本記事は、YouTube動画『J-REITは今買い時なのか?』の内容を基に構成しています。
J-REIT市場が大きく調整しています。
動画撮影時点の東証REIT指数は1730ポイントで、年初の2016ポイントから約14%下落しました。一方、同じ期間に日経平均株価やTOPIX、S&P500は上昇しており、J-REITの弱さが目立つ状況となっています。
ただし、価格が下落したことで、平均分配金利回りは5%を超え、NAV倍率も過去10年間の最低水準に近づいています。
では、現在のJ-REITは割安なのでしょうか。そして、今は買い時と言えるのでしょうか。
動画では、J-REITが低迷している理由から、金利上昇と不動産価格の関係、割安度を判断する指標、今後の見通し、具体的な投資方法まで詳しく解説されています。
J-REITとは何か
J-REITを考える前に、まず仕組みを確認しておきましょう。
REITは「Real Estate Investment Trust」の略で、日本語では不動産投資信託と呼ばれます。日本のREITなので、Japanの頭文字を付けて「J-REIT」と呼ばれています。
日本では2001年9月10日に、日本ビルファンド投資法人とジャパンリアルエステイト投資法人が初めて上場しました。2026年でJ-REIT市場は誕生から25年を迎えています。
J-REITは、投資家から集めた資金などを使い、オフィスビル、住宅、商業施設、物流施設、ホテルといった不動産へ投資する仕組みです。
一般的な株式会社の場合、利益から法人税などを支払い、その残りから株主へ配当します。
一方、REITには一定の要件を満たし利益の90%超を分配することで、実質的に法人税負担を回避できる仕組みがあります。そのため、利益の大部分を投資家へ分配する「インカム型資産」という性格が強くなっています。
動画によると、現在のJ-REIT市場には58銘柄が上場しており、時価総額は合計約15兆円です。
日本株全体と比較すれば決して巨大な市場ではありません。そのため、株式や債券、金、暗号資産などと並べて「1つのアセットクラス」として語られることは多いものの、市場規模には大きな違いがあります。
2026年のJ-REITが低迷している理由
動画撮影時点で、東証REIT指数は年初から約14%下落していました。
同時期には日経平均株価が約25%、TOPIXが約18%、S&P500もドルベースで約12%上昇していたとされており、相対的に見てもJ-REITは厳しいパフォーマンスとなっています。
動画では、その直接的な要因として「海外投資家の売り」を挙げています。
海外投資家による売りが需給を悪化させている
動画によると、東京証券取引所のデータでは、海外投資家によるJ-REITの売り越しが非常に大きな水準となっています。
国内の金融機関や個人投資家が買い向かっているものの、海外勢の売却を吸収しきれず、需給面から価格が押し下げられているという見方です。
では、なぜ海外投資家はJ-REITを売っているのでしょうか。
大きな理由の1つとして考えられているのが、日本の金利上昇です。
金利上昇がJ-REITに与える2つの悪影響
J-REITと金利には非常に強い関係があります。
「REITは投資家から集めたお金だけで不動産を購入している」と考えている人もいるかもしれませんが、実際には銀行などから借り入れも行っています。
動画によると、J-REIT全体のLTV、つまり有利子負債比率の平均は46.7%です。
かなり単純化すれば、100億円の不動産を50億円程度の自己資本と50億円程度の借入金で購入するような構造です。
つまり、J-REIT内部では約2倍に近いレバレッジがかかっています。
そのため金利上昇は、J-REITに対して主に2方向から影響します。
1つは借入金利の上昇です。
もう1つは、不動産そのものの理論価格の下落です。
金利が上がると不動産価格が下がりやすい理由
賃貸不動産の価値を簡単に表す方法として、動画では次の考え方が紹介されています。
「不動産価格=年間収益÷キャップレート」
キャップレートとは、投資家が不動産投資に求める期待利回りです。
例えば、年間収益1億円でキャップレートが5%なら、
1億円÷5%=20億円
となり、理論上の不動産価格は20億円です。
ここで賃料が上昇し、年間収益が1億1000万円になれば、
1億1000万円÷5%=22億円
となります。
賃料上昇は、不動産収益だけでなく物件価値そのものを引き上げる可能性があるわけです。
