本記事は、YouTube動画『長期金利3%超え!金利上昇と株式市場の関係について解説します。』の内容を基に構成しています。
長期金利の上昇がニュースになると、「金利が上がると株価にはマイナス」と説明されることがよくあります。
確かに、金利上昇は株式市場にとって大きな影響を与える要因です。しかし、金利が上昇したからといって、必ず株式市場にとって悪いとは限りません。
重要なのは、「なぜ金利が上がっているのか」という中身です。
動画では、日本の長期金利が高い水準まで上昇している状況を入り口として、国債と株式の関係、短期金利と長期金利の違い、インフレ、銀行への影響、そして「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」の違いについて詳しく解説しています。
なぜ長期金利が上がると株式市場に警戒感が出るのか
まず理解しておきたいのが、株式と国債は投資家のお金を奪い合う関係にあるという点です。
仮に国債で年3%程度の利回りを得られるのであれば、投資家にとって国債の魅力は以前より大きくなります。
株式には株価下落や減配などのリスクがあります。一方、国債は満期まで保有すれば、発行体である国が債務不履行にならない限り、額面金額が償還されます。
そのため、安全性を重視する投資家にとっては、
「リスクを取って株を買わなくても、国債でそれなりの利回りを得られる」
という選択肢が生まれます。
例えば、多額の金融資産を保有する投資家にとって、国債利回りがほぼ0%だった時代と3%の時代では、国債の魅力は大きく異なります。
金利が高くなれば、株式市場に入っていた資金の一部が債券市場へ移る可能性があります。
これが、金利上昇が株式市場にとって逆風になりやすい基本的な理由です。
政策金利と長期金利は同じものではない
金利を考えるうえで重要なのが、「短期金利」と「長期金利」の違いです。
中央銀行である日本銀行が政策によって直接動かすのは、基本的には短期金利です。
一方、10年、20年、30年といった長期の国債利回りは、本来は国債市場での売買によって決まります。
国債を買いたい人が増えれば国債価格は上昇し、利回りは低下します。
反対に国債を売りたい人が増えたり、国債を買ってもらうためにより高い利回りが必要になったりすれば、国債価格は下落し、利回りは上昇します。
つまり、長期金利は市場参加者の需給や将来の景気、インフレ予想などを反映して動くものです。
イールドカーブとは何か
動画では、金利を理解するための重要な概念として「イールドカーブ」についても説明しています。
イールドカーブとは、国債などについて、横軸に償還までの期間、縦軸に利回りを取って描いた曲線です。
例えば、
1年物
2年物
5年物
10年物
20年物
30年物
といった異なる期間の金利を並べることで、市場が将来の景気やインフレをどのように見ているのかを読み取ることができます。
通常は、期間が長い債券ほど金利が高くなる「右肩上がり」の形になりやすいとされています。
長期間お金を貸すほど、将来のインフレや金利変動などの不確実性が大きくなるからです。
日銀のYCCが長期金利を抑えていた
日本では長期間にわたり、日本銀行が「イールドカーブ・コントロール(YCC)」を行っていました。
これは日銀が国債を大量に購入することで、長期金利が大きく上昇しないように誘導する政策です。
国債市場で日銀という巨大な買い手が存在すれば、国債価格には上昇圧力がかかり、反対に利回りには低下圧力がかかります。
その結果、本来であれば市場で決まるはずの長期金利にも、政策の影響が強く及ぶ状態が続きました。
動画では、現在はこうした長期金利への強い介入を縮小し、より市場で金利が決まりやすい方向へ戻してきたことが、長期金利上昇の背景の1つとして説明されています。
国債利回り3%でも「実質3%儲かる」とは限らない
ここでもう1つ重要になるのが、「名目金利」と「実質金利」の違いです。
例えば国債の利回りが3%だったとしても、物価が毎年2%上昇するのであれば、単純化すると実質的な利回りは約1%です。
金額そのものは増えていても、そのお金で買える商品やサービスの量が減っていれば、実際の購買力はそれほど増えていないからです。
