本記事は、YouTube動画『【9月ファンドマネージャー調査】投資家の55%が「ノーランディング」を予想!強気は続くのか?』の内容を基に構成しています。
世界の大手ファンドマネージャーは、現在の景気や株式市場をどのように見ているのでしょうか。
今回取り上げられているのは、Bank of Americaが公表した2026年9月の「Global Fund Manager Survey」です。
9月調査では、世界経済が大きく失速するとの見方は依然として少なく、55%が「ノーランディング」を予想しました。一方で、現金比率は上昇し、債券への弱気姿勢も強まっています。
つまり、ファンドマネージャーは景気や企業業績について強気な姿勢を維持しながらも、金利やAI投資などのリスクを意識し始めている状況です。
Bank of Americaのファンドマネージャー調査とは
Bank of AmericaのGlobal Fund Manager Surveyは、世界の機関投資家やファンドマネージャーを対象として、景気見通しや資産配分、市場リスクなどを調査するものです。
2026年9月調査は9月15日に公表され、190人のパネリスト、運用資産総額約5120億ドルが対象となっています。
ファンドマネージャーが実際にどの資産を増やしているのか、あるいは減らしているのかを見ることができるため、市場全体のポジショニングを把握する材料の1つとして利用されています。
もちろん、ファンドマネージャーの判断が常に正しいわけではありません。
そのため動画では、過去の調査を振り返りながら、「その時点でファンドマネージャーがどのような判断をしていたのか」を後から検証することも重要だと説明しています。
世界経済は「ノーランディング」が55%
今回の調査で特に注目されているのが、世界経済の着陸シナリオです。
回答者の55%が「ノーランディング」を予想しました。
一方で、ソフトランディングは38%、ハードランディングはわずか2%となっています。
ノーランディングとは
景気を見る際には、よく「ソフトランディング」や「ハードランディング」という言葉が使われます。
ソフトランディングとは、インフレを抑制するために金融政策を引き締めても、景気後退を起こさずに経済が緩やかに減速するシナリオです。
反対にハードランディングは、景気が急激に悪化し、場合によってはリセッションに入るような状況を指します。
ノーランディングは、そのどちらでもなく、景気が明確に減速しないまま成長を続けるシナリオです。
9月調査では、このノーランディングを予想するファンドマネージャーが最も多くなっています。
世界経済についても、ネット8%の回答者が今後12カ月で成長が加速すると見ています。
ただし、これは極端な景気楽観論というより、「景気後退を予想する人が非常に少ない」という状態に近いといえます。
企業業績への期待は2021年以来の強さ
景気だけでなく、企業業績に対する見方も強気です。
調査では、今後12カ月のEPS、つまり1株当たり利益の増加を見込む回答が、2021年8月以来の強い水準となりました。
株価を長期的に支える重要な要素の1つが企業利益です。
そのためファンドマネージャーがEPSの成長を期待していることは、株式市場に対する強気姿勢の背景の1つと考えられます。
一方で、その企業投資が過剰になっているのではないかという懸念も急速に強まっています。
AIへの設備投資が「やりすぎ」になっているとの懸念
9月調査では、企業が過剰投資を行っていると考える回答者がネット33%となり、過去最高水準に達しました。
特に注目されているのがAI関連の設備投資です。
現在、大手テクノロジー企業はAI向けデータセンターや半導体、電力インフラなどに巨額の資金を投入しています。
AI市場が成長し続ければ、こうした投資が将来の利益につながる可能性があります。
しかし、期待ほど収益が伸びなければ、巨額の設備投資が企業財務の負担になる可能性もあります。
実際、9月調査ではAIハイパースケーラーの設備投資を、将来的なクレジットイベントにつながる可能性のある要因として警戒する回答も見られました。
つまりファンドマネージャーは、「AI成長そのもの」には期待しつつも、「AIへ投入される資金が大きくなりすぎていないか」という点を警戒しているわけです。
最大のテールリスクは「債券利回りの無秩序な上昇」
9月調査で最大のテールリスクとして挙げられたのが、債券利回りの急激な上昇です。
回答者の33%が「債券利回りの無秩序な上昇」を最大のリスクとして挙げました。
テールリスクとは、発生する確率は必ずしも高くないものの、発生した場合の市場への影響が非常に大きいリスクを指します。
長期金利が急上昇すると、企業の資金調達コストが上昇するだけでなく、株式のバリュエーションにも影響します。
特にPERの高いグロース株やテクノロジー株では、将来利益の現在価値が低下するため、金利上昇が株価の重しになりやすい傾向があります。
