本記事は、YouTube動画『【養分】株式分割で株価アガると思ってる人は正座して聞いてください。』の内容を基に構成しています。
株式市場では、企業が「株式分割」を発表すると株価が上昇するケースがあります。そのため、「株式分割=買い材料」と考えている個人投資家も少なくありません。
しかし、株式分割そのものによって企業の利益が増えたり、企業価値が高まったりするわけではありません。むしろ重要なのは、なぜ企業が株式分割を行うのか、そして分割後に何をするのかという点です。
動画では、東京証券取引所が企業に投資単位の引き下げを求めている背景から、株式分割後の株価データ、ライブドアの大規模な株式分割、さらに未上場株を利用した投資話の注意点まで幅広く解説しています。
株式分割とは何か
まず理解しておきたいのが、株式分割をしても株主の資産が突然増えるわけではないということです。
動画では、キオクシアの株式分割を例に説明しています。
例えば、ある企業の株価が5万円で、100株保有していたとします。この場合の評価額は約500万円です。
この会社が1株を3株にする「3分割」を行った場合、保有株数は100株から300株になります。一方、株価は理論上約3分の1となり、約1万6700円になります。
つまり、
100株 × 5万円 = 約500万円
だったものが、
300株 × 約1万6700円 = 約500万円
になるだけです。
株数は3倍になりますが、株価は約3分の1になるため、保有している資産総額は基本的に変わりません。
「株式分割で株数が3倍になったから資産も3倍になる」ということではありません。
東証が株式分割を求める理由
では、なぜ東京証券取引所は企業に投資単位の引き下げを求めているのでしょうか。
大きな理由は、個人投資家が株を購入しやすくするためです。
日本株は基本的に100株単位で売買されます。
仮に株価が5万円であれば、
5万円 × 100株 = 500万円
が最低投資金額になります。
500万円を1銘柄に投資できる個人投資家は限られます。
しかし、3分割して株価が約1万6700円になれば、最低投資金額は約167万円まで下がります。
それでも決して安くはありませんが、500万円と比較すれば投資できる人は大きく増える可能性があります。
つまり、株式分割には「より多くの投資家が株を買えるようにする」という役割があります。
株式分割で株主数や出来高が増える可能性
投資単位が下がれば、それまで資金面の問題から購入できなかった個人投資家も株主になれるようになります。
動画では、大和証券が2023年に公表した「株式分割は企業に何をもたらすか」というレポートが紹介されています。
そのデータによると、株式分割を実施すると株主数が平均で約6%増える傾向が確認されたと説明されています。
株主が増えれば、株式市場で売買する参加者も増えます。
その結果、出来高や流動性が高まりやすくなります。
流動性とは、簡単に言えば「株を売買しやすいかどうか」です。
出来高が極端に少なく、売買注文もほとんどない銘柄では、買いたくても希望する価格で買えなかったり、売りたいときに売れなかったりすることがあります。
大口投資家にとっても、流動性の低い銘柄には多額の資金を投入しにくいという問題があります。
そのため東証としても、多くの投資家が参加できる環境を整え、日本株市場全体の取引を活発にしたいという狙いがあります。
株式分割は株価上昇の「土台作り」
重要なのは、株式分割そのものが企業価値を高めるわけではないという点です。
動画では、株式分割は株価を直接上げる材料というより、「市場参加者を増やすための地盤整備」に近いと説明されています。
例えば企業が、
株式分割をする
↓
投資単位を引き下げる
↓
株を買える投資家が増える
↓
その後に好決算や自社株買いなどの材料が出る
↓
幅広い投資家から買いが入りやすくなる
という流れを作ることは考えられます。
この意味では、株式分割は株価上昇につながる環境を作る施策の1つといえます。
しかし、分割しただけで企業の業績が向上するわけではありません。
株価が高ければ何分割してもいいのか
投資単位を下げるほど投資家が増えるのであれば、「3分割ではなく10分割や100分割をすればいいのではないか」と考えることもできます。
実際、過去には大規模な株式分割を繰り返した企業がありました。
その代表例として動画で紹介されているのがライブドアです。
ライブドアは上場前を含めて複数回の株式分割を行い、大規模な分割を実施したことで知られています。
動画では、2004年2月に100分割を行った例も紹介されています。
当時は「株式分割を発表すると株価が上がる」という期待が現在よりも強かった時代でした。
そのため株式分割そのものが投資家の注目を集め、株価が大きく変動するケースもありました。
かつては株式分割の効力発生まで約50日かかった
当時の株式分割には、現在とは異なる制度上の事情もありました。
動画によると、株式分割を発表してから実際に新しい株式を売買できるようになるまで、約50日かかるケースがありました。
そのため、
「株式分割が発表された」
というニュースだけが先行し、実際に分割株が取引できるようになるまでの期間に投資家の思惑が集中することがありました。
大規模分割が過熱を招いたことなどを受け、その後は大幅な株式分割についてのルールや運用も見直されていきました。
現在では、当時ほど極端に「株式分割だけで株価が急騰する」という状況にはなりにくくなっています。
株式分割を発表すると株価は平均約6%上昇?
