本記事は、YouTube動画『【S&P500 今後20年】あなたの投資期間は本当に何年か|「年を取ったら債券」という常識を数字で検証する』の内容を基に構成しています。
投資期間について考えるとき、多くの人は「現在から退職までの年数」を思い浮かべます。
たとえば、50歳の人であれば退職までの15年、60歳の人であれば退職までの5年といった考え方です。しかし、退職した日に資産運用が終了するわけではありません。
実際には、退職後も生活費として使われるまで、資産の一部は長期間にわたって運用され続けます。動画では、65歳で退職した後にも男性で約19年半、女性で約24年半の平均余命が残っており、投資期間を退職までと考えるのは短すぎる可能性があると指摘されています。
この考え方に立つと、「年を取ったら株式を減らして債券へ移す」という一般的な資産運用の常識も、改めて検討する必要が出てきます。
投資期間は退職までではなく資産を使い切るまで
資産形成という言葉には、積み立てを続けて目標金額に到達したら終了するというイメージがあります。
退職金の受け取りや年金の受給開始が大きな節目になるため、退職を資産運用のゴールだと考えてしまう人も少なくありません。
しかし、退職後には「資産を取り崩しながら運用する期間」が始まります。
仮に65歳で退職し、その後20年以上生活するとすれば、退職時に保有している資産の大部分には、まだ長期間働く時間が残っています。
特に日本では、公的年金という定期的な収入があります。年金によって基本的な生活費の一部を賄える場合、保有資産を一度に取り崩す必要はありません。
資産は20年、場合によっては30年以上かけて少しずつ使われていきます。その間、使われていない資産は運用を続けられます。
つまり、50歳の人の投資期間は退職までの15年ではなく、80歳や90歳までを考えれば30年以上になる可能性があります。65歳の人であっても、20年前後の運用期間が残っていると考えられます。
「年を取ったら債券」は本当に正しいのか
一般的な資産運用では、年齢が上がるにつれて株式の比率を下げ、債券や現金の比率を高めることが推奨されます。
これは、退職後には収入が減り、株価下落から回復するまで待つ時間が短くなるという考え方に基づいています。
しかし、退職後にも20年以上の投資期間が残っているのであれば、「時間がないから株式を減らす」という理屈が、すべての人に当てはまるとは限りません。
米国株の長期リターン研究で知られるジェレミー・シーゲル教授は、多くの人が自分の寿命を短く見積もる一方で、債券のリターンを高く評価しすぎていると指摘しています。
長期の米国市場のデータでは、保有期間が長くなるほど、株式が債券を上回る可能性が高くなる傾向が確認されています。
動画では、25年という期間で見た場合、株式が債券を上回った割合は90%を大きく超えると紹介されています。
ただし、これは米国株の過去のデータに基づく結果です。
長期間保有すれば、どの国の株式でも必ず利益が出るという意味ではありません。たとえば、1989年末の高値で日本株を購入した投資家は、その後長期間にわたって厳しい状況を経験しました。
重要なのは、「長期なら必ず勝てる」と考えることではなく、20年以上の時間がある人と数年以内に資金を使う人では、適切な資産配分が異なるという点です。
債券の安全性は名目金額だけでは判断できない
債券は一般的に、株式より安全な資産と考えられています。
国が発行する債券を満期まで保有すれば、発行体が破綻しない限り、原則として額面金額が返ってきます。その意味では、債券は比較的安全な資産です。
しかし、債券には見落とされやすい2つのリスクがあります。
1つ目は、満期前に売却する場合には価格が変動することです。
金利が上昇すると、すでに発行されている債券の価格は下落します。満期までの期間が長い債券ほど、金利上昇の影響を大きく受ける傾向があります。
2つ目は、インフレによって購買力が低下することです。
満期時に額面金額が返ってきても、そのお金で購入できる商品やサービスが減っていれば、実質的には資産価値が目減りしています。
投資で重要なのは、表面上の金額である名目リターンではなく、物価上昇を差し引いた実質リターンです。
動画では、債券の実質利回りが2%を下回る一方、シーゲル教授は今後10年から20年の米国株について、インフレ調整後で年5%から6%程度の実質リターンをもたらす可能性があると述べています。
実質年5%で運用できた場合、購買力ベースの資産は約14年で2倍になります。
仮にインフレ率が年2%であれば、株式の名目リターンは配当を含めて年7%から8%程度になる計算です。
もちろん、将来のリターンは保証されません。しかし、安全性を求めて債券や現金だけを保有すると、インフレによって実質的な資産価値が低下する可能性があります。
高齢者でも株式を保有できる条件