ところが、金利が上昇すると逆方向の力が働きます。
キャップレートを「リスクプレミアム+リスクフリーレート」と考え、リスクフリーレートが上昇した結果、キャップレートが5%から6%へ上がったとします。
年間収益が1億円のままであれば、
1億円÷6%=約16.7億円
となります。
20億円だった不動産の理論価格が約17億円まで下落する計算です。
レバレッジによって投資家側の損失が大きくなる
さらに重要なのが借入金です。
20億円の不動産を、10億円の借入金と10億円の投資家資金で購入したとします。
不動産価格が20億円から17億円に下落しても、借金10億円はそのまま残ります。
すると投資家側の純資産は、
17億円-10億円=7億円
となります。
物件価格は15%の下落ですが、投資家の純資産は10億円から7億円へ30%減少しています。
これがREIT内部でレバレッジを利用している影響です。
動画では、金利上昇局面においては「物件価格の下落」と「借入金利の上昇」という2つの負担がJ-REITにかかると説明しています。
一方でJ-REITにはインフレの恩恵もある
ただし、金利上昇がJ-REITにとってすべて悪いわけではありません。
そもそも利上げができる背景には、経済成長やインフレがあります。
インフレが進めば、REITが保有する不動産の賃料を引き上げられる可能性があります。
賃料が上昇すればNOI、つまり不動産の収益力が改善します。
したがって、J-REITを考えるうえでは、
「金利上昇による悪影響」
と
「インフレによる賃料上昇の恩恵」
のどちらが大きいのかを見る必要があります。
現在の市場では、海外投資家を中心に金利上昇の悪影響がより強く意識されているため、J-REIT価格が低迷しているというのが動画の見方です。
J-REITには割安サインも出始めている
価格が大きく下がった一方で、J-REITには割安感を示す数字も出ています。
動画では主に、
「分配金利回り」
と
「NAV倍率」
の2つに注目しています。
東証REIT指数1730ポイントはどの程度の水準か
動画撮影時点の東証REIT指数は1730ポイントでした。
過去の最高値は2007年5月の2612ポイント、リーマン・ショック後の2008年10月には704ポイントまで下落しています。
最高値から最安値までの下落率は約73%に達しました。
ただし、リーマン・ショック前後と現在では金融環境が大きく異なります。
そこで動画では、アベノミクス開始以降の約10数年間を参考にしています。
この期間の東証REIT指数は、おおむね1600~2200ポイントの範囲で推移しており、その中心は約1900ポイントです。
現在の1730ポイントは、この長期レンジで考えれば比較的下の位置まで来ています。
もちろん、当時よりも現在の金利水準が高いことには注意が必要ですが、価格だけを見ると一定の割安感が出てきたと考えることもできます。
平均分配金利回りは5.27%
さらに目立つのが分配金利回りです。
動画によると、2026年9月下旬時点のJ-REIT全体の平均分配金利回りは5.27%でした。
少なくとも過去10年間では最も高い水準で、2020年のコロナショック時にも5%には達しなかったと説明されています。
価格が下がれば、同じ分配金でも利回りは上昇します。
そのため5%を超える分配金利回りは、J-REIT価格の下落によって生まれた割安サインの1つと考えられます。
NAV倍率は0.82倍まで低下
もう1つ重要なのがNAV倍率です。
NAVは「Net Asset Value」の略で、REITが持つ不動産などの資産から負債を差し引いた純資産価値を表します。
株式でいうPBRに近い考え方です。
REITの市場価格を1口当たりNAVで割ったものがNAV倍率です。
動画によると、J-REIT全体の平均NAV倍率は0.82倍まで低下しています。
過去10年間の最低水準である約0.8倍にかなり接近しているとしています。
さらに動画撮影時点では、58銘柄すべてがNAV倍率1倍を下回っていました。
2002年以降の平均は約1.01倍とされているため、歴史的に見ても低い評価です。
ただし、NAV倍率が1倍を下回っているからといって、必ず価格が上昇するわけではありません。
市場が不動産価値の下落や将来の収益悪化を織り込んでいる可能性もあるためです。
それでもNAV倍率0.8倍前後、さらに一部では0.7倍台、分配金利回り6%超の銘柄まで出てきている状況は、一定の割安感を示すものだと動画では評価しています。
