本記事は、YouTube動画『インデックス投資は短期では増えない?過去30年のデータで分かる長期投資の本当の意味』の内容を基に構成しています。
インデックス投資は長期で続けることが前提であり、1年程度ではほとんど増えない――。そのような印象を持っている人は少なくありません。
毎月積み立てているものの、資産が増えている実感がない。年率5~7%では物足りない。もっと早く利益が出る投資に乗り換えた方がよいのではないか。こうした疑問を感じることもあるでしょう。
しかし、インデックス投資が「短期では増えない」という理解は、必ずしも正しくありません。
S&P500の過去30年間を振り返ると、1年間で20%以上上昇した年は12回もありました。一方で、年間リターンが5~7%程度に収まった年は、ほとんどありません。
実際の株式市場は、毎年規則正しく5%や7%ずつ上昇するわけではありません。大きく上昇する年がある一方で、急落する年もあり、その不規則な値動きを繰り返しながら長期的に成長してきました。
では、短期間でも大きく増える可能性があるにもかかわらず、なぜインデックス投資は長期で続ける必要があるのでしょうか。
その理由は、短期では利益が出ないからではありません。大きく上昇する年がいつ来るのかを、事前に予測できないからです。
インデックス投資は短期では増えないという誤解
インデックス投資では、長期的に年率5~7%程度のリターンが期待できると説明されることがあります。
この数字だけを見ると、毎年5%や7%ずつ、ゆっくり資産が増えていくように感じるかもしれません。しかし、年率5~7%という数字は、長期間の結果を平均化したものです。
実際の年間リターンは、平均値のように安定しているわけではありません。
動画では、2024年の代表的なインデックスファンドの実績が紹介されています。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、2024年の1年間で約40.8%上昇しました。仮に年初に360万円を投資していた場合、資産は約507万円となり、約147万円増えた計算です。
147万円は、毎月約12万円を1年間貯金した金額に相当します。インデックス投資であっても、相場環境がよければ、わずか1年間で大きな利益が発生することがあります。
eMAXIS Slim 全世界株式、いわゆるオルカンも、2024年には約32.5%上昇しました。360万円を投資していた場合、増加額は約117万円になります。
毎年20%や30%の利益を目指す場合、一般的には個別株への集中投資やレバレッジ取引、事業への投資など、大きなリスクを取る必要があります。
しかし2024年には、特定の企業を選ばず、市場全体へ分散投資するインデックスファンドでも大幅な上昇が発生しました。
もちろん、同じような利益が毎年得られるわけではありません。それでも、インデックス投資が短期ではまったく増えない投資ではないことが分かります。
S&P500は過去30年のうち24年がプラス
動画では、1996年から2025年までのS&P500の年間リターンも取り上げられています。
この30年間のうち、プラスで終わった年は24回、マイナスで終わった年は6回でした。年単位で見ると、約8割の年で上昇していたことになります。
しかも、プラスになった年も数%ずつ静かに上昇していたわけではありません。
1996年から1999年までは、4年連続で20%を超える上昇となりました。インデックス投資であっても、短期間で資産が急速に増える局面があることを示しています。
一方、2000年以降は状況が大きく変わりました。
2000年は約9%下落し、2001年も約11%下落、2002年には約21%下落しました。ITバブル崩壊によって、3年連続のマイナスとなったのです。
2008年のリーマン・ショックでは、年間で約36%下落しました。しかし、その翌年の2009年には約26%上昇しています。
その後も、2019年には約31%、2021年には約28%上昇しました。2022年は約18%下落したものの、2023年には再び20%を超える上昇となりました。
このように、S&P500は毎年5~7%ずつ一定のペースで増えているわけではありません。
大きく上がり、ときどき大きく下がり、その後再び上昇するという不規則な動きを繰り返しています。その結果を長期間で平均すると、年率5~7%程度になるということです。
2024年の高いリターンには円安も影響
2024年のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の上昇率が約40.8%となった背景には、米国株の上昇だけでなく、為替相場の影響もあります。
S&P500指数そのものの年間上昇率は、ドルベースで約24.9%でした。それに対し、為替ヘッジを行わない円建ての投資信託では、円安によってリターンが押し上げられました。
為替ヘッジなしの商品では、円安になると外貨建て資産の円換算額が増えるため、リターンには追い風となります。
反対に円高になると、米国株が上昇していても、円換算後のリターンが押し下げられる可能性があります。
ただし、積立投資をしている人にとって、円高は一方的に悪いわけではありません。円高になれば、同じ金額でより多くの米国資産を購入できるからです。
短期的な為替変動だけで判断するのではなく、株価と為替の両方が資産評価額に影響することを理解しておく必要があります。
最大の問題は上昇する年を事前に選べないこと
インデックス投資が短期でも大きく増えるのであれば、上昇する年だけ投資すればよいと考えるかもしれません。
しかし、ここに投資の最も難しい問題があります。