100万円が将来130万円になったとしても、その間に物価が大きく上昇していれば、130万円の価値は現在の130万円と同じではありません。
投資では金額そのものだけを見るのではなく、「そのお金で何が買えるのか」という購買力まで考える必要があります。
インフレ局面では株式にもメリットがある
国債は安全性が高い一方で、インフレには弱いという特徴があります。
満期になれば額面金額は戻ってきますが、その額面金額の購買力までは保証されません。
一方、企業はインフレによって商品やサービスの販売価格を引き上げることができれば、売上高や利益が増える可能性があります。
その結果、長期的には株価も物価上昇に合わせて上昇する可能性があります。
もちろん、すべての企業がインフレに対応できるわけではありません。
原材料費や人件費だけが上昇し、販売価格へ転嫁できない企業にとっては逆風になります。
それでも、株式には企業活動を通じてインフレに対応できる可能性がある点が、固定的な利息を受け取る債券との大きな違いです。
金利上昇には2つの大きな理由がある
動画では、長期金利が上昇する背景として、大きく2つの方向性が示されています。
1つは、景気が良くなり、企業や個人の資金需要が増えるケースです。
新しい工場を建設したい、データセンターを作りたい、新規事業へ投資したいと考える企業が増えれば、資金需要は増加します。
多少高い金利を払ってでも資金を借りたい企業が増えるため、金利が上昇しやすくなります。
もう1つが、将来のインフレ予想が高まるケースです。
今後物価が大きく上昇すると考える投資家は、低い金利では長期間お金を貸したくありません。
そのため、より高い金利を要求するようになり、長期金利が上昇します。
同じ金利上昇でも、この2つでは意味が大きく違います。
「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」
動画の重要なテーマの1つが、「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」です。
景気が強く、企業が将来の成長を見込んで積極的に投資している結果として金利が上昇しているのであれば、必ずしも経済にとって悪い話ではありません。
例えばAI、半導体、データセンターなどの成長分野で、大きなビジネスチャンスが生まれているとします。
企業が高い金利を支払ってでも資金を調達し、新しい設備や技術へ投資したいのであれば、それだけ高いリターンを期待しているとも考えられます。
こうした状態は、経済活動が活発化している結果としての金利上昇と言えます。
一方、政府の財政不安やインフレ懸念などから、投資家が国債を買うためにより高い金利を要求している場合は、意味が異なります。
この場合は経済成長への期待というより、リスクに対する追加的な利回りを求めている可能性があります。
したがって、「金利が上がった」という数字を見るだけでは不十分です。
なぜ上がったのかを見ることが重要になります。
金利は「経済の体温」のようなもの
動画では金利を「体温」に例えて説明しています。
運動したり食事をしたりすると、人間の体温は多少上昇します。
これは体が活発に活動している結果であり、必ずしも悪いことではありません。
しかし、病気によって体温が大きく上昇しているのであれば話は別です。
同じ体温上昇でも、その原因によって意味が異なります。
金利も同じです。
経済が活発に動いていることで金利が上昇しているのであれば、ある程度は自然な現象です。
しかし、財政不安や急激なインフレ、金融システムへの不安などによって金利が急騰しているのであれば、経済への悪影響が大きくなる可能性があります。
経済によって耐えられる金利水準は違う
さらに動画では、同じ金利でも国によって影響が異なるという点にも触れています。
成長機会が多く、企業が高い利益率を期待できる経済では、比較的高い金利でも投資活動が続く可能性があります。
反対に、成長率が低く、高い収益を期待できる投資先が少ない経済では、金利が上昇すると企業や投資家がリスクを取らなくなりやすくなります。
