本記事は、YouTube動画『信用によるAI錬金術 暴走するウォール街 リスク増大』の内容を基に構成しています。
AIブームを背景に、GPUやデータセンターへの巨額投資が世界的に続いています。その一方で、AI企業の多くは十分な収益や信用力を持たず、自力で大規模な設備投資を行うことが難しいのが現状です。
動画では、NVIDIAと大手金融機関がこうした問題を解決するため、新たな金融の仕組みを作ろうとしていると解説しています。しかし、それはAI投資をさらに加速させる可能性がある一方、信用膨張によって将来の金融リスクを拡大させる危険性もあると指摘しています。
さらに、Metaによる高性能AIのオープン化、韓国で急増する半導体レバレッジETF投資、AIバブルの終盤を示唆する市場環境などについても取り上げています。
NVIDIAとウォール街が作ろうとしている新しいAI金融市場
動画によると、NVIDIAはAI開発企業への資金供給を支援するため、ゴールドマン・サックス、ブラックロック、ブラックストーン、Apollo Global Management、KKR、カナダの投資会社など大手金融機関と組み、大規模な金融プラットフォームを構築する方針だとされています。
背景にあるのは、AI開発に必要な莫大な設備投資です。
高性能なAIモデルを開発するためには、大量のNVIDIA製GPUを購入し、それを稼働させる巨大なデータセンターを建設しなければなりません。必要な資金は数十億ドルから、場合によっては100億ドル規模に達します。
しかし、多くのAI開発企業にはそれだけの自己資金がありません。また信用力が十分ではないため、銀行から巨額の融資を受けることも簡単ではありません。
そこで考えられているのが、GPUやデータセンターそのものを担保にして資金を調達する仕組みです。
GPUを「不動産」のような担保資産にする仕組み
住宅市場では、購入した住宅を担保にして住宅ローンを借ります。
同じ考え方をAI市場に持ち込めば、AI企業が購入するGPUや建設するデータセンターを担保にして、年金基金、保険会社、政府系ファンドなどから資金を調達することができます。
例えばAI企業が100億ドル規模のデータセンターを建設するとします。
企業自身に100億ドルがなくても、データセンターやGPUを担保として金融市場から資金を集めることができれば、大規模投資が可能になります。
この仕組みが広がれば、GPUやデータセンターは単なる設備ではなく、不動産のような「金融資産」に近い存在になります。
AI投資と金融市場が直接結びつくことになるわけです。
NVIDIAが信用補完を行う可能性
ただし、GPUには住宅とは異なる大きな問題があります。
技術進歩が非常に速いため、GPUの価値が短期間で下落する可能性があることです。
新世代GPUが登場すれば、数年前のGPUの市場価値は大きく下落することがあります。そのため、GPUを担保に資金を貸す側からすれば、担保価値が急落するリスクがあります。
動画では、こうした問題に対応するため、NVIDIAがGPU価格の下落分の一部を保証するような「信用補完」の仕組みを用意する可能性があると説明しています。
金融機関からすれば、NVIDIAが一定部分を保証してくれるのであれば、AI企業への資金供給を拡大しやすくなります。
その結果、
金融市場から資金が流入する
→ AI企業がGPUを購入する
→ データセンターが建設される
→ AIサービスが拡大する
→ NVIDIAのGPU売上が増える
という巨大な資金循環が生まれる可能性があります。
NVIDIA自身がAI企業に出資する必要がなくなる
これまでNVIDIAは、AI関連企業に出資し、その企業がNVIDIA製GPUを購入するという形の取引を行うケースがありました。
しかし金融市場から直接AI企業に資金が流れるようになれば、NVIDIA自身が資金を提供する必要性は小さくなります。
つまり、金融機関や機関投資家の資金によってNVIDIA製GPUが購入される仕組みが出来上がることになります。
この仕組みが機能している間は、NVIDIAにとって極めて有利です。
一方で、動画ではここに大きな危険もあると警告しています。
AI需要が想定を下回れば信用循環が逆回転する
最も大きなリスクは、AI需要が市場の期待ほど拡大しなかった場合です。
AIサービスの利用が伸びなければ、データセンターのGPU稼働率が下がります。
GPUの利用料金も低下し、AI企業の収益が減少します。
その結果、借金を返済できない企業が増える可能性があります。
倒産したAI企業が保有していたGPUが市場に大量放出されれば、中古GPUの価格も下落します。
