本記事は、YouTube動画『【日経平均7万円台はまだまだ序章】藤野英人氏が断言/AI・半導体銘柄は無限に上がるのか?/三菱重工・フジクラ、ガチホの理由/国山ハセンは逆先行指標?【マネースキルセット】』の内容を基に構成しています。
日経平均株価は将来、10万円に到達するのか。
この大胆なテーマについて、投資家の藤野英人氏は動画内で「2030年に到達する確率は7割程度」「2035年ごろまでにはかなり高い確率で達成する」との見方を示しています。
その背景として挙げられたのは、日本企業の経営改革だけではありません。
藤野氏が特に重要視しているのが、日本経済が長く続いたデフレからインフレへと転換していることです。さらにAIの普及によって、半導体だけでなく、電力、電線、発電設備、プラント、防衛、社会インフラといった「重い経済」に関わる産業の重要性が高まっているといいます。
動画では、三菱重工業やフジクラなど近年大きく注目された銘柄にも触れながら、これからの日本株を見るうえで重要な構造変化が解説されています。
日経平均10万円時代に「投資は守り」になる
動画冒頭で藤野氏が示したのが、「投資が守りの時代になる」という考え方です。
これまで投資といえば、資産を積極的に増やすための「攻め」の行動というイメージが強くありました。
しかしインフレによって物価が上昇する環境では、現金だけを保有していると、同じ金額で購入できる商品やサービスの量が少なくなっていきます。
そのため藤野氏は、投資をしないこと自体が資産を守れない原因になる可能性を指摘しています。
つまり、これからは「投資で一発当てる」という発想ではなく、インフレによる資産価値の目減りから身を守るために投資をするという考え方が重要になるということです。
日経平均10万円を支える日本企業の変化
日経平均10万円というシナリオの背景として、まず藤野氏が挙げたのが日本の大企業の変化です。
かつて日本企業は、世界の投資家から見て経営改革のスピードが遅く、資本効率をそれほど重視していない企業も少なくありませんでした。
ところが近年は状況が変わっています。
動画では、その変化を象徴する出来事として、ウォーレン・バフェット氏による日本の商社株への投資が紹介されています。
バフェット氏が日本企業への投資を拡大したことで、日本企業の変化が海外投資家にも強く意識されるようになったという見方です。
2014年の伊藤レポートが転換点に
藤野氏がもう1つ重要な出来事として挙げたのが、2014年に公表された「伊藤レポート」です。
伊藤レポートでは、日本企業が資本効率を高め、持続的な企業価値向上を目指す必要性が示されました。
動画では、当時30代から40代だった企業、金融、行政などの中堅層がこうした議論に参加し、それから約10年が経過した現在、その世代が企業や組織の中核を担うようになったことも、日本企業の変化につながっていると説明されています。
単に報告書が1本発表されたから企業が変わったという話ではありません。
その時代に資本効率や企業価値向上について議論していた人材が、現在の経営層やリーダー層になっているという長期的な変化を藤野氏は重視しています。
ROEとPBRを意識する企業が増えた
日本企業の変化を見るうえで重要な指標として、動画ではROEとPBRも取り上げられています。
ROEは自己資本利益率のことで、株主から預かった資本を使って企業がどれだけ効率的に利益を上げているかを見る指標です。
PBRは株価純資産倍率で、企業の純資産に対して市場がどの程度の評価を与えているかを示します。
日本企業にはかつてPBRが1倍を下回る企業も多く存在していました。
藤野氏は、企業が資本効率を意識し、利益率や将来性、ブランド、人的資本などの価値を高めることで、市場からの評価も変化していくと説明しています。
配当や自社株買いもROE改善につながる
企業が必要以上に現金を保有すると、資本に対する利益率は低下しやすくなります。
そこで企業が配当を増やしたり、自社株買いを行ったり、設備投資に資金を回したりすることで、資本をより効率的に使うことができます。
近年、日本企業で増配や自社株買いが増えている背景にも、こうした資本効率改善の流れがあると藤野氏は説明しています。
日経平均10万円の最大の理由は「デフレからインフレ」
ただし藤野氏自身は、日本企業の経営改革以上に重要な要因として、デフレからインフレへの転換を挙げています。