例えば、安全資産で高い利回りを得られるのであれば、
「わざわざ株式や不動産でリスクを取らなくてもよい」
と考える投資家が増えます。
その結果、民間投資が減少する可能性もあります。
そのため、単に「金利が何%なら危険」という絶対的な基準があるわけではなく、その国の経済成長力や企業収益力との関係を見る必要があります。
金利上昇は銀行株に必ずプラスなのか
金利上昇局面では、「銀行は貸出金利を引き上げられるため、銀行株にはプラス」と考えられることがあります。
しかし、動画ではそれほど単純ではないと説明されています。
銀行は融資だけでなく、国債などの債券も大量に保有しています。
債券価格と金利は反対方向に動くため、金利が上昇すると、過去に低い金利で発行された債券の市場価格は下落します。
例えば、過去に低金利の長期国債を大量に購入していた銀行では、長期金利が大きく上昇すると、保有債券に大きな含み損が発生する可能性があります。
「満期まで持てば元本が戻る」だけでは済まない理由
債券については、
「満期まで持てば額面金額が戻るのだから、含み損は問題ない」
という考え方もあります。
しかし、銀行の場合はそう単純ではありません。
銀行は預金者から預かったお金を運用しています。
普通預金であれば、預金者は基本的にいつでも引き出すことができます。
仮に多くの預金者が一斉に預金を引き出そうとした場合、銀行は現金を準備する必要があります。
そのために保有債券を満期前に売らなければならなくなれば、それまで含み損だったものが実現損になる可能性があります。
債券価格が下落
↓
銀行に含み損が発生
↓
信用不安から預金流出
↓
現金確保のため債券売却
↓
損失が確定
↓
さらに信用不安が高まる
という悪循環が起こる可能性も理論上はあります。
動画では、金融を考える際には「満期まで持てば大丈夫」という静的な見方だけではなく、資金繰りや市場心理まで含めた動的な視点が重要だと説明しています。
地方銀行は保有資産の内容を見る必要がある
特に地方銀行の場合、融資需要が弱かった時期に国債などの債券で資金を運用していたケースがあります。
そのため、長期金利が上昇すると、過去に購入した長期債券の評価損が大きくなる可能性があります。
一方で、金利上昇前に長期債券を減らしていた銀行や、資産運用をうまく調整していた銀行もあります。
したがって、銀行株を分析する場合でも、
「金利上昇だから銀行株は買い」
と単純化するのではなく、各銀行がどのような資産をどれだけ持っているのかを見る必要があります。
景気悪化が予想されると長期金利が下がることもある
将来の景気が悪化すると予想される場合、逆に長期金利が低下することがあります。
景気が悪くなれば、新しい工場や店舗を作ろうとする企業が減り、資金を借りたい人が少なくなります。
同時に、株式などのリスク資産を売って、安全性の高い国債へ資金を移す投資家が増える可能性があります。
国債の需要が高まれば債券価格は上昇し、利回りは低下します。
そのため、長期金利の低下は必ずしも景気にとって良いニュースとは限りません。
逆イールドが示すもの
通常のイールドカーブは右肩上がりになりやすいものの、短期金利より長期金利の方が低くなることもあります。
これが、いわゆる「逆イールド」です。
例えば2年物国債の金利よりも5年物国債の金利が低い場合、市場参加者が将来の景気悪化や利下げを予想している可能性があります。
将来的に金利が低下すると考える投資家が、現在のうちに長期債券を買うことで、長期金利が先に低下するためです。
そのため、イールドカーブを見ることで、市場が将来の経済をどのように予想しているのかをある程度読み取ることができます。
「利下げ=株高」とも限らない
金利上昇と同様、金利低下についても単純化はできません。
中央銀行が通常のペースで利下げするのであれば、企業の資金調達コストが下がるため、一般的には株式市場にプラス要因となります。
しかし、中央銀行が急激な利下げを行う場合は、
「それほど急いで金融緩和しなければならないほど、経済に問題が起きているのではないか」
と考える必要があります。
つまり、
金利上昇=悪
