果、米国企業の時価総額を合計すると63.2%になったということです。
同様に、新興国企業を合計した結果が11.4%になっています。
国別比率は最初に決められるものではなく、世界中の企業価値を集計した結果として最後に出てくる数字なのです。
1年間で数百銘柄が指数から入れ替わっている
MSCI ACWIでは定期的に指数構成の見直しが行われています。
動画では、2月、5月、8月、11月を中心に年4回の見直しが行われ、この1年間だけでも約204銘柄が追加され、約242銘柄が削除されたと紹介されています。
かなり大規模な入れ替えです。
つまり、オルカンは最初に2000社以上の株を買い、そのまま永久に保有し続ける商品ではありません。
例えばA社が指数から削除された場合、指数に連動するオルカンではA社を売却します。
一方、それまで指数に入っていなかったB社が新たに採用されれば、B社を購入します。
C社の浮動株が増加すれば必要な保有株数を増やし、D社の比率が低下すれば保有株数を減らします。
投資家自身は1株も売買していません。
証券口座には同じ「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という商品名が表示され続けています。
しかし、その1行の裏側では世界中の株式が継続的に売買されています。
オルカンには2種類の「自動調整」がある
動画では、オルカンの中身を変化させる力は大きく2つあると説明されています。
1つ目は市場そのものによる変化です。
株価が上昇した企業は時価総額が増えるため、指数内の比率も大きくなります。株価が下落した企業は反対に比率が小さくなります。
この場合、必ずしも株を売買しなくても、価格が変わるだけで構成比率が変化します。
2つ目は指数そのものの見直しです。
新規採用、削除、浮動株比率の変更などによって実際に保有株数が調整されます。
さらに、年4回の定期見直しだけでなく、大型IPO、企業合併、上場廃止などの大きなイベントが発生した場合には、臨時で変更されることもあります。
つまり、世界の株式市場が変化すれば、オルカンの中身もそれに合わせて変化し続ける仕組みになっています。
新興国比率が10.3%から11.4%へ上昇した理由
今回の動画の大きなテーマの1つが、米国株比率の低下と新興国株比率の上昇です。
2025年3月末から2026年3月末にかけて、米国株の比率は64.5%から63.2%へ低下しました。
一方、新興国株の比率は10.3%から11.4%へ上昇しています。
これは「MSCIが新興国を重視するようになった」という意味ではありません。
単純に、新興国企業の市場価値が米国企業に対して相対的に大きくなった結果です。
特に大きな影響を与えたのが、台湾と韓国の半導体関連企業です。
TSMC・Samsung・SK hynixの存在感が拡大
動画では、代表的な企業として台湾のTSMC、韓国のSamsung Electronics、SK hynixが挙げられています。
TSMCは世界最大級の半導体受託製造企業で、AppleやNVIDIAなど多くの世界的企業から半導体製造を受託しています。
Samsung ElectronicsやSK hynixは、AIサーバーなどで重要となるHBMをはじめとしたメモリー半導体を供給しています。
AI関連の設備投資が拡大することで、こうした企業への期待が高まり、株価が上昇しました。
すると台湾や韓国市場における企業価値が増加し、新興国株式市場全体の時価総額も大きくなります。
その結果、全世界株式の中でも新興国比率が上昇していきます。
動画では、2026年7月末時点のMSCI Emerging Marketsにおいて、TSMC、Samsung Electronics、SK hynixの3社だけで約28.23%を占めていると紹介されています。
AI半導体関連企業が新興国株式市場に与える影響が非常に大きくなっていることが分かります。
投資家は次に成長する国を予想する必要がない
ここでオルカンの特徴が改めて重要になります。
2025年の時点で「AIがさらに成長するから韓国株や台湾株を増やそう」と判断した投資家ばかりではありません。
ほとんどのオルカン投資家は何もしていません。
それでもTSMCやSamsung Electronics、SK hynixなどの企業価値が上昇すれば、自動的に資産の中でそれらの企業の存在感が大きくなります。
さらに新興国市場そのものが世界市場に占める割合を高めれば、オルカンの新興国比率も上昇します。
将来、米国企業が再び圧倒的な成長を見せれば、米国比率は再び上昇する可能性があります。
韓国や台湾企業がさらに成長すれば、それらの比率が拡大します。
10年後にインド企業が世界の株式市場で大きな存在感を持つようになれば、インドの比率も自然に増えていきます。
現在はまだ名前も知られていない企業が将来世界を代表する企業になれば、その会社もいずれ指数に採用される可能性があります。
つまり、投資家自身が「次に伸びる国」や「次の世界的企業」を当てる必要はありません。
世界の株式市場で実際に大きくなった企業や国を、後から自動的に多く保有する仕組みになっています。
米国比率の低下は必ずしも悪材料ではない
米国比率が64.5%から63.2%に低下したと聞くと、「米国株の勢いが落ちているのではないか」と心配する投資家もいるかもしれません。
しかし動画では、むしろ逆の見方をしています。
米国以外の企業価値が大きくなれば、その分だけ米国の割合が低下するのは自然なことです。
これはオルカンが世界の株式市場の変化を正しく反映している証拠とも考えられます。
米国株だけを一定比率で維持する商品ではないため、世界経済の中心が変化すれば、その変化も自動的に反映されます。
世界の主役が米国であり続ければ米国比率は高いままですが、他の地域が成長すれば自然にその割合が増えていきます。
これこそが全世界株式へ投資する意味の1つです。
世界中の株式を管理する仕組みを低コストで利用できる
オルカンのもう1つの大きな特徴がコストです。