動画では、60代以降でも株式を保有する合理性があると説明されていますが、誰でも株式比率を高くすればよいという話ではありません。
まず必要なのは、生活の土台が安定していることです。
年金やその他の収入で基本的な生活費を賄えるか、当面の支出に必要な現金が確保されているかを確認する必要があります。
生活費まで株式市場に投入してしまうと、株価が下落したときに売却せざるを得なくなります。
株式を長期保有できるのは、値下がりしてもすぐに使う必要がない余剰資金だからです。
同じ65歳でも、年金収入、生活費、資産規模、家族構成、住居費、医療費などによって、取れるリスクは大きく異なります。
年齢だけで株式比率を決めるのではなく、資金を使う時期と生活基盤を確認することが重要です。
退職後に注意したい「リターンの順序リスク」
退職後の資産運用で特に注意すべきなのが、リターンの順序リスクです。
これは、同じ平均利回りであっても、上昇と下落が発生する順番によって、最終的に残る資産額が変わるという問題です。
たとえば、20年間の平均リターンが同じ2つのケースがあったとします。
一方は最初の3年間に株価が大きく下落し、もう一方は最後の3年間に下落します。
積み立て期間中であれば、最初の下落は安く買える機会になる可能性があります。しかし、退職後に資産を取り崩している場合、初期の下落は大きな問題になります。
株価が下落している状態で生活費を引き出すと、保有している株式を安値で売却しなければなりません。
その結果、その後に市場が回復しても、値上がりの恩恵を受ける元本自体が減ってしまいます。
このため、退職後の資産運用では、株式比率を何%にするかだけでなく、「暴落中に株式を売らなくてもよい仕組み」を作ることが重要です。
数年分の生活費を現金や値動きの比較的小さい資産で確保しておけば、株価が下落している間に株式を売らずに済みます。
守るべきなのは、株価が下がらない状態ではありません。株価が下がっても、売却を迫られない状態です。
数カ月の下落を避けようとすると長期リターンを失いやすい
株式市場では、弱気相場や暴落が定期的に発生します。
問題は、下落そのものではなく、下落を避けようとして売買のタイミングを狙うことです。
相場が下がり始めたときに売却できたとしても、その後には「いつ買い戻すか」という、さらに難しい判断が待っています。
下落中は恐怖によって買い戻せず、株価が上昇し始めると今度は高値づかみが怖くなります。
結果として、売却した価格より高い価格で買い戻すことになり、保有できる株数が減ってしまう可能性があります。
市場のタイミングを狙うには、売る時点と買い戻す時点の両方を正しく判断しなければなりません。
シーゲル教授は、市場のタイミングを狙うことについて、長期リターンを低下させる代表的な行動の1つだと指摘しています。
長期投資では、暴落を完全に避けることよりも、暴落が起きても保有を続けられる仕組みを作ることが重要です。
インデックス投資の「退屈さ」は欠点ではない
インデックス投資を始めた人は、しばらくすると退屈を感じることがあります。
毎月同じ商品を買い、相場が上がっても下がっても積み立てを続けるだけでは、自分が投資判断をしていないように感じるからです。
そこで、もっと利益を増やせるのではないかと考え、市場全体の売買タイミングを狙い始める人がいます。
しかし、インデックス投資の退屈さは、失敗している証拠ではありません。むしろ、計画どおりに運用できている証拠です。
投資を刺激的なものにしようとすると、売買回数が増え、判断を間違える機会も増えます。
動画では、投資の退屈さを解消するためには、投資以外の分野で刺激を求めた方がよいという考え方も紹介されています。
資産形成においては、下落局面でも淡々と積み立てを続けるドルコスト平均法が有効です。
余剰資金があり、長期の運用期間を確保できるのであれば、弱気相場は投資をやめる理由ではなく、安い価格で買い増せる機会になる可能性があります。
AIブームはまだ初期段階なのか
動画では、現在の株式市場をけん引しているAIについても解説されています。
シーゲル教授の見方では、AIブームはまだ初期段階にあります。
ただし、AI技術そのものが初期段階という意味ではありません。
AIに何ができるかを示す技術的なデモンストレーションは、すでに十分に進んでいます。一方で、企業がAIを実際の業務に導入し、コスト削減や利益率向上につなげる段階は、まだ始まったばかりだという見方です。
特に、テクノロジー企業以外の業種や中小企業では、AIの導入余地が大きく残っています。
今後、AIが幅広い企業に普及すれば、生産性が向上する可能性があります。
ただし、生産性向上の恩恵がすべて株主の利益になるとは限りません。
生産性の向上によって従業員の賃金が上昇したり、競争激化によって商品の価格が下がったりすれば、企業利益への効果は限定的になる可能性があります。