担保価値が下がれば、金融機関の損失も拡大します。
さらにNVIDIAが信用補完を行っていれば、NVIDIA自身も損失を負担しなければなりません。
好調な局面ではAI投資を加速させる金融システムが、不況局面では逆に損失を増幅させる可能性があるというわけです。
AIモデルの「コモディティ化」が進む可能性
動画ではもう1つの大きなリスクとして、AIモデルそのものの価格下落を挙げています。
Meta Platformsが高性能AIモデルをオープン型として提供し、多くのAI技術を無料あるいは低価格で外部に提供する方向へ動いていると説明しています。
AIには大きく分けて、オープン型とクローズド型があります。
オープン型AIとは
オープン型AIでは、モデルの重みや設計などの一部が公開され、企業や開発者が自分たちで改良したり運用したりしやすくなっています。
自由度が高く、利用コストも低いことが特徴です。
クローズド型AIとは
一方、クローズド型AIではモデル内部は公開されず、APIやサービスを経由して利用します。
ChatGPTやClaudeのようなサービスが代表例として挙げられています。
開発企業はAIサービスの利用料金から収益を得るため、利用者が増えるほど売上が増えるビジネスモデルです。
MetaはAIそのもので稼ぐ必要がない
ここでMetaには他のAI企業とは大きく異なる強みがあります。
Metaの主要な収益源はFacebookやInstagramなどの広告事業です。
つまり、AIサービスそのものから大きな利益を上げなくても会社を維持できます。
一方、AI専業企業の場合、AIモデルの利用料金が主要な収益源です。
そのためMetaが高性能AIを無料または低価格で提供し続けると、AIサービス全体の価格競争が激しくなる可能性があります。
これはAI業界にとって大きな問題です。
多くの企業は最先端AIを必要としていない
さらに動画では、企業がAIを業務利用する場合、必ずしも最高性能のAIが必要ではないと説明しています。
例えば引っ越し業者であれば、
見積もりの自動化、顧客対応、配送ルートの最適化、人員配置、料金設定、営業支援、事務処理などにAIを活用できます。
しかし、これらの業務に世界最高性能のAIモデルが必要とは限りません。
一定水準以上の性能があれば、より安いAIが選ばれる可能性があります。
このためAIモデルの性能差が縮小すれば、価格競争が激化し、AIサービスの利益率が低下する可能性があります。
動画では、最終的にはAIモデル自体では稼ぎにくい時代になり、強いキャッシュフローと財務基盤を持つ企業だけが生き残る可能性があるとしています。
韓国では半導体レバレッジETFに巨額資金が流入
動画の後半では、韓国の個人投資家による半導体株投資についても取り上げています。
8月第1週だけで韓国のレバレッジ株式ETFに約100億ドル規模の資金が流入したと説明しています。
特にKOSPI200の2倍の値動きを目指すETFや、SK hynix、Samsung Electronicsに連動するレバレッジETFに巨額資金が流れ込んだとされています。
背景にあるのは、半導体株の下落を「ブーム終了」ではなく「一時的な調整」と見る個人投資家の存在です。
レバレッジETFは下落局面でリスクが急拡大する
レバレッジETFは、指数や株価の値動きを2倍などに増幅する商品です。
上昇局面では利益を大きくできますが、下落局面では損失も大きくなります。
動画では、韓国の個人投資家の多くが「人生一発逆転」を狙ってこうした商品を購入していると指摘しています。
もし半導体株が再び急落すれば、大きな含み損を抱える個人投資家が急増する可能性があります。
半導体株は業績ピークより先に下落することがある
半導体株を見る際に重要なのは、企業業績と株価のタイミングが一致するとは限らないことです。
メモリー価格が上昇し、企業利益が伸びていると、「まだ株価も上がる」と考えたくなります。
しかし株式市場は将来を先取りします。
現在の利益が伸びていても、「これから利益成長率が鈍化する」と市場が予想すれば、株価は先に下落します。
そのため企業業績が好調だからといって、必ずしも株式が買い場になるとは限りません。
動画では、半導体メモリー価格の上昇率が鈍化する可能性を踏まえ、半導体株への強気姿勢を慎重に見るべきだとしています。
AIバブルは2026年秋から転換点を迎えるのか
動画では米国株についても、2026年秋以降に相場環境が変化する可能性があるとの見方を示しています。
その理由の1つとして挙げられているのが、AI関連企業のIPOです。
大型IPOが実施される場合、投資家が新規上場株を購入するために保有株を売却することがあります。