では、現在でも株式分割は株価上昇につながるのでしょうか。
動画では、大和証券のレポートをもとに興味深いデータが紹介されています。
2018年から2022年に株式分割を発表した企業を分析したところ、分割発表後の株価は一時的に平均約6%上昇する傾向が確認されたとされています。
つまり、「株式分割は短期的に買い材料になりやすい」という傾向自体は存在していたことになります。
ただし、さらに重要なのはその後です。
約30日後には上昇分がほぼ消えていた
株式分割発表後に株価は一時的に約6%上昇するものの、その効果は長続きしませんでした。
動画で紹介されたデータでは、約30日後には超過リターンがほぼ0%まで戻っています。
株式分割を発表した直後は注目が集まり、個人投資家などから買いが入ります。
しかし、株式分割によって企業の売上や利益が増えたわけではありません。
そのため、時間が経過すると「分割」というニュースによって上昇した部分が徐々に薄れていくと考えられます。
これは、「株式分割=長期的な株価上昇」という考え方が必ずしも正しくないことを示す重要なポイントです。
NTTでも分割発表後に似た値動き
動画では、NTTの株式分割も例として紹介されています。
NTTは2023年5月の決算発表とあわせて株式分割を発表しました。
その直後には株価が約5%上昇したものの、その後は徐々に下落し、5月末ごろには分割発表前に近い水準まで戻ったと説明されています。
これは、先ほど紹介した「分割発表後に上昇するものの、時間とともに上昇分が失われる」というデータに近い動きです。
もちろん、株価は株式分割だけで動いているわけではありません。
決算、金利、相場全体の動向、企業ニュースなど、さまざまな要因が影響します。
そのため、「株式分割したから必ず数%上昇する」と考えるのは危険です。
発表日ではなく実施日前後が注目されるケースも
一方、最近の株式市場では、株式分割の発表直後よりも実際の分割実施日前後に株価が動くケースもあると動画では指摘されています。
これは投資家が株式分割の仕組みを以前より理解するようになり、発表された瞬間に一斉に買うという動きが弱まっている可能性があります。
実際に最低投資金額が下がり、新たな個人投資家が株を購入できるようになる時期に注目が移っているとも考えられます。
ただし、こうした傾向が市場参加者に広く知られるようになれば、投資家が先回りするようになります。
すると今度は、分割実施日のさらに前に買われる可能性があります。
市場では有名になった投資パターンほど、徐々に収益機会が小さくなっていくことがあります。
NVIDIAの株価上昇は株式分割が理由ではない
株式分割を繰り返しながら長期的に株価が上昇している企業もあります。
動画ではNVIDIAが例として紹介されています。
NVIDIAも過去に株式分割を行っていますが、その後の株価上昇をすべて株式分割の効果として説明することはできません。
半導体市場の成長、AI関連需要、業績拡大、決算内容など、株価を押し上げるより大きな要因が存在します。
ここで重要なのは、
「株式分割した会社の株価が上昇した」
ことと、
「株式分割したから株価が上昇した」
ことは別だという点です。
株式分割はポジティブ材料ではある
では、株式分割には意味がないのでしょうか。
そういうわけでもありません。
最低投資金額が500万円だった株が100万円台で買えるようになれば、当然ながら購入できる投資家は増えます。
企業の業績が良く、将来性も高いにもかかわらず、「株価が高すぎて買えない」という状態であれば、株式分割によって新たな需要が生まれる可能性があります。
その意味では株式分割はポジティブな材料になり得ます。
ただし、それはあくまで「投資家が参加しやすくなる」という話です。
企業の本質的な価値を高める施策ではありません。
業績が悪い企業が分割しても意味は薄い
株式分割を見るときに最も重要なのは、会社の中身です。
業績が成長している企業が、
「株価が高くなりすぎたので、多くの投資家に買ってもらいたい」