ではJ-REITは今が買い時なのか
ここが最も重要なポイントです。
動画での結論は、「強い買い推奨までは難しい」というものです。
ただし、全面的に弱気というわけでもありません。
現在の水準で投資資金をすべて投入するのではなく、何回かに分けて投資する予定のうち「1回目を買う」という考え方であれば、検討できる水準ではないかとしています。
表現すれば、「中立からやや強気の間」程度という見方です。
分配金利回り5.27%だけを見てはいけない
5%を超える利回りを見ると魅力的に感じます。
しかし、動画では「絶対的な利回りだけでは判断できない」と指摘しています。
重要なのが国債利回りとの差、いわゆるイールドスプレッドです。
動画では、日本の10年国債利回りが約3%、J-REITの平均分配金利回りが5.27%とされているため、両者の差は約2.3%です。
数年前のように10年国債利回りが1%未満で、J-REITが5%を超えているのであれば、REITの相対的な魅力はかなり高くなります。
しかし国債でも約3%の利回りが得られるのであれば、「価格変動リスクを取ってREITを保有する意味」をより慎重に考える必要があります。
しかも今後さらに金利が上昇すれば、このイールドスプレッドが縮小する可能性があります。
これが、分配金利回り5.27%でも「強い買い」と判断しにくい大きな理由です。
スポンサーとJ-REITの利益相反にも注意
動画ではもう1つ、J-REIT特有の構造的な問題にも触れています。
それが、スポンサー企業とREITの利益相反です。
多くのJ-REITには、大手不動産会社などのスポンサーが存在します。
例えば日本ビルファンド投資法人には三井不動産が関係しています。
不動産会社は開発した物件を売却し、その資金を新たな開発に回すことで事業を拡大していきます。
このとき、系列のREITは有力な物件売却先になります。
しかしREIT側は、投資家のために「なるべく安く物件を買いたい」と考えます。
一方、スポンサーである不動産会社は「なるべく高く物件を売りたい」と考えます。
両者の利益は必ずしも一致しません。
動画ではこの問題をかなり強い表現で「REITゴミ箱」と呼んでいます。
もちろん、スポンサーからREITへ売却される物件が実際に「悪い物件」であることを意味するわけではありません。
情報開示やガバナンスも改善されているとしながら、それでも構造上の利益相反は存在するため、NAV倍率が1倍を下回っているから即座に割安だとは判断できないという指摘です。
オフィスREITのファンダメンタルズは改善
一方、REITが保有している不動産そのものを見ると、明るい材料もあります。
J-REITにはオフィス、住宅、商業施設、物流施設、ホテル、ヘルスケアなどさまざまな種類があります。
その中でも約40%を占めるのがオフィスです。
動画では、東京都心のオフィス市場について、平均賃料が上昇し、空室率も低下していると説明しています。
特にAクラス、Sクラスと呼ばれる高品質なオフィスでは、インフレ局面で賃料を引き上げやすいという特徴があります。
つまり、
金利上昇によって資金調達コストは増えるものの、
それ以上に賃料収入が伸びれば、
REITの利益は改善する可能性があります。
実際、動画ではJ-REIT全体の分配金がコロナショック後、基本的に増加傾向を続けていると説明しています。
分配金は中長期的に増加傾向
REITというと「高配当だが成長しない資産」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし動画では、J-REITの分配金が中長期的には増加している点に注目しています。
不動産価格やREIT指数そのものが大きく上昇しなくても、インフレによって賃料収入が増えれば、投資家へ支払われる分配金も増えていく可能性があります。
この点では、J-REITには「連続増配株」に近い側面もあるとしています。
特にオフィスでは、現在の契約賃料と、新規契約時に期待できる市場賃料との間に差がある「レントギャップ」が注目されています。
動画では、日本ビルファンド投資法人など一部のオフィスREITで20%を超えるレントギャップがあるとしています。
契約更新などによってこの差が縮小すれば、今後さらに賃料収入が伸びる可能性があります。
J-REIT復活のカギは「金利上昇」と「インフレ」の力関係
J-REITの今後を考えるうえで、非常に分かりやすい整理があります。
現在は、
「金利上昇によるデメリット > インフレによるメリット」