その結果、市場全体の需給が悪化する可能性があります。
また9月以降はIPOや増資が増えやすく、株式市場への供給量が増える季節でもあると説明しています。
バブル崩壊は天井を付けた直後に起こるとは限らない
動画では、仮にAIバブルが終盤に近づいていても、すぐに暴落するとは限らないとしています。
例として挙げられているのが2008年の金融危機です。
S&P500は2007年10月ごろに高値を付けましたが、リーマン・ショックによる本格的な暴落が起きたのは2008年9月でした。
またITバブルでも、NASDAQがピークを付けてから市場全体が本格的に悪化するまでには時間がかかりました。
つまり、
「バブルのピーク」と「誰もが恐怖を感じる暴落」
の間には、1年前後の時間差が生まれることがあります。
ChatGPT公開から約4年という時間軸
動画ではAIバブルの起点を、ChatGPTが一般公開された2022年11月としています。
過去のバブル相場が約4年から4年半続くケースが多いという考え方に基づけば、2026年秋から2027年春ごろがAIバブルの転換点になる可能性があると予想しています。
ただし、これは歴史的な経験則に基づく相場観であり、必ず同じ展開になるわけではありません。
実際の相場は企業業績、金融政策、景気、金利、投資家心理など複数の要因によって動きます。
AIデータセンター投資にも異変が出始めている
動画では、AIブームの先行きを慎重に見る材料として、データセンター投資の遅延や延期、中止が報告され始めている点にも触れています。
AIデータセンターは莫大な建設費だけでなく、大量の電力を必要とします。
そのため、
電力供給、送電網、建設コスト、資金調達、人材不足など、さまざまな制約を受けます。
もしAIサービスから得られる収益が期待を下回れば、企業はデータセンター投資計画を縮小する可能性があります。
そうなればGPU需要にも影響が及びます。
信用によるAI投資拡大が最大のリスクになる可能性
AIブーム初期は、企業が自己資金や株式市場から調達した資金を使ってAI投資を行うケースが中心でした。
しかし今後、GPUやデータセンターを担保として借金を増やす仕組みが広がれば、AI投資は「信用」によって膨張する可能性があります。
信用を利用すれば、自己資金以上の投資を行えます。
これは景気拡大局面では非常に強力です。
しかし景気が逆回転すると、借金が損失を拡大させます。
2008年の住宅市場でも、住宅そのものだけが問題だったわけではありません。
住宅を担保に大量の信用が作られ、その信用が金融市場全体に広がったことで危機が大きくなりました。
動画が「信用によるAI錬金術」と表現している背景には、AI市場でも似た構造が生まれつつあるのではないか、という警戒があります。
今後は国際分散投資が重要になる可能性
動画では、仮にAIバブルが崩壊した場合、米国株が大幅調整する可能性を想定しています。
一方、その後の景気拡大局面では、米国株だけではなく欧州株や新興国株などが相対的に高いパフォーマンスを上げる可能性があるとしています。
これまでの10年以上、米国株は世界の株式市場を大きく上回るパフォーマンスを記録してきました。
しかし、その優位性が永遠に続くとは限りません。
地域ごとに景気循環や株価バリュエーションが異なるため、次の市場サイクルでは国際分散投資がより重要になる可能性があります。
まとめ
今回の動画で中心的に語られているのは、AIブームが単なる技術革新から「信用を利用した巨大な金融投資」へ変化し始めているという点です。
NVIDIAと大手金融機関がGPUやデータセンターを担保とした金融市場を構築すれば、AI企業はこれまで以上に大規模な資金を調達できるようになります。
その結果、AI投資がさらに加速し、NVIDIAをはじめとする半導体企業にとって追い風となる可能性があります。
しかし同時に、AI需要が伸び悩んだ場合にはGPU稼働率の低下、AI企業の債務不履行、GPU価格の下落、担保価値の低下、金融機関の損失という逆回転も起こり得ます。
さらにMetaをはじめとする企業が高性能AIを低価格または無料で提供すれば、AIモデルそのものの収益性が低下し、多くのAI企業が十分なキャッシュフローを確保できなくなる可能性もあります。
AI技術そのものが成長し続けることと、AI関連企業の株価が上がり続けることは同じではありません。
今後のAI相場を見るうえでは、「AIの利用量が増えているか」だけではなく、「誰が投資資金を出しているのか」「その投資は借金によって支えられていないか」「AI企業は実際に十分な利益を上げられているか」という金融面からの視点も重要になりそうです。


コメント