鉄道、電気、自動車、インターネットなど、社会を大きく変えた技術は過去にも数多くありました。
しかし、その技術に関係する企業へ初期段階で投資した株主が、全員大きな利益を得られたわけではありません。
社会を豊かにする技術と、株主を豊かにする企業は、必ずしも同じではないのです。
AI関連株がバブルかどうかはPERで判断する
AI関連株がバブルかどうかを判断する際、動画ではPER、つまり株価収益率を見るべきだと説明されています。
PERは、企業の利益に対して株価が何倍まで買われているかを示す指標です。
動画で紹介された目安では、PER20倍前後が正常な範囲とされています。
現在の主要なAI関連大型株が20倍台半ばから30倍程度であれば、極端に割高とは言い切れないという見方です。
一方で、企業利益が増えないまま株価だけが上昇し、PERが35倍から40倍へ向かえば、警戒が必要になります。
さらに、AI関連企業がPER80倍から100倍で取引されるようになれば、大幅に投資比率を落とすべきだと述べられています。
重要なのは、「AIには無限の可能性がある」「AIバブルは必ず崩壊する」といった物語だけで判断しないことです。
PER20倍、40倍、80倍といった具体的な目安を持っておけば、市場の熱狂に流されにくくなります。
また、どの水準になったら保有比率を下げるのかを、相場が落ち着いているときに決めておくことも重要です。
熱狂の最中に判断しようとすると、感情に影響される可能性が高くなります。
マグニフィセント7は10年後も勝ち続けるのか
現在の米国株市場では、マグニフィセント7と呼ばれる大型テクノロジー企業の影響力が非常に大きくなっています。
しかし、現在の主役企業が10年後も同じ地位にいるとは限りません。
過去にはIBMがコンピューター業界を支配し、シスコシステムズがインターネット時代を代表する企業として高く評価されていました。
両社は現在も存在していますが、市場における立場は当時とは異なります。
AI時代にも、現在は注目されていない新しい企業が急成長し、次の主役になる可能性があります。
ただし、これは現在のマグニフィセント7を直ちに売却すべきだという意味ではありません。
重要なのは、企業が競争優位性を維持できるかどうかです。
動画では、競合他社が簡単にまねできない強みを示す「経済的な堀」が重要だと説明されています。
AI技術が一般化し、どの企業でも同じようなサービスを提供できるようになれば、利益率は低下する可能性があります。
一方で、ブランド力、顧客基盤、データ、ネットワーク効果、資金力などによって競争力を維持できる企業は、引き続き高い利益を得られる可能性があります。
インデックス投資なら勝ち続ける企業を予想する必要がない
S&P500などの時価総額加重型指数では、企業の規模に応じて組み入れ比率が決まります。
成長した企業の比率は自然に高くなり、競争力を失った企業の比率は低下します。
IBMやシスコの市場での地位が低下したときも、指数は自動的に新しい主役企業へ比重を移してきました。
これがインデックス投資の大きな強みです。
投資家自身が、10年後にどの企業が勝つのかを正確に予想する必要がありません。
一方で、時価総額の大きい企業が少数に集中すると、指数全体に占める特定企業の割合が高くなります。
現在の米国株市場は大型テクノロジー企業への集中度が高く、見た目ほど分散されていないという問題もあります。
それでも、構成銘柄の入れ替えを自動的に行い、長期的な勝者を指数内に残していく仕組みは、個別株投資にはない特徴です。
長期投資は自分の寿命を超える可能性がある
ウォーレン・バフェット氏の有名な言葉に、「お気に入りの保有期間は永遠」というものがあります。
この言葉は、優れた企業を長く保有し、市場の短期的な変動に振り回されないという考え方を表しています。
シーゲル教授は、米国株を永遠に保有することについて、自分自身は永遠に生きないものの、資産を引き継ぐ人たちは自分の死後も生き続けるという趣旨の発言をしています。
この考え方に立つと、投資期間は退職まででも、自分の寿命まででもありません。
資産を次の世代へ引き継ぐのであれば、運用期間は自分の人生を超えて続きます。
自分の代ですべての資産を使い切る計画であれば、資産運用には終了時点があります。
しかし、子どもや孫などの次世代へ資産を渡すことを前提とすれば、運用期間は事実上さらに長くなります。
最高値圏でも投資を始めるべきなのか
これから投資を始める人が悩みやすいのが、「相場が下がるまで待つべきか」という問題です。
株価が高いと感じると、暴落してから投資しようと考えたくなります。
しかし、下落を待ち続けた結果、いつまでも投資を始められない人も少なくありません。
動画では、市場が最高値圏にある場合でも、長期投資であれば投資を始めるべきだという考え方が示されています。
