50代・60代のNISAはどう取り崩す?為替と暴落を踏まえた老後の資産運用

本記事は、YouTube動画『50代・60代のNISAはどう取り崩す?為替と暴落を踏まえた老後の資産運用』の内容を基に構成しています。

NISAを使ってS&P500やオール・カントリーなどを積み立てている人にとって、「どの資産を買うか」と同じくらい重要になるのが、将来どのように取り崩すかという問題です。

特に50代、60代になると、20代や30代とは投資に使える時間が大きく異なります。

若い世代であれば、大きな暴落が起きても10年、20年という時間をかけて回復を待つことができます。しかし、65歳前後から資産を取り崩す予定の人の場合、その直前に大きな下落が起きると、回復を待つ時間が十分に残されていない可能性があります。

動画では、こうした「時間」という視点に加えて、日本の投資家にとって無視できない為替の影響や、一括投資と積立投資の違い、さらに老後の取り崩しまで含めて解説しています。

目次

50代・60代では「投資できる時間」が重要になる

動画では、ポートフォリオを組む必要性が高い人として、大きく2つのタイプが挙げられています。

1つ目は、暴落から回復するまで待つ時間が十分にない人です。

例えば55歳から投資を始め、65歳から資産を取り崩す予定であれば、投資期間は約10年しかありません。もし65歳になる直前に大きな株価下落が発生すれば、その後の回復を待ちながら生活費を確保しなければならなくなります。

2つ目は、大きな含み損に精神的に耐えられない人です。

例えば1億円を運用している場合、資産価格が20%下落すれば評価額は約2000万円減少します。

たとえ長期的には回復する可能性があったとしても、実際に大きな含み損を抱えた状態で保有し続けられるかどうかは、投資家によって大きく異なります。

そのため、50代以降では単純に「長期なら株式でよい」と考えるのではなく、自分がいつから資産を使う予定なのか、どの程度の下落まで耐えられるのかを考える必要があるというのが動画の主張です。

S&P500の成績を見るときは「為替」を忘れてはいけない

動画で特に強調されているのが、米国株の過去データを見る際の為替の問題です。

S&P500の長期リターンについて紹介する資料や動画の中には、ドル建てのS&P500指数だけを使っているものがあります。

しかし、日本で生活している投資家は円で資産価値を確認します。

日本の投資家がS&P500に投資した場合、最終的な円ベースの資産価値は、単純なS&P500の値動きだけでは決まりません。

S&P500の値動きに加えて、ドル円相場も影響します。

例えばS&P500が上昇していても、その期間に大幅な円高が進めば、円換算した場合の利益は小さくなる可能性があります。

反対に、S&P500の上昇と円安が同時に進めば、円ベースでは株価上昇以上に資産価値が増えることもあります。

つまり、日本の投資家が実際に体感する値動きと、ドル建てS&P500のチャートは必ずしも一致しません。

暴落時には株安と円高が重なる可能性もある

動画では、過去の金融危機において、株価下落と円高が同時に進んだケースについても説明しています。

かつて円は低金利通貨としてキャリートレードに利用されることが多く、市場がリスク回避に傾くと、円を借りて海外資産へ投資していたポジションが解消され、円が買い戻される動きが見られました。