動画では、日経平均10万円を予想する理由のうち「7割から8割程度」をこのインフレ転換が占めるという趣旨の発言もしています。
日本では長年、物価がほとんど上がらない、あるいは商品によっては価格が下がるデフレ環境が続いてきました。
しかしここ数年では、食品、日用品、住宅など幅広い分野で価格上昇が見られています。
藤野氏は、現在のインフレについて「まだ弱い」と考えており、日本の物価水準そのものが今後さらに上昇する可能性があると見ています。
日本とアメリカの「卵サンド」の価格差
その象徴的な例として動画内で登場したのが、卵サンドです。
日本のコンビニでは卵サンドが220円から280円程度で販売されています。
一方、アメリカでは同じような商品が安くても700円程度、高い場合には1200円から1300円程度するケースがあると藤野氏は紹介しています。
この価格差を考えると、日本の物価にはまだ上昇余地があるのではないかというのが藤野氏の考えです。
動画では、日本の卵サンドが将来的に600円や800円程度になっていても不思議ではないという大胆な予想も示されています。
もちろん、これは具体的な価格予測として確定している話ではなく、藤野氏が日本の物価水準の低さを説明するために示した見方です。
物価上昇に賃金が追いつかない可能性
インフレになれば企業の売上や株価が上昇しやすくなる一方、生活者にとっては物価上昇が大きな問題になります。
特に重要なのが賃金です。
物価と同じペースで賃金も増えれば生活水準を維持しやすくなりますが、藤野氏は、日本では物価と賃金が十分に連動していないと指摘しています。
その理由の1つとして動画で挙げられたのが、日本の雇用制度です。
雇用の流動性が低いため、企業側が人材を囲い込む構造になりやすく、人材獲得競争による賃金上昇が起こりにくいという見方です。
その結果、
物価は上昇する。
しかし給料は物価ほど上がらない。
という状況が続く可能性があります。
この構造が続けば、給与所得だけに依存している人はインフレによって実質的な購買力を失っていくことになります。
株や不動産を保有する意味が変わる
そこで重要になるのが、インフレとともに価格が上昇しやすい資産を保有するという考え方です。
動画では、株や不動産には雇用制度のような制約がなく、物価上昇に連動して価値が変化しやすいと説明されています。
賃金の伸びがインフレに追いつかない可能性があるのであれば、資産の一部を株式などに振り向けることが、資産防衛の手段になるという考え方です。
ここが、藤野氏のいう「投資が守りになる」という主張につながっています。
日経平均を押し上げるもう1つの要因がAI
日経平均10万円を考えるうえで、もう1つ無視できないテーマとして挙げられたのがAIです。
ここ数年、世界の株式市場ではAI関連企業が大きく上昇しました。
アメリカではAIそのものを開発する企業が注目され、日本、中国、韓国、台湾などでは、それを支える半導体や製造装置などの企業が買われています。
藤野氏は、AI関連株が今後も無限に上昇するとは限らないとしながらも、ポートフォリオからAI関連を完全にゼロにするという考え方も現実的ではないのではないかとしています。
重要なのは、「AI銘柄なら何でも買えばいい」という話ではありません。
AIという巨大な技術革新が経済全体にどう影響するのかを考える必要があります。
「軽い経済」から「重い経済」へ
ここから動画では、今後の日本株を考えるうえで特に重要なキーワードとして「軽い経済」と「重い経済」が登場します。
藤野氏は2026年3月にロンドンで開催された投資家や企業経営者が集まるカンファレンスに参加し、そこで多くの参加者から共通して聞かれた考え方があったといいます。
それが、
「軽い経済から重い経済の時代になる」
というものです。
軽い経済とは何か
動画でいう「軽い経済」とは、IT、コンサルティング、金融、ソフトウェアなど、比較的少ない物理的設備で高い付加価値を生み出す産業を指しています。
これまで世界では、こうした資産をあまり持たない高収益企業が評価されてきました。
重い経済とは何か
一方の「重い経済」は、
発電設備
電力インフラ
データセンター
電線
プラント
防衛
宇宙
社会インフラ
製造設備
など、物理的な設備やエネルギーを大量に必要とする産業を意味します。