今回の調査では、AIバブルやインフレ再加速と並び、債券市場の動きが大きな警戒材料となっています。
ファンドマネージャーは債券をさらに減らしている
資産配分でも金利への警戒感が表れています。
9月調査では、債券へのネット配分は48%のアンダーウェイトとなり、2022年5月以来の低い水準となりました。
アンダーウェイトとは、通常の基準よりもその資産を少なく保有している状態です。
つまり、多くのファンドマネージャーが債券の保有比率を低くしているということになります。
さらに市場で混み合っている取引の1つとして、「米国債ショート」も増えています。
債券価格と利回りは基本的に逆方向に動くため、米国債をショートするポジションは、債券価格の下落、つまり金利上昇を想定した取引となります。
動画では、こうした債券への弱気姿勢が9月調査の特徴の1つとして紹介されています。
ただし、ファンドマネージャーの債券アンダーウェイトが大きいからといって、今後も債券価格が必ず下落するという意味ではありません。
むしろ市場のポジションが一方向に偏った場合、それ自体が将来的な反転要因になることもあります。
現金比率は3.5%から3.9%へ上昇
ファンドマネージャーの現金比率にも変化が見られました。
8月の3.5%から、9月には3.9%まで上昇しています。
動画では、一般的な中立ゾーンとして4~5%程度が意識されていると説明しています。
そのため3.9%まで上昇したとはいえ、現金を大量に積み上げている状態ではありません。
ただし、8月までの非常に強いリスク選好から比べると、多少ポジションを落として現金を増やしている様子がうかがえます。
実際、9月のセンチメント指数も8.0から7.0へ低下しており、極端な強気姿勢はやや後退しています。
最も混み合っている取引は「世界の半導体株」
一方で、株式市場で最も人気が集中しているテーマは変わっていません。
9月調査では、53%が世界の半導体株への投資を「最も混み合っている取引」と回答しています。
前月からほとんど変化しておらず、半導体株への投資が依然として市場の中心テーマであることが分かります。
AI向け半導体やデータセンター需要などを背景に資金が集中している一方、ポジションが混み合えば、何らかの悪材料が出た際に一斉にポジション解消が起こる可能性もあります。
「人気があること」と「今後も上昇すること」は同じではない点には注意が必要です。
9月はヘルスケア・資本財・銀行へ資金が移動
9月のセクターローテーションでは、ヘルスケア、資本財、銀行などへの資金流入が目立ちました。
一方で、REITや生活必需品などからは資金が流出しています。
具体的には、保険、ヘルスケア、資本財、銀行、エネルギーなどへの配分が前月から増加しました。
反対に、REIT、生活必需品、ホテル関連、ユーロ圏、一般消費財、債券、コモディティなどでは配分が減っています。
特に生活必需品株は強いアンダーウェイトとなっています。
生活必需品は一般的にはディフェンシブセクターと呼ばれ、景気が悪化しても需要が大きく落ちにくいと考えられています。
しかし現在のファンドマネージャーは、こうした守りのセクターよりも、銀行やテクノロジー、資本財などへ資金を向けているようです。
これは、現時点で景気後退を強く警戒しているわけではないこととも整合的です。
生活必需品株が敬遠されている理由
動画では、インフレ環境における生活必需品株についても解説しています。
生活必需品は、景気が悪くなっても一定の需要が続くため、本来はディフェンシブな特徴を持っています。
ただしインフレによって原材料や物流、人件費などのコストが上昇した場合、そのコストを販売価格へ転嫁できるかどうかが重要になります。
値上げしても販売数量を維持できるブランド力や競争力を持つ企業であれば、インフレ環境でも利益を確保できる可能性があります。
一方、業界全体として見ると、価格上昇によって消費が鈍化する企業もあります。
そのため、生活必需品セクター全体ではなく、その中でも価格決定力の強い企業を個別に選ぶという考え方もあります。
ファンドマネージャーのリスクテイクは意外と控えめ
今回の調査で興味深いのは、景気や企業利益に対する見方が比較的強気である一方、ファンドマネージャー自身は極端なリスクを取っていない点です。
通常時と比較してどの程度リスクを取っているかという質問では、ネットで若干「通常より少ない」側となっています。
つまり、景気後退を恐れて全面的に守りへ入っているわけではありませんが、強気一辺倒でリスク資産を大量に積み増しているわけでもありません。
動画では、この状態を9月調査の特徴として捉えています。
イールドカーブは「スティープ化」より「フラット化」を警戒
債券市場では、イールドカーブに対する見方も変わっています。
イールドカーブとは、短期金利と長期金利の関係を表したものです。
短期金利と長期金利の差が拡大することを「スティープ化」、差が縮小することを「フラット化」と呼びます。
9月調査では、イールドカーブがスティープ化すると予想する回答が減少しました。