過去のチャートを見れば、「2000年の前に売ればよかった」「2008年だけ避ければよかった」「2009年に買い戻せばよかった」と簡単に言えます。
しかし、それは結果を知っているから言えることです。
1999年末の時点で、その後3年連続で株価が下落すると確信できた人は多くありません。2008年に約36%下落した直後、翌年に約26%上昇すると判断して買い向かうことも簡単ではありません。
2022年に約18%下落した時点で、2023年以降に再び大きな上昇が来ると確信することも困難でした。
つまり、インデックス投資は短期でも大きく増える可能性がありますが、その上昇する期間を事前に選ぶことはできません。
「インデックスは短期でも増える」という説明は正しい一方で、「インデックスなら短期で簡単に儲かる」という考え方は正しくありません。
大幅な上昇がいつ始まるか分からないからこそ、市場に長く居続ける必要があります。
短期の利益を資産に残すことで複利が働く
2024年に360万円を投資し、資産が約507万円になったとします。このとき、増えた約147万円をすべて使えば、その利益はそこで終わります。
一方、507万円をそのまま運用に残せば、次の上昇は360万円ではなく507万円を元本として受け取れます。
仮にその後20%上昇した場合、360万円なら増加額は72万円です。しかし、507万円なら増加額は約101万円になります。
同じ20%の上昇でも、運用元本が大きくなるほど、実際に増える金額も大きくなります。
これが複利の効果です。
長期投資とは、小さな利益を我慢して積み上げる投資ではありません。短期的に得られた大きな利益を資産に残し、次の上昇にも参加させる投資です。
過去に得た利益が新たな元本となり、その元本がさらに利益を生み出していきます。
ただし、老後など資産を使う段階に入れば、運用を続けながら定期的に売却する取り崩し戦略も必要になります。
資産形成期と取り崩し期では、同じインデックス投資でも運用方法が異なる点には注意が必要です。
360万円を30年間投資すると約6738万円に成長
動画では、1996年の初めに360万円をS&P500へ投資し、そのまま30年間保有した場合のシミュレーションも紹介されています。
条件は、S&P500の配当込み年間リターンを使用し、追加投資は行わず、税金や手数料も考慮しないというものです。計算はドル建てで行われています。
最初の4年間は相場環境が非常によく、360万円は1999年末に約912万円まで増加しました。わずか4年間で約2.5倍です。
しかし、その直後にITバブルが崩壊します。
約912万円あった資産は、2002年末には約571万円まで減少しました。投資開始時の360万円よりは増えていますが、運用している本人は「360万円が571万円になった」とは感じにくいでしょう。
むしろ、「912万円あった資産が341万円減った」と感じます。
投資では、一度記録した最高値を自分の確定した資産だと考えやすいため、その後の下落による心理的な負担が大きくなります。
その後、資産は回復し、2007年末には約1037万円となりました。ところが翌年、リーマン・ショックが発生します。
約1037万円あった資産は、1年間で約658万円まで減少しました。ようやく1000万円を超えた直後に、約380万円を失ったように見える状況です。
長期投資を30年間続けるということは、こうした大幅な下落も実際に経験するということです。
それでも投資を続けた結果、資産はその後大きく成長し、2025年末には約6738万円になったとされています。
追加投資は行わず、最初に投資した360万円だけで約18.7倍に増えた計算です。
もちろん、この期間は米国株が特に強かったため、今後も同じ結果になる保証はありません。それでも、インデックス投資には長期的に大きな資産を形成する可能性があることが分かります。
長期投資でも途中の大幅下落は避けられない
360万円が約6738万円になるまで、資産は一直線に増えたわけではありません。
途中では、約912万円から約571万円へ減少し、約1037万円から約658万円へ減少する局面がありました。さらに、約4434万円から約3634万円まで減った時期もありました。
資産額が大きくなるほど、同じ下落率でも減少する金額は大きくなります。
100万円の資産が20%下落すれば20万円の減少ですが、5000万円の資産が20%下落すれば1000万円の減少です。
長期投資では、資産が増えるにつれて、含み損の金額も大きくなります。長く投資すれば下落がなくなるわけではありません。
それでも最終的に資産が大きく成長したのは、大幅に上昇した年を1度だけでなく、何度も受け取ったからです。
元本が増えると同じ上昇率でも利益額が変わる
1996年のS&P500のリターンは約22.7%でした。投資元本が360万円だったため、増加額は約82万円です。
一方、2024年には資産が約4581万円まで成長していました。そこから約24.9%上昇すると、年間の増加額は約1140万円になります。
1996年と2024年の上昇率には、それほど大きな差はありません。しかし、元本が増えたことで、実際の利益額には1000万円以上の差が生まれています。
インデックス投資が長期で強くなる理由は、短期のリターンが小さいからではありません。
過去に得た利益が元本へ加わり、その大きくなった元本で次の上昇を受け取れるからです。
これが、時間をかけて資産が加速度的に成長する複利の仕組みです。
新NISAは長期投資と相性のよい制度
長期的な資産形成と相性がよい制度として、新NISAがあります。