AIは一見するとソフトウェア中心の「軽い経済」の象徴に見えます。
しかしAIを動かすためには巨大なデータセンターが必要です。
データセンターを動かすには大量の電力が必要です。
その電力を作るためには発電設備が必要になり、電力を届けるためには送電網や電線も必要になります。
つまり最先端の21世紀型技術であるAIが、発電、電力設備、電線、工場などの20世紀型産業の上に成り立っているという構造です。
フジクラが「重い経済」の象徴になった理由
動画では「重い経済」の代表例としてフジクラが取り上げられています。
フジクラは電線や通信関連製品などを手掛ける企業です。
以前であれば、電線メーカーがAIブームの中心銘柄になるとは考えにくかったかもしれません。
しかしAI向けデータセンターの増加によって、電力設備や通信インフラへの需要が急増しています。
AIそのものだけでなく、AIを動かすために必要な電力や通信設備にも資金が流れるようになった結果、フジクラのような企業が注目されるようになったという説明です。
商社も「重い経済」の代表格
動画では、ウォーレン・バフェット氏が投資している日本の商社についても触れられています。
商社はエネルギー、資源、食品、インフラ、物流など、実物経済と非常に深く結びついています。
その意味では、商社も「重い経済」の代表的な存在だと藤野氏は説明しています。
これまで市場ではIT企業やソフトウェア企業のように、設備をあまり持たず、高い資本効率を実現する企業が高く評価されてきました。
しかし世界情勢の変化によって、「効率性だけを追求する経営」が見直され始めています。
戦争や地政学リスクで「在庫を持たない経営」が変わる
ロンドンのカンファレンスで企業経営者から頻繁に出た言葉として、藤野氏が紹介しているのが「在庫」です。
これまで企業経営では、在庫はできるだけ少なくする方が効率的だと考えられてきました。
必要なものを必要な時に調達し、設備も最低限にする。
世界で最も安く調達できる場所から部品や原材料を購入する。
このような経営は資本効率を高めるうえでは非常に合理的です。
しかし戦争や災害などによってサプライチェーンが突然止まるリスクが高まれば、考え方は変わります。
動画では、ウクライナ情勢やイランをめぐる戦争などを例に、企業が供給網の強靱化を重視し始めていることが説明されています。
効率よりも「止まらないこと」が重要になる
供給網を止めないためには、
在庫を多めに持つ。
複数地域から部品を調達する。
予備の工場を作る。
バックアップ設備を用意する。
といった対策が必要になります。
これは企業経営の効率だけを考えればマイナスです。
しかし何か問題が発生した時にも生産を止めないためには必要なコストになります。
この変化によって、工場、設備、プラント、電力、物流などを提供する企業の重要性が高まる可能性があります。
「重い経済」は日本企業と相性がいい
藤野氏が日本株に期待する理由の1つもここにあります。
日本企業は、IT、ソフトウェア、金融、コンサルティングといった「軽い経済」ではアメリカ企業に後れを取ってきました。
一方で、
製造業
機械
プラント
素材
電力設備
社会インフラ
といった実物経済の分野には強い企業が多数あります。
藤野氏は、世界経済の方向性が「軽い経済」から「重い経済」に変化すれば、日本企業が得意としてきた分野に追い風が吹く可能性があると考えています。
三菱重工業も「重い経済」の中核企業
その代表例として動画で取り上げられたのが三菱重工業です。
三菱重工業は、
発電
防衛
宇宙
プラント
エネルギー
など、「重い経済」と呼ばれる分野の多くに関わっています。
株価は大きく上昇した後に調整する局面もありますが、藤野氏は動画内で、中長期的には注目できる企業の1つという見方を示しています。
ただし、これは藤野氏個人の見解であり、将来の株価上昇を保証するものではありません。
日経平均10万円を信じるなら「原則ガチホ」
動画の中盤以降で繰り返し語られているのが、長期保有の重要性です。
藤野氏は、2030年代に日経平均が10万円になると考えるのであれば、「原則ガチホ」という考え方になると説明しています。
投資家が損をする典型的なパターンとして挙げられたのが、
株価が上がっているから買う。
その直後に株価が下がる。
不安になって売る。
別の上昇銘柄へ移る。