動画では、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は年率0.05775%と紹介されています。
100万円を保有している場合、信託報酬だけを単純計算すると年間約578円です。
その他のコストを含めた実質コストを考えても、動画では年間約850円程度と説明されています。
この程度のコストで、投資家は世界中の株式を保有できます。
しかも単に株を保有するだけではありません。
世界中の企業の株価変動を反映し、指数構成銘柄を定期的に点検し、削除された企業を売却し、新たに採用された企業を購入します。
さらに浮動株比率の変更に合わせて株数を調整し、大型IPO、企業合併、上場廃止といったイベントにも対応します。
これらを個人投資家が自分ですべて管理するのは現実的ではありません。
米国、日本、台湾、韓国、インド、欧州など世界各国の数千社を監視し、上場廃止やM&A、IPO、外国人投資規制などを確認し続ける必要があるためです。
それを投資信託では、商品を1つ購入するだけで利用できます。
オルカンの本当の強みは「世界分散」だけではない
オルカンのメリットとして最もよく説明されるのが「世界中の株式へ分散投資できる」という点です。
もちろん、それ自体も大きなメリットです。
しかし動画では、それ以上に重要なのが「変化し続ける世界を、自分が過去に買った資産にまで反映し続けられること」だと指摘しています。
これは非常に重要な視点です。
世界経済は常に変化しています。
10年前に世界を代表していた企業と、現在の世界を代表する企業は同じではありません。
国ごとの経済力や株式市場の規模も変化します。
個別株投資であれば、その変化に合わせて自分で銘柄を選び直す必要があります。
しかし時価総額加重型の全世界株式指数であれば、その変化を自動的に取り込んでいきます。
つまりオルカンは「世界中に分散された固定ポートフォリオ」ではありません。
世界の株式市場そのものが変化するたびに、中身が更新されるポートフォリオなのです。
eMAXIS Slimオルカンと楽天・プラス・オールカントリーを比較
動画後半では、MSCI ACWIへの連動を目指す2つの全世界株式ファンドとして、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)と楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンドが比較されています。
信託報酬は、eMAXIS Slimが年率0.05775%、楽天・プラスが年率0.0561%で、楽天・プラスのほうがわずかに低くなっています。
2026年8月7日時点の1年間の運用成績についても、動画では両者に大きな差はないと説明されています。
eMAXIS Slimの1年リターンは約33.6%、楽天・プラスは約33.54%でした。
リスクやシャープレシオなどについても、ほぼ同程度となっています。
そのため動画では、ファンドそのもののわずかな違いよりも、利用している証券会社との組み合わせで考える方法が紹介されています。
SBI証券を利用している場合は、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が選択肢になりやすいとしています。
一方、楽天証券では両方購入できますが、楽天・プラス・オールカントリーも有力な選択肢になります。
ただし、動画が本当に注目しているのは、0.001%単位のコスト差ではありません。
運用会社や証券会社が競争することで、世界中の企業を保有し、世界経済の変化に合わせて中身を更新し続ける仕組みを、投資家が極めて低いコストで利用できる環境が整っている点です。
「ほったらかし投資」の意味は中身が動かないことではない
オルカンは「ほったらかし投資」に向いている商品として紹介されることがあります。
しかし、ほったらかしという言葉から「買った商品をそのまま棚に置いている」というイメージを持つと、少し実態とは異なります。
投資家自身は何もしません。
しかしオルカンの中では、世界中の企業の株価が毎日変動しています。
成長した企業の比率は大きくなり、存在感が低下した企業の比率は小さくなります。
定期的に指数の構成銘柄が見直され、新しい企業が入り、条件を満たさなくなった企業は外されます。
企業の状況によっては保有株数も調整されます。
さらに大型IPOなどがあれば、新たな世界的企業も取り込まれていきます。
つまり「ほったらかし」とは、ポートフォリオの中身が止まっているという意味ではありません。
投資家本人が動かなくても、ポートフォリオの中身が世界の変化に合わせて動き続けてくれるという意味です。
まとめ
今回の動画では、オルカンの米国比率が64.5%から63.2%へ低下し、新興国比率が10.3%から11.4%へ上昇したことをきっかけに、全世界株式インデックスの仕組みが詳しく解説されました。
重要なのは、米国株の比率が下がったこと自体ではありません。
全世界株式は固定された国別比率や銘柄構成を持つ商品ではなく、世界の株式市場の変化に合わせて常に中身が更新されています。
NVIDIAのように急成長した企業は、自分で買い増さなくてもポートフォリオ内で存在感が大きくなります。
TSMCやSamsung Electronics、SK hynixなどの企業価値が上昇すれば、新興国市場の存在感も高まり、その結果としてオルカンの新興国比率も自然に上昇します。
一方で、指数の採用基準を満たさなくなった企業は削除され、新たに成長してきた企業が採用されます。
その作業を投資家が自分で行う必要はありません。
オルカンを保有しているだけで、世界の主役企業や国の変化が、自分が数年前に投資した資産にまで継続的に反映されます。
オルカンに投資するということは、2026年時点の「米国63.2%」という固定された円グラフを買うことではありません。
変化し続ける世界の株式市場そのものを、低コストで保有し続ける仕組みに投資することだと考えると、その特徴がより分かりやすくなります。


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