金利低下=善
とは限りません。
金利の方向だけではなく、その理由を分析することが重要です。
投資家が見るべきなのは「金利の中身」
動画全体を通じて繰り返されているのは、金利について思考停止しないことの重要性です。
金利が上がったから株を売る。
金利が下がったから株を買う。
銀行株は金利上昇だから上がる。
こうした単純な判断だけでは、市場の本質を見落とす可能性があります。
見るべきなのは、
なぜ金利が上昇しているのか
なぜ金利が低下しているのか
インフレ期待はどうなっているのか
企業の資金需要は強いのか
政府の財政リスクが意識されているのか
銀行はどのような債券を保有しているのか
といった背景です。
動画後半ではDCFの重要性にも話が広がる
動画後半では、金利から企業価値評価の話へ広がり、DCFについても詳しく取り上げています。
DCFとは「Discounted Cash Flow」の略で、将来得られると予想されるキャッシュフローを、一定の割引率を使って現在価値へ換算する方法です。
株式、不動産、企業買収などで広く使われる基本的な評価方法です。
例えば、毎年600万円の家賃収入が期待できる不動産があったとしても、その不動産の価値は単純に600万円だけでは決まりません。
今後の空室率、家賃上昇の可能性、維持費、金利、物件の寿命などを考慮する必要があります。
その前提条件によって、計算される価値は大きく変わります。
DCFで重要なのは「答え」より前提条件
動画では、DCFは前提条件によって結果が大きく変化するため、万能な評価方法ではないという点も指摘されています。
しかし、前提条件が明示されるからこそ、
「なぜこの企業価値になったのか」
を検証できるというメリットがあります。
例えば企業価値が10億円と評価されていた場合、DCFの計算方法を理解していれば、
成長率を何%で想定しているのか
利益率をどれくらいで見ているのか
割引率を何%にしているのか
といった前提条件を逆算して考えられます。
数字だけを見るのではなく、その数字がどのような仮定から作られているのかを見る力が重要になります。
Excelなどで実際に計算することが理解につながる
動画では、DCFなどの金融理論について、説明を聞くだけでは十分ではないとも述べています。
実際にExcelやスプレッドシートを使って計算してみることで、
金利を1%変えたら企業価値がどれくらい変わるのか
成長率を変えたらどの程度結果が動くのか
長期のキャッシュフローでは小さな前提の違いがどれほど大きくなるのか
といった感覚を身につけることができます。
AIに答えだけを聞くよりも、自分でモデルを作り、数字を動かしながら確認する方が理解しやすいという考え方です。
これは金利の分析にも共通しています。
表面的な数字を見るだけではなく、数字が動いた時に経済全体へどのように影響が広がるのかを自分で考えることが重要です。
まとめ
長期金利の上昇は、株式市場にとって重要な変化です。
国債の利回りが高くなれば、安全資産の魅力が高まり、株式から債券へ資金が移る可能性があります。
また、金利上昇によって企業の資金調達コストが増えたり、銀行の保有債券に評価損が発生したりすることもあります。
その意味では、金利上昇を警戒することには十分な理由があります。
しかし、最も重要なのは「金利が上がった」という結果だけを見るのではなく、その原因を見ることです。
景気が強く、企業が積極的に投資していることで金利が上昇しているのであれば、経済活動の活発さを反映している可能性があります。
一方、インフレ不安や財政リスク、金融システムへの不安によって金利が急騰しているのであれば、より注意が必要です。
同様に、金利低下も必ずしも好材料ではありません。
景気悪化を織り込み、中央銀行が急いで利下げしなければならない状況であれば、むしろ経済の弱さを表している可能性があります。
つまり投資家に必要なのは、
「金利上昇=株安」
「金利低下=株高」
という単純な公式ではありません。
なぜ金利が動いているのか、その背景にある景気、インフレ、資金需要、財政、金融機関の状況まで考えることが、市場を理解するうえで重要になります。


コメント