という行動です。
長期的には右肩上がりの市場であっても、この行動を繰り返せば、高値で買って安値で売ることになります。
良い銘柄を見つけるより「持ち続ける方が難しい」
動画では、エネルギーやプラント関連株の話題から、投資家が「次の良さそうな銘柄」に次々と乗り換えてしまう問題についても議論されています。
ある銘柄を調べて長期的なストーリーを理解して買ったとしても、別の魅力的な銘柄が出てくれば売ってしまう。
その後、最初に持っていた銘柄が大きく上昇していることに気付く。
個人投資家にはよくあるパターンです。
藤野氏は、株式投資で利益を得るためには、銘柄選びだけでなく「持ち続けられるか」が非常に重要だと説明しています。
動画では「ガチホ力」という言葉も使われています。
これは単に何があっても売らないという意味ではなく、自分が投資した理由や企業の長期的な成長ストーリーを理解したうえで、短期的な値動きに振り回されないことを指しています。
投資では学歴よりも「センス」と「ガチホ力」
藤野氏はさらに、株式投資では学歴や偏差値はそれほど重要ではないとも話しています。
それよりも、
企業や産業の変化に気付くセンス。
そして、良いと思った企業を長く持ち続けられる強さ。
この2つが重要だという考えです。
実際、将来性の高い企業を早い段階で見つけても、株価が2倍、3倍になるまで持ち続けられる人はそれほど多くありません。
少し利益が出れば売りたくなり、下落すれば不安になります。
長期投資では、この感情との付き合い方も重要になります。
AI時代は半導体だけを見ればいいわけではない
ここまでの話を整理すると、藤野氏が注目しているのは単純な「AI株ブーム」ではありません。
AIという技術の普及によって、その裏側で必要になる現実世界の設備が急増するという構造です。
AIを動かすにはデータセンターが必要です。
データセンターには大量の電力が必要です。
電力を供給するには発電所、送電設備、電線が必要です。
それらを建設するには機械、素材、プラント、建設企業が必要になります。
さらに地政学リスクが高まれば、防衛、資源、安全保障、サプライチェーンの再構築にも投資が必要になります。
こう考えると、AI時代の投資対象は半導体メーカーだけではありません。
AIによって「重い経済」全体の設備投資需要が拡大する可能性があるというのが、動画前半から中盤にかけて示された重要な視点です。
まとめ
藤野英人氏が日経平均10万円の可能性を高く見ている背景には、単に「日本株がこれから上がりそう」という楽観論だけがあるわけではありません。
動画で語られた大きな流れを整理すると、日本企業の経営改革、ROEやPBRを意識した資本効率改善、デフレからインフレへの転換、AIという新しい成長産業、そして「軽い経済」から「重い経済」への変化があります。
特に藤野氏が重視しているのはインフレです。
物価が上昇する一方で賃金が同じペースで伸びなければ、現金や給与だけに依存している人の購買力は相対的に低下していきます。
そのため「投資は資産を増やすための攻めではなく、資産を守るための守りになる」という考え方が示されています。
また、AI時代だからといってAIソフトウェアや半導体だけを見るのではなく、その裏側で必要になる電力、データセンター、電線、発電設備、プラント、防衛、社会インフラなどを見ることも重要です。
フジクラや三菱重工業が注目されてきた背景にも、こうした「重い経済」へのシフトがあると藤野氏は説明しています。
そして最後に重要になるのが、良い企業を見つけた後に持ち続けられるかどうかです。
長期的な成長ストーリーを理解して買ったにもかかわらず、短期的な株価の上下によって売買を繰り返せば、長期上昇の恩恵を十分に受けられない可能性があります。
藤野氏の議論から見えてくるのは、「次に上がる銘柄」を探し続けること以上に、日本経済や世界経済の大きな構造変化を理解し、その変化に長期間付き合うことの重要性だといえるでしょう。
※今回提供された文字起こしは、動画31分45秒付近の「AIの中でも3つの要素がある」という発言の途中で終了しています。そのため、それ以降で解説されているAI関連の具体的な3要素や、動画後半の内容については本記事には含めていません。


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