と市場が評価しているため、REIT価格が下落しています。
しかし将来、
「金利上昇によるデメリット < インフレによるメリット」
へ変われば、J-REITへの評価が変化する可能性があります。
具体的には、利上げが一巡する一方で、オフィスなどの賃料上昇が継続し、分配金が増えていくような環境です。
そのタイミングがいつ訪れるのかは分かりません。
だからこそ動画では、現時点で一気に大きな資金を投入するのではなく、さらに価格が下落した場合も想定しながら投資するという考え方を示しています。
J-REITへ投資する具体的な方法
では、実際にJ-REITへ投資する場合、どのような方法があるのでしょうか。
動画で最もシンプルな方法として挙げられているのが、東証REIT指数への連動を目指すETFです。
代表例として紹介されているのが、銘柄コード1343の「NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信」です。
これ1本でJ-REIT市場全体へ分散投資できます。
動画撮影時点の分配金利回りは約4.9%とされています。
1343の分配金は増加傾向
動画では、1343の過去の分配金についても紹介しています。
4年前の年間分配金が7460円、その後8020円、8640円、そして直近1年間では9290円と増加しているとしています。
もちろん、将来も分配金が増え続ける保証はありません。
不動産市況が悪化すれば減配される可能性もあり、極端なケースでは分配金が大きく減少することも考えられます。
それでも、インフレによる賃料上昇を長期的に取り込める可能性がある点は、J-REITの特徴の1つです。
インデックスを中心に個別REITを加える方法も
もう1つ動画で紹介されているのが、J-REIT全体へ投資するETFを中心にしながら、一部だけ自分が期待するセクターや個別REITへ投資する方法です。
例えばJ-REITへ投資する資金の70%をインデックスETFへ投資し、残り30%をオフィス、ホテル、物流など、自分が有望だと考える分野へ振り分けるイメージです。
ただし、J-REIT市場全体の時価総額は約15兆円とそれほど大きくありません。
さらにREITへの投資目的は、一般的に大幅な値上がり益よりも安定したインカムゲインです。
そのため動画では、個別REITで過度なリスクを取る必要はなく、市場全体をインデックスで保有する方法が合理的ではないかとしています。
個別銘柄を1つ挙げるのであれば、動画では大型オフィスREITの日本ビルファンド投資法人を例に挙げています。
東京都心の高品質なオフィスを多く保有しているため、オフィス市況の回復や賃料上昇の恩恵を受けやすいという考え方です。
まとめ
2026年のJ-REITは、株式市場と比較して厳しいパフォーマンスとなっています。
その背景には海外投資家による売りに加えて、日本の金利上昇があります。
J-REITは内部で借入金を利用して不動産を購入しているため、金利上昇は借入コストを増加させます。
さらに、投資家が求める期待利回りであるキャップレートが上昇すれば、不動産の理論価格そのものが下落する可能性があります。
その一方で、価格が下落した結果、J-REIT全体の平均分配金利回りは5.27%、NAV倍率は0.82倍まで低下しており、過去と比較して一定の割安感も出ています。
さらに東京都心のオフィスでは賃料上昇と空室率低下が進んでおり、REIT全体でも分配金は中長期的に増加傾向にあります。
したがって現在のJ-REITは、「明確な買い場」と言い切れる状況ではないものの、以前より投資妙味が高まってきた局面とは考えられます。
特に重要なのは、5%を超える分配金利回りだけを見るのではなく、国債利回りとの差であるイールドスプレッドや、今後の金利動向、借入コスト、オフィスなどの賃料上昇を総合的に見ることです。
現時点で一括投資するのではなく、さらに下落する可能性も考慮しながら段階的に投資するというのが、動画で示された考え方です。
今後、利上げによる悪影響よりもインフレによる賃料上昇の恩恵が大きくなれば、J-REIT市場を見る目も大きく変わる可能性があります。
J-REITは単に「高利回りだから買う」という商品ではありません。金利、不動産価格、賃料、借入コスト、NAV、分配金という複数の要素を合わせて判断することが重要です。


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