現在の市場は割安ではないものの、極端な過大評価でもないという見方です。
投資開始時点の株価水準は短期的なリターンに影響しますが、20年、30年という期間で積み立てを続ける場合、最初の購入価格だけで最終結果が決まるわけではありません。
一度に全額を投資することが不安であれば、毎月一定額を積み立てる方法があります。
ドルコスト平均法を利用すれば、高値のときには少ない口数を買い、安値のときには多くの口数を買うことになります。
将来の下落時期を正確に予測しようとするよりも、無理のない金額で早く始め、長く続ける方が現実的です。
日本人投資家が考えるべき為替ヘッジ
日本からS&P500や米国株へ投資する場合、株価だけでなく為替変動の影響も受けます。
円安になれば円換算の資産額は増えやすく、円高になれば減少しやすくなります。
為替変動が不安な場合、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ方法があります。
ただし、為替ヘッジにはコストがかかります。
特に、日本と米国の金利差が大きい局面では、為替ヘッジのコストが高くなりやすいため、長期的なリターンを押し下げる可能性があります。
動画では、真の長期投資家にとって、為替ヘッジの重要性は短期投資家ほど高くないという考え方が紹介されています。
短期では為替の方向が投資結果に大きく影響しますが、20年以上の長期では、円高と円安の両方を経験する可能性があります。
ただし、通貨の価値そのものが構造的に変化する可能性もあるため、長期なら為替リスクが完全になくなるわけではありません。
為替ヘッジを利用するかどうかは、投資期間、コスト、円建て資産とのバランスを考えて判断する必要があります。
資産運用を始める前に確認したい3つの順番
動画では、実際の投資行動を3つの段階に整理しています。
重要なのは、多くの人が商品選びから始めてしまうのに対し、商品選びは最後でよいという点です。
1.本当の投資期間を計算する
最初に確認すべきなのは、現在から退職までの年数ではありません。
資産を使う時期や平均余命、相続の可能性まで含めて、本当の投資期間を考える必要があります。
50歳であっても、運用期間は30年以上残っている可能性があります。65歳でも20年前後の期間が残ることがあります。
この期間を確認したうえで、現在の資産配分が適切かを考えます。
2.暴落時に売らなくて済む仕組みを作る
次に確認するのは、株価が大きく下落したときに生活費のために株式を売らずに済むかどうかです。
特に退職後は、数年分の生活費を現金や比較的値動きの小さい資産で確保しておくことが重要です。
株式比率を何%にするかよりも、暴落時に売却を迫られない状態を作ることが先になります。
3.購入する商品と金額を決める
投資期間と生活防衛資金が決まった後で、初めて具体的な商品を選びます。
期間とリスク許容度が明確になれば、選択肢は自然に絞られます。
一方で、前提が曖昧なまま商品だけを選ぶと、相場が下落したときに投資方針がぶれやすくなります。
まとめ
投資期間を退職までと考えると、50歳の人には15年、60歳の人には5年しか残っていないように見えます。
しかし、退職後も資産は生活費として使われるまで運用され続けます。65歳からでも20年前後、場合によってはそれ以上の投資期間が残されています。
20年という時間軸で考えれば、年齢だけを理由に株式を大幅に減らし、債券へ移すことが常に正しいとは限りません。
一方で、退職後に株式を保有するためには、年金や現金によって生活の土台を安定させ、暴落中に株式を売らなくて済む仕組みを用意する必要があります。
数カ月という時間軸では、株価下落を避けるための売買が魅力的に見えます。しかし、20年という時間軸では、市場のタイミングを狙うことが長期リターンを低下させる可能性があります。
10年という時間軸では、現在のAI関連企業やマグニフィセント7が、そのまま市場の主役であり続ける保証はありません。
だからこそ、どの企業が勝つかを予想する必要がないS&P500などのインデックス投資に意味があります。
そして、資産を次世代へ引き継ぐのであれば、投資期間は自分の寿命さえ超えていきます。
投資判断で大切なのは、ニュースの内容だけではありません。
相場が大きく動いたときには、「今、自分は数カ月の話をしているのか、それとも20年の話をしているのか」と問い直す必要があります。
投資で判断を誤る原因は、情報不足ではなく、異なる時間軸の答えを持ち込んでしまうことにあるのかもしれません。
長期投資の強みは、リターンが期待できることだけではありません。判断する回数を減らし、失敗する機会そのものを少なくできる点にもあります。


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