新NISAでは、年間最大360万円まで投資でき、非課税保有期間は無期限です。通常の課税口座では、投資によって得た利益や分配金に対して約20%の税金がかかります。
一方、NISA口座内で得た利益は、一定の条件のもとで非課税になります。
長期間の運用によって資産が大きく増えた場合、利益に対する税金の有無は最終的な資産額に大きく影響します。
ただし、年間上限の360万円を必ず使い切る必要はありません。
無理に上限まで投資し、下落時に生活費が不足したり、怖くなって売却したりしてしまえば、長期投資を続けられなくなります。
NISAはあくまで非課税制度であり、投資額を増やすこと自体が目的ではありません。生活に無理のない範囲で利用することが重要です。
大幅上昇した3年間を逃すと約3800万円の差
動画で特に重要な数字として紹介されたのが、大幅上昇した年を逃した場合のシミュレーションです。
1996年から2025年までの30年間で、上昇率が特に高かった3年間のリターンを0%として計算します。
つまり、その3年間だけ資産が増えず、残りの27年間は実際と同じリターンを得たと仮定します。
30年間すべてのリターンを受け取った場合、最終資産は約6738万円でした。
しかし、上昇率上位の3年間を除くと、最終資産は約2920万円まで減少します。その差は約3818万円です。
わずか3年間の上昇を逃しただけで、最終的な資産額に約3800万円もの差が生まれる計算になります。
もちろん、これは大幅上昇の影響を分かりやすく示すための単純なシミュレーションです。
現実には、上昇率が高い3年間だけを都合よく逃すとは限りません。しかし、どの年が大幅上昇になるかを事前に判断することもできません。
この数字が示しているのは、インデックスに大きく増える力がないということではありません。
大きく増える年がいつ来るのか分からないため、その年を逃さないように市場へ居続けることが重要だということです。
長期投資の目的は次の急騰を予測することではない
投資家の仕事は、次に30%上昇する年を予測することではありません。
大幅上昇が起きたときに、投資を続けている状態を作ることです。
そのためには、複雑な相場予想よりも、投資を継続できる環境を整える必要があります。
近いうちに使う予定のあるお金は投資しないこと、新NISAの年間上限を無理に埋めないこと、下落しても売却せずに済む金額で続けることが重要です。
毎月の投資額は、1万円でも3万円でも5万円でも構いません。
年間360万円を投資した結果、下落時に不安になって売却してしまうのであれば、投資額を減らして長く続ける方が合理的です。
投資では、金額の大きさよりも、市場から退場せずに継続できることが重要になります。
好調な商品への乗り換えを繰り返さない
相場では、常に何らかの資産が好調に見えます。
S&P500が上昇すればS&P500を買いたくなり、半導体株が上昇すればSOX指数へ乗り換えたくなります。FANG+が強くなれば、さらに高いリターンを期待して乗り換えたくなるかもしれません。
しかし、上昇した商品を見てから乗り換える行為を繰り返すと、高値で購入し、下落後に手放すことになりかねません。
また、頻繁に商品を変更すると、過去の利益を1つの資産で長く育てることも難しくなります。
将来どの商品が最も高いリターンを生むかは、事前には分かりません。
だからこそ、自分が納得して選んだ投資対象を、無理のない範囲で継続することが重要です。
ほかの商品が好調に見えて心が揺れることはあります。それでも、直近の成績だけを見て乗り換えるのではなく、当初の投資方針やリスク許容度を確認する必要があります。
自分で決められるのは市場に残るかどうか
次の1年間に株価が上昇するか下落するかを、投資家が自由に選ぶことはできません。
次の大幅上昇がS&P500で起こるのか、全世界株式で起こるのか、半導体株で起こるのかも分かりません。
しかし、大幅上昇が来たときに市場に残っているかどうかは、自分で決められます。
生活防衛資金を確保し、無理のない金額で投資し、下落時にも売却せずに済む状態を作ることは可能です。
長期投資では、未来を正確に当てる能力よりも、予測できない未来に耐えられる仕組みを作ることが大切です。
まとめ
インデックス投資が長期投資に向いている理由は、短期では資産が増えないからではありません。
S&P500は過去30年間で、1年間に20%以上上昇した年が12回ありました。インデックス投資でも、短期間で大きな利益が出ることはあります。
しかし、その大幅上昇がいつ起こるのかを、事前に正確に予測することはできません。
そのため、長期間にわたって市場に居続け、大幅上昇を何度も受け取ることが重要になります。
さらに、得られた利益を運用に残せば、利益が新たな元本となります。元本が大きくなるほど、同じ上昇率でも増える金額は大きくなり、複利の効果が強まります。
一方で、長期投資ではITバブル崩壊やリーマン・ショックのような大幅下落も経験します。資産が順調に増え続けるわけではありません。
だからこそ、近く使うお金を投資せず、無理のない金額で続けることが大切です。
現在の運用額が小さく見えても、インデックスに成長する力がないわけではありません。将来の大幅上昇を受け止めるための元本を、今まさに作っている途中だと考えられます。
短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、自分が選んだ投資を無理なく続け、資産が長期的に育っていく過程を見守ることが、インデックス投資の基本といえるでしょう。


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