という目的で分割するのであれば、合理的な判断と考えられます。
一方、業績が伸びていない企業が株式分割だけを行ったとしても、それだけで企業価値が高まるわけではありません。
動画では、
「分割したか」ではなく「分割した後に何をするのか」
を見ることが重要だと説明しています。
例えば、自社株買い、増配、業績成長、新規事業など、企業価値向上につながる施策と組み合わされているかどうかを確認する必要があります。
株式分割には企業側のコストもある
株主を増やせばメリットだけがあるわけではありません。
企業側には管理コストも発生します。
例えば株主総会の案内や株主向け資料など、株主数が増えればその分だけ対応する相手も増えます。
電子化が進んでいるとはいえ、株主数が増えることによって事務作業や管理コストが増加する可能性があります。
そのため企業にとっても、「とにかく分割数を増やせばいい」という単純な話ではありません。
投資家が参加しやすい価格と、企業側の管理負担のバランスを考える必要があります。
未上場企業でも株式分割は行われる
動画の終盤では、未上場企業の株式分割についても解説されています。
株式分割は上場企業だけが行うものではありません。
未上場のベンチャー企業でも、資金調達や株主構成の調整などを目的として株式分割が行われることがあります。
そのこと自体は珍しいものではありません。
ただし、未上場株への投資では特に注意が必要です。
「上場すれば何百倍」という未上場株投資には注意
動画では、未上場株を利用したネットワークビジネスのような投資話についても警鐘を鳴らしています。
例えば、
「今のうちにこの会社の株を買えば、将来上場したときに何百倍になる」
といった話です。
企業が長期間にわたって株式分割を繰り返し、多くの人に未上場株を販売しているケースもあると紹介されています。
未上場株では市場価格が存在しないため、企業価値を客観的に判断することが非常に難しくなります。
例えば1株当たりの販売価格と発行済み株式数から時価総額を計算してみると、実態に対して極端に高い企業価値になっている場合もあります。
「上場予定」「将来何倍になる」という言葉だけで判断せず、企業の売上、利益、事業内容、資金調達状況、株式数などを冷静に確認することが重要です。
株式分割で見るべきなのは「外側」ではなく「中身」
株式分割のニュースを見ると、つい「株価が上がるかどうか」に注目してしまいます。
しかし、本当に見るべきなのは企業の中身です。
株式分割によって購入できる投資家が増えれば、短期的には株価にプラスの影響が出る可能性があります。
一方で、企業の利益やキャッシュフロー、競争力が変化するわけではありません。
したがって長期投資では、
「株式分割したから買う」
のではなく、
「業績や将来性に魅力のある企業が、投資家層を広げるために株式分割した」
と考える方が本質に近いでしょう。
まとめ
株式分割とは、株式を細かく分けることで1株当たりの株価を下げ、投資家が購入しやすくする仕組みです。
3分割すれば株数は3倍になりますが、株価は理論上約3分の1になるため、株主の資産が突然3倍になるわけではありません。
東京証券取引所が投資単位の引き下げを求めている背景には、最低投資金額を下げ、より多くの個人投資家が日本株市場に参加できるようにしたいという狙いがあります。
過去のデータでは、株式分割発表後に株価が短期的に上昇する傾向も確認されています。しかし、その効果は長期間続くとは限らず、約30日で上昇分が薄れるケースもあります。
最も重要なのは、株式分割そのものではありません。
企業の業績は伸びているのか、自社株買いや増配などの株主還元は行われているのか、今後も成長できる事業を持っているのかといった点を見る必要があります。
「株式分割したから株価が上がる」と単純に考えるのではなく、「なぜ今この会社は株式分割をするのか」「分割した後に何をするのか」まで考えることが、投資判断では重要になりそうです。


コメント