また、FRBの政策対応についても、調査回答者から「ビハインド・ザ・カーブ」、つまり経済やインフレの変化に対して金融政策の対応が遅れているとの見方が強まりました。
なお、この調査は9月15日時点の投資家心理を示すものです。その後の金融政策や市場環境とは分けて考える必要があります。
2026年中間選挙も市場の注目材料
今回の調査では、2026年11月の米国中間選挙についても質問されています。
米国の中間選挙では、下院435議席すべてと上院のおよそ3分の1が改選されます。
9月調査では、「下院は民主党、上院は共和党」という結果を想定する回答が44%で最も多く、民主党が上下両院を取るとする回答も31%まで増加していました。これはあくまで調査参加者の見通しであり、選挙結果の予測を示すものではありません。
また、民主党が上下両院を獲得した場合について、45%の回答者が「債券利回り上昇・株価下落」という市場反応を想定していました。これもファンドマネージャーの回答であり、実際の市場反応を保証するものではありません。
中間選挙そのものだけでなく、その後の財政政策や金融政策への思惑が市場に影響する可能性があるため、ファンドマネージャーも注目しているということです。
スタグフレーションを警戒する投資家も多い
世界経済の環境については、やや複雑な回答も出ています。
ノーランディングを予想する人が55%いる一方で、「今後の経済環境」としてはスタグフレーションを想定する回答も多くなっています。
スタグフレーションとは、経済成長が弱いにもかかわらず、インフレが高い状態です。
一見すると、ノーランディングとスタグフレーションは矛盾しているように見えます。
しかし、景気後退に陥らなくても、経済成長率が潜在成長率を下回る一方でインフレが高止まりする可能性はあります。
そのため「リセッションではないが、成長率は弱くインフレは高い」というシナリオは成立します。9月調査でも、このような経済環境を意識する回答が確認されています。
動画では、現時点でスタグフレーションを過度に意識する必要はなく、実際の経済データを確認しながら判断すればよいとの見方も示されています。
「逆張り」で見ると何が注目されるのか
Bank of Americaのファンドマネージャー調査は、現在人気のある投資先を確認するだけでなく、「逆張り」の材料として使われることもあります。
つまり、ファンドマネージャーのポジションが一方向に偏りすぎている場合、その反対側に投資機会が生まれる可能性があるという考え方です。
9月調査では、逆張りの例として、英国株、生活必需品株、小型株を買い、米国株、銀行、大型株を売るといった組み合わせが示されています。
ただし、これは「これらの資産が上昇する」という予測ではありません。
あくまでファンドマネージャーのポジションが偏っていることを利用した、逆張り戦略の例です。
9月のファンドマネージャーは「強気だが慎重」
9月のファンドマネージャー調査を全体として見ると、8月から劇的な変化が起きたわけではありません。
景気に対しては依然として比較的強気で、55%がノーランディングを予想しています。
企業利益についても強い成長期待が続いており、半導体を中心としたAI関連投資への人気も変わっていません。
一方で、現金比率は3.5%から3.9%へ上昇しました。
さらに、債券へのアンダーウェイトが拡大し、最大のテールリスクとして「債券利回りの無秩序な上昇」が意識されています。
つまり9月のファンドマネージャーは、
「景気や企業利益はまだ強い。ただし、金利とAI設備投資には注意したい」
というスタンスに近いと考えられます。
まとめ
2026年9月のBank of Americaファンドマネージャー調査では、投資家心理が依然として強気寄りであることが確認されました。
特に55%が世界経済の「ノーランディング」を予想し、ハードランディングを予想する回答はわずか2%でした。
一方で、8月までの強い楽観姿勢からは少し変化も見られます。
現金比率は3.9%まで上昇し、債券へのアンダーウェイトは拡大しています。さらに最大のテールリスクはAIバブルから「債券利回りの無秩序な上昇」へ移っています。
また、AI関連企業の設備投資についても、投資額が大きくなりすぎているのではないかという警戒感が強まっています。
したがって今回の調査は、単純な「全面強気」と見るよりも、「景気と企業利益には強気だが、金利上昇やAI投資の過熱には警戒している」と捉える方が実態に近いでしょう。
今後は、インフレ率や長期金利、AI関連企業の設備投資と収益のバランス、そして11月の米国中間選挙後にファンドマネージャーの資産配分がどのように変化するのかが注目されます。
ファンドマネージャー調査は将来の相場を当てるものではありません。しかし、世界の大規模投資家が「何に期待し、何を恐れ、どこに資金を配分しているのか」を把握する材料として、毎月の変化を追っていく価値はあるでしょう。


コメント