このような局面では、米国株が下落すると同時に円高が進むことで、日本の投資家から見た海外資産の評価額がさらに下押しされる可能性があります。

一方で、株高と円安が同時に進めば、円ベースでは両方の効果がプラスになります。

重要なのは、「S&P500が何%上がったか」だけを見るのではなく、日本で使う資産として円換算したときにどうなっているのかまで確認することです。

老後資金は「貯めて終わり」ではない

動画では、資産形成だけでなく、その後の取り崩しについてもシミュレーションしています。

例として、55歳時点で1000万円を持ち、65歳まで毎月5万円を追加しながら運用するケースが紹介されています。

一定の利回りで毎年増え続けるという単純な計算では、65歳時点で資産が大きく増える結果になります。

そして65歳以降、毎月15万円ずつ取り崩していくという想定をしています。

ここで重要になるのが、「取り崩しを始めたら運用をやめる」という考え方ではないという点です。

動画では、老後も一部の資産を運用しながら取り崩すという考え方が紹介されています。

例えば資産をまったく運用せず、現金だけを毎月一定額取り崩す場合よりも、一定の運用を続けながら取り崩したほうが、資産寿命を延ばせる可能性があります。

「毎年6%増える」というシミュレーションには注意が必要

ただし、ここには大きな問題があります。

一般的な資産運用シミュレーションでは、「毎年6%で運用する」といった前提が使われることがあります。

しかし、実際の相場は毎年一定のペースで増えるわけではありません。

大きく上昇する年もあれば、暴落する年もあります。

S&P500の長期平均リターンが仮に一定水準だったとしても、それは20年や30年という長期間を平均した数字にすぎません。

実際の資産推移は、

上昇
↓
下落
↓
暴落
↓
回復

というように大きく変動します。

特に問題になるのが、取り崩しを始める直前や直後に暴落するケースです。

資産形成期であれば、価格が下がったときも積立を続けることで安値で多く買うことができます。

しかし取り崩し期では、価格が下落した状態で資産を売却しなければならない場合があります。

そのため、長期平均利回りだけを使ったシミュレーションでは見えにくいリスクがあります。

2000年前後から投資していたらどうなったのか

動画ではTradingViewなどを使い、2000年前後からS&P500に投資していたケースをシミュレーションしています。

2000年前後はITバブルのピークに近い時期です。

このタイミングで一括投資すると、その後ITバブル崩壊によって大幅な下落を経験します。

動画内のシミュレーションでは、1000万円相当を一括投資した場合、一時的に資産価値が約半分程度まで減少する場面が示されています。

さらに、その後回復し始めたところで2008年の金融危機が発生します。

つまり、長期投資だからといって、投資開始から一直線に資産が増えるわけではありません。

投資を開始したタイミングによっては、何年もの間、投資開始時の水準を回復できないこともあります。

55歳から始めた場合は状況が大きく変わる

20代であれば、10年以上資産が伸び悩んでも、その後の回復を待つ時間があります。

しかし55歳から投資を始めた場合、同じ10年間はまったく意味が違います。

55歳から65歳までの10年間が、ITバブル崩壊や金融危機のような期間と重なった場合、ちょうど退職や取り崩しを始めたい時期に資産が大きく減っている可能性があります。

動画では、この「投資家の年齢によって同じ値動きでも意味が変わる」という点を重要なポイントとして説明しています。

積立投資なら暴落リスクはなくなるのか

次に動画では、一括投資ではなく、毎月一定額を積み立てたケースを検証しています。

2000年から毎月5万円ずつ積み立てた場合、ITバブル崩壊では一括投資よりも下落率が抑えられています。

価格が下落している期間にも買い続けるため、平均購入価格を下げることができるからです。

これがドルコスト平均法の代表的なメリットです。

しかし、積立投資であれば暴落の影響をほとんど受けないわけではありません。

動画内の試算では、2008年の金融危機時に積立投資でも大幅な評価損が発生しています。

一括投資より下落率は小さくなったものの、数十%規模の下落を経験する可能性があることが示されています。

つまり、「積立だから安全」という理解ではなく、「一括投資より購入時期を分散できる」という理解のほうが実態に近いと言えます。

積立投資でも円高がリターンを打ち消すことがある

さらに興味深いのが、円換算した場合の結果です。

動画では、S&P500そのものが回復していても、同時に円高が進んだことで、日本円ベースでは利益があまり増えていない時期が示されています。

つまり、

米国株上昇
+
円高

となった場合、米国株の利益の一部が為替差損によって相殺されます。

反対に、

米国株上昇
+
円安

となれば、株価上昇と為替の両方がプラスに働きます。

日本の投資家がS&P500やオール・カントリーへ投資する場合、株式市場だけでなく為替も資産価値に影響するということです。

50代以降は株式だけに集中しないという考え方

こうしたシミュレーションを踏まえ、動画では50代以降について「株式だけではなくポートフォリオを考える必要がある」としています。

若い世代であれば、株式比率を高くして長期間保有するという方法も選択肢になります。

しかし投資に残された時間が短くなるにつれ、暴落時の影響を抑えることが重要になります。

そのため、株式以外の資産も組み合わせながら、値動きを分散する考え方が必要になるという説明です。

過去には金や米国債が株式と異なる動きをした

動画では、2000年代の市場を振り返りながら、株式以外の資産として金や米国債についても触れています。

ITバブル崩壊や2008年の金融危機を含む期間では、金が大きく上昇した場面がありました。

また、米国債も株式とは異なる値動きをする資産として紹介されています。

ただし動画では、「今後も金と米国債を買えばよい」という単純な話ではないことも強調しています。

市場環境が変われば、資金の移動先も変わります。

過去の金融危機で有効だった組み合わせが、そのまま次の危機でも機能するとは限りません。

重要なのは、株式から資金が流出したとき、その資金がどこへ向かっているのかを考えることだとしています。

50代・60代では「何を買うか」より「どう運用するか」も重要

投資情報では、

「S&P500を買う」
「オール・カントリーを買う」
「NISAで積み立てる」

といった「何を買うか」に注目が集まりがちです。

しかし50代、60代になると、「どう運用するか」という問題も同じくらい重要になります。

例えば、

何歳まで積み立てるのか
いつから取り崩すのか
暴落時にどこまで耐えられるのか
株式以外をどの程度組み合わせるのか
円ベースで資産がどう動くのか

といった条件によって、適した方法は大きく変わります。

同じ3000万円を持っている人でも、全額現金で持っている人と、長年投資を続けて含み益を抱えた状態の人では、同じリスク資産への投資でも心理的な負担は異なります。

そのため、年齢だけではなく、現在の資産状況や生活費、年金、投資経験などを含めて考える必要があります。

まとめ

NISAやインデックス投資では、「長期で持てば資産は増えやすい」という説明を目にすることが多くあります。

しかし50代、60代では、長期投資に使える時間そのものが限られています。

特に注意したいのが、取り崩しを始める直前に大きな暴落が起きるケースです。

また、日本の投資家にとっては、S&P500などの株価だけでなくドル円相場も重要です。ドル建てでは利益が出ていても、大幅な円高が進めば円ベースの利益が小さくなることがあります。

積立投資も価格変動リスクをなくす方法ではありません。購入時期を分散する効果はありますが、大きな暴落時には積立投資でも大幅な評価損になる可能性があります。

そのため50代以降では、「S&P500かオール・カントリーか」といった銘柄選びだけではなく、いつまで運用するのか、いつから使うのか、どの程度の下落に耐えられるのかまで含めて資産設計を考えることが重要です。

さらに、老後は資産形成が終わる時期ではありません。

貯めた資産をすべて現金にして使うのではなく、リスクを抑えながら一部を運用しつつ取り崩すという方法もあります。

50代、60代の資産運用では「増やすこと」だけではなく、「大きく減らさないこと」と「必要なときに使えること」を意識した設計が、より重要になってくると言えるでしょう。

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